戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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カリオストロは漢臭くって好きです。

書くときにアニメを見ながらなのでティキの高音が耳ん中でキンキンする。


乙女のゲンコツ、漢の矜持

 夜も更けたころ、パヴァリアの錬金術師たちは神の力を得るために必要な星の門を開けるべく、レイラインの重要地点となる神社に訪れていた。

 ティキが夜空を見上げ、自身が観測した星空を投影する。万歳するように両手を上げた。

 

「ななつのわくせいと、ななつのおんかい……ほしぞらは、まるでおんがくをかなでるふめんのようね!」

「始めようか、開闢の儀式を……」

 

 サンジェルマンが一歩進み、服をはだけさせて背中をあらわにする。彼女の真っ白な背中に、アダムが手をかざした。

 彼の手のひらが光を放つ。サンジェルマン白門の表情を浮かべて痛みをかみ殺す。傷一つなかったサンジェルマンの背中に円状の紋章が出来上がる。そこからは赤い血が垂れていた。

 そんな彼女をヨハンとカリオストロが悲痛な目で見ていた。

 アダムがサンジェルマンの肩越しに彼女の顔を覗き見る。

 

「そろそろ選ばなくてはね……、捧げる命はどれなのか……」

「ッ」

「フッ……」

 

 アダムは誰にも聞こえないように小さく囁き、顔を引っ込めて帽子をかぶりなおす。

 

「さぁてシンフォギアだよ、気になるのは」

「あーしが出るわ。儀式で動けない人と負傷者には、任せられないじゃない?」

「プレラーティは任せておけ」

「あるのかなぁ?何か考えでも」

 

 自分から動くといい、厭味ったらしい言動をダイレクトにぶつけてくるカリオストロにアダムが不審な目を向けた。

 だがカリオストロはそれをさらりと受け流す。

 

「相手はお肌に悪いほどの強敵、もう嘘はつきたくなかったけど、搦手で行かせてもらうわ!」

 

 そう言ってどこからともなく試作止まりだったアルカ・ノイズのジェムが入った筒を取り出した。

 

○○○

 

 改修が完了したシンフォギアのペンダントが五本載ったトレーをエルフナインが差し出す。装者たちは各々自分のギアを手に取って眺めている。確かに改修されているらしいが見た目に変化はない。

 

「これが……」

「はい。急ごしらえですが、対消滅バリアシステムを組み込みました」

「見た目に変化はないけれど……」

「これで賢者の石には負けないのデス!」

「あとは反動汚染がどれほどの物か……かな」

「ところで、翼とクリスは……?」

 

 マリアが二人がいない事、そしてペンダントも二本足りないことに気づいた。

 エルフナインが笑顔で答える。

 

「お二人には先に渡しておきました。お知り合いに……会いに行くそうなので……」

 

 彼女たちは―特にクリスの―お知り合い……バルベルデで足を失ったステファンと、かつてクリスの姉代わりだったソーニャと東京駅で会っていた。

 最新式の義足を装着し、車椅子に乗った彼らとクリス達がカフェでコーヒーを飲んでいた。

 ステファンは顔を合わせようとしないクリスに「今日の夕方の便で帰るんだ。でもその前に、このことを伝えたかった」と言った。

 義足の無機質な輝きがクリスの目に映る。

 

「ああ……」

「術後の経過もいいから、すぐにリハビリも始められるって」

「そうか……」

 

 クリスがしょぼくれているのが当たり障りのない返事に見て取れた。

 それとは反対にステファンの声色は明るい。

 

「内戦のない国ってのをもう少し見ていたかったけれど、姉ちゃんの帰りを待っている子たちも多いからさ

「?」

「彼女は雪音のご両親の遺志を継ぎ、家や家族を失った子供たちを支援しているそうだ」

 

 彼の言っている事の意味が分からないクリスは頭の上にはてなマークを浮かべていたが、翼が補足した。

 クリスが驚いた顔をソーニャに向ける。

 

「え……」思わず声が漏れる。

(パパとママの遺志を継いで……。分かってた、ソーニャお姉ちゃんの所為じゃないって……。だけど……なのに……)

 

 クリスが何かを言おうと口を開こうとした瞬間、爆発が発生した。窓ガラスが吹き飛び、そこからアルカ・ノイズが侵入してくる。

 

「取り込み中だぞッ!」

「アルカ・ノイズッ……!二人は早く非難をッ!」

「むしゃくしゃのぶつけどころだッ!」

 

