戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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遂に雷の計画の一部が解禁されます。まあ、ここは分かってた人が多いんじゃないかなと。
 だが雷の計画はもう一つあるのだ。二つで一つのカウンター作戦。

AMT(雷ちゃんマジ知将)


チェックメイトを打つ者は

 作戦開始の少し前。

 マリアは緒川の運転する車に乗りながら、あごに手を当て、何やら考え事をしているようだった。その内容は、初めてキャロルを撃破した時に聞いた、雷の計画についてだった。

 あの時、雷はキャロルが撃破されたとはいえ、エルフナインの五感共有が切れているのかいないのかが不確定だったため、別室に移動させてから弦十郎、ひいてはほかの職員たちに言った。

 

「まず第一に、私の計画はキャロルを撃破するのではなく、キャロルの計画を破壊するための計画だということを念頭に置いておいてください」

「ああ。第一目標は計画の阻止であって、撃破ではないからな」

 

 弦十郎が雷の言うことに理解を示し、そのことに彼女が安堵する。

 しかし、他の装者、職員は気が気でなかった。早く雷の口から語られる計画を聞きたくて聞きたくて仕方がないのだ。思わず作業の手を止めている者もいる。

 

「私の計画は、三つに枝分かれします」

「三つか……」

「はい。まずはプランA」

 

 弦十郎のつぶやきに雷は頷き、指を一本立てて言った。

 

「話を聞く限りキャロルの居城、チフォージュ・シャトーは聖遺物。もしくはそれに類するものの集合体でできています。そこで、深淵の竜宮内にある全ての機械のマスターキーとして扱える聖遺物、ヤントラ・サルヴァスパを用いて外部から強引に制御権を奪うという物です」

「制御権の奪取……か」

 

 弦十郎はあごに手を当て、唸った。普段ならなぜ彼女が深淵の竜宮内にあるものを把握しているのかを問いただしたところだが、彼女の考案した作戦のほうに集中していたため気にしている様子はない。因みに雷はハッキングして情報を手に入れている。

 雷はもう一本指を立て、

 

「次にプランBなのですが、これは状況によって切り替わるのでルートが二つあります。そもそもプランBはキャロルが同じヤントラ・サルヴァスパを狙っていた、もしくはそれを破壊した、された場合の案ですので、予備案ですね。で、ルート1です」

 

 おほんと咳ばらいを入れ、

 

「深淵の竜宮には、とある人物が収容されています」

「とある人物……?」マリアがオウム返しに聞いた。

「うん。その人物の名はウェル。ネフィリムの左腕を持ち、聖遺物と同化することで自由自在に操ることが出来る英雄モドキ」

 

 ウェルの名が出た瞬間、彼を知るものが―ほぼ全員が―顔を顰めた。彼への心象はとてもじゃないがいいものではない。だがそれを雷は気にも留めず、話を続ける。

 

「まあ言ってしまえば、彼を味方に引き入れるのがルート1。キャロルに渡った場合は彼に接触し、英雄願望をそそのかして協力させるのがルート2ですね」

 

 一気に指を三本にし、にこやかに笑いながら言い切った。そしてすぐに彼女はマリア、調、切歌のほうを向いた。

 鋭いマリアは雷の言いたいことを即座に理解してしまう。

 

「まさかとは思うけど、私達に接触しろって言ってる……?」

「そのまさか」

「そんな!嘘だと言ってよ姉さん!」

「ドクターと面と向かうのはもう嫌デスよぅ!」

「だって、ウェルの事を良く知ってて、当たり障りなく接触できそうなのがマリア達しかいないんだもの」

「「「うっ……」」」

 

 調と切歌が悲痛に訴えるが、雷はサラっと事実を言い切ってしまう。彼女はうなだれる三人のもとに歩み寄ってポンポンと肩を叩いて励ますように、

 

「大丈夫大丈夫。絶対にウェルは味方になってくれるから」

 

 そう言って彼女は笑った。

 マリアは、今になって強烈な違和感を抱いていた。なぜそこまであの偏屈を信じることが出来るのだろう。それが気になって気になって仕方がない。まるで()()()()()()()()()()()()()()としか言いようがない。そうでなければ説明がつかないほどに、あの英雄嫌いの雷はウェルの事を信じていた。

 

「どうかしたか?」

「いえ、何でもないわ」

 

 難しい顔をしているマリアを気遣ってか、翼が声をかけた。これから決戦なのだ。不確定要素は出来る限り排しておきたいということだろう。

 マリアは考えすぎだと頭を振り、決戦に向けて気持ちを整える。

 

○○○

 

 ガングニールを身に纏い、父の声援を胸にキャロルを圧倒する響だったが、一瞬の隙をつかれて洸のそばにアルカ・ノイズを召喚されてしまった。父が力の源なら、それを引き裂いてしまおうというキャロルの魂胆である。

 

「お父さんッ!」

 

