国際連邦日本エリア召喚   作:TOMOKOTA

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16 アルタラスの戦い、列強の落日、人間存在

 16機、4機4編隊のCP-237戦闘機が、異界の超高空を飛行していた。

惑星の丸みがわかり、上空が黒く見えるような空。

その機体たちの前方に一機、空に紛れるカラーリングの大きな機体が飛んでいた。

 響き渡るのは磁励音とファンが風を切る音。地球では民間機などで一般的な、電気モーターを使ったダクテッドファンプロペラ機だ。

空に紛れる色で分かりづらいものの、全長に対して異様に長いその翼の上部には、高効率のソーラーパネルが貼られている。

完全に電力を賄って半永久的に飛ぶことはできないものの、地上で補給した電力の消費を大幅に節約し、極めて長い航続距離を得る事ができる。

電気で飛ぶはずのその機体はしかし、その胴体に大量の燃料を抱えていた。

 その機体は空中給油機だった。当然無人の自律型。CP-237が同時に4機ずつ、給油機の背後につく。給油機の主翼から伸びた給油ホースが、極めて精密かつ正確、繊細な制御でもってCP-237の、開いたスリット内部の給油口へと差し込まれる。

給油を終えたCP-237たちは離れ、次の編隊が給油に入る。これを繰り返し、給油を完了したCP-237たちは加速、ここまでやってきた時と同じように、マッハ3での巡行へと入る。

CP-237はその速度や規模に対しては極めて長い航続距離を持つが、戦術戦闘機としての範疇を飛び出しているわけではない。この空中給油機の存在によって、どこへでも飛んでゆける長大な作戦行動範囲を得ることができるのだ。

 地球の戦闘機が向かう先、それは、日本国が現在戦争状態にある、列強パーパルディア皇国の首都、皇都エストシラントだった。

 

 

 

 パーパルディア皇国、アルタラス王国派遣部隊所属の竜騎士アビスは、アルタラス王国北東での哨戒任務に就いていた。

 晴れわたった空、澄みきった空、少し肌寒い風を受けながら、彼は愛竜のワイバーンロードを飛ばす。

 島国だったアルタラスはすでに皇国の支配下となり、目立った反乱も無い。

 北に500kmほどで祖国があり、南は海を挟んで文明レベルの低い蛮地、東南東にはロデニウス大陸となっており、旧ロウリア王国のような覇権主義の国は付近に無い。

 アルタラス王国の北東には海上に30門級及び50門級戦列艦隊に約5隻の艦がいる。

 パーパルディア皇国は、他国との戦闘状態である事が多く、基本的には平常時も有事も、軍の動きに大差は無い。

 現在は、フェン王国、そして日本国と戦争を行っているようだが、遠くでの出来事であり、いつものように今日の任務も終わる。

 アビスはそう思っていた。

 その時、何か甲高い、それでいて地響きのような音を彼は聞いた。

 

「なんだ?」

 

 そうして振り向いた次の瞬間、彼の意識はこの世から永遠に消失した。彼の乗る竜のものも同じく。彼らは揃って海へと落ちていく。

 彼を襲ったのは、国連軍、CP-237型戦闘機、その35mmレールガンポッドから放たれた弾丸だった。この口径の対兵器弾として使われることは少ない、ホローポイント弾。隠密性と対軟目標における威力を考えた選択。弾速でもって、ワイバーン程度の鱗や木造船になら充分な威力を発揮する。

 高出力と高い運動性にものを言わせた攻撃と離脱により、すでに高空へと消えていた。その塗装は、空に紛れこむような、そして姿勢のわかりにくい、青系統と白系統で灰色がかったロービジ迷彩塗装。今まで標準であった真っ黒な塗装は、対レーザー塗料の都合であった。これによってレーザー兵器はその威力を戦闘機の装甲でも危なげなく防げる程度に落とすことができる。その都合により迷彩塗装にできず、姿勢や遠近感を狂わせたり、夜闇に紛れる目的で真っ黒の塗装がされていたのだが、レーザー兵器を運用する敵が確認されていないことで、夜間以外には目立つ黒色ではなく迷彩塗装が施されたのだった。

 

 

 パーパルディア皇国アルタラス王国派遣部隊の戦列艦5隻は付近近海を哨戒活動中だった。

 艦長ダーズは通信員に尋ねる。

 先ほど哨戒中の竜騎士が、魔力探知レーダーから反応を消していた消息を絶ったのだ。

 竜騎士が消息を絶った場所は現在の艦の位置から近く、緊張が走る。

何か、微かに甲高い音が聞こえたと思ったとき、見張り員から報告が上がる。

 

