戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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長い!

VSヨハン!


戦姫と錬金術師の共同戦線

 サンジェルマンが神出づる門を完成させるため、鏡写しのオリオン座の中心地点の神社に訪れていた。ここの防衛を任されている黒服のエージェントを錬金術で撃ち倒し、魂を贄と変えながら歩みを進める。

 一人撃つたびに今まで数えてきたカウントが一つづつ上昇していく。

 

「七万三千八百八……七万三千八百九……七万三千八百十……七万三千八百十一……」

 

 ひたひたと裸足のまま石畳の上を歩いて行く。彼女は儀式の邪魔となる衣服を着ておらず、裸の上からコートを羽織ってボタンを留めているだけだ。

 黒服がいるという状況に、ティキが口を出す。

 

「うぞうむぞうがいもあらいってことは、こっちのけいかくがもろバレってことじゃない?どーするのよサンジェルマン!」

「どうもこうもないよ、吾輩の弟子ならね」

 

 儀式の間、彼女を守る騎士としてついて来ていたヨハンが咎める。その顔は自慢げではなく、申し訳なさが見え隠れしていた。

 サンジェルマンはもちろんと言うようにうなずき、コートのボタンをはずして脱いだ。コートが石畳の上に落下する。

 彼女は本殿の前で立ち止まる。

 

「今日までに収集した生命エネルギーで、中枢制御の大祭壇を設置する」

 

 サンジェルマンが神出づる門を開く前準備として、大祭壇を設置するための呪文を口にした。

 すると彼女の足元から命の輝きがあふれ出し、背中に刻まれたオリオン座が錬金陣で囲われ、対応する神社に向けてあふれ出した命の輝きが伸びていき、直撃した。

 

「それでも、門の開闢に足りないエネルギーは、第七光の達人たる私の命を燃やして……うッ?!」

 

 背中に描かれた星座がつながった。

 当然、これほどの大儀式がS.O.N.G.に捕捉されない筈もなく、一時帰宅していた装者たちにすぐさま伝達された。

 寮のベッドで眠っていた雷と響が目を覚ます。彼女たちの隣では未来はまだ寝息を立てていた。

 

「はい……はい……はい。わかりました」

「了解です。急ぎます」

「?」

 

 未来を起こさないように彼女たちは出来る限り小声で受け答えしていたが、流石に距離が近かったため起こしてしまったようだ。未来がゆっくりと瞼を開ける。

 

「響?雷?」

「行かなきゃ」

「行ってくる」

「待って!あ……ごめん……」

 

 響、雷の順でベッドの梯子を下りていく。が、雷が降りようとした瞬間に呼び止められた。彼女は二人の手を掴もうとしたが、引き留めるわけにはいかないと出した手を引っ込めようとする。

 だが、引っ込められかけたその手を雷が梯子の途中で、響は降りきっていたが手を伸ばして未来の手を掴む。

 

「大丈夫。誕生日だって近いから」

「響の誕生日、みんなで祝わなきゃだからね」

「すぐに帰ってくる」

「だから少しだけ、待ってて」

 

 二人の真っ直ぐな目に見つめられ、不安が吹き飛んだ未来が微笑みを浮かべて頷いた。

 

「うん……待ってる」

 

 二人はパジャマを脱いで私服に着替え、寮室を飛び出して行った。

 空が不吉の予兆を示すように雷が鳴り、荒れていた。

 サンジェルマンは自身の命をささげて神出づる門を開こうとしていた。自身の命を削っているためか、周囲一帯に彼女の絶叫が響く。

 

「サンジェルマン……」

 

 ヨハンは見ていることしか出来ない自分が悔しかった。直ぐにでも変わってやりたかった。だが、サンジェルマンと比べれば、自分ではここまでうまく出来なかっただろう。弟子に重荷を背負わせてしまう自分が堪らなく情けなく感じる。

 そんな彼女とは異なり、自分が愛する人のために役に立てるという感情しか持ちえないティキは満足そうに眼の前の輝きを眺めていた。

 すると、突然アダムのテレパスである固定電話のベルが聞こえてきた。ティキが儀式そっちのけで受話器を取る。

 

『順調のようだね?すべては』

「ほんと、サンジェルマンのおかげだよね!」

 

 受話器を耳に当てたまま、ティキは星空を眺める。

 

