戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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AXZ編最終回!

今までの伏線がようやく回収されます!気づけた人はいたかなぁ?


ベランダの語らい

 エルフナインが今まで行われたパヴァリア光明結社との戦闘で気になったところを調べていると、藤尭が横からに湯気だつ熱いコーヒーを差し出してきた。

 彼は手に持つカップをエルフナインのサイドデスクに置く。

 

「はい」

「あ……」

「事件終息からもう三日。相変わらず頑張りすぎじゃないかな?」

 

 戦いが終わっても休もうと、少なくともひと段落も入れないエルフナインに、先輩としての助言を入れる。上手い気の抜き方が出来るものこそ、組織人として有能な証拠だ。

 友里も普段は藤尭の尻を叩くような人だが、そこは全面的に同意している。

 彼女は自分の席に座る。

 

「響ちゃんと雷ちゃんのギアの反動汚染も除去できたんだし、少しは休まないと」

「ありがとうございます!ですが、一連の経緯をおさらいしないと、気になっているので」

 

 気になったことが良く分からない友里と藤尭が顔を見合わせる。

 彼女のデスクの上には、反動汚染が残っているうえに酷使したため、調整と確認のために預かったガングニールとケラウノスが置かれていた。

 エルフナインが気になっているのは、最高位の錬金術師二人と、その二人を遥かに超える錬金術師が解明できなかったほどの事。何故、雷と響は神の力をその身に宿すことが出来たのか。これに尽きる。

 

(だとしたら響さんと雷さんは……。そもそも原罪とは一体……?)

 

 エルフナインが思考を回している間にも、物事は進んで行く。通信を知らせるコールがなった。

 

「指令。ロンドンの緒川さんからです」

「繋いでくれ」

 

 メインモニターに緒川が映る。彼は今、トップを失ったパヴァリアの残党の捕獲任務にあたっていた。

 

「そっちはどうなっている?」

『各国の諜報機関と連携し、パヴァリア光明結社の末端……その残党の摘発は、順調に行われています』

「だが、結社と言う枷が無くなった分、地下に潜伏し、これまで以上に実態がつかめなくなる恐れがある」

 

 弦十郎が腕を組み、起こりうる可能性を緒川に確認の意味を込めて伝える。が、流石は彼の右腕、言わなくても分かっていたようだ。直ぐに答えが返ってくる。

 

『引き続き、捜査を続けます』

 

 緒川との通信が切れる。

 今の弦十郎の中には、パヴァリアの残党と共に、アダムが口にしたものの名前が引っかかっていた。

 

「加えて、カストディアン。アヌンナキの脅威……か」

 

 新たなる、そしてあのアダムが警戒するほどの強大な敵。その侵略に備えなければならない。

 ところ変わって夕暮れ時の風鳴宗家。現当主、風鳴訃堂の屋敷に、彼の息子である風鳴八紘が訪れていた。やって来た目的は、今回、米国が反応兵器の無断使用を行ったことに対する報告だ。

 二人の男が畳三畳分の間を開けて向かい合う。

 

「米国は、安全保障の観点からミサイル発射の正当性を主張して来たか」

「国連決議を蔑ろにする独断に対し、各国は非難を表明しつつ、それでも、強く対応できないのは……」

「うぅむ……」

 

 訃堂がうなり、差し込んでくる夕日のほうを向いた。各国が強く出ることが液ない理由はすでに分かっている。

 

「神を冠する、あまりにも強大すぎる力を、目の当たりにしてしまったが故……」

 

 ディバインウェポンが猛威を振るったあの夜の事がすぐ直前の事のように思い出せる。

 

「八紘……。あの力が我らにあれば、夷狄による国土蹂躙も、特異災害による被害も、防げるとは思わぬか?」

「ッ」

 

 八紘は息を呑む。

 訃動の脳裏には、まっとうな護国の想いでありながら、歪んだ考えが渦巻いていた。

 

○○○

 

 この日の夜、響と雷、未来が暮らす寮室で、三日遅れの響の誕生日会が行われようとしていた。さらに言えば、三日も遅れてしまった分を取り返すため、終わった後はお泊り会が開かれる予定だ。

 未来と雷が開始の音頭を取る。

 

「「それでは改めて……」」

「「「「「「「「「ハッピーバースデー!(デース)」」」」」」」」」

 

 軽快なラッカーの破裂音が次々となり、紙吹雪やリボンが宙を舞う。

 響が嬉しそうに笑い、リボンや紙吹雪が彼女の頭に乗っかった。彼女がこの日の主役の証拠だ。

 

「十七歳おめでとう。響」

「ありがとう!とんだ誕生日だったよ!でも、みんなのおかげでこうしてお祝いできたことが、本当にうれしい!」

「三日遅れな分、盛大に祝うからね!」

「さあさあ!前置きはここまでデスよ!主役はこちらにデス!」

 