 本部からの通信で雷たちも現場に向かってきていることがわかった。翼たちも即座に状況に対応する。

 クリスがイチイバルを起動させる。

 

「Killter Ichaival Tron」

 

 正面からの線制圧ではなく、跳躍して射角を取ってからの面制圧で矢をばら撒き、一気に数を減らしていく。

 

「すごい……」

 

 クリス達の活躍にソーニャたちは足を止めてしまった。爆発とアルカ・ノイズによる分解によって脆くなった屋根が崩落する。しかも、屋根は彼女たちの頭上にあった物だ。

 翼たちは内部にアルカ・ノイズを入れないように戦場を外に移していた。すると突然空からうねりながら狙いを違わずに彼女たちに飛来する光弾を視認する。翼が直撃弾のみを最小限の動きで防ぐ。

 煙が晴れるとファウストローブを纏ったカリオストロがやって来ていた。

 

「のこのこと誘き出されたわね?」

 

 今回は複数ではなく単騎。そのことにS.O.N.G.内で混乱が広がる。

 カリオストロの放った光弾を二手に分かれて避ける。

 

「雪音!建物に敵を近づけさせるなッ!逃げ遅れた人たちがまだッ……!」

「わあってるッ!」

 

 威勢よく返事したクリスは足を止めてカリオストロに矢を打ち込んでいくが、彼女はクルクルと踊るように回避した。そして跳躍したと思うとクリスの背後に回る。

 すぐ後ろを向いて銃口を向けるが、すでにカリオストロは距離を取っていた。

 

「ちょこまかとぉ!」

「口調ほど悪い子じゃないのね?」

「なッ」

 

 カリオストロの揶揄いにクリスの頬が赤くなる。

 その隙をついて右腕を彼女に向け、四門の砲口から光線を放った。四本の光がクリスを襲う。

 

「雪音ッ!」

 

 翼が救援に向かおうとするがアルカ・ノイズによって道を塞がれ、分断されてしまう。地面を転がるクリスをカリオストロは見下ろしながら悠々と近づいてくる。

 

「嫌いじゃないけど殺しちゃお……ッ?!」

 

 その瞬間、彼女に向かって蛇腹の剣が振り下ろされた。カリオストロは咄嗟に跳躍して回避する。

 

「大丈夫?!クリスちゃん!」

「おせぇんだよ馬鹿……」

 

       『α式・百輪廻』

       『切・呪りeッTぉ』

       『雷乱神楽』

 

 調の小型の鋸、切歌の鎌の刃、雷の稲妻の矢が翼とクリスを分断していたアルカ・ノイズを殲滅する。

 

「すまないッ!轟、月読、暁ッ……!」

「いいって事ですよ!」

「たまには、私達だって!」

「そうデス!ここからが逆転劇デス!」

「そうねぇ!ここからよねぇッ!」

 

 カリオストロが試作型アルカ・ノイズのジェムを二つ取り出し、雷と響、切歌、そして翼と調を二手に分かれさせて亜空間に閉じ込めた。

 

「翼さん?!」

「調?!」

「しらちゃん?!」

 

 二組の姿がこの世界から消失する。この場にクリスとマリアだけが残った。

 これではザババのユニゾンは使えない。

 

「なにを?!」

「うふふ、紅刃シュルシャガナと、碧刃イガリマのユニゾン……。プレラーティが身をもって教えてくれたの……。気を付けるべきはこの二人って」

「そりゃまたずいぶんと……」

「私達もなめられたものね……」

 

 カリオストロが両腕の四門の砲口、計八門を二人に向ける。クリスがそれらを打ち落とし、煙の中からマリアが飛び出した。手には短剣を構えている。

 

「この距離なら飛び道具は……」

「フッ!」

 

 マリアの振った斬撃を両腕を顔の前で構えるピーカブースタイルに移行した後屈んで避け、右の拳に備わった赤い宝石のナックルダスターにエネルギーを込める。そしてマリアのがら空きな腹部にアッパーカットを叩きこんだ。

 

「まさかの武闘派ぁァァァッ!」

 

 こぶしを叩きこまれたマリアの体が上に飛ぶ。

 

「マリアッ!」

 

 クリスが吹き飛んだマリアのほうを向いた隙を見逃さず、素早い身のこなしで懐に入り込む。そして反撃のタイミングを与えずに全体重を乗せたボディーブローを打ち込んだ。

 クリスの体がくの字に曲がり、駅の外壁を貫通する。

 

