パイロット版的な・・・ちょっと違うか。楽しんでいただけたら幸いです
あなたはこの伝説を知っているだろうか。遥か昔、バミューダ海域で栄えていたという帝国のことを。
「本当にこの海域に宝が埋まってるんですか?」
神の怒りを買い、終わらぬ滝のような雨が1か月も続き、その帝国は海の底へ沈んだ。
「あくまで噂だからなぁ・・・でも探してみる価値はあるだろ?」
その帝国の名はアトランティス。今もなお伝説として残り、あらゆるメディアで題材にした作品が作られている。
そしてアトランティスが沈んでいると噂されるこのバミューダ海域。宝を求めて海賊やら冒険家がやってくるこの場所。しかしこのバミューダ海域に近づく者は消息を絶つという噂が絶えない。
「帰りましょうよ、なんだってここはバミューダ・トライアングル・・・あなただって知ってるでしょう?入り込めばバチが当たる・・・」
「ただの噂さ。マジにすんな。実際ここで行方不明になったって噂は全部デマカセだからな」
「なら宝の噂だってデマカセじゃあ・・・」
「…そ、それは…どうだろうな?」
一刻も早くこんな不気味な場所からは抜け出したい。
冒険心溢れる船長に連れられ、不本意ながらついてきたのだ。他についてきた船員は自分と違い、やたらやる気に満ち溢れている。ただの漁師である自分は数合わせのため・・・
わざわざ日本からアメリカまで遥々やってきて、船を借りこんな海の中心までやってきた。あるかもわからない宝のために。
そんな一人の男が船から体を乗り出し、海の底を見つめる。何かがこちらを見ている。そんな気がしたからだ。
「船長!今、海の中から視線が・・・」
「アトランティスの幽霊でもいるんじゃないか?」
「きっとそうですよ!早く帰りましょうよ!」
「ただの冗談だよ。気のせいだろ」
不安を胸に船倉へと戻ろうとすると、雷のような音と黒雲が船にかかったのに気が付いた。
やっぱりだ。この海域は呪われている・・・
不穏は形となって現れた。天気は嵐へと変わり、だんだんと波を立て、雨を降らせ、小さなこの船を揺らす。
「やっぱり帰ったほうがよかったんですよ!」
「言ってる場合か!早くエンジンを・・・」
雷の頻度が上がり、音が大きくなる。バチバチと雷から発せられる光を浴び、無事に帰れるかという不安はだんだん大きくなっていく。
波は大きく荒れ、ついに船が転覆してしまう。彼らは冷たい海へと投げ出され、荒波に飲まれていく。
しかし船を転覆させた波は嵐により起こるものとは違った。あれほど大きい波が海上で起こりえるのか?
薄れゆく意識の中で最後に見た景色。それは海の中に大きくそびえたつ青い遺跡。雷の光を反射しその姿が露わになっている。
「今こそこの時がやってきた・・・我らを沈めた神に復讐するのだ!まずは地上のすべてを征服する・・・!」
遺跡から現れたその怪物は体中にフジツボを纏っている。
◇◇◇◇◇◇
2年後・・・
「マジだって母さん!俺ようやく内定取れたんだよ!」
とあるマンションのワンルーム。赤本に単語集、勉強に関する本などが地面に雑に置かれている。どの本も端の部分がすり減っており、何度も読んだことがはっきりとわかる。
「嘘じゃないって!あの、“特防省”なんだって!まさか現役で公務員になれるなんて・・・俺涙出てきた!」
男は地面に散らばっていたティッシュの一枚を拾い上げ、涙目をこする。
「ようやく社会人なんだって!初任給は焼肉おごってあげるからさ!あー、でも俺青森まで行く金は…母さんのほうから来てよ!」
母に“特防省”の内定が取れたと自慢する青年。彼の名は
そんな彼がふと目をやったのは最近買った新型テレビ…とは言っても数年前の“新型”で格安で買った中古品。スピーカーの部分が壊れているのか音は常にノイズが走っている。そんなテレビの画面に映っていたのは黒い鎧に身を包む忍者のような戦士がサメのような意匠を持つ怪人と戦っている。テレビのノイズ混じった音声がその説明を始める。
「今回も“クナイ”が人々を襲うアトラスを撃退しました。今月でアトラスの襲撃は10回目。先月よりも襲撃の回数が増えています。専門家によると今後も増える可能性があるとのことで~……」
「俺も今度からここで働くのか…ワクワクすんなぁ」
彼の就職する特防省こそ、テレビに映っていた忍者の戦士…“クナイ”を擁する組織である。