「てんちのオリオンざが、ぎしきにさだめられたアスペクトでむかいあうとき、ホロスコープに、もんがえがかれる。そのときといちをわりだすのが、わたしのやくめ!そして……」

 

 彼女の機械仕掛けの目が、空に輝くオリオン座の瞬きを捉えた。

 

○○○

 

 本部メインモニターでは、レイラインを流れる星の命を観測していた。このままいけばもう少しで鏡写しのオリオン座に星の命が流れ込むだろう。

 そんな時、八紘が通信を入れてきた。

 

「お父様?!」

『こちらの準備は出来ている。何時でも行けるぞ』

 

 雷立案のティマイオス作戦が許可され、何時でも発動できることを意味していた。作戦実行には問題がない。あるとすれば、シンフォギアの反動汚染の除去を担っているエルフナインの方だった。

 もう少しで作戦が展開されることを知ったエルフナインが焦る。

 

「急がないと!パヴァリア光明結社と雷さんの作戦に、ボクの手が追いついていないッ……!」

 

 儀式を進めるサンジェルマンの脳裏に、散って言った仲間たちと、この世に自分を生み出してくれた母親の顔が蘇る。

 

(カリオストロ……プレラーティ……二人の犠牲は無駄にしない……。そしてお母さん……。全ての支配を革命するために、私は……私は……!)

 

 星の命の輝きが、レイラインに沿って地面からオーロラのように伸びる。その輝きはこの光に膨大なエネルギーが宿っていることを示しているようだった。それぞれの光が鏡写しのオリオン座に対応する神社に収束する。

 

「ひらいた!かみいづるもん!」

「レイラインより抽出された星の命に、従順にして盲目なる、恋乙女の概念を付与させる……!」

 

 サンジェルマンが手を伸ばし、ティキが光の柱に吸い込まれ、天へと上る。そして上空で、彼女の中に神の力が流れ込んだ。

 現場に雷と響、切歌の戦闘可能な装者を乗せたヘリが急行する。

 

「見るデスよ!すごいことになってるデス!」

「え……あれが……?!」

「鏡写しのオリオン座デス!」

「ティマイオス作戦なら……大丈夫!」

 

 本物の儀式を目にし、立案していた雷自身も若干不安になっているようだったが、裏技以外に抜け道がないことを頭の中で再確認し、深く頷く。

 

「レイラインを通じて、観測地点にエネルギーが収束中ッ!」

「このままでは、門を超えて、神の力が顕現しますッ!」

『合わせろ弦ッ!』

「おおとも兄貴ぃッ!」

 

 弦十郎と八紘が承認用のキーを取り出し、備え付けられたカギ穴に差し込む。

 

「決議ッ!」

「「執行ッ!」」

 

 二つの場所で同時に鍵が回された。ティマイオス作戦が発動し、鏡写しのオリオン座を囲う神社に配置された要石により遮断。封印を解かれた要石は赤く閃光を放ち、レイラインから流れ込む星の命をせき止める。

 

「各地のレイポイント上に配置された要石の一斉軌道を確認ッ!」

「ティマイオス作戦!成功ですッ!」

「手の内を見せすぎたな、錬金術士。お役所仕事もバカに出来まい!」

 

 この作戦は、八紘の政治的手腕があってこそ成り立つもの。確かに立案したのは雷だが、この戦略規模の作戦を実現させたのは彼のおかげだ。

 星の命の流れが妨げられ、門が閉じられたことで宙に浮いていたティキが落下し、儀式に失敗したサンジェルマンの体から力が抜けた。

 

「サンジェルマン!」

 

 地面に倒れ込む直前で、ヨハンが彼女を受け止める。弟子の大願が妨げられたにもかかわらず、彼女のかをは何処か晴れやかだった。が、すぐにサンジェルマンを石畳にゆっくりと下ろし、サーベルを抜刀して上空から聞こえてきたローター音に向かって跳躍した。

 ラピスが輝き、ファウストローブを纏う。

 

「サンジェルマンを救ってくれて感謝する!だが、それとこれとは話が別だッ!」

「「?!」」

「Voltaters Kelaunus Tron」

「雷?!」

「姉ちゃん?!」

 

