大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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98 近世 第一次世界大戦 ベルギー陥落

 

サラエボで銃声と轟音が鳴り響いたとき、それが世界を二分する大戦争になるとは誰も思っていなかった。

 

 バック・ベアード妻である古明地祀を暗殺したセルビア人テロリストやメガロ・メセンブリアのセルビア系魔法使いたちとて、その引き金が全世界で一千万の人妖を鬼籍に送ることになると知っていれば、恐れ慄き暗殺を中止しただろう。

 

 なにしろ、襲撃の結果、セルビア王国は滅亡してしまうのだから。

 

 

ベアードの怒りようを推し量ったドラキュラ公はスカーレット候を通してオーストリア=ハンガリー帝国にセルビアへ宣戦布告をさせた。汎スラブ主義に基づきセルビア独立を支持するロシア帝国がセルビア防衛のために総動員を開始。

 

もちろん、ベアードの直接的な影響下にあるドイツ帝国も即座に総動員を開始した。

フランスもイギリスもドイツの総動員を見て、総動員を開始した。

もちろん、大日本合藩連合帝国もロシアの総動員に反応する形で総動員令を発動している。

 

 

 

連合帝国征夷大将軍織田信達が大樹にサラエボの件を伝え、各国の動員状況に応じて連合帝国も総動員体制に移行する旨を伝えた際に大樹は

 

「わかりました。仔細お任せします。」

 

と答えた。普段通りの落ち着いた表情で落ち着いた声で応じていた。

彼女の手にあった扇子がミシミシと音を立てていた。

 

 

 

 

ドイツ帝国は8月2日にベルギー王国に対し、軍の通行権を要求した。しかし、ベルギー国王アルベール1世は中立国としてこれを拒絶した。

 

1914年8月4日にベルギーに侵攻した。

これは、シュリーフェン・プランに基づいた行動であった。

8月5日、ドイツ軍の歩兵はリエージュ要塞前面に到達し、要塞東側の4個の堡塁を攻撃した。だが歩兵に随伴していた小口径砲による砲撃は何の効果もなく、ドイツ兵は堡塁からの機関銃の射撃にさらされ次々となぎ倒された。

 

不甲斐ない人間の軍隊に対して、ドイツ第二軍に随行していた西洋妖怪軍団吸血鬼化歩兵連隊を率いていたカミーラは第二軍のカール・フォン・ビューロウ元帥に第二軍の進軍停止を命じた。ビューロウ元帥はカミーラの命令に従って2日間進軍を停止した。

 

「ラ・セーヌ、あいつらはうまくやっているのでしょうね?」

「あいつらだって吸血鬼の端くれだぞ。血を吸いまくって吸血鬼を増やす簡単な仕事だし、質を求めなければ成り損ないのグールでもいいんだ。2日もあれば十分だと思うぞ。」

 

その2日でベルギー東部、ミューズ川とウース川の合流地点に位置する都市であるリエージュの様子は一変した。

 

要塞を取り囲むグールやそれ以下の存在であるゾンビたち。なんともグロテスクな化け物の群れがベルギー軍3万が引きこもるリエージュ要塞を取り囲んでいた。

 

「化け物どもめ!これは悪魔の所業だ!」

 

ベルギー軍将校は叫んだ。

 

リエージュ要塞を取り囲むゾンビやグールの軍勢の正体はリエージュ近くのヴィゼ、ダレム、バティスと言った諸都市や村々の住民であった。要するにカミーラとラ・セーヌは配下の吸血鬼たちに無差別に周囲を襲わせ、そこの住人達のことごとくを眷属化させたのであった。しかし、下級の吸血鬼たちのやる事、眷属化と言ってもゾンビやグールになってしまい成り損ないばかりであったがこの戦闘における捨て駒なのだから問題は全くない。

 

後方の第二軍の420ミリ榴弾砲や砲兵が305ミリ臼砲を装備した砲兵による砲撃が開始された。

 

「ビューロウ元帥が砲撃を始めたみたいね。じゃあ、こちらも突撃させなくちゃね。」

 

砲弾の雨が降り注ぐ中、ゾンビやグールたちが要塞攻めを始める。

その傍らではリエージュ市の市民たちが捕らえられゾンビ化させられ、逐次戦場に放りこまれていく。

 

砲撃で要塞線に空いた穴にゾンビたちが流れ込み、塹壕内で感染が広がりベルギー軍の兵士達もゾンビ兵に加わる。

 

 

8月11日、リエージュ市は壊滅し住民の大半がゾンビになった。リエージュ要塞も砲撃により脆くも崩れ去り、要塞内のベルギー兵は悉くが玉砕し、残りは全てゾンビとなった。

 

 

8月16日にリエージュが陥落した後、ドイツ軍右翼は18日に本命となる攻勢を開始し連合国軍を包囲するよう進撃した。ドイツ軍が早くもブリュッセルとナミュールに押し寄せると、ベルギー軍の大半はアントウェルペンの要塞に退却、そこから2か月間にわたるアントウェルペン包囲戦が始まった。20日、フランス軍はロレーヌとザールルイ地域への侵攻を開始したが、ゾンビ軍団に阻まれてしまった。ナミュールも20日には陥落している。

 

カミーラとラ・セーヌのゾンビ兵団は使い捨ての軍団であり現地において即席で簡単に用意できる兵団であり、元ベルギー国民をゾンビにしてそのままフランス軍に叩きつけるのであった。武器を持って戦う脳が無い、ゾンビたちは歯や爪で襲い掛かるので単体としては脅威ではないがベルギー国民や侵攻先のフランス市民をそのままゾンビに転用した結果、ゾンビ兵士達は100万はいたとされる。

 

ベルギーの軍民が国内の鉄道網を破壊したため、シュリーフェン・プランに基づいた左翼から右翼への輸送が困難となった為に、ゾンビたちをフランスへ先行させて侵攻させた。

ドイツ軍の足を引っ張る目的で行った行為であったが、その行為はカミーラら吸血鬼たちをベルギーに留めさせることとなり、ひいてはベルギー国民のゾンビ化虐殺に繋がる結果となってしまうのであった。

 

 

 

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