大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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76 安土大阪時代 島原・北九州の乱

天正12年(1585年)1月9日、島原城。

 

「ぬらりひょん・・・貴様の役目はここまでだ。」

「ほぅ・・・光秀殿・・・それは一体どういうお考えで?」

 

光秀の背後から数人の人影が現れる。

宣教師たちであった。だが、彼らの手には杖が握られている・・・魔法使い・・・キリスト教の背後でうごめく異端狩り集団であった。

 

「・・・愚かですねぇ・・・まぁ、いいでしょう。私はこの辺りで手を引かせて頂きましょう。」

 

ぬらりひょんは煙のように消えていなくなった。

 

「逃げたか・・・。」

「ミツヒデサマ、5年ゴ・・・イスパニアの艦隊クル。マホウノクニのセンシ達もキョウリョクする。ヴァンパイア・・・闇の福音ヲ殺シテクダサイ。」

 

 

天正18年(1590年)10月25日。

安土幕府開闢より7年、国家宗教として神道が採用され、次いで仏教が続いた。

全体主義的な気風のあるこの国でキリスト教は迫害こそされなかったが、白眼視されるものであった。キリスト教は徐々に徐々に信徒を失っていく。

 

そんな中で、起こったのが北九州の乱である。

 

「キリシタンを率いて信長を討つ!!」

 

明智光秀を挟んでキリシタン大名の大友宗麟と有馬晴信らはイスパニアと手を結び国家の転覆を計画。

 

天正18年(1590年)10月25日、博多湾にイスパニア船10隻が来航。

イスパニア船団より降りたイスパニア士官は大友宗麟と謁見。

 

大友家・有馬家の合同でキリスト教国として安土幕府よりの独立を宣言した。

幕府は当然これを認めず大友・有馬の討伐を諸大名に命じた。

 

この時、信長はすでに病床の身となり実権は信忠に渡っていた。

 

先鋒の島津・毛利の諸大名より魔法使いの存在を把握した信忠は幕府軍を編成する一方で毛利家(関ケ原の戦いで減封)、島津家、龍造寺家といった諸藩に大友家討伐令を発した。

 

信忠より知らせを受けた大樹の行動は素早かった。

 

吸血鬼エリートの警告もあり、北九州の乱への対処は迅速であった。

 

 

結論から言えば有馬家は龍造寺家・相良家・島津家の三方から攻められ陥落した。イスパニア軍や明智残党を擁する大友家は九州諸大名と援軍の四国諸大名と毛利家そして織田幕府軍によって攻め立てられた陥落した。

 

しかしながら、その代償は当初の予想を裏切るほどの大きさであった。

 

大宰府からの通報が最初に届いた大樹大社は大妖精を中心とした妖精巫女衆が派遣される。

大宰府は大樹大社の影響下にあり、大友家が敵にまわっているため情報が遮断され、異常を察知した神社系勢力が歩き巫女の形で妖精巫女を派遣した結果。大友家を中心としたキリシタン大名の裏切りが発覚、最初に情報を掴んだ大樹大社が最初に兵を派遣したのであった。

 

天正19年(1591年)1月28日、太宰府天満宮を包囲する大友軍1万5000に大妖精率いる大樹大社軍精鋭5000が奇襲攻撃を仕掛けるも。

 

大友家の軍勢に交じる魔法使い達の集団儀式魔法による大魔力魔法の射手の一斉掃射によって多くの妖精達が討ち取られる。

 

「っくぅ・・・そ、そんな・・・強い。」

「大妖精様!チルノ様が!?」

 

妖精巫女の一人の言葉に大妖精は愕然とした。

 

「ち、チルノちゃん!?」

「だ、大ちゃん・・・えへへ、失敗しちゃったよ。」

 

 

太宰府天満宮の菅原道真は渋面を作った後。

自身の御付きの妖精巫女梅林に指示を出す。

 

「天満宮を放棄する。大緑光ノ精様たちをお守りしつつ、佐賀城まで撤退する。佐賀の龍造寺隆信と合流し立て直す。」

 

 

