戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

144 / 209
このあたりのシナリオはファフナーにハマったタイミングだったから、雷のセリフの節々にニヒト味を感じる。


実はどういうエンディングにするかは決めていない私。どうしよう。


顕現する神の力

 本部にて待機しているメンバーが固唾をのんで雷たちの戦いを見守る中、サブモニターに絶唱に加え、リンカーの過剰投与によって体に多大な負担をかけた切歌が、緒川が指揮する救護班の担架に乗せられている映像が映し出された。

 ひとまず、懸念材料の一つが解消される。

 

「救護班、切歌ちゃんの改修を完了しましたッ!」

「よかった……」

 

 親友である調が深く安堵の息を吐く。

 先輩としてクリスが彼女の肩に手を置いた。

 次は、顕現するであろう神との戦いだ。弦十郎が予想戦闘区画の確認を行う。

 

「付近住民の避難はッ?!」

「まもなくです!急がせています!」

 

 迅速な対応によって避難完了まであと少しだ。

 翼が拳を強く握る。

 

「あんなものが……神を冠する力だというのかッ……!」

 

 翼は破壊兵器としか言いようがない目の前で見せられた力を神と称していることに憤っていた。

 

「間に合わないのッ?!」

「心配するなよ。あのバカ二号が自信満々に打ち出した作戦があるんだ。アタシたちが慌ててどうする」

「ゴルゴダ作戦か……」

 

 検証のためにS.O.N.G.職員には知らされているゴルゴダ作戦の概要だが、そもそもの目的である神の力の召喚を阻止するティマイオス作戦に集中させるために装者には詳細が知らされていない。

 だが、フフロンティア事変におけるフロンティアの制御権の剥奪。魔法少女事変のキャロルのカウンター作戦という実績が、一瞬にして喧騒を打ち消した。

 もちろん、頼りきりではいけないが、雷の作戦なら何とかなる。そんな安心感が広がっていた。

 

○○○

 

 サンジェルマンがライフル型のスペルキャスターをアダムに向ける。

 

「神の力は、人類の未来のためにあるべきだ。ただの一人が占有していいものではない!」

「未来?人類の?」

 

 銃口を向けられているにもかかわらず、余裕綽々と言った様子でアダムが帽子を手に取った。

 

「くだらないッ!」

 

 彼はそう吐き捨て、帽子をフリスビーのように回転させて投擲した。錬金術によって帽子の縁が発火する。

 サンジェルマンが銃弾を的確に帽子に当てていくが、威力は減衰の兆しを見せない。響が拳を振るい、はじき返した。破壊されなかったが、アダムの元へと戻っていく。

 

「我が儘だねぇ……」

 

 大事な妹分である切歌を傷つけられ、怒りが一周回って冷静になった雷が口角を上げて呟いた。

 共同戦線を張ったとはいえ、敵は敵。サンジェルマンは響の行動に困惑する。

 

「何故私を……?!」

「我が儘だと、親友は言ってくれました」

「我が儘……?」

 

 響は後ろから支えてくれる未来だけでなく、共に並び立つ雷にも「我が儘」だと言われ、自分の我を押し通すことに絶対の折れない自信を持っていた。

 アダムが炎を雨のように降らせる。

 

「群れるなよぉ弱い者同士がぁッ!」

 

 四人はそれぞれ跳躍して回避する。

 着地と同時にサンジェルマンがアダムに向けて全弾発砲するが、空中を自由に浮遊する彼にかすりもしない。サンジェルマンが肩から射出した弾倉を交換している隙をカバーするように、ヨハンが突きを置換錬金したつららの一撃を放った。アダムがそれをたやすく受け流す。

 

「ッ」

 

 再び銃口をアダムに向けるサンジェルマンの背後で、響と雷が並んでいた。雷は常に視線をティキの方に向けている。

 

「誰かの力に、潰されそうになってたあの頃。支配に抗う人に助けられたら、何かが変わったのかもしれない。そう考えたら、サンジェルマンさんとは、戦うのではなく話し合いたいと、体が勝手に動いてました!」

「少し違えば、私達はあなた達の手を取っていたかもしれない。逆もまたそう。だったら、今だけでも、手を取ることは不可能ではないでしょう?」

 

 サンジェルマンが息を呑み、正面を向いた。

 