 雷はすぐさまギアを起動させ、ヨハンの振るったサーベルを下から蹴り上げることで防ぐ。振るわれた刃の直線上から斬撃が飛翔した。プロペラのギリギリを通り過ぎる。

 

「二人はサンジェルマンをッ!こっちは私が足止めするッ!」

「「分かった」デス!」

「君が吾輩の相手かッ!」

 

 雷がヨハンの腕をつかみ、虚空に電磁波の足場を形成、それを蹴って森の中に降下した。夜の闇に雷光の光跡だけが残る。が、それもすぐに霧散した。

 本部では装者三人が交戦状態に入ったことを報告する。

 

「ガングニール、イガリマ、ケラウノス。交戦状態に入りました!」

「響ちゃん、切歌ちゃんはユニゾンによるフォニックゲインの上昇を確認ッ!ですが、雷ちゃんは単騎ですッ!」

 

 だが、そんなことは本人が重々承知だった、故に、一つの策を持っていた。

 迫りくる地面にヨハンの体を叩きつけ、雷は落下の衝撃を受け流しながら地面を転がり、すぐさま構えない構えを取る。だが、相対するヨハンも衝撃を逃がし、サーベルを構えた。

 連続で放たれる炎や水、風の斬撃を避け、迎え撃ち、蹴り壊しながら相対する。

 

「君とは、立場が違えば良き友となれたと、今更ながら思うよ」

「同感……ッ?!」

 

 急接近してきたヨハンの振り下ろしを紙一重で避け、下ろされた腕を掴んで円の動きで受け流す。ヨハンの体が勢いのままに跳んでいった。彼女は空中で反転して着地する。

 

「そう思うなら、取引をしないか?」

「取引……?」

「ああ、サンジェルマンが勝てば、私はあなたの仲間になる」

「なるほど、ガングニールの装者が勝てば、吾輩が君たちの仲間になれ……と言う事かな?」

 

 面白い。と、ヨハンが笑った。

 策と呼べるようなものではないかもしれないが、単騎であって勝ちが確定出ない以上、響と切歌との信頼に賭けるしかない。当然、勝ちを捨てたわけではない。

 これは、意識を誘導するための物でもあった。

 

「交渉成立ッ!」

「ッ!」

 

 雷がイグナイトを抜剣した。ギアが黒く、鋭角的で攻撃的な姿となる。

 ヨハンがノーモーションで虚空から放たれた雷撃をサーベルの突きで置換分解しようとする。が、その直前に雷撃が閃光に変化し、目をくらまされてしまい、サーベルを携える右側への接近を許してしまう。

 完全に不意打ちであったために完璧な対応が出来ず、咄嗟に刃を振るってしまった。

 

「しまっ?!」

「らぁッ!」

 

 振るわれる刃を体を後ろに大きく仰け反ることでかわし、仰け反った反動で足を思いっきり振り上げた。優雅かつ鋭い雷の蹴り上げを、不意打ちで無くなったために対応が追いついたヨハンが最小限の動きでかわした。

 そして逆に無防備となった雷の背中に突きを放つ。が、彼女はバク転の要領で突きを回避するも着地の瞬間に突きを置換錬金して威力の底上げをした後ろ回し蹴りが雷の顎を撃ち抜いた。

 脳が激烈に揺さぶられ、足元がふらつく。

 

「がッ?!」

「ほう……イグナイトをアルベドの二段階開放することで防御を底上げ、意識が飛ぶのを防いだか……。だが、気絶を防いだだけで、脳が揺れたことに変わりはないだろう?」

 

 ヨハンの言う通り、ギアが白い燐光を纏っていた。直撃の寸前で二段解除したのだ。だが、脳は揺れたため膝ががくがくと震え、立つこともままならなくなる。地面に膝から崩れ落ちた。

 

「ま、まだ……!」

「投降してくれないか?吾輩は無抵抗な君を殺したくない」

 

 戦いの中でならともかく、戦闘継続能力のないものを攻撃するのはヨハンの矜持が許さなかった。だが、雷はそれを聞き入れず、近くにあった木によりかかりながら体を起こす。

 

「そうか……。君とは友でありたかったよ……」

 