「ガッツポーズ!」

 

 カリオストロが笑顔で拳を掲げる。

 カリオストロの戦闘スタイルは光線や光弾による砲撃戦ではない。ピーカブースタイルから放たれる鋭いパンチこそ、彼女本来のスタイルなのだ。

 

「閉じ込められたデス!」

「これって、あの時と同じッ!」

「探知役がいないけどね……」

「故に中心の制御機関を探れない以上、力任せに突破するしかあるまいッ!」

「さっきの、特訓……」

 

 頭脳はあっても目と耳がないため廻すことが出来ない以上、手当たり次第に行くしかない。閉じ込められた組が体当たりでぶつかっていく。

 外壁を突き破って中に入ってしまったクリスが起き上がると、目の前には車椅子が挟まって立ち往生したステファンたちがいた。

 

「まだこんなところに……!」

「ステファンの……車椅子がッ……!」

「ごめんね?巻き込んじゃって」

 

 煙の中からカリオストロが余裕いっぱいで現れた。両のナックルダスターに光が集まる。

 

「すぐにまとめて始末してあげるから……」

「そうはさせ……ッ」

 

 想像以上にダメージをもらっていたらしく、立ち上がろうとしていたクリスが膝をつく。

 勝利を確信したカリオストロが獰猛な笑みを浮かべた。だが、勝負とは最後までわからないものだ。ステファンは気合の雄たけびと共に立ち上がり、転がっていた金属パイプをカリオストロに向けてけり込んだ。

 

「自棄のやっぱちッ?!」

 

 パイプはカリオストロの顔面激突コースをまっすぐ進んで行き、彼女の攻撃体勢を崩させる。

 その隙をついてクリスが矢を放った。カリオストロを離脱させることに成功する。そしていきなり戦いに入り込んできたステファンに怒鳴った。

 

「何のつもりだッ?!」

 

 ステファンがソーニャの助けを借りてクリスと向かい合う。

 

「クリスがあの時助けてくれたから!俺も今、クリスを助けられたッ!」

「ッ」

「なくした脚は……過去はどうしたって変えられない!だけどこの瞬間は変えられるッ!きっと未来だってッ!」

「ステファン……」

「姉ちゃんもクリスも!変えられない過去に囚われてばかりだッ!」

 

 叫びと共に支えられていたソーニャの手を振りほどき、自立する。

 

「俺はこの足で踏みだしたッ!姉ちゃんとクリスはッ?!」

 

 彼の男として、未来を生きようとする者としての叫びに心が震えたクリスとソーニャが車椅子に置かれた彼の手に手を重ねる。

 

「これだけ発破かけられて、何時までも足をすくませてるわけにはいかねえじゃねえかッ!」

 

 外ではマリアがカリオストロの鋭く放たれるパンチを喰らって地面にダウンしていた。

 

「とどめよ!ッ?!」

 

 ステップを踏んで最後の一撃を叩きこもうとするカリオストロを赤い矢が妨害した。彼女は拳で矢を全て叩き落す。

 

「遅いッ!だけどいい顔してるから許すッ!」

 

 さっきまでとは打って変わって自身に満ち溢れたクリスの顔を見た。それだけですべてを許す。取り返すことが出来ると確信があるからだ。

 

「さっきのアレ、この本番にぶつけられるか?!」

「いいわよ!そういうの嫌いじゃない!」

「何をごちゃごちゃとぉぉぉ、そぉぉぉりゃッ!」

 

 大きなハートを指で引いた線で作り、投げキッスを投げた後、思いっきり振りかぶった拳を叩きつけて打ち出す。

 ハートの弾丸がクリス達に直撃し、炎で包まれた。カリオストロが笑みを浮かべる。が、煙が晴れると、ラピス相手には使えないはずのイグナイトを起動し、攻撃をしのぎ切ったクリスとマリアの姿があった。

 カリオストロが当然驚愕する。

 

「イグナイト……?!ラピス・フィロソフィカスの輝きを受けて、どうしてッ?!」

「昨日までのシンフォギアと思うなよッ?!」

 

 ナックルダスターをグローブ状に変化させ、ジャブに合わせて光線を放つ。だが、イグナイトによって強化された機動性によって二人に躱される。

 クリスとマリア、二人の歌がユニゾンし、出力が上昇する。マリアが蛇腹剣を振るった。カリオストロがグローブで受け流す。

 

(これってユニゾンッ?!ザババの刃だけじゃないのッ?!)

