戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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雷・響VSアダム!

(恐らく)衝撃の展開まで、あと一話。

やはり雷ちゃんには幸せになってほしいので、ハッピーエンドにしましょう!


全ての想いを背負ってここに

 リビルドしたことで各々のギアの形状や色彩が変化している。

 燃焼しているダインスレイフの力によって、エクスドライブに匹敵するほどのフォニックゲインを獲得した。

 それを証明するように、ギア外郭部に篝火のごとく輝くオーラが放たれている。

 翼とマリアが携えた刃を大型化させ、ミサイルから飛び下りる。

 

「生意気に……人類ごときがァァァァッ!」

 

 怒りと共にアダムが両腕を伸ばし、翼とマリアを迎え撃つ。

 二人は振るわれる両腕を切り払い、翼が脚部ブレードを展開して回転しながら、マリアが変形させた長剣で両腕を切断する。

 今までとは比較にならない力を実感するが、その力は揺れる炎のように歪なものだ。この炎が消えた時、燃焼するダインスレイフが消失したことを示し、今までの出力を出すことは出来ない。

 いわば時限式の限界出力だ。それをマリアが実感する。

 

「ギアが軋む!悲鳴を上げているッ……!」

「この無理すじは、長くは持たないッ!」

「引き上げたのかぁ?!出力を?!」

 

 アダムは即座に斬られた両腕を再生させる。が、再生させたそばから調の巨大なヨーヨーが彼の体をからめとった。

 

「つまるところはッ!」

「シンフォギアのリビルドをこの土壇場でッ!」

「一気に決めれば問題ないデスッ!」

 

 切歌が鎌を四枚刃に変形、高速回転させ、風車のようにした鎌を鎖でアダムにぶつける。その横合いからクリスが超大型ミサイルを遥かに超えるミサイルを展開していた。

 

「エクスドライブが無くてもッ!」

 

 ミサイルに火が入り、圧倒的の速度と大質量がアダムの体に叩きつけられる。

 

「ァァァァァアァァッ?!」

 

 ミサイルの威力はアダムの巨体を軽々と押していき、さいたまスーパーアリーナに激突。大爆発した。だが、アダムは無事だ。そこに、バンカーユニットをドリルのように回転させた響と、ユニットから稲妻を放出している雷が猛スピードで降下する。

 

「ラァァァッ!」

「オォォォッ!」

 

 だが、コンバーターユニットが拒絶反応を起こし、出力が一気に低下する。

 空中でバランスを崩し、二人の体が落下した。地面に激突し、叩きつけられる。

 

「まさか、反動汚染ッ?!」

「このタイミングでッ?!」

「そうだ……!雷さんと響さんのギアは、汚染の除去がまだッ……!」

「響ッ?!雷ッ?!」

 

 自身の神経を逆なで続けた二人がはいつくばっている。アダムはそれだけで愉悦の笑い声をあげた。

 

「動けないようだな、神殺し、雷帝……。ここまでだよ、いい気になれるのは……」

 

 アダムの体の所々が青く輝き、嘴のような口が開かれ、光球が出現する。

 二人は悲鳴を上げながらも立ち上がろうとする。が、エネルギーが足りない。しかし、彼女達は二人だけではないのだ。装者たちが、雷と響にギアのエネルギーを分け与える。

 

「手を伸ばせッ!」

「終わりだぁ!これでッ……!」

 

 光球から光線が二人の元に発射された。モニター越しに未来が叫ぶ。爆発が二人を包み込んだ。

 アダムが高笑いするが、発生した大熱量を稲妻が斬り裂き、斥力が弾き飛ばした。

 

       『シンカ・雷帝顕現』

 

 それだけではない、三角形に張られたエネルギーバリアも見える。響のギアは、銀に変化していた。

 

「まさか……私の……!」

 

 マリアが驚愕する。響のつかったそれは、アガートラームの技だからだ。雷と響に五人のフォニックゲインのエネルギーが分け与えられた。

 

「この力……みんなのッ……!」

「みんなの手と、想いの力ッ……!」

「いいってもんじゃないぞぉ!ハチャメチャすればぁッ!」

 

 アダムの体が巨大化する。そしてその大質量を前面に押し出して、両腕で二人を圧殺しにかかる。

 

「「だったらァァッ!」」

 

 響は脚部にブレードを展開してブーメランのように蹴りで飛ばし、雷は腕に稲妻の鎌を発生させ、それを掴んでブーメランのように投擲する。

 

「あたしの呪りeッTぉデスッ!」

「借りますッ!」

「背負うッ!」

 

 残った腕を響は手刀を放ち、その軌跡に沿って蒼き刃が飛んだ。雷は蹴りの軌道に稲妻の刃を発生させ、アダムの腕を切断する。

 

