戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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雷が参加したことで今のところ一番原作と乖離しているGⅩ編。皆様不快ではないでしょうか?


奇跡、降臨

 遂にシャトー内部から光が漏れ始め、脆くなったところから切り離されるように分解され、地面へと落ちていく。ウェルはもちろん、マリア達が脱出したという報告は、今のところない。だが、雷をはじめ、響に翼、クリスもマリア達が死んだなどとは微塵も思っていない。根拠こそないが、そういう確信があった。

 無残な姿となったシャトーをキャロルは呆然自失な状態で見上げていた。計画が破壊されたという事実を再度目の当たりにし、譫言の様に「託された命題が……」と呟いている。

 翼はこちらの勝利を確信すると、携えていた剣を道路に突き刺し、

 

「投降の勧告だッ!貴様が描いた未来は、もう瓦礫と果てて崩れ落ちたッ!」

「未来……?」

『もう、やめよう……」キャロルの脳内でエルフナインの声が響く。

「お願い、キャロル……。こんなこと、僕達のパパはきっと望んでいない……。火あぶりにされながら、世界を知れと言ったのは……僕たちにこんなことをさせるためじゃないッ……!」

「そんなの分かっているッ!」キャロルが叫ぶ。「だけど、殺されたパパの無念はどう晴らせばいい?!パパを殺された私達の悲しみは、どう晴らせばいいんだッ?!……パパは命題を出しただけで、その答えは教えてくれんかったじゃないかッ?!』

「それは……」

「君たちのお父さんは、何か大事なことを伝えたかったんじゃないか?命がけの瞬間に出るのは、一番伝えたい言葉だと思うんだが……」

 

 キャロルの問い、父の問いをこたえるべきかと悩むエルフナインを、父として彼女の父親、イザークの気持ちが最も理解できる洸が助け舟を出す。今の彼は力がなく、情けないながらも、響を見守るという、立派に彼女の父親をやっているからこそ言えた言葉だ。

 彼の言葉に後押しされ、エルフナインは痛みと出血で意識をもうろうとさせながら、イザークの命題の答えを回答する。

 

「錬金術師であるパパが、一番伝えたかった事……」彼女の中からキャロルの幻影が現れる。

『ならば真理以外ありえない……』

「錬金術の到達点は、万象を知ることで通じ、世界と調和する……こと……」

『ッ。調和だと……?!パパを拒絶した世界を受け入れろというのか?!言ってない!パパがそんなこと言うものかッ!』

 

 キャロルはかたくなに、意固地なまでに、子供の我が儘の様に受け入れない。だが、エルフナインは知っている。弱くても戦うことが出来るということを教えてくれた、得体のしれない自分と一緒に笑ってくれた、自分と同じような境遇でありながらそれを背負って生きていくことを決めた、みんなの事を。世界を知ったかろこそ言える。

 

「だったら代わりに回答するッ……!」

「ッ」父の思い、イザークの命題の答え。それは、

「命題の答えは……赦し……!世界の仕打ちを赦せと……パパは僕たちに伝えていたんだ……!」

「君?!」

 

 自身の力の最後の一滴まで絞りつくし、限界まで命を燃やした限界が来た。彼女をは口元を抑え、血を吐き出してしまう。その小さな体を、洸が受け止めた。

 光と共に消えていくシャトーを見上げ、キャロルは涙を流しながら、

 

「チフォージュ・シャトーは大破し、万象黙示録の完成という未来は潰えた……。フフ……。ならば!過去を捨て、今を蹂躙してくれるッ!」

「クソガキが……」

 

 ここまでされて、答えを教えられても受け入れることが出来ないキャロルを雷が吐き捨てる。

 宙に浮いていたキャロルがこちらを向き、錬金術の燐光が彼女を淡く輝かせた。装者たちが臨戦体勢に入る。

 エルフナインが叫ぶ。

 

『駄目だよ!そんなことをしては、パパとの思い出も燃え尽きてしまう!」

「ありったけの思い出を焼却し、戦う力へと練成しようというのかッ?!』

 

 キャロルの雄たけびと共にエネルギーが上昇していくのが肌で感じられる。

 

「キャロルちゃん何を?!」

「復讐だッ!」

 

 キャロルが腕を振るい、指先から延ばされた高出力の弦が響たちを薙ぎ払う。全員がビルの外壁や道路に叩きつけられた。

 