翌月には菅原道真らは佐賀まで撤退し龍造寺軍と合流し立て直しを図るが、龍造寺家の南に位置する有馬家が大友側に付き龍造寺家を攻撃する(松浦家や宗家は小藩で申し訳程度だが龍造寺家救援の兵を出している)。その一方で幕府の討伐令に応じた島津家、相良家、伊東家は北上を開始。阿蘇家は島津家他の北上に対して申し訳手度に抵抗したが、早期に降伏している。

 

門司港には村上水軍の協力を得て毛利家と宇喜多家及び羽柴秀吉率いる幕府軍が、佐伯港には長曾我部家と前田利家と丹羽長秀がそれぞれ率いる幕府軍が上陸した。さらに大樹恩顧筆頭の妖狐狸衆が中津港に上陸を開始。

その頃には島津家、伊東家、相良家の連合軍が大樹の檄文に応じた現地妖怪達を加え北上を続けた。

さらにその翌月には幕府軍及び諸藩軍の援軍が派遣される。

 

最終的に幕府軍及び諸藩軍と北九州賊軍(大友家、有馬家、明智軍残党、過激派キリシタン)の戦力差は25万対5万と言う大きすぎる差が開き圧倒的な数の差で賊軍を討ち取ることとなる。

 

また、イスパニア船団に対しては九鬼嘉隆率いる幕府水軍連合(九鬼水軍や村上水軍と言った日本中の水軍衆は統一過渡期にあり、水軍衆の大半は幕府に組み込まれ、一部が諸藩の沿岸防護規模の水軍になった)に和製ガレオンを加えて当たらせた。

 

「なぜ、あの男は神に愛されるのだ・・・。」

 

大友宗麟は自害、明智光秀も討ち死した。光秀は討たれた際、怨嗟の声を上げたと言う。

これ以降は幕末まで国内での大規模な戦いは起こらなかった。

しかし、この戦いを期に大樹は幕府要人相手や大樹大社の非公開神事にしか姿を見せなくなる。

 

この戦いにおいて、大樹の側近である大妖精、チルノや光の三妖精らが討たれてしまい(今でいうピチュる)記憶の多くを失ってしまったのである。

 

「チルノちゃん。」

「あんた誰よ?」

 

「大ちゃん・・・。」

「あ、あのあまり覚えていなくて・・・ごめんなさい。友達だったんだよね。」

 

特にチルノの記憶喪失はひどく大樹大社の最強の戦闘妖精であった経験が完全に失われていた。光の三妖精も政治に参画できるだけの能力を失い、比較的記憶の欠落が少ない大妖精も大樹大社の妖精で現役を引退し東北の隠れ里(後の幻想郷)に記憶を失った妖精達と共に下った。また、数年後にはエヴァンジェリンも日本を離れて旅に出る。

 

「大樹・・・俺はこの国にお前のためにと尽くしたつもりだった。だが、お前個人には何かできたのだろうか。それだけが心残りだ。」

信長の最期の言葉に大樹はただ黙って彼の手を握った。

 

「・・・・・・・」

 

千年来の友人たちを失い、その翌年には唯一愛した人間である信長もこの世を去った。彼女の心の傷は深く、300年程歴史の表舞台に立つ事は殆ど無く、幕府への提言助言もさほど多くは無かった。ただし、刑部狸や白蔵主を筆頭に恩顧妖怪達は外国勢力(特に欧州圏や魔法世界勢力)への敵愾心を燃やし、幕府軍やその次の帝国軍と密接なつながりを持つこととなる。蝦夷開拓や琉球併合は文治派恩顧妖怪筆頭の白蔵主の案である。

 

 

慶長元年(1594年)。大樹は留め置いていた吸血鬼エリートを呼び出し親書の返礼を送る。

 

上座に座る大樹とその左右に控える大樹恩顧の大妖怪達たち、取り次ぎ役のぐわごぜが大樹に変わり声を発す。

 

「吸血鬼エリートよ。同盟締結の件、了解した。ついては詳細を詰めたく思うと伝えなされぃ。」

 

「わかりました。大樹様、我が主ベアード様もお喜びになりましょう。」

 

バック・ベアードら西洋妖怪と大樹率いる東洋妖怪(当時は日本妖怪)による東西妖怪同盟が成立した。

 

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