戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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 大学に通い始め、新しい生活リズムに振り回された結果投稿が遅れてしまいました!本当に申し訳ない。このリズムに慣れるまで不安定になるやもしれません。

 次回作アンケートをしておいてまことに手前勝手ながら『鬼滅の刃』に決めました!理由としては、ネタ被りが怖いからです!

 今回、人によってはあまり好ましくないかもです。


既に制された毒

 深淵の竜宮内にある通信システムを使い、クリス達は本部ブリッジにいる弦十郎に次の行動を聞いたところ、彼から大目玉を喰らっていた。

 弦十郎の怒鳴り声が艦橋に響き、思わず藤尭と友里が肩をすくめる。

 

『力を使うなと言ってるんじゃないッ!その使い方を考えろと言っているんだッ!』

「新しくなったシンフォギアは、キャロルの錬金術に対抗する力だッ!使いどころは今を置いて他にねぇッ!眠てぇぞおっさんッ!」

 

 クリスのセンパイとしての見栄。敵の首魁たるキャロルが目の前にいるという好機。この二つが彼女から冷静さを失わせていた。当然、雷の計画のことなぞすっかり忘却されている。

 が、それ以上に、

 

『ここが深海の施設だと忘れるなと言っているッ!』

 

 そう、深海の竜宮は読んで字のごとく深海にあるのだ。他はともかく、ミサイルや弾丸と言った、壁を破壊、及び貫通できる兵装を持つイチイバルを、その高い爆発力をさらに高めるイグナイトでの運用など出来るはずもない。もしできたとしたらそれは普段のクリスであればの話。今のクリスの心理状態では火の元に爆弾を置いておくようなものだ。危険きわまる。

 それを当然クリスも分かっていた。故に彼女は厚底の靴で壁を蹴る。

 

「正論で超常と渡り合えるかッ?!」

『念のため、各ブロックの隔壁や、パージスイッチの確認をお願い』言っても聞かないクリスの注文で、友里は隔壁やスイッチの場所が表示されたマップデータを転送する。

 あまりに膨大なその数に、切歌が泣きごとをこぼすが、

 

「ね、姉ちゃんじゃないんデスから、こんなにいっぺんに覚えられないデスよぉ」

「じゃあ切ちゃん。覚えるのは二人で半分こにしよう?」

 

 調がすぐさまサポートした。

 二人が頑張ってマップを覚えているそんな時、藤尭の焦った声が通信で聞こえてきた。

 

『セキュリティシステムに侵入者の痕跡を発見!』

「そういう知らせを待っていたッ!」

 

 クリスが歓喜に叫ぶ。その目からは完全に冷静さが失われていた。

 

○○○

 

 ファラを見事撃破した翼たちは、彼女によって破壊された要石の前にいた。そこには、

 

「これは……先ほどの!」

「ええ、翼さんが退けた、オートスコアラーの残骸です」

 

 四肢をもがれ、機能停止したファラが横たわっていた。あまりに精巧に作られているからか、人形、しかも人の命を奪っていると分かっていながらも、痛々しさを感じさせる。

 

「この状態で、稼働するの?」

 

 マリアが疑問を投げかけたとたん、ぎょろりと撃破されたはずのファラの瞳が動き、

 

「いつか、しょぼいだなんて言って、ごめんなさい。剣ちゃんの歌、本当に素晴らしかったわ……」

「私の……歌……」

「アハハハハハハ!まるで体がバッサリ二つになるくらい、素晴らしく呪われた旋律だったわ!アハハハハハ!」

 

 気がふれたように―オートスコアラーにそう言った概念があるのかは不明だが―ファラが笑う。翼はマリアと顔を見合わせた後、再びファラを見下ろして、

 

「呪われた旋律は以前に、キャロルも言っていた……」

「答えてもらうわ!」

 

 『呪われた旋律』とは何なのか?それを聞き出すべく、マリアは問い詰める。

 深淵の竜宮内では、発見したキャロルの反応を手掛かりに、クリス達が走っていた。焦っているクリスが後輩二人を置いて先を急ぐ。

 切歌は息を切らしながら叫んだ。

 

「何処まで行けばいいデスか?!……お?」

 

 ピコンッとメールが各通信機に送信される音が聞こえてきた。クリス達は、各々メールを走りながら転ばないように確認する。そこには、キャロル陣営と向かい合う最短ルートが表示されていた。

 調が喜びの声を上げる。

 

「このルート通りに進めば!」

「ああ、連中とかち合えるってことだぁ!」

 

