戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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※急募※主人公になる方法




計画の分水嶺

 本部潜水艦から発艦した小型潜水艇に乗り、クリスと切歌、調の三人は深淵の竜宮に乗り込んでいた。彼女たちの責任は重大だ。何故なら、ここにある聖遺物、ヤントラ・サルヴァスパをどちらが制するか、そして、ここに居るある人物をどうするかによってキャロルの計画を阻止するための、雷のカウンター計画の難易度と精度が変わってくるのだ。

 深淵の竜宮のピットに潜水艇を止め、

 

「ここが深淵の竜宮?」

「だだっ広いデェス」

「ピクニックじゃねえんだ。ここがアタシ等の計画の分水嶺だ、行くぞ」

「は、はいデス!」

 

 年長のクリスを先頭に、その後ろを調と切歌がついていく。

 彼女たちが行動している間に、それをサポートする大人たちが情報をできる限り集めていた。

 

「施設構造データ、取得しました」

「侵入者の捜索急げ!」

「キャロルの目的は世界の解剖。それを阻止するには、ここに納められた聖遺物、ヤントラ・サルヴァスパを先に手に入れるしかありません」

 

 弦十郎は雷の提示したカウンター計画を思い浮かべ、唸った。

 それと同時刻、風鳴八紘亭の畳の上に敷いた布団で眠っていた翼が、軽く唸ってから目を覚ました。そして場所を確認するように周囲を見渡し、ゆっくりと起き上がる。

 

「ハァ……、そうか……私はファラと戦って……」

 

 彼女の中に歌女ではなく、防人としての自分を選択した時の光景がフラシュバックする。

 

(身に余る夢を捨ててなお、私では届かないのか……)

「大丈夫?翼」

 

 内心打ちひしがれていると、障子の向こうからマリアが話しかけてきた。日の光の関係上、翼には影が見えている。

 優しい彼女の事だ、翼の心境を察して障子を開けないでいるのだろう。翼は出来る限りマリアに心配をかけないように気丈に振舞い、

 

「すまない。不覚をとった……」

「動けるなら来てほしい。翼のパパさんが呼んでいるわ」

「……わかった」

 

 マリアはそう言うが、お父様は私を娘と見てくれないのだ。と内心思いながら、返事をし、服を着替えた。

 呼び出されたのは八紘の書斎であった。彼の机の上に、無数の書類が山のように置かれている。二人はその内の一つづつ手に取って開く。

 

「これは……?」

「アルカ・ノイズの攻撃によって生じる赤い粒子を、アーネンエルベに調査依頼していました。これはその報告書になります」緒川の説明を聞きいた翼が、

「アーネンエルベ……シンフォギアの開発にかかわりの深い、独国政府の研究機関……」

「報告によると、赤い物質は『プリマ・マテリア』。万能の溶媒、アルカ・ヘストによって分解・還元された、物質の根源要素らしい」

 

 八紘の言葉に引っかかるところを覚えたマリアは問うた。

 

「物質の根源?分解による?」

「計画を提示されたときに雷さんも言っていましたが、錬金術とは分解と解析、そこからの構築によって成り立つ、異端技術の理論体系とありますが」

「キャロルは世界を分解した後、何を構築しようとしているのかしら?」

 

 雷の計画はキャロルの世界解剖、即ち分解を阻止するための物であって、それ以降の構築の事は一切触れられていない。マリアはその先の『構築』が気になっていた。

 

「翼」

「はい……」

 

 ここに居る間声をかけられることはないだろうと思っていた翼だったが、八紘の自身を呼ぶ声に素早く、しかし自信なさげに返答し、顔を上げた。

 

「傷の具合は?」

「ぁ……はい……!痛みは殺せます」

「ならばここを発ち、然るべき施設にて、これらの情報の解析を進めるといい。お前が守るべき要石は、もう無いのだ」

「分かりました」

 

 はじめは父に、娘として声をかけられたのだと思っていた翼だったが、彼が政府の役人として国を守る防人である自分に掛けられた言葉であると知り、内心落ち込んでいるのをおくびにも出さずに答えた。

 が、そこにマリアが割って入る。

 

「それを合理的というのかもしれないけど、傷ついた自分の娘にかける言葉にしては、冷たすぎるんじゃないかしら?」

「いいんだマリア」

「翼」

 

