先生とぐんちゃん   作:黒姫凛

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今更だけどこんなのちーちゃんじゃねぇと思う人は読まないでくれ。
あくまでこれは自己満だ。勇者となったちーちゃんに、他の思いを持たせて幸せを掴んで欲しいという妄想だ。
何度も言うが作者の自己満だから他の意見なんて知るかゴラァ!!(尚ガバガバ設定の模様

いじめする奴には慈悲はねぇ!!


犬吠埼先生

あれから2日立った。

いつものように虐められる日々を送った千景は、今日も登校時間ギリギリに学校に向かう。

昨日に続き、ロクなものを殆ど食べてない千景は、少し身体のだるさを感じながらゆっくり歩く。

 

学校に着いてもそれは変わらない。それを面白がるようにトボトボと歩く千景を、周りの子供達はヒソヒソと陰でニヤついた笑みを浮かべながら話していた。

教室に入り、()()()()()()()()()()自分の席に着く。机には色んな文字が書いてあり、どれも千景の心を苦しめるものであった。

 

「ーーーあら、郡さん。相変わらず汚い格好をしてるのね」

 

女子生徒が千景の前に、ニヤついた笑みを浮かべながらやってきた。

女子生徒、新田美優は千景を虐める1人であり、クラスの女子グループの中心人物である。そんな彼女を千景は表情には見せないが、心底毛嫌いしている。

 

「……好きでこんな格好してるわけじゃーー」

 

 

ーーーバチンッ

 

 

乾いた音が響く。同時に千景は頰を叩かれたと理解する。

 

「何喋ってるのよ。口を開かないで、汚れるわ」

 

美優の辛辣な言葉。初めてでは無い罵倒は千景の心と体に傷を負わせる。口元を三日月のように引き伸ばしたゲスの笑み。思わず涙が込み上げてくるがなんとかグッと堪える。

無論何か言うとまた叩かれるので千景は何も言い返さない。

 

「ほら、何か言ってみなさいよ。叩かないでって、やめてって、泣きじゃくりなさいよ」

 

蔑むような目。しかし決して目は合わせない千景。目を合わせると余計に突っかかってくるからだ。

ああ、自分が嫌になると、心底思う千景。

周りの光景が視界に入ってきた。どの子もせせら笑い、誰も彼女を非難する事なく千景だけを腫れ物のように見つめていた。

 

これだ。これが嫌だ。

自分だけ仲間外れのような感覚。これが怖い。どうしようもなく怖いと思ってしまう。

人間は群れる生き物だ。1人群れから外れれば生きていくことは困難になる。が、千景にそんなことが分かる事もなく、ただ1人だけ取り残されている事に恐怖している。

 

「つまらないわね。前まで泣きじゃくって面白かったのに。ならもう一度ーーー」

 

 

 

「ーーー皆、おはよう。さぁ出席取るから席に着いて」

 

振りかぶった手を動かす前に、大きな声で入って来たのは担任の犬吠埼先生だ。美優は舌打ちをしながらも自分の席に戻っていく。他の子達も既にこちらに目線は向けていない。

少しだけ、千景は先生に感謝した。

 

「出席取るぞ、安藤ーーー」

 

 

 

それから出席確認が終わり、先生がプリントを配布した。千景は窓側2列目の後ろから2列目。後ろにもう一人女子生徒がいるが、彼女はいじめをするような性格ではないと分かっているため、千景は心底安心している。

プリントを配られる中、自分にプリントが回ってきた。が、1枚足りない。多分前の席の子が1枚多く持っているのだと思い、そのままプリントを後ろに回した。

そう、いつもと変わらない。昨日もそうだ。先生もどうせ気付くことは無い。気付いたとしても見て見ぬふりが普通だ。だから千景は全く気にしない。

 

「よっしゃ、後ろまで回った……ん?おいそこ、確か……郡さんだっけか?プリント無いじゃないか」

 

「……えっ」

 

「プリント無いなら言ってくれよ。おっかしいな……職員室で人数分に分けたと思ったんだが。すまんな郡さん、今度から気を付けるよ」

 

自然に、先生はプリントを千景の元まで持ってきた。差し出されたプリントを両手で受け取る。

何故か、この一連の先生の動きに嬉しくなった自分がいた。

 

「……あの、き、昨日と一昨日のプリントも無くて……」

 

「うぇっ、マジか。それはそうと早く言ってくれよ。取り敢えずそれはこの授業終わってから一緒に職員室行くぞ」

 

ついプリントが全て無いことを言ってしまった。

しかし先生は怒ることなく、困ったような顔だけして戻っていく。

再び千景は嬉しくなった。今度は理由がちゃんと分かった。誰かとお喋り出来た事に嬉しさを感じたのだ。

 

「じゃあ今配ったプリントを見てくれ。今配ったのは今年一年間の行事をまとめたものだ。去年は知らないが、今年は清掃活動が年3回あるぞー」

 

「せんせー、去年もしたよー」

 