 今までで最も鋭い突きが雷に向かって撃ち込まれ、突き刺さる。

 本部でも悲鳴が上がる。が、雷のイグナイト稼働時間を示すタイマーにノイズが走った。見ると、ギアから迸る燐光が白から赤に変わっている。

 ふらついていた足がしっかりと地面を掴む。アルベドからルベドへと移行することで強引にギアに剛性を持たせ、これからタイムアップまでの束の間だけまともに戦えるようにしたのだ。

 

「吾輩を、射程範囲に誘導してッ?!」

 

 放たれた突きは雷が体を半身にしたことによって躱され、背後の木に深く突き刺さっていた。直ぐに抜こうとする。

 が、雷はギアの全ユニットをフル稼働させて直後に肘撃ちによってサーベルをより深く刺し込まれ、同時に放たれた横蹴りによって強引に引きはがされる。

 

「ぐぅッ?!」

「でやぁぁあッ!」

 

 横蹴りからヨハンの体内に全ユニットから集められたプラスの稲妻が叩きこまれた。

 

「まだ……だァァァッ!」

 

さらに引きはがされて怯んだ懐に入り込まれ、鳩尾に右ストレートを喰らってしまう。

 この拳からは同じく全ユニットから集められたマイナスの稲妻を打ち込まれ、ヨハンの体内でプラスとマイナスの膨大な稲妻が融合。衝撃波と熱エネルギーがヨハンの体内で暴れまわった。

 

「がアァァァッッ?!?!」

 

       『雷轟散閃大千世界』

 

 体内で炸裂する圧倒的な威力にヨハンのファウストローブが解除され、使用限界が来た雷のシンフォギアが通常形態にシフトダウンする。

 雷がその場にへたり込んだ。ヨハンも地面に倒れている。

 暫くして、ヨハンが口を開いた。

 

「君……サンジェルマンがガングニールの装者の手を取った場合は、どうするか決めてなかったな……」

 

 ヨハンが何とか寝返りを打ち、夜空を見上げながら言った。向こうも決着がついたのだ。サンジェルマンが響の手を取るという形で。

 

「吾輩たちも、そうするべきか?」

「私は響と共に居たい。あなたはサンジェルマンを守りたい……。共に立つのに障害は……?」

「無いな」

 

 ヨハンがフッと笑い、錬金術で自身の体を修復、雷の脳震盪を回復させていく。双方とも少なくないダメージを負ったため、回復には時間がかかる。だが、その瞬間、遠方から男の声が聞こえてきた。ヨハンの表情が歪む。

 

「そこまでだよ」

「来たか、アダム……!」

「ッ」

 

 雷もティアラから放たれる電磁波でアダムと思わしき人物の出現を感知していた。その反応が現れると同時に天のオリオン座が光り輝き、宙から天の星々の命が流れ込む。

 

「裏技を使ってきたか……!」

 

 本来ならば絶体絶命の危機だろう。だが、雷、ひいてはS.O.N.G.メンバーに驚きはない。既に裏ワザとしてあり得ると予見されていたからだ。

 再び神出づる門が開いたことで、器たるティキの体が宙に浮かぶ。

 

『超高エネルギーきますッ!』

「止めて見せるッ!」

 

 響が殴りかかったが、アダムの帽子により迎撃され、撃ち落とされた。

 地面に落下した響にサンジェルマンが駆け寄る。

 

「おいお前!……教えてください統制局長!この力で本当に、人類は支配の軛より解き放たれるのですかッ?!」

 

 アダムが投擲し、帰ってきた帽子を受け取め、かぶった。

 

「出来る……んじゃないかなぁ?ただ、僕にはそうするつもりがないのさ、最初からね」

「くッ……。謀ったのかッ?!カリオストロを!プレラーティを!革命の礎となったすべての命を!」

「用済みだな、君も……」

 

 アダムの指パッチンが聞こえてきた。

 

「離れろ!早くッ!」

 

 雷が通信機越しに叫ぶが、もう遅い。

 ティキの口から、不完全ながらも、圧倒的な威力のレーザーが発射された。大爆発が響たちを包み込む。雷とヨハンも近くにいたのだが、雷が最大展開した斥力フィールドによって防いでいる。

 アダムがニヤリと満足げに嗤った

 

「この威力ッ……!」

 

 無事では済まない。全員がそう思っていた。が、爆炎の中から聞こえてきた終わりの歌を聴く。

 

