戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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誤字脱字を減らさねば!コメントを見てフォニックゲインを高める毎日。


ただ、普通の日曜日

 とある山岳地帯にある屋敷、その近くにある湖の桟橋にて一人の少女がソロモンの杖と呼ばれる完全聖遺物を手に持って佇んでいた。ネフシュタンの鎧を纏っていた少女は薬品工場でのことを思い出す。

 

(完全聖遺物の起動には、相応のフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。あたしがソロモンの杖に半年もかかずらったことを、あいつらはあっという間に成し遂げた。そればかりか、無理やり力をぶっ放して見せやがった)

 

 少女は歯を食いしばり、言葉をこぼす。

 

「バケモノどもめっ!」

 

 手に持つソロモンの杖を握りしめ、それを見下ろしながら愚痴を呟く。

 

「このあたしに身柄とギアの奪取なんてさせるくらい、フィーネはあいつとあのギアにご執心という訳かよ」

 

 脳内に今まで自分の身に起きたことが想起される。そよ風が憐れむかのように少女の髪を揺らす。

 

「そしてまた、あたしは一人ぼっちになるわけだ」

 

 朝日が昇り、少女の顔を照らしていく。不意に後ろを振り返ると金髪の女性が立っていた、おそらく彼女がフィーネと呼ばれる存在だろう。少女がフィーネに宣言する。

 

「分かっている。自分に課せられたことぐらいは、こんなものに頼らなくてもあんたの言うことくらいやってやらぁ」

 

 そう言って手に持っていた杖をフィーネに放り投げ、それを難なくキャッチする。少女は握りこぶしを作り、叫んだ。

 

「アイツ等よりもあたしの方が優秀だってことを見せてやる。あたし以外に力を持つ奴は、全部この手でぶちのめしてくれる!そいつが、あたしの目的だからなッ!」

 

 その言葉に、フィーネは満足そうに微笑んだ。

 

○○○

 

 目を覚ました翼は点滴をつけたまま、松葉づえをついて院内を歩き回っていた。奏の見た戦いの向こう側にあるものを見て、自分も同じところに立つためにはどうしたらいいのかと考えるたびに彼女の中に焦りが生まれる。通りかかった看護婦に見つかってしまう。

 

「翼さん、ICUを出たばかりなんです。これ以上は・・・」

「ッ!・・・すみません・・・」

 

 看護婦が翼に手を触れた瞬間、痛みのあまり窓にもたれかかってしまう。窓の外にはトラックを走る響と、その後ろを弦十郎との特訓で人並みの体力をつけた雷が走っていた。翼はそれを、眺めることしか出来ない。

 

 一方トラックを走る響は、この間振るったデュランダルの力を思い返していた。

 

(暴走するデュランダルの力。怖いのは、制御できないことじゃない。ためらいもなく、雷とあの子に向かって振りぬいたこと。私が、何時までも弱いばっかりに・・・)

 

 未来が足を止めて休むが、それを後ろから抜き去っていく。雷は鍛えたとはいえ胃腸は強くなっておらず、今にも腹の中に入っているものを吐き出しそうだ。未来と同じく足を止め、顔を青くしている。

 

(私は!ゴールで終わっちゃだめだ!もっと遠くを目指さなきゃいけないんだ!もっと遠くへ!遠くへ!)

 

 未来は吐きそうな雷を介抱しながら、そんな響のことを見つめていた。

 三人は汗を流すためにそろって入浴する。雷と響が湯船に腰掛け、未来が使っている形だ。雷はすでに吐き出してきたのかすっきりとした顔だ。未来が響に対して注意するように言う。

 

「もう!張り切りすぎだよ!」

「ごめん。考え事してたらつい・・・」

「響も私と同じで考え事してると周りが見えなくなるきらいがあるよね~」

「雷の言う通りだよ。やっぱり響は変わった娘」

「・・・まって!それ私も変わった娘扱いされてる?!」

「雷ほど変わった娘はそうそういないよ」

 

 一呼吸入れて響が申し訳なさそうに言う。

 

「日曜の朝なのにごめんね、付き合わせちゃって」

「気にしないで、私達と響の仲じゃない。・・・吐いちゃったけど」

「私も、中学時代を思い出して気持ちよかったー!」

 

 雷が微笑み、未来が伸びをして答える。未来の答えに響が驚き、雷は頬を引きつらせる。

 

