大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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86 近世 西洋妖怪軍団欧州を席巻す

西洋妖怪軍団の成り立ちと幹部種族について解説する。

西洋妖怪軍団は勢力としては13世紀初頭より歴史書などに記載され存在が確認できる(口伝の伝承を含めればそれより前にも存在が伺える)。この西洋妖怪軍団が存在感を示し始めるのは16世紀末頃である。それ以前は西洋の妖怪勢力は群雄割拠しており妖怪の戦国時代であった。そして西洋妖怪を統一したのはバグベアの一族であり、その一族の長であるバック・ベアードであった。

 

黒い球体に触手が放射状に生えた一つ目の妖怪寄りの妖精であるバグベアは目から魔法を放つと言う攻撃手段はあるものの全体から見れば弱い種族であった。その種族の中に突然変異ともいえる存在が誕生する。バック・ベアードである(彼の誕生は詳細不明だが恐らく15世紀末と考えられる)。後の西洋妖怪軍団の首魁となるかれは同族は勿論、妖怪と言う枠組みの中で見てもずば抜けた戦闘能力と知恵を持っていた。

彼は誕生からすぐに同族を纏め上げることになる。同族を纏め上げ一角の勢力の長となった彼は妖怪戦国時代の長の類に漏れず勢力拡大に勤しむことになる。そこから暫く順当にゴブリンやオーク、グレムリンと言った存在を支配下に置きそれなりの大勢力となった彼に転機が訪れる。

 

フェアリー種の妖精であるエタニティラルバ、クラウンピースとの出会いである。西洋においてどの時代を通してもであるがフェアリー種の妖精は戦闘能力が低く妖怪にも人間にも弾圧される存在であった。フェアリー種の妖精は自分たち妖精の理想郷である東方世界(日本の事)を目指し民族移動を繰り返していた(自然に力を与える存在が東に逃げていくので西側世界は自然災害が多く、日本を中心に自然豊かな世界が広がる(東方幻想思想の原因))。また、エタニティラルバ、クラウンピースはベアードの配下には入ってない。エタニティラルバは妖精移民の東進政策を大樹の庇護の下、取り仕切っており実質大樹の配下である。クラウンピースは『人を惑わす程度の能力』を活用し西洋妖怪軍団の幹部待遇を受けている。彼女の能力は敵国を不穏にするなどの工作に向いており、ベアードは非常に重宝していた。

 

バグベアは種として妖怪に寄っているとは言え妖精である。この繋がりでバック・ベアードは東方世界の伝説(主には大樹に関わる諸伝説。)を知る。

バック・ベアードの勢力は西洋でも量的な面では大半を占めつつあったが、吸血鬼・人狼種を傘下にすることが叶わずにいたのであった。彼らにとって上に立つ者で重要なのは血統である。妖怪としては比較的若いベアードに対して素直に頭を垂れるのはプライドが許さないと言う事もあった。そこでベアードはその高貴なる血統を外から取り入れることを思いつく。それが1726年のバック・ベアードと大樹野椎水御神長女古明地祀との婚姻である。

東洋とは言え神の血である。高貴さにおいて神と妖怪には天と地ほどの差があると言っても良い。また、この婚姻同盟締結に寄与した吸血鬼エリートはこの功績を持って吸血鬼としては、卑しい生まれであったにも関わらず西洋妖怪の幹部に就任している。ただ、彼はこの時点ではベアードの直臣ではなくフリーの吸血鬼でたまたまベアードの依頼を受けて交渉にあたっただけである。彼が正式にベアードの配下に入ったのは1900年代である。それまでは客人扱いであり、西洋で成り上がり扱いを受けることを嫌い西洋妖怪の大使として日本で活動している期間が多い。

 

また、ベアードの事であるが大樹野椎水御神と言う神の親族(義理の息子)である。古明地祀は純粋な神ではない(大樹も元を正せば妖精)がそのような話はこの際、微々たることだ。バック・ベアードは妻に神の血族を迎えたのだ。ギリシャ神話や北欧神話でもよくある話だが神と人間が恋をして結婚するとその人間も神もしくは亜神になることがある。詰まるところバック・ベアード自身も神になる可能性を秘めているのだ。また、フェアリー種の妖精の神である大樹への気遣いから始めたフェアリー種の庇護政策によってベアードの勢力圏の地力が向上し勢力の強化につながる。

