戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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パヴァリア光明結社の錬金術師はキャラがいいので好きです。何というか確固たる信念を感じる。ただし全裸!てめぇはダメだ。


欧州の闇

 装者たちの制圧の後、国連軍がテントを立て、そこで疲弊した国民たちに水や食事、毛布と言った簡単なアイテムを配り、負傷したものを治療しているのを雷と響、翼、クリスはフェンス越しに見ていた。配給所には多くの人々が並び、親を負傷した子の泣く声や逆にこの無事を天に祈る親の姿が見える。

 S.O.N.G.の隊服を着た響が対応が速かったことに安堵する。

 

「良かった……国連軍の対応が速くて……」

「そうだな……」翼も同意した。

「……大丈夫、クリス?」

 

 雷がフェンスを力強く握り、悔し気に歯噛みするクリスを気に掛けた。だが、クリスは声をかけた後すぐにそっぽを向き、「いや、何でもねえよ……」と、答えた。その表情はどう考えても何垢ある物だった。しかし、自分から話そうとしないものを問い詰めてもお互いに不快なだけだ。故に雷は問い詰めなかった。

 そんな彼女達の背後に、マリアが運転し、荷台に調と切歌を乗せた車が止まる。

 切歌は荷台で立ち上がり、啓礼のポーズをして言う。

 

「市街の巡回完了デース!」

「乗って。本部に戻るわよ」

 

 マリアが運転席から雷たちに声をかけた。

 車は何もない荒野のような場所にある唯一舗装された道を走る。荷台に座っているため、走った際に発生する風を受けながら、

 

「私達を苦しめた、アルカ・ノイズ……錬金術の断片が、武器として、軍事政権にわたっているなんて……」

「錬金術師が関わってるのが厄介だよねぇ……」

 

 雷が自身の考えを口にした。

 この紛争にも姿を確認しているわけではないし、協力か、それとも所属していたのかは知る由もないが、少なからずパヴァリア光明結社の錬金術師、もしくはそれに類するものが関わっているだろう。ただの人間がアルカ・ノイズを製造できるわけがないからだ。

 

「パヴァリア光明結社……」

 

 響がつぶやき、その名を聞いたときのことを思い返す。

 少し前、ここに来る前のブリーフィングの時の事。

 制服姿の響たちがブリッジに到着した。

 

「遅くなりました!」

「揃ったな、早速ブリーフィングを始めるぞ!」

「センパイ!」

「マリア……そっちで、何かあったの?」

 

 弦十郎が言うと同時にモニターにテレビ通信がつながった。画面には緒川に翼、マリアが写っている。調の問いかけを、全員に向けて答えた。

 

『翼のパパさんの特命でね、S.O.N.G.のエージェントとして、『魔法少女事変』のバッググラウンドを探っていたの』

『私も知らされていなかったので、てっきり寂しくなったマリアが、勝手についてきたとばかり……』

マリアが顔を赤くして叫んだ。『だから!そんなわけないでしょ?!』話の続きを聞きたい雷が目をじとーっと半目にして、「いちゃつきを見せるのは終わってからにしてくれません?」と、こぼした。

 苦笑いを浮かべた緒川が仕切り治す。

 

『マリアさんの捜査で、一つの組織の名が浮上してきました。それが、パヴァリア光明結社です』

 

 パヴァリア光明結社。それは、キャロルのシャトー建造を裏から支援し、ヨーロッパを裏から暗黒大陸と言わしめる要因ともされている。しかもその手はF.I.Sにまで伸びていたらしく、端的に言えば『フロンティア事変』と『魔法少女事変』。二つの戦いを裏から手を引いていた組織ということになる。

 しかも厄介なことに、存在を掴むことは出来てもしっぽを掴むことが出来ないでいた。

 だが、ここに進展があったのだ。

 

『マリアさんが掴んだ情報をもとに、調査部も動いてみたところ……』緒川が一つの画像を表示させる。響が真っ先に反応した。

 

「アルカ・ノイズ?!」

「この建物の感じ……南米のバルベルデか……」

「バルベルデ?!」

 

 雷があごに手を当てて答えた。クリスが過剰に反応し叫ぶ。

 如何やらあたっていたようだ。緒川は頷き、続ける。

 

『雷さんの言う通り、撮影されたのは政情不安定な軍事政権国家、バルベルデ共和国』

「装者達は現地合流後、作戦行動に移ってもらう」

 

 アルカ・ノイズがいるとなれば行動するほかない。弦十郎の指示のもと、彼女達は行動を起こした。

 響には、その時クリスが見せた反応が何よりも気になっていた。

 そうこうしているうちに、港湾部に接岸している本部に到着した。車を降りた後、砂ぼこり舞う戦場にいたため汚れたからだをシャワーで洗う。

 温かいお湯が彼女達の柔肌を伝っていく。

 

「S.O.N.G.が国連直轄の組織だとしても、本来であれば、武力での干渉は許されない……」

「だが、異端技術を行使する相手であれば、見過ごすわけにはいかないからな」

「アルカ・ノイズの軍事利用……」

「ノイズが元々兵器だったんだから、それの派生であるアルカ・ノイズもありえなくはないと思ってたけど……」

「リンカーの数が十分にあれば、私達だって、もっと……!」

「ラスト一発の虎の子デス。そう簡単に使うわけには……」

 

 シャワーを浴び終え、頭をタオルで拭きながら出てきた切歌に響が駆け寄り、その手を握る。因みにお互いシャワーを浴びた直後なので全裸だ。

 