「立花響、轟雷。お前たちが狙うは、ティキ……。神の力へと至ろうとしている、人形だッ……!器を砕けば、神の力は完成しない!この共闘はなれ合いではない!私の我が儘だッ……!」

「我が儘だったら仕方ありませんね!」

「ここには我が儘しかいないのか」

 

 二人はどこかうれしそうだ。

 

「誰かのために、サンジェルマンさんの力を貸してくださいッ!」

「ヨハン!あなたの力、借りるぞ!」

 

 一歩前に出ているサンジェルマンの横に、サーベル型スペルキャスターを抜いたヨハンが並び立つ。

 弟子の成長を見て、彼女もうれしそうだ。

 

「良き友を持ったな、サンジェルマン」

「はい……師匠」

 

 一番槍を響の拳が、雷の蹴りが担う。アダムはそれらをたやすく躱し、サンジェルマンの銃撃もヨハンの飛翔する斬撃も全て躱す。

 

「思いあがったか?四人でなら」

 

 接近戦を担当している装者たちの攻撃を足だけでさばいていく。

 

「これを思い上がりと嗤うなら、それこそが思い上がりだよ。アダム」

 

 響がブースターを点火し、吶喊。アダムに大きな隙を作ると、彼に向かって雷が超電磁の嵐を叩きつけた。

 

「せいッ!」

「ぬ?」

 

 一瞬だけ動きが遅れ、バンカーユニットを最大限引き延ばした響の拳が鳩尾に突き刺さる。

 かつてネフシュタンの防御力すら貫通した一撃だ。背後の木ごと吹き飛ばした。して、その吹き飛ばした先にはスペルキャスターをライフル型からサーベル型に変形させたサンジェルマンと、ヨハンの師弟の一撃が待ち構えていた。

 痛烈な一撃がアダムに直撃する。

 アダムがひるんだ隙に、サンジェルマンが響の、ヨハンが雷のティキに通ずる足場を錬金術で作り出した。二人はそこを駆け上がり、ティキを破壊すべく一撃を繰り出そうとする。

 

「させはしない、好きに!」

 

 が、予想よりも早く戻ってきたアダムが響を風の錬金術で撃墜し、次いで雷を帽子の投擲で叩き落した。

 

「僕だけなんだよ触れていいのは!ティキのあちこちに!」

「メロリンズッキューン!」

「ッ」

「気色悪ッ!」

 

 落下した響をヨハンが、雷をサンジェルマンが受け止めた。

 

「このままじゃ!」

「焦ることはないよ、響」

「え?」

 

 神の力が完成しつつあるティキを前にして焦る響だったが、逆に雷は全く問題ないと余裕そうな、人の悪い笑みを浮かべている。

 

「アダムが黄金錬成を使わないのは、私の策に嵌ったからなんだ」

 

 指を口元に立てる。雷とは反対に、アダムの表情が歪む。

 

「何光年も離れている天のレイラインからエネルギーを吸いあげたんだ。あのバカ火力分のエネルギーは残ってないんだろう?どっちに転んでも私達に利がある……それがティマイオス作戦だよ。これが真の策という物さ」

「嫌われるぞ?賢しすぎると」

 

 サンジェルマンが弾倉に込められた魔力をすべて使って蒼き炎の狼をアダムに打ち込んだ。それを帽子で迎撃する彼だったが、直前に狼が閃光へと変わる。ヨハンが炎と同価値の閃光へと錬成したのだ。

 その閃光の中をバンカーユニットを最大出力モードに切り替えた響が突き抜けてきた。

 アダムはそれを左手で受け止めるも、がら空きとなった左側から稲妻の速度で雷が斬り込んだ。腰のユニットに手を添え、居合切りの要領で右腕に斬撃を加える。

 

       『武御雷』

 

「ぬぐぁッ?!」

 

 初めて明確なダメージがアダムに入った。傷口をもう片方の手のひらで抑える。

 

「今だ!立花響!轟雷!ティキが神の力へと至る前にッ!」

「ッ」

 

 着地した装者たちと錬金術師たちの前に、アダムが舞い降りる。

 

「なッ?!」

 

 雷が斬り裂いた左腕からは、出血が見られなかった。

 その代わりに、機械のようなものと、それにダメージが入ったことを知らせるスパークが散っていた。

 アダムが恨みのこもった瞳を四人に向ける。

 