「あれ?そうなの?じゃあ皆が楽しみなのは研修旅行か。今年はどこ行くかはまだ決まって無いようだし、本州にでも行くかもしれないな」

 

旅行、そう聞くと千景は顔を顰める。

去年は工場見学で香川県の饂飩製造会社を見学したが、千景はその見学には行かなかった。

理由は言わずもがな、言ったところで何をされるか分からないからだ。旅行になってもそれは変わらない。班行動を1人でさせられるのがオチだ。悔しい気持ちもあるが、自分を守る為にその日は休もうと決意する千景。

そんな千景を他所に、クラスでは話がどんどん進んでいく。

 

「いやー先生的には運動会が一番楽しみだな。やっぱ子供は元気に動き回らなきゃな。先生がこのクラスの担任になったからには、学年優勝目指すぞ!!」

 

プリントに書かれた枠内を見てみる。運動会は6月になっている。早速鬱な行事が来たものだと、千景は静かに息を吐く。

もういっその事学校をずっと休んでいたいと思うが、千景は何故かそれをしない。何度か傷付けられた体の手当で連続で休んだ事もあったが、それをするとどんな事を言われるがわかったものでは無いので、表面上は真面目に学校に行く。筆記用具や一昨日貰った教科書は持ってきても隠されるだけなので持ってこない。ランドセルの中はいつも空っぽなのだ。

 

「じゃあプリントしまってくれ。さぁ今日はクラスの係決めをするぞ。多分去年とあんま変わらないかな。あるとするなら、5年生になったことで委員会に入る子も出てくるから、その委員会の委員長副委員長を決めるための選挙管理委員ってのがあるぐらいかな」

 

どうせまた余り物に入れられるだけだ。しかも面倒なものに。正直嫌だが何か言おうものなら後で殴られるだけ。

千景は静かに授業の終わる鐘を待つだけであった。

 

「まずクラスのメンバーを引っ張る学級委員を決めたいんだが、誰か立候補はいないか?」

 

学級委員は余り人気がない。事ある事に視界をしたり、放課後残って先生と色々やる時があるからだ。多分男女1人ずつでやる学級委員は、男女共に人気は低い。

 

「あらら、誰もいないのか。じゃあ先生が指名しちゃってもいいのかなぁー?」

 

先生の独断で手早く事が進む。意地悪顔でクラス全員を挑発。子供達は顔を顰めるしかない。

 

「じゃあ勝手に決めまーす。……そうだな、じゃあ()()()よろしく頼むよ!!」

 

「……っ、えっ」

 

思わず目を見開いた。それもそうだ。今までそんな事は1度たりともなかった。精々雑用係程度だったのに、今先生は学級委員を千景に指名したのだ。

 

「因みに係の数とクラスの人数の関係で学級委員は一人でやってもらうから。大丈夫大丈夫、難しい事はしないよ」

 

しかも一人でやる事になった。

そりゃ、誰かとやるよりかは一人の方が何もされないから心身的にはゆっくり出来るかもしれない。

だがよりによって学級委員とは……。

 

「それじゃあ郡さん、前に来てくれ」

 

先生に呼ばれ、体を硬くしながら前に歩き出す。

クラスメイトの間を通る間、聞こえるクスクスと小さな笑いを我慢しつつ先生の横に立つ。

クラスメイトの視線が自分に向いている事に身体を縮こませ、思わずTシャツの裾をギュッと掴む。

 

「緊張し過ぎだよ。リラックスリラックス〜」

 

ポンッと肩を叩く先生。心做しか痛くはなかった事に驚きつつも、足元を見る目線は変えない。

 

「じゃあ学級委員は郡さんに決定。皆拍手ー」

 

パチパチパチと少ない音が聞こえるが、今の千景にそんな事を気にしている余裕は無い。

早く席に戻りたり。その一心で早足で戻ろうとする。

 

「おっと、待ってくれ郡さん。せっかくだ、早速初仕事と行こうか」

 

千景の肩を優しく掴んだ先生は、紙と鉛筆を差し出してくる。

 

「前でこの紙に誰がどの係になったか書いてくれよ。勿論、綺麗な文字でね」

 

そう言うと、教卓に紙と鉛筆を置いた先生は椅子を用意した。

ここに座れということらしい。どうせ席に戻っても視線は尽きないからあまり変わらないからと思う千景。

なるようになれと千景は椅子に座る。

すると先生は千景の前に立って話の続きを開始した。

思わずえっとなってしまうが、視線が少なくなった事に千景は少しだけ感謝しつつ、係を紙に書いていく。

 

何だか、初めての感覚で千景は無意識にワクワクしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時限目が終わり、先生の号令で挨拶を終えた後、千景は先生と職員室に向かっていた。

先生が前を歩き、その後ろに千景が歩く。

 

「いやー、さっきは突然指名しちゃって悪かったね。でも、変えるつもりはないから、そこんとこよろしく頼むよ」

 

「……あ、はい……。よ、よろしく、お願い…します」

 