 

この頃になると、欧州の大半の勢力がバック・ベアードの配下になっていた。

この時代に代々のワラキア公であった初代ドラキュラ公爵は人間社会の名声の維持やワラキア公の肩書を邪魔に思い始める。いつまでも欧州諸国やトルコと戦うだけで国土は大きくならないと言う面倒な役職に感じ始めたのであった。シュテファン・カンタクジノ(18世紀初頭のワラキア公)からのワラキア公は傀儡の下級吸血鬼に据えて本格的に妖怪としての活動に専念している。詰んでいるワラキア公は邪魔な役職になりつつあった。

 

なにせ、西洋妖怪の戦国時代は終焉を迎え始めている。18世紀にはバック・ベアードが神の血と言う高貴な血を取り入れたことで血の血族である吸血鬼と遜色ない立場に上り詰めた。さらに欧州の大国の一つプロイセン王国を実質乗っ取ったのだ。もはや吸血鬼の一族と言えど、これ以上張り合っては、今後の吸血鬼の地位にも影響すると考えた初代ドラキュラ公はバック・ベアードの軍門に下ることを決める。

彼が用意した手土産は軍門への遅参を容易に取り返せるだけの功績が必要であった。ドラキュラの一族(親類縁者やその配下)の忠誠と言うのも悪い条件では無いが決め手に掛ける。

そこで、彼は一計を案じる。

 

そこで登場するのがカミーラと言う女吸血鬼である。彼女はマーカラやミラーカと言った偽名を使い貴族社会や軍の将校たちのコミュニティに潜り込み彼らを奴隷吸血鬼に仕立て上げオーストリア帝国の一角を掌握した。さらに、これに対抗しようとした人間たちをカルンスタインの礼拝堂で皆殺しにした。この時点で彼女の悪事を知る存在はいないはずであったが、当時ベアードの傘下入りを決めた初代ドラキュラ公爵はカミーラの事を聞きつけて彼女を自身の配下に引き抜いた。彼はオーストリアをベアードへの手土産にするつもりでありカミーラの掌握するオーストリア勢力を欲したと言う背景がある。

カミーラ自身も西洋妖怪軍団内での地位を約束され、初代ドラキュラ公の計画に乗ることにしたのだ。

 

その結果、普墺戦争では大勝利。この戦争自体にも自身の従弟のギュスターヴ・スカーレットに指揮をとらせ戦闘での勝利に寄与。東西プロイセンを統一の決定打と言う功績を上げ、傀儡化したオーストリア=ハンガリー二重帝国を献上したのだ。

 

その次の普仏戦争の準備段階でもフランスを地盤にするラ・セーヌを取り込み普仏戦争の勝利に貢献している。

 

また、吸血鬼の有名どころを上げるとヴラド・ドラキュラ公爵(初代ドラキュラ公)、ギュスターヴ・スカーレット侯爵、カミーラ女伯爵、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの四人がすぐに上がるが、うち3人は西洋妖怪軍団の上位幹部である。人間社会を乗っ取るためには吸血鬼の協力は不可欠であった為である。

 

 

 

つぎに人狼であるが、人狼の有名どころは2人ヴォルフガング・ジェヴォーダンとルガール・アセナである。

ヴォルフガングは苗字からも理解できると思うがマルジュリド山地周辺に現れ、100人以上の人間を殺したジェヴォーダンの獣である。フランスに根を張る彼はフランスにおける妖怪化した狼を支配下に置き人間たちを襲撃させた。15世紀のパリ襲撃は彼の配下妖狼が行ったものである。

 

ルガールも人狼であるが西アジア及び中央アジアに跨る人狼族の首長である。ルガールが首長である人狼族はテュルク神話に登場する雌狼アセナを祖としている人狼族の貴族である。

テュルク神話ではテュルクの祖先は大きな戦いに敗れ、少年一人だけが生き残った。アセナという名の、空のように青いたてがみをしたメスの狼が傷ついた彼を助け傷をいやした。やがてオオカミと少年の間に10人の子供たちが生まれた。狼と人間の血をひく、アセナに率いられたこの子供たちがやがてアシナ氏族を築き、突厥帝国の中核となったという伝承があるのだが、10人の子供たちの中でも狼の血が濃かったもの達が野生化し妖怪化しルガールら人狼族として繁栄したのである。

