某所で開催された夏祭り。加賀は射的屋にいた。そこだけ異様な雰囲気だった。
夏祭りの雰囲気とはおおよそ思えぬ、ネガティヴなオーラを纏った戦艦山城が店主をやっていたからだ。
山城「加賀さん。射的、やりません?Swi〇chありますよ」
加賀「別にゲームなんか欲しくないわよ…ん?」
三段の棚の最上段、山城の言うSwit〇hやその他ゲームソフト等の中に、加賀は見つけた。
加賀「五航戦裏ビデオ…製作ワレアオバ映像」なんということだろう。
山城「やっていきますか。一回300円」心なしか、加賀には山城がにやりと笑ったように見えた。が、目の前の餌を前に冷静さを欠いていた加賀に、それを気に留めている余裕はなかった。
加賀「支給弾数は」
山城「5発ね」
加賀「良いじゃない。やるわ」
山城「じゃ、これ弾ね」
トレーにコルク弾が5つ。先端は平たい。これでは弾道安定は期待できないだろう、と加賀は感じた。
銃を手に取る。なかなかの重量感。腔圧がどれくらいかは分からなかったが、軽すぎて銃身が暴れることはないだろう。装弾クリップにコルクを詰め、装填。コッキング。金属音が心地よい。
初弾は銃の癖を見極める。照準合わせ、裏ビデオのやや上を狙って射撃。ぱすん、と気の抜けた銃声が響く。
加賀「ッ…!」初弾、命中せず。弾道はおじぎし、左にそれた。
山城「…」山城がほくそ笑む。
加賀は戦慄した。至極単純真っ当明快、「このエモノでは勝てない」…直ぐに分かった。
腔圧が低すぎる。ただでさえ伸びの悪そうな弾を使っているのに、銃もこれでは、命中時に目標へ与えられる運動エネルギーも大したことにはならないだろう。
…いや、今はそんなこと考えてはいられない。
如何に命中させられるか。これに尽きる。
加賀「くっ…」
山城「銃は苦手ですか?
加賀「…せいぜい言ってなさい」再び銃を構える。コッキング。偏差修正。
二度はない――加賀はトリガを引いた。
加賀「届かない…ッ」弾はまたしても外れる。唖然とする加賀。山城は俯き、笑いを堪えていた。
加賀「ちぃ、粗悪品め…ですが、三度目はありませんよ」
加賀の目の色が変わる。戦場での目だ。再び偏差修正、射撃。
だがこれも――命中せず。
加賀「…よくもぬけぬけと、銃身ひん曲がった粗製濫造のガラクタをッ!」加賀、キレる。
山城「静かにしてくださいよ、公共の場ですよ加賀さん」
加賀「貴女の行為は詐欺同然です。夢と希望を胸にこの射的に参加せんとす、純粋な者の心を打ち砕かんとするその醜い思考!私は正義ですよ山城さん。貴女の醜悪極まりない金銭欲の方が、この場においてどれだけ迷惑かッ!」どの口が純粋などと。
山城「ククク…ハハハハハッ!」
加賀「狂っているのか貴様」
山城「加賀さん、その
加賀「何を…」
山城「証明してあげます。貴女の誤解と、私の正しさを。さあ時雨、来なさい」
時雨「山城、本当に良いのかい?」時雨が屋台の屋根から飛び降りてきた。華麗な着地。10点、10点、10点。いつのまにか集まっていた野次馬から、点数札が上がる。
加賀「貴女どこから出てくるのよ」
山城「かまわないわ。この焼き鳥製造機に我々の正義を見せてやりなさい」
時雨「…分かった。加賀さん、少し借りるね」
加賀「…」
時雨は加賀から銃を受け取ると、山城に照準を合わせる。
加賀「貴女達…ッ!?」
時雨「ごめん、山城ッ!」
山城「う”っ」命中。
加賀「そんな…嘘よ…」
山城「ふ、ふふ、分かったでしょ、間違っているのは貴女よ、加賀さん」
加賀「…」
時雨「加賀さん、もう諦めたほうが良いよ。お金返すからさ。山城も、もうこんなことするのはやめよう。やっぱり詐欺だよ」
山城「こら時雨、詐欺って言わない」
時雨「だってさ、山城に撃って『ほら当たるでしょ』なんて誰が見ても詐欺だよ。運低いから当たるの当然なのに」
山城「ちょっと、やめなさい」
加賀「…」
山城「ククク、もう手詰まりかしら」
加賀「警察呼ぶわ。こういうのって何の罪だったかしら」
山城「すいませんごめんなさい実弾使っても良いわだからやめて」
加賀「…聞いたわよ。来なさい瑞鶴!」
加賀が指を鳴らすと、どこからともなく瑞鶴が現れた。
華麗な着地。10点、10点、10点。
瑞鶴「ごはん食べてる途中だったんだけど」
加賀「謝礼は出すから。例のアレは」
瑞鶴「97式自動砲。7発きっちり徹甲弾」
山城「ちょっと、待って、話せばわか」
加賀「問答無用」
2発射撃。確殺のダブルタップである。
加賀「これで吹き飛んだでしょう」
煙が晴れる。
加賀「なっ…!」
ビデオは倒れていなかった。ケース表面は黒く変色していたが、健在だ。
時雨「微妙に角度を付けて配置されたケースが、避弾経始の役割を果たしているんだ…!」
加賀「許さん」
今度は戦車が出てきた。
山城「もうやめろおおおおお」
瑞鶴が単身、戦車に立ち向かう!
瑞鶴「タンク…ウーマン…」
加賀「やりました」
加賀の振り下ろした手のひらと共に、屋台は爆炎に包まれた。南無三!