「大丈夫だよ!何かをするのに、リンカーやギアが不可欠ってわけじゃないんだよ?!さっきだってヘリを守ってくれた!ありがとう!」

「な、なんだか照れ臭いデスよ~!」顔を上下させながら、切歌が頬を赤くする。

「じー……」そんな彼女を、同じく浴び終えた調が湿っぽい視線を向けて睨んでいた。

「コラ響!せめて体を隠せ!」

[

[おぶっ?!」

 

 雷が響にタオルを投げつけ、仁王立ちで叱る。因みにそういう彼女は例によって全裸だ。そんな彼女を見て、三人はそろって同じことを考えていた。

 

(大きい……)(でっかいデース……)(いいなぁ……)「?」

 

 自身の胸を見つめる三人(調なんかは自身の平坦な胸を恨めしそうに見ている)の思惑に気づかず、小首をかしげる。因みに彼女のサイズは装者全体で上から三番目、身長比で見れば二番目だ。サイズ差は五センチもない。

 響は普段から一緒に入浴しているため見慣れていたと思っていたが、ここまでまじまじと見とことは無かったこと。切歌は身長が同じくらいなのに大きさが違うこと。調は少し背が小さいだけでここまで違うこと。それらのおかげで雷のお叱りは右から左に流れていくが、その目は彼女の一部を凝視していた。

 姦しい彼女たちに背を向け、クリスが深刻そうな顔をする。

 

「くそったれな思い出ばかりが、領空侵犯してきやがるッ……!」

 

 かつての記憶が彼女を苛んでいた。だが、そんな思考を強制的に振り切らねばならない事態が発生する。ブリッジから招集がかけられた。常に運用できる装者である雷と響、翼、クリスは素早く、しかし丁寧に水滴をふき取り、隊服に着替えてブリッジへと向かった。

 

「新たな軍事拠点が判明した。次の任務を通達するぞ。目標は、化学兵器を生産するプラント。川を遡上して、上流の軍事施設へ進攻する。」周辺への被害拡大を抑えつつ、制圧を行うんだ!」

「「「「了解!」」」」

 

 四人は緒川の操作する小型ボートに乗り込み、目的地へと急行する。

 クリスはかつて、ここに住んでいた時のことを思い出していた。両親が死に、炎の中で泣き叫ぶ自分。そんな記憶が脳裏を埋め尽くしているのを対面に座る翼が見抜いた。

 

「昔の事か?」

「ッ?!……ああ!昔の事だ!だから気にすんな!」

「詮索はしない。だが今は前だけを見ろ。でないと……」

 

 二の句を告げることは出来なかった。

 不意に側面から探照灯がまばゆい光を放ち、光の発生源である装甲車から機銃が放たれる。練度不足から今のところ命中弾はないが、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるもの。いずれは当たるだろう。

 そうはいかないと緒川が舵を取り、宣言する。

 

「状況!開始ッ!」

「一番槍、突貫しますッ!Balwisyall Nescell Gungnir Tron」

 

 ボートを背面飛びで離脱し、ガングニールの聖詠を歌うことでギアを纏う。

 響の拳が装甲車の側面に突き刺さり、吹き飛ばす。その音に気が付いたのか、施設の照明が点灯、周囲を明るく照らす。そして地面の装置が起動し、アルカ・ノイズが召喚された。だが、召喚された隙をつき、

 

「Voltaters Kelaunus Tron」

 

 ケラウノスを纏った雷が召喚されてすぐのアルカ・ノイズを天羽々斬を纏った翼と共に撃破した。同じくイチイバルを纏っているクリスが放つ弾丸がハチの巣にしていく。八尾の稲妻の龍が地表を蹂躙し、刃が兵士のライフルを斬り刻み、矢がミサイルがごとき弾速で撃ち抜く。

 戦闘の衝撃で施設の一部が破壊され、少年が押しつぶされそうになったが響が間一髪で助け出した。

 

「ええい!こうなったらもろともに吹き飛ばしてくれる!」

 

 この施設の所長がテーブルの上にあった金色のスイッチを押し、超大型アルカ・ノイズが召喚された。

 

「電磁波の乱れ……!超大型か!」

 

 だが、電磁波の乱れをすぐさま把握した雷が宙を飛翔し、アルカ・ノイズの頭部をマーキング、脚部ユニットを展開し、高速回転しながら踵落としを決める。

 

「でやぁぁぁぁッ!」

 

       『稲玉落とし』

 

 踵から落とされた雷が脳天から真下までを一気に貫く。さらに地表を蹂躙していた雷の使役する八尾の龍が一斉に喰らいつき、数を増やそうとしていたアルカ・ノイズは即座に消滅する。

 だが、召喚された超大型アルカ・ノイズは一体だけではなかった。工場の上空にももう一体いたのだ。あれが落下すればあたり一面汚染されるだろう。

 

「何とかしないと!」

 

 響がバンカーユニットを変形させ、マフラーに光をたなびかせながら跳躍、ミサイルのように落下してくるアルカ・ノイズの鼻っ柱に拳を叩きつけ、ユニットの内部機関が回転、パイルバンカーの要領で衝撃波を打ち込んだ。

 宙に真っ赤な花が咲いた。




パヴァリア光明結社のオリジナル錬金術師は結構早く登場します。しかも退場も結構後だ。(大体サンジェルマンと同じくらい)
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