 

 彼女は驚きを隠せない。イグナイトを使用可能にしただけではなく、フォニックゲインを爆発的に引き上げるユニゾンまで使われているのだ。余裕を見せていられない。

 弦十郎の特訓の成果だ。“あの”準備運動の後、調と切歌の分断が予想されるため、いかなる組み合わせでもユニゾンできるようにしていたのだ。

 努力が結実したわけである。

 

(ラピスの輝きを封じたうえでユニゾンッ……!こんなの、サンジェルマン達にやらせるわけにはッ!)

 

 クリスの弾幕を拳を打ち合わせて生み出したハート形のバリアで受け止め、指向性を持った爆炎をカウンターで打ち放つ。

 

「やらせるわけにはァァァァッ!」

 

 両の拳を腰だめに構え、蒼いエネルギーを迸らせる。

 

「高質量のエネルギー……!まさか、相打ち覚悟でッ……!」

「あーしの魅力は……爆発寸前ッ!」

 

 グローブを一つに合体させ、エネルギーを地面に打ち込んで空へ飛ぶ。飛翔する彼女を追いかけるため、クリスとマリアはアームドギアとアーマーを変化させ、戦闘機を形作る。

 

       『Change †he Fu†ure』

 

 突貫してくるカリオストロを迎え撃つためにブースターを点火し、正面から激突する。赤と蒼、二つの光跡が夕日の空を駆け巡り、ぶつかり合う。

 

「うおぁおァァァッ!」

 

 最後の激突を両者同時に敢行する。膨大なエネルギーが空に放たれた。だが、装者たちには背中を押す者たちがいる。

 ステファンが叫ぶ。

 

「今を超えるッ……!」

 

 ソーニャも叫ぶ。

 

「力をぉッ!」

 

 二人の声援を受けて、クリスが更に出力を上げた。

 

「うあァァァァッッ!」

 

 カリオストロの断末魔が夕日に響く。大爆発が発生した。

 合体を解除したクリス達が地上に降り立った。が、力を振り絞った所為で膝から崩れ落ちる。

 

「やったわね……」

「あぁ……」

 

 暫くして亜空間の檻から分断された雷たちが帰還した。

 

「クリスちゃん!」

「マリア!」

「無事だったか、みんな!」

「ま、何とかな」

「……」

 

 調は一人落ち込んだ表情だ。

 

「姉さん……」

「……」

 

 いつの間にか調の隣にいた雷が黙って彼女の頭に手を乗せて撫でた。

 その日の夜、バルベルデへ帰国するステファンたちをクリス達装者全員で見送った。

 ステファンとソーニャが飛行機の窓から彼女たちを見つめる。

 

(クリス……)

(また、何時か……)

(また今度、絶対に……)

 

 クリスの顔に憂いは見えない。もう吹っ切れたようだ。

 飛行機が夜の闇に消えていく。

 

○○○

 

 また別の祠で、サンジェルマンの体にアダムが紋章を刻んでいく。

 

「やーられちゃったー、きえちゃったー!カリオストロはぁ、おほしさまになられたのよ~?ち~ん」

 

 

 彼女が苦痛に耐える中、ティキが報告の内容とはあまりにもかけ離れたかわいらしい声で言った思わずサンジェルマンが立ち上がる。

 

「そんな、カリオストロが……」

「選びやすくなったね?選択肢が一つ減った」

「ッ」

「贄とささげるはプレラーティ?ヨハン?このどちらかだ。丁度いいね、怪我をしてる方か、伸びしろがない方か」

「あなたは、どこまでもッ!」

 

 振り下ろされる手刀をアダムは容易く受けけ止める。

 

「ああ人でなしさぁ!まったくもって正しいね、君の見立ては」

 

 掴まれていた手を振り払われ、サンジェルマンが地面に転がる。

 

「アダムのひとでなしーろくでなしー!わるいおとこはいつもおんあのこにもてもてなのよね!」

「旧支配者に並ぶ力だよ?神の力は。手に入らないよ、人でなしぐらいじゃないと」

 

 少し離れた木の裏で、ヨハンが気を静めるためにサーベルの柄を力強く握る。そして柄から手を離した後、消えるように姿を消した。




ヨハンさんは弟子思いですので苦しんでるサンジェルマンを見ちゃいられれないんですよね。でも、ここで出て行けばすべてが台無しだから行くに行けないと言うね。
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