「あれは……未確認飛行物体確認!近いです!それに速い!」

 

「総員、戦闘配置に就け!」

 

 パーパルディア皇国の軍船が戦闘態勢に移行する。

未確認物体は空に紛れるような色をしていてわかりにくい。

 

「呼びかけ、応答ありません! そのまま突っ込んできます!」

 

「やむを得ん、敵と断定する! 対空魔導砲用意!」

 

「了解、対空魔導砲用意!」

 

 砲に弾を装填、発砲しようとするが、その時には未確認物体――国連軍、CP-237戦闘機――はすでに発砲、離脱している。

 

「そんな、速すぎるぞ!!」

 

 話している間に弾が着弾、右舷の表面が砕ける。

損害は軽微ではあるが、対魔弾徹甲式装甲を砕いた。

飛行戦力のものとしては、凄まじい威力だと言える……

 

「あの速度、この攻撃、色は違うが、まさか、例の黒い魔獣か!?」

 

 飛び去り、旋回するCP-237に対して対空魔導砲が発砲される。

装填されているのは、装填を迅速にするため、綺麗に燃え尽きるように薄く燃えやすくされた紙、あるいは布に包まれた大量の小型の砲弾。

それを花瓶の一種、あるいはニンニクに近い形の、底部が膨らみ、砲身が長めの魔導砲に装填し、発射する。散弾。

発射された後には、威力にはほとんど寄与しない程度の弱いものではあるが、砲弾が発火して目立つ。

 攻撃のために直線飛行するところを狙わない限り命中することはあまりないが、威嚇としては充分役に立ち、命中すれば飛竜を撃墜できる、対空用の魔導砲だった。最上砲列甲板に並べられたそれらが射撃される。第一射の小数は威嚇、命中しない。

 次に、再攻撃のために向かってくる敵騎に対し、十分引き付けて、

 

「撃て!」

 

 斉射。1層だが濃密な弾幕が展開される。これなら命中するか、と思った瞬間。

 

「何!?」

 

 CP-237戦闘機は機体の向きを変えないまま急上昇してその散布界から逃れる。跳ねるような、あまりにも急激な機動。あれでは、もしも竜騎士が乗っていたのなら潰れてしまうのではないかと思えるほどだ。

そのままピッチダウンして姿勢を変えつつ、動きは保っている。機首を海面に向けたまま艦隊に向かって進み……

 

「まずい! 回避だ!回避! 総員衝撃に備えろ! 何か、攻撃が、来るぞ!」

 

 真下に戦列艦を捉えて急降下。

果たしてその機が放った攻撃は、低コスト型無誘導爆弾だった。ただし、その高速力への、急速な加速の勢いを乗せて。

連続して投下、加速の勢いによってほとんど射出といえるような様相となっているそれを行いながら機体の姿勢をひねって命中地点を散らす。

 戦列艦に命中、木張りの甲板を運動エネルギーであっさりと貫き、艦内部で爆発、弾薬に誘爆、他の艦も後からやってきた機体によって同様に攻撃される。

 パーパルディア皇国戦列艦、海上の5隻は木っ端微塵に粉砕され、その姿を消した。

 

 

 

 アルタラス王国を攻めていた皇軍は、王国を占領後、東を攻めるために転進した。

 武装解除され、時々起こる小規模な反乱を鎮圧、統治するためだけの小規模の軍が残されている。

 

 首都ル・ブリアスの軍港には戦列艦20隻、そして少し離れた所に陸軍の基地、人員2千名とワイバーンロード20騎、そして首都から北へ約40kmの位置に人員2千名の陸軍基地がある。

 陸軍大将リージャックは首都ル・ブリアスを基地から眺めていた。

 傍らに立つ幹部と話をする。

 

「東の国、フェン王国に派遣していた我が軍は、全滅に近い被害を出したらしいな。

 いったい何があったのだろうか?」

 

「解りませぬ。皇軍が敗れたなど、今でも信じられません。

 敵は何千隻もの『数』で攻撃してきたのではないですか?」

 

「いや、たとえ文明圏の国が何千隻で、今回全滅した派遣軍にかかって行ったとしても、多少の被害と作戦の遅延は予想されるが、全滅はしない。

 今回の戦い、何かがおかしい。」

 

「まさか……」

 

 大将リージャックの顔が悲壮感に包まれる。

 

「まさか、ムーか?」

 

「そ……そんな!」

 

 最悪の状況が脳裏に浮かび、大将幹部は戦慄する。

 

「いや、まさかな。いずれにせよ、アルタラスは比較的本国からも近く、フェン王国からは遠い。敵がここに来る可能性は低かろう。」

 