「……もはや復讐しかありえない」

「復讐の炎は……すべての思い出を燃やすまで、消えないのかッ?!」

「何で世界を見ようとしない……目を向けようとしないッ?!」

「エルフナインは、復讐なんて望んじゃいねえッ……!」

「うん……!エルフナインちゃんの望みはッ……!」

 

 響が立ち上がり、エルフナインから託されたイグナイトモジュールに手をかける。それを見てクリスが驚きに目を見開く。

 

「イグナイトって、本気かッ?!」

「相手に限界を知られてる、分の悪すぎる賭けだけど……」

「だが嫌ではない……。この状況ではなおの事ッ……!」

 

 イグナイトの全開出力がキャロルに知られているのは承知の上。だが、彼女の力押しで疲労困憊の今、大出力の攻撃を減衰させて受けるダメージを減らし、堕ちた火力を底上げするにはこの手しかない。まだ手がないといえば嘘になるが、今はこれが最善手だ。

 だが、それでも不安は残る。その不安を、響が振り切った。

 

「この力は、エルフナインちゃんがくれた力だ!だから疑うものかッ!イグナイトモジュールッ!」

「「「「ダブル抜剣ッ!」」」」

 

 ダブル抜剣。それは、モジュール起動のウイングスイッチを二回連続で押し、三つあるシステムのセーフティーを二段階解除することである。起動の証として、『ダインスレイフ』のシステム音声が二つ重ねてなった。

 白の燐光を身に纏い、全員のギアが黒く染まる。

 響が一番槍を突きつけるが、キャロルはそれを防御陣で受け止め、いなす。クリスがその隙をついてガトリングで弾をばら撒くが、指先からは伸ばされる弦がそれを弾いた。クリスの弾幕を注視して空いた背中を翼が斬りかかった。しかし、キャロルは即座に防御陣を展開してしのぎ、逆に弾き飛ばす。雷は展開された防御陣に電光の速度で肉薄。ゼロ距離で稲妻の槍をあさっての方向に放ち、曲げて側面を狙うというフェイントをかけるももう一枚張られた防御壁に受け止められてしまう。

 本部ではイグナイトモジュールの稼働限界を示すカウントダウンが始まっていた。二段階解除、ニグレドからアルベドへとシフトしている。そのおかげでカウントダウンが加速している。

 響の乱打が、クリスの弾幕が、翼の斬撃が、雷の稲妻がキャロルに向けて四方向から放たれるも、彼女はそれを冷静に対処する。吹っ切れたおかげでさっきよりもに精密性が上がっていた。

 

「フン……。力押し、実にらしいし可愛らしい……」

 

 さっきまでの自分に突き刺さる言葉を吐きながら、攻撃をすべて弾き飛ばした。最も接近していた響が吹き飛ぶも、翼がすぐに受け止める。

 雷が額から稲妻の放出をやめ、

 

「やっぱり限界が知られてるとキツイか……!」

「次はこちらが歌うぞッ……!」

 

 歌と共に錬金陣が、それも極大のものが展開される。余波だけで周囲一帯を吹き飛ばしそうなほどだ。

 翼が驚愕する。

 

「さらに出力を?!」

「一体どれだけのフォニックゲインなんだよ?!」

「ッ?!響ッ!」

 

 何か通信を拾った雷が叫び、響が頷く。彼女の瞳を見て、勝ちの二の手が見えたことを確信した響が更にモジュールに手をかける。

 

「待っていたのはこの瞬間ッ!」

「「抜剣ッ!オールセーフティーッ!」」雷と響の声が重なる。

「「「「リリースッ!」」」」

 

 さらにもう一つのセーフティーを外し、全開出力で四つの絶唱を重ねて束ね、キャロルの絶唱とぶつける。だが、三段階目、ルベドへと移行したことで更にカウントは加速し、その表示も乱れている。

 四つの絶唱、S2CA・ペンタストライクで抑え込むも、じりじりと押されていく。

 

「まだだ!もう少しッ……!」

「ただの一人で七十億を超えるオレの絶唱!たった四人ぽっちで越えられると思うなッ!」

「四人ではないッ!七人だッ!」

「来たッ!響!」

「何とか……持たせる……!」

 

 押されていた四人だったが、遠方から聞こえてきた声に雷が反応し、一時的にトライバーストへとS2CAを変更する。そしてそのあとすぐに、マリア、調、切歌の三人の絶唱が続いた。