先生はどの先生よりも優しい。授業中も、みんなを笑顔にするのが上手かったし、本人も楽しそうだった。

ふと先生の背中を見上げる。とても大きな背中だ。とてもじゃないが登れない。体を動かす事が好きだと言った先生は、まるで肉体がそれを語っているかのようだった。

 

「でも不思議に思うだろ?なんで郡さんを指名したのかって」

 

「……はい。私自身、そういうの……やった事ない、から」

 

不思議に思うのはやはり学級委員に指名されたことだ。

正直面倒だと思う。何故自分からクラスメイトに関わって行かなくてはならないのかと。これではより虐められる事が多くなるだけだ。

 

「まぁ理由は簡単だ。君はあまり前に出ることをしない。自分の殻に閉じこもってる。さっきのプリントが足りなかった事を自分で言えないのは流石にまずいと思ってさ。だったら学級委員をやる事で少しでも社交的になれればなぁーって思ったからさ」

 

その理由に、千景は落胆した。

多分先生は千景がいじめを受けていることをまだ知らない。だからそんなことが言えるのだ。純粋に教師として生徒を思いやる気持ちでそう考えてくれたのだろう。

が、千景にとってそれはありがた迷惑だ。何故いじめられるところに自ら進まなくてはならないのか。まるで肉食動物の前に肉を放り投げるのと大差無いではないか。

 

千景は、何処までも真っ直ぐな先生に感謝しながらも、余計な事をした先生に対して嫌気な感情を持った。

 

「まぁだからって言って、すぐどうにかなるとは思わないよ。郡さんがどれくらい自分を直したいかでこれからの成長は変わるからね」

 

「………そう、ですね。ありがとう……ございます」

 

「はははっ、素直でいい子だぞ。……しかし、この学校の職員室ってなんでこう遠いかな。いちいちグルグル回るのが面倒臭いな」

 

優しい先生だと思う。だが千景にとっては邪魔になりえる存在。

千景自身どう思ってるか全く不思議な所だ。

 

「ところで郡さんーーーっと」

 

「ーーーっ、キャッ」

 

突然曲がり角から女性の先生がやって来た。

先生は難なく避けるが、千景は間に合わず尻餅をつく形で倒れてしまう。

 

「あら、ごめんなさい先生」

 

「いえ、気にしてませんよ。しかし、郡さんがーーー」

 

「では失礼しますね」

 

何食わぬ顔で先生に謝った後立ち去る女性教師。

倒れた千景には何も言うこと無く立ち去った。慣れている千景でも、いつもいつもそうされるのは悲しくなる。

しかも現状を知らない犬吠埼先生の前でそうしたのだ。何だか悔しくて仕方が無い。

 

「……なんだあの先生。自分のせいで生徒が倒れたのに何もなしとか……クズ過ぎるだろ」

 

そう言うと、腰を屈めて千景の手を取った。思わず惚けてしまうが、初めての事故許して欲しい。

ゆっくりと立ち上がらせた先生は立ち去って行った女性教師の方を向いて、顔を歪ませていた。

 

「ーーーあの先生、マジ教師向いてないんじゃねぇのか……?」

 

その顔は、千景がいつも先生達から向けられているゴミを見るような表情。更に先生は青筋をたて、怒気の篭もった表情をしている。

 

咄嗟に、千景は先生の手を両手で握る。

 

「……せ、先生!!先生が、そんな顔……しないで…」

 

千景にとっては見慣れたような表情だが、犬吠埼先生は別だ。

先生は本気で今怒っている。表情も千景に向けられるものだ。だがそれは、あくまで千景を腫れ物同然に思っている大人達がする表情だ。

千景を腫れ物と扱わず、1人の生徒として扱ってくれる先生に、そんな表情は似合わないと思う千景。

無意識のうちに、優しい先生である彼にそんな感情を持って欲しくないという我儘を持ったのだ。

 

「せ、先生は……いつも、優しい……から。わ、私は大丈夫だから……、いつもの笑顔に……なって、ください」

 

言ってて恥ずかしいと思う千景。

しかし、他人に対してここまで思い入れた事など初めてだ。

さっきの件で先生は千景の邪魔になりえると思ったが、それ抜きで千景は先生が笑顔でいてくれる事を願ったのだ。

それを無意識のうちに思ったからとどういう事でもないのだが、確実に千景の心は少しずつ変わっているのだと確認出来る。

 

「……あ、ああそうだな、ありがとう郡さん。だが、本当に大丈夫か?あの状態からの倒れ込みだと、無意識に手を着いて手首を痛めることが多いぞ」

 

確かに手首は痛いが、それは日常的に受ける心身の傷に比べればどうということは無い。

が、気にすれば気にし出すほど痛くなってきた。

 

「泣いてるじゃないか。ほら、保健室に行くぞ。湿布を張りに行こう」

 

職員室から進路変更し、保健室に向かおうとする先生。

その先生の姿に、何処か幸せを感じる千景であった。




ホノボノ目指すぞ!!
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