戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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私と同年代や年下なのに歌手や声優やなんかやって(つまり好きなことやって)お金を稼いでる人ホントすごいと思う。
嫉妬するし、羨ましいし、憧れる。
私も早くそうなりたいなぁ。

小説、書いてて楽しいんだもんなぁ。


友を守りし防人として

 ティキから剥離した神の力が、雷と響、二人の周囲を浮遊し、絶叫と輝きの中で彼女たちの姿が変わる。響はビルの間に糸を伸ばし、宙をぶら下がって鼓動、もしくは胎動する繭に、雷は体中から金色の結晶が生え、その体を包み込むようにして、二メートルほどの地面へと根付いた花のつぼみのように変容していた。

 自身が宿すはずだった力を、根こそぎ奪われてしまったアダムは呆然とする。

 

「台無しだぁ……僕の千年計画が……。それでも……神の力をこの手にッ……!」

 

 切り離した左手を持ったまま、かぶった帽子の位置を整え、足元から光となってこの場から離脱する。

 サンジェルマンとヨハンは彼の後を追わない。二人は、短い間であったが戦友という芽生えた感情を胸に、変わり果てた二人の姿を見つめていた。

 

(立花響、轟雷……。お前たちは一体……?!)

「少し、考える必要がありそうだな。吾輩らも離脱しよう。吾輩たちらしいやり方で、彼女たちを元に戻す方法はあるはずだ。レッスン1だよ、サンジェルマン」

 

 レッスン1。解析・分解・構築。即ち、錬金術の基礎を思い出せと、彼女は言っているのだ。

 帽子を目深にかぶるヨハンの意見に、サンジェルマンは頷きで答えた。

 

○○○

 

 神の力を取り込んでしまった響と雷が変容してから、四十八時間が経過した。この日は響の誕生日であり、用意された誕生日会用のジュースやお菓子、部屋を彩る飾りが虚しさを誘う。

 八紘が弦十郎に状況を通達する。

 

『立花響、轟雷の両名が『神の力』と称されるエネルギーに取り込まれてから、四十八時間が超過。国連での協議は最終段階……。まもなく、日本への武力介入が決議される見込みだ。そうなるとお前たちS.O.N.G.は、国連指示のもと、先陣を斬らねばならないだろう』

「やはりそうなってしまうのか……!」

『さらに状況が状況であるため、事態の収拾のため、反応兵器への使用も考えられる』

「反応兵器?!だが、あの中には響君たちがッ!」

 

 反応兵器。その威力は百メガトンを優に超え、爆発すれば関東圏を焦土へと変えるのみならず、周辺地域にも甚大な被害をもたらすという代物だ。

 それを、変容した二人に打ち込もうというのだ。当然、八紘はそのことを理解している。

 

『無論、そんな暴挙を許すつもりはない。だが、世界規模の災害に発展しかねない異常事態に、米国政府の鼻息は荒い』

「ぬう……。消し飛ばされた軍事衛星が、口実を与えてしまったのかッ……!」

 

 ティキが破壊した米国保有の軍事衛星の破壊。それもあるだろうが、今や失墜したアメリカの『世界の警察たる、強く、自由で正義の国』というプライドと栄光を取り戻そうと躍起になっているところが大きいだろう。

 そうでなければ、ノータイムでの人類最終兵器たる反応兵器の使用を踏み切る必要はないのだから。

 

『引き続き、事態の収拾に尽力してほしい。それがこちらの交渉カードになりうるのだ』

「分かった。すまない兄貴……」

 

 それを最後に、通信が切れる。向こうが全力で動けるように、こちらも全力で動かねばならない。

 

「国連決議による武力介入……。ほんの少し前のバルベルデと同じ状況に、今度は我々がなってしまうなんて……」

「あのさなぎ状の物体内部に響さん。つぼみのような物体内部に雷さんの生体反応を確認しています。恐らくは神殺しの力と、膨大な斥力が神の力の融合を食い止めていると思われますが……」

 

 エルフナインが現状の解析結果を報告する。

 神殺しを持つ響の融合が遅れているのは理解できたが、そんな力を持っていないにも関わらず、雷が同等のことが出来ているのを疑問に思っていた。そこでエルフナインは、『シンカ・雷帝顕現』のエネルギーが結晶化の影響で固定化されているのであれば可能だろう、と何度も検証を重ねたうえで仮説を立ていた。

 

「それもいつまで持つか……」

「時間が稼げてるうちに対策を!」

 

 いくら食い止めていたとしても、いずれ破られるだろう。

 翼は弦十郎に進言するが、もう打てるだけの対策は打ってある。

 

「ああ!そのための彼女達だ!」

「彼女……達……?」

 