 横からやって来た切歌が響の背中を押し、料理の並ぶテーブルの前まで押していった。そこには、色とりどりの野菜で作られた料理が所狭しと並んでいた。

 目の前に広がる料理の数々に響が目を輝かせる。

 

「うおぉぉ?!すっごーい!どうしたの?!」

「はい。調が頑張ってくれました!」

 

 マリアが料理を担当した調の肩を優しく押す。照れと恥ずかしさが混ざり合い、調は頬を赤くしていた。

 響が驚嘆する。

 

「これ、調ちゃんがぁ?!」

「違う違う!みんなで一緒に……!」

「調……」

 

 手を振って否定しようとするが、マリアにたしなめられた。

 

「だって、松代で出会ったおばあちゃんから、夏野菜をたくさんいただいたから……」

「でも、中心になって作ったのは調でしょ?」

「ね、姉さん!」

 

 調の隣で揶揄う雷に、彼女はさっき以上に恥ずかしさで顔を赤くする。そんな調の頭を、雷がわしゃわしゃとなでた。

 そんな時、翼が胸を張っていった。

 

「月読が作り、立花が平らげるのなら、後片付けは私が受け持つとしよう!」

「いやぁセンパイ?出来もしない事を胸張って言うと、後で泣きを見ますって……」

「な、私を見くびってもらっては……!」

「はいはい、喧嘩しないの。ホラ……」

 

 どこから出てきたのか分からない自信にクリスがツッコミ、翼がかみつこうとする。が、そこは装者たちのお母さんポジションを務めるマリア。料理を乗せた皿を手に翼のもとに現れ、フォークでそれを翼の口に運ぶ。

 翼は反射的に咀嚼し、味をかみしめる。

 

「なにこれ?!まさか、トマトなの?!こんなに甘いの初めて食べたわ!」

「驚きに 我を失う 美味しさです」

 

 この反応はあの時にトマトを食べた全員がした反応だ。その美味さ、甘さは折り紙付きである。

 翼の反応を合図に、全員が皿をもって立食形式で気になった料理に手を付けていく。昔なら疎外感を感じていたであろう雷だったが、今では楽しく料理にぱくついている。

 料理を食べた後は、ゲーム大会が開かれた。

 最初はほのぼのとした雰囲気で行われていたのだが、

 

「フハハハハ!その程度のテクニックで我に勝てると思うなぁ!」

「え?!なにそれ?!」

「右と左で違うゲームやってんじゃねえか……?」

 

 雷が別次元のコントローラー捌きで出禁を喰らってしまった。

 クリス宛に届いたステファンのリハビリの写真とつづられた手紙に喜び、翼が皿をどうやったのか全く分からない積み方で皿を積み上げていた。

 ベランダで涼んでいる響に、未来が冷たい麦茶を差し出した。

 響はそれを笑顔で受け取る。

 

「さっすが未来!気が利くったらありゃしない!」

 

 未来もベランダにもたれかかった。

 

「エルフナインちゃんも来られたらよかったのにね?」

「そうだね……」

「誘ったんだけど、気になることがあるって梃子でも動かなくて」

 

 片づけがひと段落付いた雷も、ベランダに涼みに来た。

 

「残念」

「うん……」

 

 少しの間が開く。

 響が口を開いた。

 

「例えば……さ?」

「ん?」

「どったの?」

 

 未来と雷が彼女のほうを向く。

 

「どこかの悪いやつが、誰かを困らせているのなら、きっとこの拳で何とか出来る……。だけど、お互いがお互いの正義を信じて拳を握りしめている戦いは、簡単に解決なんてできない……」

「響……」

 

 雷は目を閉じ、静かに聞き入っている。

 響が自分の手のひらを見つめた。

 

「昨日までは出来た……。でも明日に私は、正義を信じて、握りしめられるのかな……?」

「人間なんだもの、考えだって変わるし、信じたいものだって変わる。明日がどうとか、そんなの、神様でもなければわからないよ」

「雷……」

 

 未来が、響の手を両手で掴んだ。陽だまりの暖かみが、響の手と心を温める。

 

「響が自分を信じられなくても、私達は響とつないだ手は離さない……ね?」

「当然だよ。意地でも離すもんか」

「ッ」

 

 響が息を呑む。

 

「何があっても、握りしめているから!」

 

 三人、一番の親友同士で笑い合う。響の悩みは、ただ数回のやり取りだけで吹き飛んでしまった。

 

「二人がそう言ってくれるなら……!」

 

 そして未来は片手を響の手から離し、雷の手を取った。いきなりの事に彼女はきょとんとした顔をしている。

 

「響だけじゃないよ。私が手を離さないのは」

「うん……。ありがとう、未来」

 

 雷がはにかんで笑った。

 未来が手を離し、一足先に室内へと戻る。

 そして入り口の手前で振り返り、

 