 それを聞いて雷が胸に手を当て、叫ぶ。

 

「チェンジセプテットッ!オーバーライズッ!」

 

 雷の叫びと共にケラウノスがフォニックゲインの光を放ち、バラバラだった七つの絶唱が七重奏となり、共振して出力が引きあがる。彼女の絶唱特性である『感情の伝播』を応用し、想いを一つとすることでバラバラだった旋律を一つに調和させ、七重奏へと昇華させたのだ。

 

 七つの旋律が束ねられる中、マリアはウェルの事を思い返していた。

 シャトーが光に飲み込まれる直前、ウェルを背負っていたマリアは解剖の光に飲み込まれようとしていたのだ。彼を捨て置けば助かることが出来る。だが、雷のことを思うマリアは、彼女の願いを受けて英雄となったウェルを捨てることが出来なかった。

 

「マリアッ!」

「早くしないと間に合わないデスよぉ!」

「ッ」

 

 調と切歌が急かすが、どう考えても間に合いそうにない。光はすぐ後ろまで来ているのだ。

 諦めかけていた、その時だった。突然、背中が軽くなった。何が起きたかは分かっている。ウェルが落ちたのだ。それも、自分から。

 

「ウェル?!」

「早く行けよッ!僕の英雄的行いを無駄にしたいのかッ?!」彼は荒い息を吐きながら床に座り込み、左腕でシャトーを掌握して防壁を作り上げた。いずれ分解されるだろうが、時間稼ぎにはなる。

「だがッ……」マリアが二の句を告げる前に、ウェルが割って入った。彼は優しい声で、

「マリア……僕はあの子の英雄になれたかな……?」

「ああ、お前はあの子の……」

 

 その次の言葉を、ウェルに聞かせることは出来なかった。彼は自身とマリアの間に壁を作り、分断したのだ。光に飲み込まれる直前、ウェルは上を向き、独りごちた。

 

「こういう終わりも悪く無い……か」

 

 そのつぶやきは、誰にも聞かれることはなかった。

 

 七つの旋律が雷によって奏へと変化する。その力は、キャロルの放つ七十億のフォニックゲインにも伝播した。七十億の旋律が、雷の為した七重奏に組み込まれる。

 絶唱を束ねる響が叫んだ。

 

「S2CA・へピタコントラクトッ!七つと七十億の絶唱をガングニールで束ねッ!」

「ケラウノスで重ね、調和ッ!共振増幅しッ!」

「アガートラームで制御ッ!再配置するッ!」

 

 響と雷、マリアのギアが変形、それぞれの役割に最適化した形となる。響のマフラーが七色へと輝きはじめ、装者全員を包み込む。ルベドへと移行したイグナイトモジュールの限界が近い。これが切れてしまえば、ギアが膨大なフォニックゲインに耐えきることが出来ず、全ては水泡に帰してしまうだろう。

 エルフナインが手を伸ばす。

 

「最後の、奇跡を……」

「まさか……オレのぶっ放したフォニックゲインを使って……?!」

 

 七色の輝きが限界まで膨れ上がる。

 響が叫んだ。

 

「うおぉぉぁぁぁッ!」

「「ジェネレイトォォォッ!」」

「エクスゥッ!ドラァァァァイブッ!」

 

 その拳を天に向かって突き上げ、七色に輝く七つと七十億の絶唱が竜巻の様に天へと昇る。その旋風は雲を突き抜けた。

 キャロルが驚愕した。

 

「そ、そんなっ……?!」

「これが……奇跡のカタチ……」

 

 エルフナインは奇跡を目撃し、力尽きる。

 絶唱の嵐が止み、天に空いた雲の穴から太陽の光と共に七人の純白の戦姫が降臨する。




チェンジ○○・オーバーライズ……○○には合計人数が入る。
 雷の絶唱特性を利用したコンビネーションアーツ。周囲に散らばっている、または途中から絶唱が追加されるときに使用する。それらの状態でも絶唱を放つことが出来るがそれはバラバラの旋律であり、一つの旋律ではない。だが、雷の絶唱特性である『感情の伝播』で心を重ねることで調和し、さらに出力を共振増幅させることが出来る。
 また、敵の放ったフォニックゲイン由来の攻撃を強引に調和させ、引きずり込むことが可能。しかし、これには絶唱を束ねることのできる響の存在が必要不可欠となる。
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