書いたら出るって聞いたから。
メルトの口調掴めてないです。何でも許せる方向け。
水天宮インヴィディア・セルペンスにに入るためチケットを買いに来たマスターとそのサーヴァント一行。
そこでマスター達は謎のアルターエゴに遭遇していた。
「ああ〜、行かないでラムダ様! せめてサインを〜」
「サインするつもりはないわ。諦めて」
沢山のファンに囲まれ、SPに守られつつ彼女が歩いている。サーヴァント達はその混雑ぶりに驚いているようだが、マスターは違った感情を抱いていた。
(あのパーカーすごくかわいいなぁ…)
一目見て誰かを特定し、その造形を褒めるマスター。それは彼女の容姿を知っているからだけではなく、彼女と長い時間を過ごして来たからだった。
マスターとメルトリリスの関係はあの電子の海に遡る。マスターとメルトは共に戦い、傷つき、一度は黒幕に敗れたものの、メルトの尽力により、生きてカルデアに戻ることができた。
だが、メルトはその記憶を持っていない。マスターはその事実に悲しんだが、また作り直せばよいと考え、召喚されたメルトに積極的に関わっていった。
マスターは電子の海で羽ばたく白鳥に恋したのである。メルトに足を向けられたのは一度や二度では足りず、嫌いと言われたのは数え切れない。それでもマスターは、めげることなくメルトと共に過ごした。
その努力が実り、今やマイルームで砂糖空間を形成し、食堂でも憚ることなくイチャイチャしながら食事をとる仲までなった。
そんなマスターがメルトを見間違うはずがない。マスターはメルトに声をかけるべく、足を進めようとする。
そんなマスターの視界に突然ドローンが現れた。
「マスター!」「待って!」
SP達が護衛用に使っていたものである。ジークフリードとマシュがドローンとマスターの間に割って入ろうとするが、マスターはそれを手で止めた。ドローンを誰が操っているか、分かったからである。
そのドローンは綺麗に折りたたまれた手紙と、封筒を持っていた。マスターがそれを受け取ると、再び空に上がっていく。
「先輩、中には一体何が?」
マシュが覗きこんでくる。マスターは、手紙を開き読んだ。
「あなた達の欲しがるものは封筒に入れておいたわ。あなた達が水着剣豪を倒すことが目的なことも知ってる。察しの通り、私は水着剣豪よ。私と戦いたいなら水天宮まで来なさい。 ラムダリリス」
マスターが封筒を確認すると、ペアチケットが三枚出てきた。
「おお! 飛び入りの余の分まで用意してあるとは、メルトの奴め、なかなか準備がよいな! あやつには聞きたいこともあったが、この目で見てからでも遅くはない!」
「ご注意を主殿。ここまで堂々と渡してくるとなると、罠の可能性が高いと言えます」
「そうだったとしても、関係ねぇや! こんな果たし状を貰って、ひびっちまったら水着剣豪の名折れさぁ! 俺が全部ぶった切ってやらぁ!」
「先輩、当初の目的は達成したことですし、一度ホテルに戻って、QPを稼ぎましょう。 …しかし意外です。メルトリリスさんが先輩に声をかけないなんて」
「そうだね、なんでだろ? でもメルトには事情があるかも知れないし、今日の所は戻ろう」
マスターとサーヴァント達は帰路につく。その途中、マスターはポケットから先ほどバレないよう隠したもう一枚の手紙を取り出す。
「今あなたにあったら、だらしない顔になりそうだったから許してね。水天宮で会いましょう。最高のショーを用意してるから期待していてね」
マスターは手紙をポケットに入れ、頰を手でかいた。
水天宮にて。
メルトのショーの後、マスター達はキングプロテアに追われていた。
水天宮カジノの仕組みは恐ろしく、メルトは100万QP並びに経験値を賭けさせるカジノを作り上げ、ショーで魅了した観客を強制的にスロットマシンをやらせるという、まさに悪辣なものであった。
マスター達はショーの悪意からは逃れたものの、キングプロテアによって捕まる寸前まできていた。
「駄目です、先輩、逃げ切れません! 私の盾に掴まって!」
