日露戦争を前後して大樹の発言や行動の過激化が目立つ。実際、この後の大規模な戦争においても彼女は非常に攻撃的とも言える決断を多々している。
その背景としていくつかあげられる。近年まで、よく挙げられるのはサラエボ事件であるが詳細は次回に語るとして、その次に上げられる事例を紹介していく。
この世界には超自然的な精霊が存在し、大日本合藩連合帝国の領土内にも多く存在されると言う。例えばアメリカ先住民ポピ族の信奉する精霊カチナ、アボリジニの信奉する精霊バンイップ、他にもハワイやポリネシアの精霊がおり、連合帝国領域外にもアフリカや欧州にも精霊が存在していたのだが、その勢力は近世以前と比べても激減しており、大樹の援助がある連合帝国領域はそれでもマシな方だったが、それ以外ともなると壊滅的であった。そもそも、精霊の多くは顕現できるような強い存在ではない。故に大樹も明確な会話を交わせるわけではなく喜怒哀楽と言った感情を感じ取れるだけであった。
その彼女が感じ取った感情こそが怒と哀の感情であり、精霊を通してこの世界の悪い異変を感じ取ったことが原因とする資料も存在する。
そして、これこそが真実と言えるものであろう。
それについては真実の一端を知るバック・ベアードと西洋妖怪軍団の有力妖精であるサラマンドラ、ノーム、シルフ、ウンディーネらの会話を織り交ぜて解説する。
「大樹義母上のフエ宮殿での発言は私も驚いている。まさか、あそこまで過激な発言をされるとは思っていなかった。だが、これを見ればその言葉も理解できる。」
ベアードたちの目の視界に映る巨大な大樹。だが、大樹は枯れ果て折れ朽ちている。
「これが・・・生命の木、ユグドラシルなのか?」
天まで伸びる枝葉、大地の奥深くまで張るその根は冥界まで届くと言われる。この世界の生命の源である。世界樹、宗教によってはこの世界を支える重要な存在。
母なる大地の象徴。
その世界樹が枯れ朽ちていた。
「彼女は、これを知って行動を起こしたのか。人類が欧州の人間が世界樹を腐らせたと考えているのか?」
「おそらくは・・・。」「ですが、世界樹が果てたのはもっと昔です。」
「では、何が原因だ?」
「わかりません。」「ですが、世界樹の多くが朽ちた現状で日本の蟠桃だけで支え切れるかは・・・」「予防的な意味合いもあるのでは?」
「世界樹は何本残っているのだ?」
「大樹様の護る蟠桃がこの世界に残っている最後の1本です。」
「ここユグドラシルも枯れ、アズ・エーギグ・エーレ・ファもアアチュ・アナもモドゥンも朽ち、イルミンスールもオークもイロコもアクシャヤヴァタも折れました。この世界の世界樹は蟠桃ただ一つです。」
高位妖精の言葉にベアードはぽつりと呟く。
「白い悪魔たちの欲望は・・・1本の世界樹ではとても支えきれないと言う事か。」
「ベアード様のように妖怪化した御方は喫緊の問題ではないでしょうが、私達妖精には危機的状況なのです。私達はそう遠くない未来、大きな決断に迫られるでしょう。」