 クリスが勇んで速度を上げる。

 これは、既にエルフナインから情報を収集していると掴んでいると知っていた弦十郎たちが、ブリッジに表示されているマップとは別に、友里の画面に個別表示されている情報から割り出したものだ。ブリッジのマップに映っている偽の映像は、藤尭がリアルタイムで細工を施している。エルフナインも自身が情報を送っていることを知っているため、ワザと大画面のマップを見続けているのだ。彼らの間で交わされる会話も、当然演技である。

 すでにキャロルは、虫かごの中で飛ぶしかないのだ。

 

○○○

 

 深夜の病院。

 響は同じ病室で眠っている雷を起こさないように、未来に電話を繋いでいた。

 

「ごめんね、こんな夜中に。色々考えてたら、眠れなくなっちゃって……」

『ううん。気にしないで』

「ありがとう。 未来が聞いてくれたことと、雷が私の知らない本音を教えてくれたおかげで、もう一度だけ、お父さんと話をしてみる決心がついた」

『うん』

 

 未来の優しい返事が返ってくる。

 それでも、響の不安はぬぐえない。

 

「だけどね、ほんとはまだ少し怖い。どうなるのか不安でしょうがないよ。こんな時、雷の頭と心を切り離せるところが羨ましく感じちゃう……』美点であり汚点でもある雷の科学者と言う種族的な性質を響は少しだけ欲していた。何せ、怖いと思っていても、頭ではどうすればいいのか考えることが出来るのだから。

 未来は、そんな響をたしなめるように、

 

「響は響でしょ?平気へっちゃら」

『うぇ?」

『響の口癖だよ?』

「わっはは……。いつから口癖になったのかは忘れたけど、どんな辛いことがあっても何とかなりそうになる魔法の言葉なんだ」

『ホント単純なんだから』

「前向きだと言ってくれたまえよ」

 

 未来の揶揄いに響はかわいらしく反論する。響の胸にあった不安は、ほとんど拭い去られているようだ。深夜、雷が寝ているとはいえ、彼女の調子はいつも通りに戻りつつある。

 電話越しに二人の笑い声がこだまする。

 さんざん笑った響はベッドから立ち上がり、

 

「おっかしいのぉ」

『元気出たね!魔法の言葉に感謝しないと』

「うん!そうだね!」

 

 窓に反射する自分の顔を見て、響は気合を入れた。

 

○○○

 

 八紘亭の要石前で無残に転がるファラはその口を動かしていた。

 

「知らず毒は仕込まれて、知るころには手の施しようがないまま、確実な死をもたらしますわ」

 

 すでに毒は発見され、血清として使われていることも知らず、ファラは自分たちの優位性は崩れることが無いとこう説を垂れ続ける。

 同じくキャロルも偉そうぶって悠然と語っている。弦十郎たちは驚き、驚愕してるように見えるが、彼らの内心は、エルフナインを含めて「だ……駄目だ。まだ笑うな……。こらえるんだ……。し……しかし……」。状態であった。

 ファラの言葉を緒川が追及する。

 

「あなたの言う毒とは、いったい何を意味しているのですか?!」

「マスターが世界を分解するために、どうしても必要なものがいくつかありましたの」

 

 もうほとんど壊れているようだ。ファラは右目の自由が利かないことも気にせずに続ける。

 

「その一つが、魔剣の欠片が奏でる呪われた旋律……。それを装者に歌わせ、体に刻んで収集することが、私たちオートスコアラーの使命!」

 

 彼女の口から告げられた事実は、流石の雷も読み切れていないところであった。まあ、と言うよりも彼女はキャロルの計画を―彼女の精神の―根本から叩き潰す予定であったため、そもそも予測する必要すらなかったというのが正しいのだが。彼女からしてみれば「自分が使えるか不安はあるけどタダで強化アイテムもらったラッキー」程度の物である。

 完全な自己満足感を得るべく、全てを語ったファラは自身を爆破処理した。その衝撃から装者たちを守るべく、緒川が風呂敷で遮る。周囲にはキラキラとチャフのようなものが待っていた。恐らくレイアを撃破しようとしている装者に伝えないようにしているのだろう。

 

「呪われた旋律が何かと思えば、轟の計画がひっくり返るようなものではなかったな」

 

 夜を明るく照らす炎から上がる煙を見上げながら、翼が口角を上げて嗤った。




 うーん、あまりにもエグい。セリフがないのに雷の存在感が異常である。
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