 クリスが疑問を口にするとほぼ同時に、ブリッジと廊下を繋ぐ扉が開いた。そこから、雷と響、二人の親友である未来が現れる。

 

「響と雷があの中にいるんですね?!二人は無事なんですか……?」

「もちろんだ。その為に君を呼んでいる。……マリア君たちに繋いでくれ」

「はい!」

 

 弦十郎の指示で、メインモニターの脇に小さなウィンドウが開き、そこにはマリアと切調、切歌が写っていた。

 マリアが口を開く。

 

『こちらの準備は出来てるわ』

「どうやったら、二人を助けられるんですか?」

「これを使います!」

 

 エルフナインが、白衣のポケットから薬液の充填された圧力式の拳銃型注射器を取り出した。

 見覚えのあるその薬品に、調が気付く。

 

『リンカー……?違う、あれは……』

『アンチリンカーデス!』

「リンカーとアンチリンカーは表裏一体。リンカーを完成させた今、アンチリンカーもまた生成可能です」

『でも、適合係数を低下させるアンチリンカーを使って、どうやって……?』

 

 ここに雷が居れば、すぐに気付いて教えてくれる。いや、逆にアンチリンカーを使うことを提案すらしているだろうが、彼女はいない。

 そのため、少しエルフナインは寂しげな表情を浮かべながらもアンチリンカーを使う根拠を説明する。メインモニターに、これまで神の力が付与されてきた存在の画像が映る。

 

「ヨナルデパズトーリと、ディバインウェポン……。どちらも依り代にエネルギーを纏って固着させたもの。まるで、シンフォギアと同じメカニズムだと思いませんか?!」

「ッ」

 

 装者たちはエルフナインが何を言わんとしているのか、それを即座に理解する。

 

「響君と雷君を取り込んだエネルギーと、ギアを形成する聖遺物のエネルギーの性質が近いものだとするならば……」

「アンチリンカーで、ポンポンスーにひん剥けるかもしれないんだな?!」

「はい。その為に……」

「コンバーターユニット!それでは……!」

 

 そう言ってエルフナインは、ポケットの中から五つのコンバータユニットを取り出した。

 つまり、

 

「反動汚染の除去は完了。いつでも作戦に投入可能です!」

 

 これで今打てるすべての手を打ったことになる。

 そこで気になるのが、何故未来をこの場に呼んだのかだ。彼女も不思議に思っていたようで、未来が弦十郎にどうすればいいかを聞く。

 

「あの……私にも、出来ることがあれば……」

「君はこの作戦の、エースインザホール……。切り札だ!」

「私が?!」

 

 自分に指をさし、驚く。

 何せ戦う力を持たないのだ。自分が戦場に立つ力を持たないのは分かっている。だからこそ、弦十郎が切り札だと言ったことがわからない。

 だが、未来という存在が、二人を連れ戻すのに何としても必要なのだ。

 エルフナインが真剣な顔つきになる。

 

「危険を承知でお願いします」

「……わかりました!」

 

 何かやれることがあるなら全力でする。それが、未来のスタンスだった。

 

「そして、もう二人……」

 

 その二人とは、ヨハンとサンジェルマンだった。サンジェルマンは銃で囲まれながらも真剣な瞳を正面に向けているが、ヨハンのほうはおどけた様子で両腕を上げている。だが、彼女の瞳は、サンジェルマンと同じで真剣そのものだった。

 

「協力者に失礼だ!銃を下げろ!」

「ですが、しかし……」

 

 黒服は食い下がるが、

 

「何かあったとしても、俺が動きずらくなるだけだ」

 

 圧倒的な説得力に、黒服たちは黙って銃を下げる。そもそも、彼女達が戦う意志を持っていれば、銃器なぞ玩具にも等しいため、向けてもさほど意味はないのだが。

 

「情報は役に立ったかな?お嬢さん」

 

 揶揄い交じりにヨハンがエルフナインに問う。

 彼女は笑って提供された情報の映るタブレットを見せた。

 

「賢者の石に感ずる技術無くして、この短期間に汚染の除去は出来ませんでした。ありがとうございます!」

「何よりだ」

 

 ヨハンが微笑みを浮かべる。師匠が感謝、尊敬されてうれしいのか、サンジェルマンも微笑んでいた。

 

「それで、我々への協力についてだが……」

「それでも、手は取り合えない……」

 

 サンジェルマンが顔を背けて答えた。

 アラートが聞こえてくる。

 

「どうした!」

『指令!鎌倉から、直接ッ!』

 

 モニターいっぱいに不動の顔が映る。

 

『護国災害派遣法を適用した……』

「なぁ?!」

「護国ぅ?」

「まさか立花と轟を、第二種特異災害へと認定したのですか?!」

 

 クリスは良く分かっていないようだったが、風鳴の一族である弦十郎と翼はその意味を理解していたようだ。声色からして、よくない知らせだろうことは理解できる。

 