 

彼らはトルコでは丁重に扱われており、ルガールが西洋妖怪軍団の傘下に入る際に彼らに引っ張られる形でトルコとドイツが急接近した。ただし、普仏戦争の翌年露土戦争でオスマントルコ帝国は敗北することになる。結ばされたサン・ステファノ条約は多額の賠償金を払うことになり、多くの地域をロシアに割譲し、ルーマニア、セルビア、モンテネグロが独立しブルガリアやボスニア・ヘルツェゴビナへの自治権付与などとオスマン・トルコの勢力を削ぐことになり、ベアードへの献上品としては不良債権であった。

しかし、1897年ギリシャとの戦争に勝利し莫大な賠償金とテッサリア国境付近の要地を受け取った為にベアードにゴミを献上する失態は免れたのであった。

 

 

 

魔女に関してであるが魔女は種族ではなく魔法使い個人であり、使う魔法も家々で違いがある。西洋妖怪軍団の傘下入りの経緯もそれぞれである。吸血鬼と縁を持っていた者(パチュリー・ノーレッジ)だったり、外法よりの魔法で魔法世界で肩身が狭い思いをしていた者だったり。あるいは一子相伝で外部との接点がほぼなく魔法使いのコミュニティに入りそびれた者など様々である。

 

ヴィクター・フランケンシュタインは西洋妖怪随一の科学力を有する極悪非道かつ猟奇的な性格のマッドサイエンティストであり、彼が頭角を現したのは17世紀初頭であり、自身を人造人間に改造したり合成生物や人造人間を多数作った。この事が異端と判断され教会と敵対し討伐隊を返り討ちにした。その後、ベアードからスカウトされた。彼に与えられた環境は人間の倫理観に縛られない最高の環境であったと言える。

 

幹部階級の妖怪としてはこれ以外にゴーゴン、ブイイ、ジャイアント、こうもり猫、ヨナルデパズトーリがいる。また、こうもり猫とヨナルデパズトーリは新大陸出身である。

 

ほとんどの新大陸妖怪は大樹の勢力か西洋妖怪軍団の勢力に所属している。

 

 

そして、あえて最後に回したが古明地家の立ち位置であるが古明地家は西洋妖怪軍団においては王族扱いである。ベアードを王とするのなら、妻の古明地祀は王妃である。そして、その娘の『さとり』と『こいし』は王女である。彼女たちが誕生した際に誕生祝として火車の妖怪と地獄鴉の妖怪が執役として送られており、『火焔猫燐』『霊烏路空』と名付けられて活躍することになる。特に長女さとりは後に西洋妖怪軍団の一軍を任せられる程の存在となる。

 

 

 

そして、現在の欧州は2つに割れていた魔法世界やキリスト教教会の影響を受けるイギリス帝国、フランス共和国と言った国々。そして、西洋妖怪軍団の影響下にあるドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー二重帝国の二つに割れつつあった。

欧州に関わる有力国の情報であるが、ロシア帝国は欧州側は魔法世界勢力の影響を受け、東方側は大樹の勢力の影響を受けつつあり国内で真っ二つになりつつあった。そのうえで民衆の支持が低下している。ロシア帝国は権威を示すために東側の親妖怪勢力の弾圧に動いていた。

アメリカ合衆国であるが、新興国である。一応は英仏寄りであるが、国内の勢力は魔法使い派閥と妖怪派閥他群雄割拠である。

そして、オスマン・トルコは人狼族との関係から独墺に接近していた。

さらに、大樹の実質的な統治下にある大日本合藩連合帝国は自身の血族がいる独墺に寄っているのは当然と言える。

 

そして、ベアード自身欧州における覇を唱え始めており、西洋妖怪軍団は勿論のことドイツ帝国やオーストリア=ハンガリー二重帝国を使い欧州を席巻しよう解いていた。そして、それをイギリスやフランス、その背後の魔法世界メガロ・メセンブリアも認めるはずもなく対立は日増しに激しくなっていくのであった。

 

 

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