 しばしの静寂が部屋に満ち、「いいんだ……」と諦めるように翼は言葉をこぼす。

 話が終わって外に出てみると、すでに日は傾き、ヒグラシが鳴いている。

 マリアは肩を怒らせ、廊下を歩いて行く。機嫌が悪いのは、八紘の言葉に戦っている娘に心配の一つもないということについてだった。怪我の事について聞いてはいるが、それは『娘』ではなく『防人』の翼に対してだ。問題外である。

 

「あれは何だ?!安全保障のスペシャリストかもしれないが、家族のつながりを蔑ろにしてッ!」

「すまない。だがあれが、私達の在り方なのだ」

 

 そう言って廊下を歩いて行くと、とある一室のふすまの前に到着した。

 

「ここが、子供時分の私の部屋だ。話の続きは中でしよう」

「ッ?!敵襲?!また人形が?!」マリアが咄嗟に構える。

「いや、あ、その……私の不徳だ……」

 

 翼の部屋は、今も昔も何者かに内部を荒らされたと勘繰るほどの散らかり具合らしい。前にもこんなことがあったなと思いと同時に、流石に恥辱を覚えて翼は頬を赤く染める。

 だが、そんな汚部屋製造機である翼にすら引っ掛かるところがある。

 

「だからって、十年間そのままにしておくなんて……。幼いころにはこの部屋で、お父様に流行歌を聞かせた思い出があるのに……」

 

 それは、かつての汚れた状態のまま、手付かずであることだった。

 マリアは翼の部屋の中心に立ち、

 

「それにしても、この部屋は……昔からなの?」

「私が片づけられない女って事?!」いそいそと衣服を畳んでしまっていた手を止め、マリアのほうを向く。実際その通りであるのだが。

「そうじゃない。パパさんの事だ」マリアの言葉に翼は目を瞑り、

「私のおじい様……現当主の風鳴不動は、老齢の域に差し掛かると、跡継ぎを考えるようになった。候補者は、嫡男である父、八紘と、その弟の弦十郎叔父様」

「風鳴指令か」

「だが、おじい様に任命されたのは、お父様や叔父様を差し置いて、生まれたばかりの私だった」

「翼を?」

「理由は聞いていない。だが今日まで生きていると、うかがい知ることもある。どうやら私には、お父様の血が流れていないらしい……」

「何?!」

 

 マリアも子供ではない。その言葉が意味することを、彼女は知っている。だが、理性が一瞬、それを理解することを拒んだ。

 

「風鳴の血を濃く、絶やさぬよう、おじい様がお母様の腹より産ませたのが、私だ」

「風鳴不動は……人の道を外れたかッ……!」

 

 翼はかつて、八紘に自分の娘ではない事、汚れた風鳴の道具でしかないことを言われた日の事を思い返す。その衝撃は、今でも鮮明に思い返すことのできるほどだ。

 

「以来私は、お父様に少しでも受け入れられたくて、この身を人ではなく、道具として、剣として研鑽してきたのだ」

 

 翼は自身の手のひらを虚しい瞳で見つめ、

 

「なのに、この体たらくでは……、ますますもって鬼子と疎まれてしまうな」

 

○○○

 

 ところ変わって深淵の竜宮のデータを閲覧してキャロルが欲し、自分たちも手に入れようとしているヤントラ・サルヴァスパがどこにあるのかを探していた。

 

「竜宮の管理システムと、リンク完了しました」

「……止めてください!」

 

 高速でスクロールされるデータの中から、ヤントラ・サルヴァスパのデータをエルフナインは見つけ出した。

 S.O.N.G.メンバーは優秀だ。リンクが確立されてすぐに管理区域を特定している。

 

「ここからはスピード勝負だ!急いでクリス君たちを急行させるんだ!」

 

 ここが勝負の分かれ目だ。




前書きは最近の悩み事だ!気にするな!byジュラル大王

勘のいい方なら雷の計画がどのようなものか、もうわかりましたよね?

気が早いですけど、次回作何にしましょう。自分の中では最終回までのプロットが出来上がってるんで終わってるも同然なんですよ。
候補

・ハリポタ
・鬼滅の刃
・ガルパン※今のところ劇場版まで

……の三つですね。キャラ設定は全部できてます。というか既に全部同時進行でプロット書いてます。
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