大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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予告とは違って新章突入


75 安土大阪時代 妖怪親書

 

これは天正11年(1583年)のエヴァンジェリンと西洋妖怪の使節である吸血鬼エリートの会談とそこから繋がった大樹への謁見から得た情報からであった。

 

エヴァンジェリンと会談を果たしたエリートは、数日のうちに安土大樹宮へ招かれ大樹野椎水御神と謁見した。安土でエリートは大樹自らのエスコートを受けて歓迎された。

 

エリートは大樹との宴席において大樹神話の馴れ初めを聞かされた。

この話を聞いたエリートは大樹に強い親近感を覚えた。一介の妖精から神に成りあがった彼女とただの蝙蝠から吸血鬼の上役に上り詰めた自分と多くの点で重なるものを感じたのであった。

 

「ミセス大樹。私も貴女のようにありたいと思いますよ。」

 

2人の間柄は非常に良好な物であり、彼は彼女にある種の憧憬を抱いた。彼は彼女の前では非常に饒舌であり協力的であった。以後、彼は西洋妖怪と日本妖怪の間を取り持つ外交官的な立ち位置となる。この時、エリートは大樹に西洋妖怪は西洋人間社会とその背後の魔法世界社会と対立し、魔法世界社会が妖怪達とは相容れないものであると熱弁した。さらに西洋のイスパニアが過激な異端狩り主義国であり、日本に野心を抱いていると警告した。

 

「近頃のキリスト教圏では異端狩りが頻繁に行われています。昔から良くないが僕ら妖怪にはとりわけ厳しい・・・、ベアード様を筆頭に十字騎士団やそれに連なる輩との争いが激しく、最近はムンドゥス・マギクスの連中が何かにつけて手を出してくるのです。バチカンの教皇に余計な知恵を付けているのは全く持って不愉快としか言いようがありません。」

 

「・・・ムンドゥス・マギクスといいますと?」

 

大樹の問いにエリートは「これは失礼」と説明する。

 

「そちらには魔法世界と言った方が解りやすいかもしれませんね。この世界に寄生虫のように張り付く異世界ですよ。私も本職ではないので詳しくは解りませんがこちら側の魔女が言うにはこの世界の養分を吸って生きる寄生虫の如き異世界と説明されました。」

 

「エリート・・・間違いではないが、いささか悪し様に言い過ぎでは?少なくても、我々に敵対的なのはメセンブリアの連中で、ヘラスは亜人国家でこちらには手を出してこないし比較的好意的ではないか?」

 

エヴァの苦言にエリートは格上のエヴァに気を使って返答する。

 

「そうかもしれませんが、ヘラスなど傍観者でこちらからは存在感のかけらもない。ベアード様からは東洋の重鎮たる大樹様と親交を持ち連中と対抗したいとお考えです。何卒、大樹様からは色よい返事をいただきたいものです。」

 

天正11年(1583年)、西洋妖怪の有力者バック・ベアードは吸血鬼エリートを使者に東洋の重鎮とも言える大樹野椎水御神へ親書を送った。

 

この時、大樹は親書の返信を保留しエリートを一時留め置いた。大樹としても即答できかねる内容であり、当初は色よい返事をする予定ではなかったと言われている。

 

しかし、大樹野椎水御神とバック・ベアードの関係は時を追うごとに発展していく。

最終的に強固な同盟関係に発展するのだが、その発端はすぐに訪れる。

 

大友宗麟を中心としたキリシタン大名と明智軍残党の決起である。

そして、それに力を貸したイスパニアと魔法世界、以後長きに渡る因縁の始まりであった。

 

 

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