「蒼の一閃ッ?!」

「否定させないッ!この僕を誰にもッ!」

「みんなのアームドギアをッ!」

「みんなの想いをッ!」

 

 アダムは地面に手のひらを当て、切断された腕から自身の分身を生み出す。が、完全に出現しきる前に主観的に時間が停止するほどの速度で雷に稲妻の鋸で焼き尽くされ、マフラーを鋸に変形させた響によって切断される。

 

「私の禁月輪?!私達の技を……ううん、あれもまた繋ぎ重ねる力、姉さんと響さんのアームドギアッ!」

 

 しかし、アダムに掴まれ、鋸を粉砕され捉えられてしまう。雷も咄嗟の事で反応が遅れる。

 

「響ッ!」

「してる場合じゃないんだぁ、こんなことを、こんなところでぇッ!降臨はすぐそこだ……カストディアンの……。それまでに手にしなければならない!アヌンナキに対抗し、超えるだけの力をぉッ!」

 

 響を握る手に力を籠め、締め上げる。

 

「なのにお前たちはァァァッ!」

 

 アダムの叫びは、もはや悲鳴だった。

 彼の腕を雷が居合いで切り落とす。だが、掴む力が強く、響が脱出できていない。

 

「ぶっ飛ばせ!アーマーパージだッ!」

 

 響はアーマーを弾き飛ばし、ギアを解除すると斬り飛ばされた腕に飛び乗り、空間に広げられた電磁波の足場を踏んでアダムの体に飛び移る。

 そしてペンダントに発破をかける。

 

「無理させてごめん、ガングニールッ!みんなの想いを束ねてアイツにッ!」

(借りを返せるワケダッ!)

(利子付けて、のしつけてッ!)

(吾輩らの想いも背負ってッ!)

(支配に反逆する、革命の咆哮を此処にッ!)

 

 理想に殉じた錬金術師達の想いも背に、響はガングニールを起動させる。

 

「Balwisyall……!Nescell……!Gungnir……!Tronッ!」

 

 アダムは歌わせまいと握り潰したが、黄金の閃光が弾き飛ばす。光の中から、黄金のガングニールを纏った響が跳び出した。

 

「黄金錬成だとぉッ?!錬金術師でもないものがァァァァッ!」

 

 響に手を伸ばそうとするアダムだったが、全てが一瞬で焼き尽くされ、破壊される。雷の目にも映らぬ攻撃は、そのあまりの熱量に元からそうであったかのように再生することが出来ない。

 

「再生できないッ?!」

 

 アダムへの道が、真っ直ぐに開いた。

 

「最短で!」

 

 雷が開いた道を、響が突撃する。

 

「最速に!」

 

 最後の露を払いきった。

 

「「真っ直ぐに!」」

 

 響の拳がアダムを捉えた。雷が地面に着地し、エネルギーをチャージする。

 響が黄金のバンカーユニットを大型化、展開し、その拳を叩きつける。しかも一発ではない。アダムが倒れるまで、何度でもだ。そして、地面を割るほどの威力で踏み込んだ雷が、体を回転させて彼の巨体をはるか上空に蹴り上げる。

 

「「一直線にィィッ!」」

 

 その隙に、響は両腕のバンカーを最大展開、爆発的な速度で肉薄する。雷が自身と響の前に複数の門を展開し、通過するたびに二人は加速していく。

 そして響の両の拳と雷の右足がアダムに突き刺さり、バンカーの内部機構が高速回転して発生したエネルギーを叩きこんで貫き、雷の稲妻が生み出した大熱量が彼の肉体を焼き尽くす。

 

       『TESTAMENT』

        『ISHKUR』

 

 大熱量によって肉体が昇華されゆく中、アダムは遺言を残す。

 

「砕かれたのさ、希望は今日に……絶望しろ明日に!未来に!」

 

 そう言い残して高笑いし、完全に肉体が昇滅した。

 しかし昇華されたものの内包していたエネルギーの一部が爆発し、雷と響が空中に投げ出された。響は翼とマリアが受け止め、雷は調と切歌、クリスが受け止める。

 二人のギアが解除された。

 藤尭が安堵の笑みを浮かべる。

 

「これでアダムは……!パヴァリア光明結社の思惑は……!」

「ああ、俺たちの勝利だ……!」

 

 訪れた勝利は、安心をもたらした。




ISHKUR

最も古き雷神の名を冠する雷帝発動時の雷最大の技。
圧倒的な稲妻によって対象を電気分解し、分解した原子を昇華させ、昇滅させる。


雷は雷帝による膨大なエネルギーで反動汚染分下がった出力を強引に超えることで克服した。が、その為にはケラウノスだけではフォニックゲインが足りず、アームドギアを響に、フォニックゲインを自身が受け取ることで対処している。

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