『聖遺物起因の災害に対し、無制限に火器を投入可能だ。対象を速やかに、殺傷分せよッ!』

「ですが現在、救助手段を講じており……!」

『儚きかな』

 

 弦十郎が反論するが、訃堂はそれを一蹴する。

 

『国連介入を赦すつもりか?!そのその攻手は反応兵器!国が燃えるぞ』

 

 訃堂はさらに圧力をかけるが、未来が一歩前に出る。

 

「待ってください!響と雷は特異災害なんかじゃありませんッ!私の……友達ですッ!」

「国を守るのが風鳴ならば、鬼子の私は友を!人を防人ますッ!」

 

 未来を矢面に立たせるのは、防人たる翼が許さなかった。彼女も前に出、訃堂に正面から相対する。

 翼の物言いに、訃堂は体をワナワナと怒りに震えさせた。

 

『翼ッ!その身にながるる血を知らぬかッ?!』

「知るものかッ!私に流れているのは、天羽奏という、一人の少女の生きざまだけだッ!」

 

 今度は訃堂の言を、翼が斬って捨てる。

 再びアラートが鳴り響き、友里が焦ったように報告する。

 

『指令!響ちゃんと雷ちゃんの周辺に、攻撃部隊の展開を確認!』

『作戦開始は二時間後……。我が選択した正義は覆さん』

 

 それだけ言い残し、訃堂が通信を切る。弦十郎の答えが何であれ、最初から実行する気でいたのだ。そうでなければ、このタイミングで攻撃部隊をそろえるなど出来るはずがない。

 サンジェルマンが、真っ黒なモニターを睨む。

 

「あれもまた、支配を強いるもの……」

 

 彼女は小さく呟いた。

 

○○○

 

 現場では、何も知らされていない攻撃隊員たちが、響の変容した繭と、雷の変容したつぼみに対して砲撃を行っていた。響の方には全弾命中しているが、雷の方には放たれた砲弾が結晶から放出される稲妻によって破壊され、有効打にはなっていない。

 遂に、響の変容した繭に亀裂が入った。中から光が漏れる。

 映像を見ながら、藤尭が唖然とする。

 

「彼らは知らされていないのか?!あの中に人が取り込まれているんだぞ!」

「このままでは、響ちゃんが……!」

 

 だが、遂に恐れていた事態が起きた。眉に入った亀裂が広がっていき、それが全体にいきわたると、光を放ちながら落下、というよりもゆっくりと下りてきた。

 そして、そのなかから、巨大な人型が姿を現す。人型のそれは、口と思われし器官から唸り声をあげていた。その直後、口から、大出力の光線を発射した。が、それが着弾することはなかった。

 繭から人型が現れたその直後に、結晶のつぼみが開花し、中から等身大の、ただ真っ白な布一枚を体に巻き付けただけの少女が現れた。揺蕩う長髪には赤い燐光が舞い、開かれた瞳は蒼く輝いている。

 つぼみから生まれた少女が、人型の放った光線を正面から受け止めたのだ。

 自身を攻撃してきた戦車隊にも、人型は光線を放った。その光線は、マリアがエネルギーシールドを展開して逸らすが、圧倒的な威力に後ろに弾き飛ばされる。

 調と切歌がマリアを受け止めた。

 

「大丈夫?!マリア!」

「あのでたらめな強さは、なんだかとっても響さんデスよ!」

「姉さんなんて、目と髪以外はそっくりそのままだよ!」

「この戦場はこちらで預かるッ!撤退されよッ!」

「国連直轄の先遣隊か!こちらは日本政府の指揮下にある!撤退命令は受けていない!」

 

 攻撃隊の隊長は管轄違いを理由にこの場に残ろうとするが、二つの斬撃が方針を両断した。ファウストローブを纏ったサンジェルマンとヨハンだ。

 

「理由が必要ならば、くれてあげる」

「それくらいならば、問題ないだろう」

「力を貸してくれるのか?!」

 

 さっきまで敵だった二人がこちらに得となる行動をしている。そのことに翼は目を丸くした。

 

「これは共闘ではない。私の戦いだ……」

「全く、素直じゃないんだから」

 

 攻撃能力を失った攻撃隊が後退し、入れ替わるようにS.O.N.G.保有の特殊車両隊が到着する。

 

「特殊車両隊現着!指令!いつでも行けます!」

 

 響と雷、二人の救出作戦が開始される。

 

「よぅし!響君のバースデーパーティを始めるぞッ!」

 

 タイムリミットは二時間だ。




何故か普段通りの姿形に近い雷ちゃん。布一枚以外はまさかの全裸である。つまり、下から丸見えってこった。

数字語を話す奴はXV編で登場します。

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