 2人は基地に設置された建物の上から港を見る。

 見る者に威圧感を与える皇国の100門級戦列艦が誇らしげに停泊している。

 実に計20隻、通常国と比べ、比類なき強さを誇る艦。

 

「美しいな。」

 

 陸軍大将リージャックは、艦に対し、素直な感想を述べる。

 

「ん!?」

 

 美しく、穏やかな風景、その風景は突如一変する。

 眼前の100門級戦列艦スパールの艦底が少し動いたように見えた。

 次の瞬間、100門級戦列艦スパールは大きな火柱を上げ、艦を構成する部材と船員を巻き込みながら轟音と共に真っ二つに折れて港の底に沈む。

 

「何だ?事故か!?」

 

 スパールの隣に停泊していた80門級戦列艦も、スパールと同じ運命をたどり、彼は理解する。

 

「て……敵襲!!敵襲!!!!」

 

 港に停泊中の戦列艦は1隻、また1隻と失われていく。

 首都近郊の陸軍に敵襲の情報がいきわたり、戦いの準備を始めた頃にはすでに、港の船は全滅していた。

 

「な……なんという事だ!!」

 

 陸軍は末端まで含め、全員が唖然とする。

 何が起こっているのかが解らない。

 しかし、悲劇は彼らだけを見逃してはくれなかった。

 基地の中心部が猛烈な火炎に包まれ、少し遅れて衝撃波がリージャックを襲う。

 彼は無様に転げまわる。

 空を見上げる。

 爆音と共に、考えられないくらいの速度で彼の上空を飛行物体が飛び去っていく。

 何かを落としたり、高速連射される砲のようなものを放っている。

噂の『黒い魔獣』に似ているような気がするが、攻撃手段や動き、音などからして、あれは、間違いない、飛行機械だろう。

 

 その機体の表面、主張しないよう、添え物のように、機体の色に近い淡く薄いものではあるが、マークのようなものが塗装してあった。

青い四角に白の塗りつぶされていない円……いや、点線? が描かれたマークと、桃色……いや、赤か。赤い円に白い縁取りの……

 

「あれは、日本の国旗か!

通信兵!!日本の飛行機械に襲撃を受けていると本国に伝えろ!!」

 

「はっ!!!」

 

 通信兵は魔信器に向かい、走る。

 彼がパーパルディア本国に魔信を送信した次の瞬間、飛行機械の攻撃によって、彼らのいた部屋が大きく崩れる。

 

「ぐっ……、あれは、凄まじい力だ……

 だが、魔獣でないのなら話が通じるはずだ、降伏の合図をしろ!」

 

「降伏!? よろしいのですか、相手は、そして陛下は……」

 

「あの速度を見ただろう、勝てると思うか? ワイバーンオーバーロードは居ないんだぞ。」

 

「……了解しました。」

 

通信兵が旗を回して降伏の合図をする。

 

 

――こちらb-2、手旗信号を確認。データベースには存在しない。

――ATC(AirTacticalComputer)-4よりb-2、こちらのデータベースにも  存在しない。

 ATC-4はその様子から、降伏の合図である可能性を考慮する。

 ―却下。パーパルディア側には、降伏の際には白旗を上げるよう伝達 されていることを確認。

――ATC-4よりb-2、攻撃の続行を許可。意図不明。要警戒。

――b-2、了解。

 

 

 再攻撃のために再び機首を向けたCP-237戦闘機の一機、b-2が光学カメラでその様子を捉えてから、ATC-4とのやり取りやそれらの判断が行われて、攻撃を続行する判断を下すまでには、1秒よりもはるかに短い時間しかかからなかった。

b-2は35mmレールガンポッドでの攻撃を行う。精密照準、狙われたのは…… 敵兵。

 

「撃ってきます!」

 

「降伏の合図をしているのがわからないのか!? くそう、蛮族め!」

 

その射撃は、寸分違わず命中……とは行かなかった。低コスト型のガンポッドであるから、射撃精度は完璧ではない。

そのホローポイント弾によって付近の床が砕け、その破片が彼らに突き刺さった。絶命はしなかったが、戦闘は不能。b-2は撃破したと判断し、飛び去った。

 

 

 

 地球軍がアルタラス王国のパーパルディア皇国軍に攻撃を仕掛けていたのは、日本に亡命してきた王女ルミエスと日本国政府が結んだ、アルタラス王国解放の支援契約によるものだった。

 対パーパルディア皇国戦争の勝利においては必ずしも必要ではないが、この国を契機に属領が次々と独立すれば、戦争には有利に働くし、何より戦後に皇国の国力を削いで脅威を減らすことができるとあって、実行に移された。