2年前、突然バミューダ海域から滅びたはずの帝国、アトランティスが浮上。そこから現れた謎の怪人“アトラス”が世界各地に襲撃を開始。それは日本も例外ではなかった。最初の襲撃では東京が襲われ、被害は数万人にも及んだ。自衛隊により2か月かけ撃退されたが、アトラスの再襲撃を危惧した日本政府は“特殊防衛省”を立ち上げ、そこで忍者の祖ともいわれる“クナイ”を解禁し、クナイを中心にアトラスの襲撃から自衛しているのだ。
戦士、クナイに心を躍らせる忍。
まさかここから自分自身の戦いが始まるとは思いもよらず―――――
◇◇◇◇◇◇
今日は初出勤の日。今日から自分は国家公務員なのだ。絶対に遅刻しないようにしないと…
テレビが表示している今の時間は7時03分。8時20分までに職場へ着かなければ。
朝ごはんは軽めに。オーブンでチンしている暇はないので、食パンは焼かずにピーナッツバターを塗りたくり、小さく丸めて口に放り込む。思ったよりも大きく吐き出してしまったので、今度は二つにちぎり、半分ずつ喰らう。
そのあとは乱暴気味に歯磨きと洗顔を行い、スマホで今日のニュースに電車の運行状況を調べる。
着慣れないスーツに身を包み、鏡を見ながらネクタイを綺麗に締めた後はカバンを持ち玄関から外へ。泥棒が入ってくる可能性があるのでしっかりを鍵を閉めてから出勤を始める。
特防省は東京から少し離れた埼玉にその庁舎が構えられている。そのため電車は東京に向かって進むのに乗らずに済むので、少し空いている。つまり通勤までの間シートに座ることができるのだ。忍はシートに腰を掛け、何も変わらない外の景色を楽しみながら目的の駅まで過ごすことに。
「1分23秒遅刻です」
忍は遅刻してしまった。特防省の庁舎へ足を運んだのは初めてではないが、思ったよりも時間がギリギリだったのだ。
「いや~、アプリで見たら5分前に最寄りの駅に到着だったんですけど…意外とズレてて遅刻しちゃいました。っていうか1分半ぐらい別に良くないですか?」
「現代社会では5分・10分前集合がスタンダードなの。それに今回はあなたの教育も含めてスケジュールを立てたの。1分23秒の遅刻のせいで1分23秒もスケジュールをズラさないといけなくなった。わかる?」
「でも今こうやって説教してると時間もっとズレちゃうじゃないですか」
「…」
「まさか、最初から説教するつもりだった?」
「続きは歩きながら。一日は24時間しかないんだから」
「幸田先輩キッツイなぁ・・・でも――――」
彼女の名前は
「まずはアナタの配属される部署から。…話聞いてる?」
「えっ?も、もちろん聞いてますよ!続きどうぞどうぞ!」
「そんなんじゃ心配ね。あなたが配属されるのはクナイ戦闘庁の……」
「ええっ!?戦闘庁ですか!?でも書類だと…」
「戦闘庁の広報会よ。」
「ええっ~!?聞いてたのと違うんですけど・・・」
「戦うわけじゃないからいいでしょ。仕事は簡単。クナイの戦闘に赴いて写真を撮って、それを使って広報誌を作ること。」
「戦地に赴く・・・!?」
「たまに流れ弾飛んでくるけど未だ死人は出てないから心配しなくていいわよ」
「つまり死人が出る可能性があるんですか・・・?」
「…」
「なんでたまに無言になるんですか!?」
幸田先輩に連れられ、忍は特防省の奥へ奥へと進んでいく。
庁舎ということもあり、役人やら職員があちらこちらで歩き回っていて賑やかである。光の差し込む開放感のあるこの庁舎を撫でまわすように見回していると、落ちかけている書類なんて目にも留めることができない。そのせいで持っていた書類を落としてしまった。
ただでさえ1分23秒も遅刻しているのでこれ以上時間を詰めるといけない・・・書類を落とした忍に幸田先輩は厳しい目を向けながらも書類を拾い上げるのを手伝ってくれた。
しかし最後の紙を拾ってくれたのは別の人であった。
「大丈夫かい?」
「あ、ありがとうございます…」
「新人かい?ここは厳しいところだけど嫌なところじゃない。頑張りな」
男性は丸くなった忍の背中を押すと、立ち上がって人ごみの中へとポケットに手を突っ込みながら消えていった。
「優しい人もいるんですねぇ」
「私が優しくないとでも・・・?」
忍はいやいやいや!と手を振って否定する。
「彼は
「えっ!?あの人が!?」
