海外植民地の獲得と余剰人口の移民事業は、享保16年(1731年)におきた亨保の飢饉が深刻であったことから、強権発動、あるいは武力行使も辞さない強引なものであった。
とはいえ、にわかに海外植民地の獲得が始まったわけではなく、亨保年間以前に既に海外探索はある程度行われていた。
その目的は製糖のためにサトウキビ栽培地の確保と木材資源、毛皮、鯨油の調達であった。
サトウキビ栽培は、琉球、台湾、呂宋の独壇場であった。その利益は独占的なものであり、新たに砂糖販売に乗り出すには別にサトウキビ栽培地を得る他なかった。
砂糖貿易の巨利に目をつけ商人たちは、自費で多くの探査船を派遣して、太平洋各地を探索した。サトウキビ栽培が可能な土地を探して、スペイン領のマリアナ諸島や、その南に位置するカロリナス諸島を訪れた。そこからさらに南下して大南島パプア・ニューギニアに至っている。この際に南洋妖怪たちを庇護下においている。彼らには高度な自治権(放置)を与えている。
ただし、大南島は熱帯雨林と湿地が続き、赤道の無風地帯でもあり、帆船時代にはほぼ利用価値がなかった。一応、日本語の標識などを立て領有を宣言しているが、宣言しただけで植民は行っていない。
探査船は現地人と苦労して交渉して水や食料を補給し、さらに南下してオランダ人が先に見つけていた南天大陸オーストラリアにたどり着いた。
最初に南天大陸を訪れたオランダ人は不毛の土地として植民を諦め、地図にその場所を記すにとどめているが、日本の探査船は砂糖栽培地を求めてさらに大陸沿いに南下。ついに農業が可能な土地を発見した。
また、周辺に大量のクジラが生息しており捕鯨に適している場所だった。
しかし、元禄年間には僅かな寄港地を設ける程度で南天への植民は行われていない。
この時点では南太平洋への植民はコストの面から否定されていた。まだ日本国内で開発できる地域が残っており、植民地建設は不要だったのである。
だが植民地可能な土地として幕府の御文庫には記録された。
一方の欧州ではベアードを中心に西洋妖怪はプロイセンを中心に貴族などの有力者に成り代わり、プロイセンを影から掌握した。
1866年の普墺戦争にて妖怪達を前面に押し出し、ケーニヒグレーツの戦いでプロイセン軍がオーストリア軍に完勝し、圧倒的な力を持ってオーストリア軍を撃滅。
僅か7週間で勝利した。
この頃よりベアードは欧州の掌握を目指し行動を開始した。
また、この戦争で一躍英雄となった参謀総長モルトケはベアードの軍師であるヨナルデ・パズトーリが成り代わった存在である。ベアード自身もオットー・ビスマルクに成り代わっており、ロシア大使時代にはクマ狩りにはまり、クマを殺して周り魔法使い達にマークされてしまう要因となった。
駐日大使吸血鬼エリートの一時帰国の際に、旅の途中のエヴァンジェリンと会いプロイセンに立ち寄った。
「いやいや、闇の福音エヴァンジェリン・A・K・マクダヴェル。魔法使い共は随分と目の敵にしているようだね。」
「あぁ、随分と嫌われたものだよ。我々吸血鬼は・・・。」
「ベアード様の御命令でこの国の有力者の大半は、僕ら吸血鬼と入れ替わってるからね。眷属も軍部や政府に散っているからね。」
「ふん、この前の戦争で随分と暴れまわった様だな。メガロの魔法使い達に目を付けられるぞ。」
「ベアード様は織り込み済みさ。次の戦争で純血魔法使いがこちらに付く手筈だよ。アルカナ家とかグルマルキン・ロンロンと聞いている。」
純血魔法使いと言うのは魔法世界の魔法使いではなく。この世界にいる一子相伝の魔法を代々継いだ家系で、いわゆる悪魔と契約したなどの魔法世界の様な学術的で体系化した魔法以外を得意とするこの世界特有の魔法使いである。
「マクダヴェル女史はベアード様にお会いする予定かな。」
「いや、その予定はない。どうせ顔を合わせれば、自分の配下になれと煩いからな。」
プロイセン軍各隊に散りばめられるように下級吸血鬼(グール)が配属され、なりそこないの人狼(半人半狼)が騎兵扱いで軍に組み込まれている。
大樹に倣ったやり方のようだが、大樹以上に妖怪を前面に押し出したベアードのやり方は過激なものに見えた。
アルカナ家は6期の家系。
グルマルキン・ロンロンは固有名詞、グルマルキン4期魔女とロンロン1期魔女を名前苗字で合体させたオリジナル設定です。