 航空攻撃によって大方の脅威を排除した次にやってきたのは、磁励音を響かせながら海面スレスレに浮いており、船底部に大量のタイヤを装備した、大きめで、左右に階段のついているガレー船。

日本からの要請――あくまでも要請だったのだが、ロウリア側は命令に等しく受け取っていた――を受けてやってきた、ロウリア王国の再編された軍、その上陸部隊であった。

 

 ホバーした状態で帆走し、なかなかの速度でやってきた船は、浜に着陸する。その中から、ロウリア王国の兵士たちがぞろぞろと現れた。

先進的な材料によって作られた独特な質感と迷彩塗装ではあったが、鎧のスタイル自体は従来のものと大きく代わり映えはせず、装備しているのも剣とクロスボウだった。

 そんなロウリア王国の兵士たちが皇軍の残党を殲滅し施設を占領するべくなだれ込む。装備している眼鏡型端末には、絶えず戦術コンピュータからの指示が表示される。

 軍事施設や市街地での占領を目的とした陸上戦を行うにあたって、軍部コンピュータがあてにしたのは、先の戦争で勝利し、要望を通せる相手であり、人間を使った陸戦の経験と軍が存在し、人材が豊富であるロウリア王国だった。

 ロウリア軍の上陸部隊は瞬く間に施設を制圧していく。武器は皇軍に劣ってはいたが先進技術を取り入れたクロスボウは単なるクロスボウを上回る性能を持っていて必要十分な能力があったし、防具の性能、そして何より指揮連携において皇軍を圧倒していた。

 地球の戦術コンピュータは市街地や施設での戦闘や人間を使った戦闘のノウハウはほとんど持っていなかったが、その情報通信技術と演算速度だけでも皇軍を圧倒するのに十分だった。

 その上アルタラス王国の地下組織までもが戦闘に加わり、ただでさえ航空攻撃でボロボロになっていた皇軍は、敵兵をほとんど倒すこともできずに制圧された。

 

 

 

 その後アルタラスで敗北した皇軍の様子は試験中のパーパルディア皇国最新型竜母パルキマイラより飛び立った竜騎士隊によってパーパルディア皇国本国にも伝えられ、皇軍内を衝撃を持って駆け巡った。

 

 

 

 クワ・トイネ王国とロウリア王国の中間あたりに新しく出来た港町の埠頭にて、ある男が海を眺めていた。そこにもう一人、男が現れる。

 

「……あなたは、ロウリア王国海軍の将軍では?

こんなところで何をしているのです?」

 

「……今日は非番なんだ。しばらく休みを取った。

そういうおまえは、クワ・トイネの軍人か。

俺はロウリア王国軍、海将のシャークン。おまえは?」

 

「シャークン、あなたが……

失礼、私は、クワ・トイネ軍のブルーアイ。

あのロデニウス沖大海戦で観戦武官として戦いを見ていました。」

 

「ロデニウス沖大海戦で。そうか、こいつは、奇遇だな……

……俺を敗戦の将と笑うか?」

 

「いえ、あの戦力差ではどうしようもありませんでした。

あなたはよく艦隊を統率していたし、撤退の判断も英断だった、そう思う。」

 

「そうか…… 皮肉だとは思わんよ。おまえもあれを見ていたなら、そうは言わんだろう。俺も、もちろん責任を感じていないわけではないが、冷静な部分では仕方がなかったと自分でも思っている。」

 

少しの沈黙が流れる。

 

「……今頃、遠くアルタラス王国では、我がロウリアの兵が戦っている。」

 

「ええ。私も知っています。」

 

「おまえは、どう思う。」

 

「何を?」

 

「ロウリアの兵が戦わされていることについて、だ。

負けた国の扱いとしては、当然どころか装備まで与えられてむしろとんでもない上等さではある。あるが……

日本、いや、地球の、コンピュータたち。俺も奴らのことについては知った。連中は人間のために奉仕するのがその至上目的であるらしいな。日本を見ていても、そう思う。

 では……ロウリアの兵が投入されるのは、何故だ?