「錬金術師を統べるパヴァリア光明結社の局長が……まさか……」

「人間ではなく人形だった。とはね……」

「人形だと……?人形だとぉぉぉッ?!」

 

 今まで薄っぺらい笑みばかり張り付けていたアダムの表情が、苦痛と絶叫に歪む。彼の怒りにティキが呼応した。

 

「ゆるさない!アダムをよくもッ!いたくさせるなんてぇぇぇッ!」

 

 ティキの叫びと共に、輝きが増した。

 

「何がッ?!」

「光がッ!……生まれる……!」

 

 小さかったティキの影が光に包まれ、その姿を大きくしていく。極大の閃光が視界を覆いつくした。

 その光が消失する。響、サンジェルマン、ヨハンがそれを見上げ、驚愕した。

 巨大な人と魚を合体させたような存在が宙に浮いていた。

 胸元にあるティキが封じられたコアパーツ。その傍らでアダムが笑う。

 

「神力顕現……。持ち帰るだけのつもりだったんだけどね、今日のところは」

「ゴメンナサイ……。アダジ、アダムガヒドイコトサレテタカラ……。ツイ……」

 

 申し訳なさそうに言うティキを、アダムは許す。

 

「仕方ないよ、済んだことは。だけどせっかくだから、知らしめようか!完成した神の力、ディバインウェポンの恐怖を!」

 

 アダムの宣言と共に、肩に配置された水晶体のようなものから光が放たれ、大爆発が発生する。四人は吹き飛ばされ、建造物が破壊される。

 響が倒れ込み、彼女を庇うように斥力フィールドを展開しながら、雷が高笑いした。目の前に広がる惨劇よりも、急変した親友に目が引き寄せられる。

 

「アハハハハハ!この戦い、我々の勝ちが確定したッ!」

「本当なの?!雷!」

 

 正気を失ったのかと思えばまさかの勝利宣言。響が笑顔を浮かべて雷の肩を掴む。思いのほかそばにいたヨハンとサンジェルマンも、驚きに目を見開いた。

 彼女達とは異なり、アダムだけが苦悶の表情を浮かべている。

 

「ああ!まさか的が大きくなるとは!神の力といえど所詮は贋作!だけどまず……、目の前をどうするかだ」

 

 笑みを引っ込め、正面を見据える。アダムが降りてきたのだ。

 

「サンジェルマンは人でなしと呼び続けていたね?僕を。そうとも、人でなしさ、僕は。何しろ人ですらないのだから」

 

 自分が人形であることの事実を、意趣返しとしてサンジェルマンにぶつけていく。

 

「アダム・ヴァイスハウプト……。貴様は一体?!」

「僕は創られた……。彼らの代行者として」

「彼ら……?」

 

 響がオウム返しに聞き、雷が鋭く目を細める。

 

「だけど廃棄されたのさ、試作体のまま。完全すぎると理不尽きわまる理由をつけられて!あり得ない……完全が不完全に劣るなどと……」

 

 心底分からないと言うように声が沈んでいた。

 

「そんな歪みは正してやる!完全が不完全を統べることでねぇッ!」

 

 アダムが右手を振り上げ、それに応じてティキが口にエネルギーを貯めていく。自分の身の上話という餌で雷たちを釣り上げたのだ。この一撃のために。

 

「さっきみたいのを撃たせるわけにはッ!」

 

 響がブースターを点火し、大ジャンプで一気にティキの顔面にまで肉薄し、拳を振るって顔の向きを強引に変えた。

 

「ティキ?!」

 

 光線はそのまま放たれ、雲を割り、成層圏を飛び越えて人工衛星に直撃した。光の奔流に飲み込まれた衛星が爆発する。響を叩き落とすために振るわれたティキの腕を、雷が稲妻を纏った蹴りで叩き落し、響を抱きかかえて着地する。

 ヨハンが驚愕した。

 

「こんな力のために、カリオストロは、プレラーティは……!」

 

 響を抱きかかえた雷は彼女を立たせ、笑ってみせる。

 

「響」

「ッ」

「神を、殺すぞッ!」

 

 神を処刑し、神を羞恥の目に晒し、神を殺すゴルゴダ作戦が、ここに発動された。




そろそろ伏線が半分ほど収穫を迎える時期ですね。
覚悟してくださいね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。