「切ちゃんッ!」

「行くなッ!まだ回復しきっていない体で、爆心地のエネルギーに耐えられるわけがないッ!」

「でもッ!」

「絶唱をしていない君が、あの子よりも耐えられると思うのかッ?!」

「ッ……!」

 

 切歌の絶唱だ。雷はすぐにでも助けに行きたかったが、完全に治療を終えていないためヨハンに止められてしまう。雷は動けない自分に歯噛みした。

 切歌は絶唱で鎌を巨大化させ、刃を高速回転させることで盾としていた。

 光の中、彼女は叫ぶ。

 

「確かにあたしはお気楽デス!だけど!一人くらい何も背負っていないお気楽ものがいないと!もしもの時に重荷を肩代わりできないじゃないデスかッ!」

 

 ギアが体に負荷をかけ、血涙が流れる。

 

「絶唱……」

『駄目ぇッ!』

 

 レーザーの照射が止み、それと同時に限界を迎えた切歌の鎌が砕け散った。彼女の体が宙を舞い、真っ逆さまに落下した。

 

「切歌ちゃんッ!絶唱で受け止めるなんて無茶を……!」

 

 血涙を流し、朦朧とする意識の中、切歌はその瞳で響を見つめる。

 

「響さんはもうすぐお誕生日デス……。誕生日は、重ねていくことが大事なのデス……」

「こんな時にそんなことは……!」

「あたしは、本当の誕生日を知らないから……」

「あっ……」

「誰かの誕生日だけは……大切にしたいのデス……」

 

 切歌はレセプターチルドレンだ。本当の誕生日を知らない。だから本当の誕生日を迎える響を守った。その事実が、響にのしかかり、目に涙がたまる。

 すると、地面を空の瓶が転がった。

 

「リンカー……?」

 

 本部にいるエルフナインが食い入るようにモニターを見つめる。

 

「過剰投与で絶唱の負荷を最小限に?!だけど体への薬害が……!」

「直ちに切歌君を回収するんだ!救護班の手配を急げ!体内洗浄の準備もだッ!」

「はい!」

 

 ブリッジで調の悲痛な叫びがこだまする。

 切歌を抱える響の前に、サンジェルマンが立ちはだかった。

 

「二人には手を出させない……!」

「ほう?それが答かね?君が選択した」

「神の力、その占有を求めるのであれば、貴様こそが私の前に立ちはだかる支配者だ」

 

「サンジェルマンがアダムを敵と判断した。

 

「実にかたくなだねぇ君は。忌々しいのはだからこそ。しかし間もなく完成する、神の力は……。そうなると叶わないよ?君に止めることなど」

 

 サンジェルマンの横に響が並び立った。共通の敵であるアダムを見据える。

 

「私達は互いに正義を握り合い、終生分かり合えぬ敵同士だ」

「だけど今は、同じ方向を見て、同じ相手を見ています!」

 

 するとサンジェルマンの足元に短距離テレポートの錬金陣が展開され、そこからヨハンが現れた。

 

「吾輩も混ぜてもらおうかな?サンジェルマン」

「師匠……」

「もちろん、吾輩だけじゃないがね」

 

 森の中から何層もの電磁フィールドによる門が展開され、その中をすさまじい速度で光が飛翔した。その門はアダムの背後に回るように展開され、その中を光がとおり、光の正体である雷がアダムに跳び蹴りをかました。

 

「ッ」

「雷!」

 

 容易く避けられてしまうが響の横に並び立つ。しゃがんでいた状態から立ち上がり、マントを翻しながら正面を向いた。

 

「やるよ響」

「うん……!」

 

 雷の声は鋭かった。

 サンジェルマンが叫ぶ。

 

「敵は強大、圧倒的。ならばどうする?!立花響!」

「何時だって、貫き抗う言葉は一つ!」

「「「「だとしてもッ!」」」」

 

 二人の戦姫、二人の錬金術師の共同戦線が、ここに張られた。

 敵は、神だ。




雷轟散閃大千世界
雷最大の大技。全ユニット使用の攻撃を二連に分け、片方をプラス、もう片方をマイナスにして連続で叩きこみ、相手の体内で炸裂させるもの。
欠点として二連続で叩きこまなければならないこと、発動中はこれ以外の技が使えなくなること。

最後の蹴りはディケイドのディメンションキック。

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