「うわああああ!!」
キングプロテアが起こした津波がマスター達に襲いかかる。なすすべもなくそれに飲み込まれた。
「…あれ?」
マスターは一人残されていた。津波の衝撃は全く感じなかった。
「メルトの、お願いです。マスターは残して欲しいって」
キングプロテアがマスターを掴む。
「連れて行きますね」
マスターが連れてこられたのはショーのステージだった。観客は溶かされたのか一人もおらず、水の流れる音だけが響く。
「ご苦労さま、今日の仕事は終わりよ。眠っててちょうだい」
メルトが現れる。パーカーを着直しており、サングラスは外していた。 口元は引き締まり、いつもの冷たい印象を与える雰囲気を漂わせている。
「メルト、確かめたいことがあるんだけど」
「観客とサーヴァント達は無事よ。QPと経験値を使った代償は支払ってもらうけど、厳しいものじゃないわ。あなたが納得できるよう、気を使ってる。水着剣豪として勝負もするわ」
「なら、大丈夫だね」
メルトは悪辣ではあるが、下らない嘘は吐かない。そうマスターは信頼し、メルトにも信頼されていると確信している。
「カジノを作った目的はこのどこか悪意を感じる特異点を破壊するため。経験値を貯めて、ラスベガスを吞み込めるぐらい大きくなったら呑み込むの。それが目的。納得した?」
「うん、メルトが悪意がないことは分かったよ」
「じゃあ……、もういいわよね、ダーリン」
途端、メルトの顔が蕩けた。頰は赤らみ、口元が緩む。目が細められ、怜悧な顔が一気に恋を知った少女の顔に切り替わった。声が砂糖を煮詰めたような甘く耳を溶かすようなものになる。
「メルト、スケート選手デビュウおめでとう。花束、気に入ってくれた?」
「ええ、もちろん。両手一杯のアマリリス。付けてみたの、見てくれる?」
フードを外すと、いつも付けている青いリボンに紫色の花が添えられていた。絹糸をそのまま染めたような紫髪に、鮮やかなアマリリスがとても映えている。
「よかった…気に入ってくれて嬉しいよ」
「ええ、でも…私が本当に見てもらいたいのは、こっち」
メルトがパーカーを脱ぎ捨てた。先ほどのショーで着ていた衣装とは違う。アルターエゴのメルトが着ている白いフリルの服をベースにしているようだ。
くるっとメルトが回ると、フリルが舞い上がる。マスターは白鳥が翼を広げ飛び立つ瞬間を連想した。
「メルト、本当に綺麗だよ」
「……」
「ええと…白鳥みたいだね」
「ふふ…褒めるのは相変わらず苦手ね。でもいいの」
メルトが近づいて来る。マスターの前で一回転し、髪がマスターの顔をふわりと撫でる。嗅ぎ慣れた匂いと、仄かな花の香りが漂った。
「もう私たちに言葉はいらないわ。私が踊り、あなたは見る。それだけで、満たされるの」
「…メルト」
「観客へのショーだけでは満たされないの。あなたの、あなただけのために最高のショーを練習したわ。みて、くれる?」
「もちろん」
メルトに案内されるまま、用意された席に座る。ステージ全体を見渡せて、メルトの動きを見逃すことのない位置だ。
「ここには、あの憎たらしいBBも、マイルームに侵入してくる三人も、気配遮断するリップもいない。あなたと、私、二人きりの世界なの。誰にも邪魔されることもない…」
キングプロテアもいつのまにか姿を消していた。
マスターはステージの中心に移動するメルトを見つつも、サーヴァント達に一抹の不安を覚えたが、メルトがポーズをとったらその気持ちもなくなった。
マスターは苦笑した。メルトの悪辣さがうつったのかも知れない。だがマスターの価値観にはメルトが他のサーヴァントと比べて大事であると認めているし、メルト自身が保証しているので問題はない。
それよりも、メルトの気持ちを受け取りたい。
「さあ、始めるわよ。あなたの為のショーを…」
その後、メルトの経験値が貯まるまでイチャイチャしながら過ごし、北斎との勝負を見届けたあと、ホテルに戻った。
メルトを連れて。
サーヴァント達の少し冷たい目線が痛かった。