大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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97 近世 サラエボ・サクリファイス

 

1914年6月28日午前10時10分。サラエボで轟音が鳴り響いたとき、それが世界を二分する大戦争になるとは誰も思っていなかった。

 

 

オーストリア大公とその妻。そして、西洋妖怪の王であるバック・ベアードの妻古明地祀とその娘2人は軍事演習を視察するためにボスニアへ渡り、その後サラエボの国立博物館開館式典の立ち合いを計画した。

 

オーストリア=ハンガリー二重帝国内のスラブ人地域から第三の王国を形成し、二重帝国を三重帝国へと改編し、国家規模の拡大を計画していた。スラブ系民族による第三の王国は、セルビア民族統一主義に対する防波堤なるとも考えられた。

 

そのためにセルビア民族統一主義者らは脅威として認識していた。セルビア国内に敵が暗躍する素地はでき上っていた。

そして、ボスニアの軍事演習では西洋妖怪軍団のアルカナ家の魔女より発案されたブリガドーン計画の検証実験が行われる手筈であった。

 

 

1914年6月27日、視察団はボスニアの演習場で囚人たちを使ったブリガドーン実験によって囚人たちが妖怪奴隷に変貌する様を確認した。

 

衰弱する魔女を尻目に現場を監修していたドラキュラ公はベアードに報告する。

 

「計画は順調です。今回の実験でブリガドーン現象が正しく発生発動することが確認できました。ヴィクター、ヨナルデ・・・ベアード様に詳細を説明して差し上げなさい。」

 

ベアードは計画の詳細を2人から説明される。

ベアードは自身の計画が順調に進んでいることを理解し大いに満足した。

 

そして、ボスニアの演習場を後にした翌日。1914年6月28日、視察団は最初に駐留軍の兵舎を訪れ、簡単な視察を済ませた後、午前10時00分に兵舎を出発し、アペル・キー通りと呼ばれる川沿いの道を通ってサラエボ市庁舎に向かうことになっていた。

 

視察団の車列はミリャツカ川沿いの通り(アペル・キー)に入った。

午前10時10分、視察団の車が通り抜けようとした。

その時はやってきた。沿道の各所から群衆に紛れて何個もの爆弾が投げつけれた。

ぱ落ちた。爆弾は時限起爆装置によって護衛の後続車の下で爆発し、別の爆弾は窓を突き破り車内で爆発した。この車は古明地祀と娘のさとりとこいしが乗る車両であった。

今後の計画を詰めるために重臣らと別車両に乗っていたベアードはその光景をただ黙って見る事しか出来なかった。

車列は乱されて走行不能となり、オーストリア大公夫妻の乗る車の踏み板に乗って拳銃を乱射する襲撃者たち。

その合間を縫ってメガロ・メセンブリアの魔法使いが攻撃を仕掛けてくる。

ベアードは触手で襲撃者たちを串刺しにして返り討ちにした。

砂埃が舞、視界が悪い中で長女のさとりを見つけると彼女は泣き腫らした目をこちらに向けて、こいしを抱きしめてすとんと地べたに座っていた。

 

「お、お父様・・・、こ、こいしの目が・・・、か、母様が・・・。」

「うぅ・・・。痛いよ・・・。」

 

こいしの第三の目の瞼は閉ざされ血が流れていた。

そして、さらに視線を変えると妻の・・・祀の無残な姿が晒されていた。

 

「母様は・・・私達を庇って・・・。」

 

さとりの言葉は途中から聞こえなかった。

ベアード、慟哭した。そして、悲しみの感情はすぐに怒りに変わった。

 

「ぬぉおおおおおおおおおおおお!!!許さん!許さんぞ!!人間どもめ!!!」

 

西洋妖怪の帝王バックベアードの妻であり、東洋の女神大樹野椎水御神の実の娘、古明地祀の死は、歴史と言う祭壇に捧げられ、新たな時代を切り開く贄となったのだ。

 

 

 

 

 

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