「そう。優しくて、強くて、誰よりも世のため人のため……」
「先輩?」
幸田は憧れの空間から無理やり締め出された。
忍は手を握りながら何かを考えている彼女に対し変なものでも見るような目を向ける。
「と、とにかくあなたにはこの職場でどんなことをするか・・・まずは実戦経験ね」
「実戦経験?」
◇◇◇◇◇◇
忍が幸田に連れてこられたのはガラスの向こうに兵士のような人が二人いる息が詰まるような灰色の部屋。その部屋へつながる扉の前にはいかつい顔をした男性が銃を持ち立っている。そんな厳重な警備が必要な場所なのか?アメリカの映画でしか見たことがない・・・
「ここどこですか?」
「大和さんの訓練場よ。彼はここでアトラスとの戦闘に向けての訓練をしているの」
向こう側の部屋で急にライトが点灯した。急に点くものなので、つい目がしぼむ。こすりながら目をこらすと、さっきまで暗く何も見えなかった場所にさきほど助けてくれたあの人、大和剣が立っていた。彼は
《これより戦闘訓練を始める。大和隊長、“変身”の準備を》
スピーカーから流れてきたのは中年の男性の声。その声の中には貫禄があるように思われた。
向こう側の部屋の大和は手に持っていた不思議な装置を腰につけた。その装置からはベルトが出現し、彼の腰に巻きつく。
〈変身用意!〉
大和が腰に装着した装置から野太い男性の声が発せられた。一瞬驚いた忍だったが、当の本人はそんなこと気にせず、ポケットから小型のクナイを取り出し、腕をクロスさせそれを構えた。
「…変身ッ!」
クナイを装置に装填すると、どこからか彼の周りに桜の花が舞い、屏風が現れ彼を囲んだ。
〈黒クナイ!〉
その音声の後、雅楽のような待機音が鳴り始める。まるでこの部屋が一瞬で歌舞伎の舞台と化したようだ。クナイを指でピンと揺らすと、花と屏風が音を立てて変化し始める。
〈振動! 国士無双!一撃忍者!黒衣!〉
屏風の中から現れたのは、忍がテレビで見ていたあの黒い鎧を着た戦士…クナイだった。
「すっげー…てっきりパワードスーツを装着してたのかと」
「あのベルトは何百年も前に作られたの。今は失われたいわゆるロストテクノロジー…」
「えっ!?あれって昔に作られたものなんですか!?」
《変身完了。訓練開始!》
二人の兵士が片手に銃、そしてトンファーを手にクナイへと襲い掛かる。しかしクナイはそれを腕で受け止め、兵士を回転させて地面に倒す。
もう一人の兵士が銃を撃つが、それを意にも介さない。腰のあたりから銀色の刀を取り出し、襲ってきた弾丸を真っ二つに切り裂く。斬られた弾丸は速度を落としながら地面にカンッと落ちた。
残ったもう一人兵士はトンファーを振りながらクナイに襲い掛かるが、あっけなくそれを掴まれトンファーを投げられる。クナイが兵士の腹に膝蹴りを喰らわせた。
《訓練終了。全員持ち場につけ》
「いったった…剣さん、もう少し手加減してくださいよぉ…」
「すまんすまん。つい本気になって」
訓練の終了の合図が出されると、大和はベルトのクナイを取り外した。クナイのアーマーは霧のように消え、中から剣本人が現れた。まさかの光景に目を丸くする忍。横で見ていた幸田は得意げな表情だ。
「後でコーヒーでもおごってやるさ。そんな怖い顔すんなって」
つい拍手を送る忍。幸田先輩は酔いしれるように大和の戦いを見ていた。
「おぉー…ところで実戦って…何するんですか?」
「え?あぁ…ごめんごめん、本当はクナイが訓練をしてるって記事を作るための写真撮ってもらいたかったんだけど・・・見惚れちゃってた」
幸田が懐からデジタルカメラを取り出して忍に見せた。
「えぇ・・・これどうするんですか?」
「ま、まぁ実戦なんて別の時でもできるわけよ。まずは広報会の本部に行って・・・」
その時、突然部屋に取り付けられていたサイレンが赤い光を放ちながら不穏なサイレン音を鳴らした。
《東京都港区にアトラス出現の通報受信!繰り返す、東京都港区にアトラス出現!》
「うわぁっ!?なんですかこれ!?」
「放送の通りよ。アトラスが出現したの。目撃者が通報したらすぐに特防省全体にサイレンが鳴るようになってる」
鳴り響くサイレンが館内全体に響きまわっている。その音を聞くや否や大多数の職員が顔色を変えて走り出し、自分の部署へと戻り始める。