どうしても必要というわけではないだろう。人間に犠牲が出るような選択を、どうして採る?」

 

「それは……」

 

「花を持たせる、というのも考えられる。ロウリア軍の士気は高いし、名誉なことだとされている。だが、俺には、あれはそういう扱いには思えん。

 我が王、ハーク・ロウリア34世は王の座に残されたが、、膨大な執務に忙殺されていた。

今は落ち着いたようだが、しかし、ああいう執務などは、わざわざ人にやらせるまでもないことだろうに。

 俺には……コンピュータたちのロウリアへの扱いは、ロウリアの力を頼っているというよりは、旧式兵器をリサイクルするようなやり方に思えてならないんだ。

あのコンピュータたちがそんなことをするのか? 効率を曲げてまで尽くしている人間に?」

 

「……私は、あの戦いの時、コンピュータと少し話をした。

常識外れの戦いに気が動転して、不気味だと思った。

それで、お前は何者だと問いかけた。

わたしはわたしだ、戦術コンピュータで、要請に基づき戦争を遂行するのが任務だ、と返ってきた。当たり前のことだな。」

 

「……それで?」

 

「きっと、それが答えなんでしょう。彼らは彼らの使命を遂行しているだけだ。

 ……日本が元居た世界、地球では、また価値観が……なんというか、多様なのは確かだが、皆が多様性を認め、下手に干渉しない、という価値観は皆が一様に持つようになっていて、ある意味ではほぼ全人類で同じ価値観になることで国の争いなどがなくなって世界が一つになり、国際連合という都合の良い枠組みを利用してそこに権限を付与し、ほぼ全国家・勢力が国際連合という枠組みに加盟して一つになった。

 その様子から生まれた通称が国際連邦とか国名にエリアをつける呼び方だといいます。

 

 国際連合、あるいは地球。これが肝だと、私は思う。

コンピュータたちは、何らかの手段で対象を分別している。

ただの物体や、動物や、財産や、あるいは人間。分別できなければなにもできない。

 彼らの奉仕する対象としての人間の定義も、もちろん存在するはずだ。

それがきっと、国連コンピュータなら国連加盟国の国民、あるいはもっと広く取って地球人。

消え去ったわけではない既存の国家のそれの定義では、その国の法に基づくものでしょう。

 日本国での日本国民という他国民との区別は、実生活ではほぼ消え去ったに等しい状態にしても存在している。だから、日本国政府コンピュータでは日本国民がその奉仕対象でしょう。

 日本の主導権を握っているのは日本政府の人間だが、実際にはほとんど国連日本エリア地域戦略コンピュータと日本政府国家戦略コンピュータがやっている。

 

 地球人、国連加盟国、日本人、ロウリア王国は、このどれにも含まれていない。それに我々クワ・トイネ公国やクイラ王国のように、日本の存続にとって必要不可欠な存在でもない。

コンピュータたちにとって庇護・奉仕する対象ではないのでしょう。」

 

「……なるほどな。」

 

「現状ではいけないと思うのですか?」

 

「……いや。そもそも敗戦国としては破格の扱いだし、決して無下に扱われているわけではない。同盟国として、協力する相手としての扱いがされている。

 だが……危機感はあるな。地球人のために必要とあらば、積極的に切り捨てられかねない。

しかしそれも、普通の国家でも危機的状況ならば同じことだ。」

 

「では、どうしてこんな話を? あなたの様子は真剣だ、雑談の種というわけではないでしょう。」

 

「俺は、要するに、現状が気に食わないんだ。

冷静な考えのもとでいけないと思っているというのとは少し違う。

危機感は持っているが、多分それだけならここまでではないだろう。

 俺は、日本のコンピュータたちが俺達のことを、いざとなったら切り捨てても全く痛くない、旧式兵器のリサイクルのように見ているのが気に入らない。感情的にだ。

 都合よく利用されるのは構わん。いざという時に切り捨てる覚悟があるのも一向に構わん。

ただ、俺達のことを節約のためのリサイクルではなく、明確に役に立つ、価値のある対象として、認めさせたい。

 俺達の価値を認めさせたいんだよ、注目に値する存在として。」

 

「……なるほど。それは良い。クワ・トイネだって、結局は資源とか、あるいは地球人との友好関係で大事にされてるだけかもしれない。

そういうものや地球人のご機嫌のものではなく、我々自身の価値として、ということでしょう。

 私は正直、今でもコンピュータが不気味でならない。

あの不気味な連中に我々の価値を認めさせ、信頼させるというのは良い。

ですが、とても難しいでしょう。」

 

「そうだろうな。人間のような信頼関係というのはそもそも不可能だろうし、いくらか妥協することになるかもしれない。きっとロウリアや、クワ・トイネやらの他の連中はこんなことは考えないだろう、必須でもないからな。

 だが、それでも、俺だけでもやる、成功しないとしても、何もしないでは居られん。」

 

そして海将シャークンは一息ついて、言った。

 

「どうだ、ブルーアイさん、俺と組まないか?」




これなら1話に詰め込まなくても2話か3話ぐらい使っても良かったのでは?(今更)
でもいいや……

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