「あれだけ走ったのに?!やっぱ流石だよー、元陸上部」

「うわー・・・。私には無理な世界だ・・・」

 

 その瞬間、未来が響の隣に腰掛ける。丁度雷の真反対だ。

 

「なんか、リディアンに入学してから変わったね」

「あ、それは思う!前は何かに頑張ったりとか好きじゃなかったもんね」

「うーん、そうかなぁ?自分じゃ変わったつもりはないんだけど」

「響、それを進歩っていうんだよ」

 

 未来が話題を切り出し、雷がそれに同調する。未来は隣に並んだ二人の友人の体を見て驚きの声を上げる。

 

「あれ?少し筋肉がついてるんじゃない?よく見たら傷だらけじゃないの。雷も健康的な体つきになってるし」

「やめて止めてやめて止めてー!」

「まって!未来!くすぐったいってばぁ!」

 

 未来は二人の体の隅々をまさぐっていき、あまりのくすぐったさに浴槽で足をばたつかせる。風呂から上がって下着姿になった未来は、同じような恰好の二人に提案した。

 

「ねぇ、今度フラワーでお好み焼き奢ってよ。日曜に付き合ったお返しということで」

「・・・響は自分の分に一番お金払うんじゃないかなぁ・・・」

 

 響が了承し、契約が成立した。因みに、お好み焼きだと雷は小玉の半分ぐらいしか食べれないので、一人で食べる方が実は損していたりするのだ。

 

○○○

 

 学校内で緒川から連絡が来た。雷と響にしか頼めないようなのだ。未来が近くに来ていることに気づいた雷は響に合図して、慌てて電話を切る。

 

「未来、どうしたの?」

「うん、今日これから買い物に行くんだけど、二人も一緒に行かない?その後にフラワーによってね」

「・・・ごめん。たった今、用事が入っちゃって。せっかく誘ってくれたのに、私、呪われてるかも」

「うん・・・。私も・・・なんだ。私の・・・所為なんだ」

「まって!ストップ!雷、ストップ!」

 

 階段の手すりに雷が頭を打ち付けようとするのを響が羽交い絞めにして阻止する。最近安定していた分、いきなりのことで驚いてしまって反応が遅れ、三回ほどすでに打ち付けた後だった。雷の額が赤くなっている。未来が暴れる雷を落ち着かせながら残念そうに言う。

 

「じゃあ、また今度ね」

「うん・・・」

「気にしないで!私も、図書室で借りたい本があるから、今日はそっちにする」

「ごめんね」

「ごめん二人とも・・・もう大丈夫だから・・・」

 

 未来は元のさっぱりとした性格に戻った雷から離れ、走っていく二人を見送ると、階段を上っていった。

 

○○○

 

 額に保冷剤を当て、包帯でぐるぐる巻きにした雷と響の二人は花束とフルーツの盛り合わせをもって、とある一室の前で深呼吸していた。意を決してドアのロックを解除する。

 

「「失礼します・・・!」」

 

 ドアを開けた瞬間、室内の状況に手に持つかばんをとり落としてしまう。二人は愕然としながら声を震わせる。

 

「まさか、そんな・・・」

「翼、さん・・・」

「何をしているの?」

 

 隣で何者かの声がした、翼だ。二人は振り返って、安否の確認をする。

 

「翼さん大丈夫ですか?!ホントに、無事なんですか?!」

「どこか怪我とかしていませんか?!」

「入院患者に無事とか、怪我がどうとか聞くってどういうこと?」

 

 翼が怪訝な顔をする、当たり前だ。しかし、二人の心配は収まらない。

 

「だって、これは!」

 

 響が部屋の中を指さす。そこには脱ぎ散らかされた服や下着、ゴミの類が散らかっていた。その部屋の今の主、翼が自分のした事に引いている。

 

「私たち、翼さんが誘拐されちゃったのかと思って、二課の皆さんがアメリカとかが陰謀を巡らせてる可能性があるって言ってたので・・・!」

 

 まくし立てるような雷の言葉に、だんだんと翼が顔を赤くする。実は途中で気付いていたのだが、なんか面白くなってきたので続けていたのだ。ついに響が気付いた。

 

「えっ?あー・・・えっと・・・」

 

 二人して、散らかった翼の病室を掃除することになった。

 

 

 




今回雷が不安定になったのは、先に未来と約束していたのに翼のお見舞いに行かねばならないという状況になってしまったことへの理不尽さからです。
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