それは大和剣たちも例外ではない。クナイ本人である彼はまさに重要戦力。ベルトを腰に巻いたまま訓練場から出ていく、いくつかの扉をくぐりながら体に防弾チョッキなどを装備し、ガレージのようなところへ出ていく。そこで自らのバイクに乗り、機関銃を携えた戦闘部隊を乗せたトラックと共に出動する。
「俺たちはどうします?」
「決まってるでしょ、何事も実戦経験だって!」
そう言うと幸田が走り出す。どうやら今からクナイの戦闘を見に行くらしい。
「ええっ・・・流れ弾とか飛んでくるんですよね?」
「大丈夫です!カメラは壊さないようにね?」
幸田に連れられ、忍は不本意ながらクナイの戦闘現場へと向かうことに。
◇◇◇◇◇◇
東京都港区麻布十番。 蟹のように大きなハサミを持ち、海藻やフジツボを体中に纏う怪人がその硬い腕を振り回し、銅像を破壊した。破壊された銅像の一部がカラカラと音を立てて地面に落ちる。
表情すら変えず暴れまわる怪人になすすべのない人々。ただ叫びながら逃げ惑うしかなかった。
「ワタルちゃん!」
怪人の猛攻から逃げようとした4歳ほどの男の子が地面のレンガの段差につまづき倒れてしまう。すぐさま母親が近寄ろうとするが、その間に蟹の怪人が立ちふさがった。
「ママ・・・ママーッ!」
怪人はハサミをカチカチとうちつけながらその子供の元へ近づき、そのハサミを振りかざす・・・
間一髪駆け付けた部隊が怪人に鉛の弾丸を放ち、怪人は後ろに後退する。
「変身ッ!」
バイクから足を上げて降り、すぐさま怪人の元へ駆けていく。
桜をまき散らし、屏風を纏い大和は戦士“クナイ”へと姿を変えた。地面を強くけり飛び上がり、怪人に飛び蹴りを喰らわせる。怪人がよろけ地面に転がる。
「大丈夫かい?ほら、ママのところへ・・・」
大和が抱きかかえ、頭を撫でながら母親の元へと届ける。
「ママ・・・」
「ありがとうございます、ありがとうございます…!」
「ここは危ない。早く逃げて」
怪人は部隊の銃撃を喰らいノックバックこそするものの、ほとんどダメージは与えていないようで徐々に部隊へと近づき、その一人を掴み投げ捨てる。すぐさま大和は攻撃を食い止める。怪人の腹に握りこぶしを食いこませ、吹き飛ばす。
「蟹型のアトラスか・・・あのハサミには気を付けたほうがいいな」
「大和隊長、敵の攻撃は食い止めます。隙をかいくぐって
「了解。頼んだよ」
蟹のアトラスが大和へと走り襲い掛かって来るが、手の甲ですぐに払いのけ、腰に携えた銀色に輝く刀を構え、アトラスに一撃、一撃と鋭い刃を喰らわせ続ける。
部隊の銃撃もあり、敵はまったく攻撃をこちらへと繰り出せない。
「着いた着いた!海塚くん、ベストショットを!」
ちょうど幸田と忍が戦闘現場へとやってきた。忍と幸田は銃の弾丸が向かってこないような配置につき、カメラを取り出して鋭いハサミを持つアトラスと戦うクナイへと向ける。
カメラ越しでもその活躍ぶりはしっかりと分かる。むしろ直で見るよりも臨場感が感じられるようだ。アトラスの怪人を銀の刀で斬りつけていく。銃撃の猛攻もあり、だんだんと怪人は衰弱していっているようだ。
「ほらほら、シャッターチャンス!」
幸田の合図で写真を撮り続ける。カシャッ。 そして最高のベストショットがついに撮れた。
大和はベルトのクナイを強く押し込んだ。すると彼の足が突然燃え始め、ベルトが不思議かつ独特の音声を鳴らす。
〈一撃! 忍・撃・蹴!〉
大和が地面を蹴り上げた。飛び上がり、怪人の胸へと炎の蹴撃を繰り出した。怪人は勢いで10メートルだろうか。ビルの壁に激突。苦しむ声をあげながら体内部から爆発した。
写真を撮っているここからでも爆発の衝撃を感じることができた。蹴りの瞬間こそがベストショットだ。
「ふぅ、今日はこれで終わりか・・・」
アトラスを倒し、一仕事終えた一同。クナイこと大和はピースサインを部隊や忍たちへと向けた。忍も返すようにピースサインを向けた。大和は仮面の内側で笑顔を浮かべている。
「さ、今日はこれで職務終了!帰るぞ・・・」
そう言おうとした瞬間、彼の背中に冷たくも深い一撃が入った。衝撃に手を挙げて倒れこむ。後ろにはハンマーヘッドシャークのような姿をした怪人がハンマーのような青い右手を打ちこませていた。
次回は明日に投稿出来たらいいなぁ・・・って感じです。
修正点などありましたら言ってくださって結構です