「おかえりなさい、響!雷!」

「「ただいま、未来!」」

 

 すると部屋の中から切歌と調が飛び出してきた。

 

「トランプ始めるデスよ~!あ、姉ちゃんはイカサマ禁止デス!」

「これ以上お菓子を取られるのキツイ……」

 

 響と雷は向かい合ってクスリと笑いあった。

 

「うん!」

「しょうがない!真剣勝負で相手しよう!」

 

 みんながいる場所へと、二人は戻っていった。

 

○○○

 

 エルフナインが何故響が神の力の依り代たり得たのかを解明し、その原因が神獣鏡の輝きにあると突き止め、そして依り代になる可能性が未来にもあることは分かった。

 

「だがエルフナイン君。なら何故、神獣鏡の輝きを浴びなかった雷君が、神の力の依り代たり得たのだ?」

 

 何故神獣鏡の輝きを浴びていない雷までもが神の力の依り代たり得たのか、何故響と異なり等身大のままだったのか、そして、彼女の神の力は何処に行ったのか?

 

「櫻井理論とは異なる理論で作られたケラウノスに鍵があると、僕は思います……きました!」

 

 二通のメールが届く。それは、ケラウノスを受け取った際の聖遺物の詳細と、ラボで解析していたケラウノスの解析データだった。

 

「メールか?」

「はい。一つは、ギリシャにから受け取った際の聖遺物情報。もう一つが、ラボで行っていた解析データです」

「それで、何が書かれている……?」

 

 もっともイレギュラーな存在であるケラウノスの情報に、弦十郎が身を乗り出す。

 

「まずは受け取った際の情報から」

 

 高速でスクロールしていき、違和感のある所を探していく。

 

「発掘場所……」

 

 そしてそれは見つかった。

 

「発掘場所がギリシャではなく、イラクになっていて、その形や性質からケラウノスと断定され、ギリシャに運び込まれた……が、正しい入手経路の様です」

「つまり、本当の名前はケラウノスではない可能性がある……ということか?」

「そうなります」

 

 エルフナインの答えに、弦十郎があごに手を当て、唸った。

 

「もう一つはどうなんだ?」

「確認しています」

 

 ひとまず頭を切り替え、もう一つの、ケラウノスの解析結果の報告を促す。がいつまでたってもエルフナインからの報告が来ない。弦十郎が彼女の顔を覗き込むと、エルフナインは真っ青になっていた。

 

「どうした?!」

「一秒間に二千兆回……プロテクト改変……偏り……」

「しっかりしするんだッ!エルフナイン君ッ!」

 

 エルフナインの顔色が蒼白になっていく。そして彼女は自身を揺らす弦十郎の袖をつかみ、おかしくなりそうな頭を何とか振り絞って、震える声で事実を伝える。

 

「ケラウノスは一秒間に二千兆回以上プロテクトを変更し、そのプロテクトに偏りが見られます……!」

「それは……つまり……」

 

 弦十郎の顔からも血の気が引いた。その言葉が意味することを知っているからだ。

 エルフナインが叫ぶ。

 

「ケラウノスにはッ……!()()()()()()()ッ!」

 

 二人の頭の中に、何故雷が依り代たり得たのかはすっかり抜け落ちていた。何故なら、彼らの体を貫いた衝撃は、今までうけた何よりも大きかったからだ。

 

○○○

 

 夜。響の誕生日会を終え、集まった全員が思い思いの方法で睡眠をとる中、一人の少女が静かにベランダに出てきて、欄干に背中から体を預けた。少女は、雲によって月が隠された空を見上げる。

 

「貴様の言っていたことが今なら良く分かる……。素晴らしいな、人間という物は。今まで二千年以上、様々な人類の汚点や醜悪さを見てきたが、それを含めても美点が勝る。貴様にも見せてやりたいが……雲が邪魔だな」

 

 少女はフッと微笑みを浮かべ、手のひらで空を仰いだ。すると、その手の動きの通りに雲が動き、月が顔を出す。月光の中、笑みを浮かべたまま目を閉じ、俯いた。

 

「ああ、分かっているとも。貴様の愛した人類を守るのが我の使命だ。安心しろ、貴様ほどではないが我も人間を愛しているからな」

 

 少し恥ずかしそうに頬を掻いた。そして、少女は深く息を吸い、胸を張る。

 

「我の力は知っているだろう?任せておくがいい。なあ?我が友、()()()よ……」

 

 月光が青い瞳の少女を照らす。

 

 

 

 

 

 

 赤みがかった髪をかき上げ、月を見上げた雷が、優しく微笑んだ。




相手を貴様呼びや、態度が尊大な時にちょくちょく出てきてました


この話を前提に逆算していけば、全ての伏線が一本につながるわけだな。
詳しいことはXV編で!
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