 響は叫ぶが、距離的に間に合いそうにない。アルカ・ノイズの解剖器官が洸に触れようとしていた。その時だった。洸の周囲を半球状の電磁バリアが覆い、上からクラスター弾のように分裂した無数の矢が雨のように降り注いだ。

 矢はアルカ・ノイズを一体も残らず殲滅し、電磁バリアが降り注ぐ矢から洸を守る。赤い煙の中、響は彼のもとに駆け寄った。そんな二人を守るように、腰のマントをはためかせながら雷が立ちふさがる。

 キャロルは追撃をかけようと走り出そうとするが、目の前に巨大な剣が降って来たことで思わず足を止める。見上げると、ギアを纏った翼が腕を組み、剣の上からキャロルを見下ろしていた。彼女達だけではない、装者全員が、シンフォギアを纏って並んでいる。

 響と雷が追加で現れたアルカ・ノイズを相手している間に、緒川が洸を戦線から離脱させた。

 キャロルがダウルダブラと共に宙を舞う。

 響、雷のもとに全員が集まった。

 

「もうやめよう!キャロルちゃん!」

「本懐を遂げようとしているのだ!今更辞められるものか!思い出も……何もかもを焼却してでもッ!」

 

 そう叫び、キャロルはダウルダブラの弦を爪弾く。ハープの美しくも禍々しい音色が奏でられ、キャロルはその身を急成長させてダウルダブラを錬金術師のシンフォギア、ファウストローブとして身に纏う。

 その威容にマリアが、

 

「ダウルダブラのファウストローブ……。その輝きは、まるでシンフォギアを思わせるが……」

「輝きだけではないと、覚えてもらおうかぁッ!」

 

 そしてなんと、歌い始めた。それと同時に展開していた錬金術の出力も跳ね上がる。

 港湾部に停泊している本部ブリッジは、この圧倒的なエネルギーの源を探知していた。

 

「交戦地点でのエネルギー圧、急上昇!」

「照合完了!この波形パターンは……!」

「フォニックゲイン……だと?!」

「これは……キャロルの……」

 

 キャロルは歌に力で錬金術の出力を上げ続け、背部の弦を展開して共振効果によってさらに引き上げる。そして圧倒的な威力のそれを、装者たちは間一髪で直撃を回避した。

 

「この威力……まるでッ!」

「すっとぼけが利くものかッ!こいつは絶唱だッ!」翼、クリスはさらに来る追撃を回避する。

「絶唱を不可もなく口にする……!」

「しかもこの威力、一人で放てるようなものじゃないッ!」

「錬金術ってのは何でもありデスか?!」雷は電磁操作の応用で、切歌は肩のブースターで、調は鋸をプロペラのようにして飛行し、彼女達も何とか攻撃を避けた。

「だったらS2CAでッ!」

「よせっ!この威力、立花と轟の体が持たないッ!」

 

 二人でやれば負荷も半分に分割できるが、それでも耐えきることが出来ないだろう。たとえできたとしても、戦闘続行できるかどうかに不安が残る。

 装者たちは全員が集まり、雷が正面に立って電磁バリアを展開して身を守る。錬金術の威力が更に跳ね上がった。

 

「翼!あれを!」

「ッ?!……明滅、鼓動、共振?!」

「おい不味いぞ!早くしねえとッ!」

 

 クリスがマリア達を急かすが、彼女達は身動きが取れない。潜入する隙が全く無いのだ。そうこうしている合間にも、シャトーはエネルギを増幅し始める。装者たちの顔に焦りが見える。

 だが、その中で唯一、雷だけが余裕の笑みを浮かべていた。

 遂に、限界まで溜まったエネルギーが放たれ、雷の計画もむなしく世界解剖が果たされる。そのはずだった。増幅された光は、()()()()()()()()()()()()()()

 勝ち誇っていたキャロルの表情が絶望の色に染まる。

 

「なッ?!どういう事だッ?!」

「私の勝ちだ!キャロルッ!」

 

 雷が計画の破壊が成功したと、高らかに宣言する。そしてキャロルが絶望に打ちのめされているうちに、マリア、調、切歌がシャトーに向かう。

 

「雷ッ!向かっていいのよねッ?!」

「行ってマリア!後はマリアが私の計画を完成させて!」

「分かった!」

「行ってくるデース!」

「頑張る」

 

 彼女たちは危険を承知でシャトーに乗り込み、アルカ・ノイズの障害を打ち払いながらウェルと接触にかかる。

 雷の計画が、チェックメイトを打った。




世界を解剖するだけのエネルギーを扱ってるだけあってシャトーは頑丈。因みにそんな分解されるような光が満ちているところに雷ちゃんはマリア達を突っ込ませてますが、内部はシャトーの防御力のおかげで意外と平気です。まあ、タイムリミットはあるんですけどね。

雷ちゃん、キャロルを絶望に叩き落すの巻。
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