戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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本当にかなえたい夢を持つと「才能」で一括りしたくなくなるんですね。要因としてあるのは当然でしょうが。

多分、一括りにしてしまった時、夢を諦めた時なんでしょうね。


七色の弾丸

 装者たちが絶対零度すら下回る極極低温の氷漬けになっている姿を、遠方から二つの人影が手を望遠鏡のようにして観察していた。二人はコートで体全体を覆っているため、どの様な姿かは全く分からない。ただ、少女である。ということだけが辛うじて理解できた。

 

「うーむ……。これは……あっけなく、やられちゃったでありますか?」

 

 手を望遠鏡のようにして観察している少女の隣、髪にメッシュの入ったもう一人の少女が、寒そうに鼻をすする。

 

「ウチらじゃまるで敵いっこないデカブツが相手とは言え、もうちょっと踏ん張ってもらいたいものだぜェ……」

 

 少女が悪態をついた。如何やら彼女たちも棺の中身を欲しているようだ。棺をあいてに自分たちの勝ち目がないからこそ、装者たちに倒してもらおうという魂胆らしい。

 

『6522650922(もしもーし)』

「ん?」

 

 脳内に直接言葉が送り込まれた。テレパシーで送られたその言葉は言語という体を為しておらず、ただの数字の羅列だった。しかし、彼女達は普通全く理解できないはずの数字の羅列の意味を理解し、言語として捉えている。

 二人は脳内で聞こえる声に耳を傾ける。

 テレパシーの送り主の少女と、彼女達のリーダー格とみられる女性は、オープンカーに乗ってとある施設へと向かっていた。

 

「どう?そっちは順調かしら?」

『棺の浮上を確認したところだぜ』

 

 落ち着いた喋り口の少女が、棺の動向を観察しながら、首をかしげる。

 

「本当に局長は、あんなものの……棺の復活を阻止して、この星の支配者になろうとしたのでありますか?」

『64021102330322993346522346283?(冥界通信でもしてみる?)」

「おう……。それは流石に遠慮しておくぜ……』

「221994499……(残念……)」

 

 先ほどから数字しかしゃべらない少女が体を滑らせ、シートからずり落ちた。運転席に座る褐色の肌をした女性がふふっと頬を綻ばせ、

 

「今となっては昔の事だけど、少なくとも、私達の目的は局長とは違う……」

「039100?!(うわっ?!)」

 

 数字を喋る少女は彼女の言に表情を暗くしたが、直後に発生したドリフトターンによる停車によって振り落とされる。あまりの回転に吹っ飛びかけたヘッドホンを両手で抑え、過激なハンドルさばきを見せたリーダー格の女性をジト目で睨みつける。

 女性は舌を出し、謝る気を全く見せない素振りをした後、足をドアの上に乗せる。如何やら目的地に着いたようだ。

 

「私達の目的は、棺の破壊ではなく……その活用だもの……。そう、これは、未来を奪還する戦い……。だから、絶対に果たさなければならないわ」

 

 シートに座ったまま数字を喋る少女が女性を見上げた。彼女は、現実から耳をふさぐようにヘッドホンで耳を覆い、流れてくる音楽を聞き入ることにした。流れてくる音楽はクラシック。タイトルは交響曲第5番 ハ短調 作品67……通称、『運命』。

 

○○○

 

 装者たちはいまだ氷から脱出できずにいた。意識も狩り取られ、ギアを纏っていようとも低体温症による死は免れないだろう。

 

「装者七人、未だ昏睡状態!このままでは……!」

 

 友里の報告に、腕を組んでいた弦十郎がブリッジの外に向かおうとする。

 そんな彼を、右腕である緒川が引き留めた。

 

「指令!」

「案ずるな、ステテコ重ねた二枚履き、凍える前にはかたをつける!」

「そうではなく……!」

「ッ?!指令ッ!」

「どうしたッ?!」

 

 南極の寒さなど問題ない。問題になる前に片づけると言い切る弦十郎は、緒川の呼び止めを意にも介さない。だが、装者のバイタルチェックを行っている友里の悲鳴にも近い声を聞いて振り返った。

 

「雷ちゃんの脈拍急上昇!」

「上昇だとぉ?!低下ではなくか?!」

「はいッ!百……百五十……二百?!どんどん上昇していきますッ!」

 

 本来、低体温に陥れば血圧が低下して脈拍が少なくなり、いずれ心臓が停止する。だが、雷の身に起きたことはその逆、逆に心臓の鼓動が早まり、体温が急上昇しているのだ。

 

「何が……起きているんだ……」

 

 ほかの職員もその様子を見ていたようだ。どこからともなく、そんな声が上がった。

 氷漬けにされた雷が、目を見開く。一瞬だけ蒼くなっていた瞳は直ぐに元の金色に戻った。四肢は氷によって動かないが体は無事だ。頭を振って気をしっかりと保つ。

 

「みんな?!……っ」

 

 すると頭上がパッと明るくなった。

 南極基地の職員が照明弾を上げ、棺の気を引いているようだ。目障りに思ったのか、棺が発射元の基地に向かって光線を放つ。

 

「不味い!」

 

 自由に稼働する肩と腰のユニットから稲妻を放射して自由を奪う氷を溶かし、大ジャンプで光線と基地の間に割って入った。斥力フィールドを全開にして光線を逸らす。そらした先は氷漬けにされた仲間のところだ。光線はフィールドに直撃して歪曲し、狙い通り装者たちのところに直撃する。荒治療だが、確実に氷を溶かしきるだけの熱量はある。いい気付けにもなるだろう。

 

「どっへぇ?!」

「あっぶねえなオイ!」

「ああ、だが助かったッ!」

「何処も問題はないわね?」

「あるとすれば……」

「さっきのが結構痛かったぐらいデース!」

 

 響たちは口々に言いながらも、溶けた氷の中から全員脱出した。クリスがお返しとばかりに大型ミサイルをを数発発射し、棺を後退させた。

 復活した七人の装者が並び立つ。

 その瞬間、エルフナインから通信が入った。

 

『皆さん!ボクは……ボクの戦いを頑張ります!……だから!』

「みんなが背中を押してくれるッ!」

 

 棺は再び全身からビットを展開した。

 今度は単発ではなく、数体を連結させてジャベリンのようにしている。雷と響は蹴りと拳でいなし、棺に肉薄する。

 いなされたビットはぶ厚い氷を突き破り、水中から急上昇して下からの攻撃を仕掛けてくる。翼がサーフボードのように水面を滑りながらそれを避け、ブレードを体ごと高速回転させ空中にいるビットを両断していく。

 ビットから放たれる光線をクリスは腰部アーマーを展開して防ぎ、ボウガンをバリスタに変形させ、四本の巨大な矢を放つ。矢は空中でバラバラになり、雨のように落下エネルギーで加速して降り注いだ。

 

       『GIGA ZEPPELIN』

 

 マリアも広範囲攻撃では引けを取らない。彼女は短剣を蛇腹状に変化させて伸長し、新体操のような柔軟かつ軽やかな動きでビットを刃にからめとり、切断する。

 

       『SILVER†GOSPEL』

 

 逃げ遅れた研究員がビットの攻撃を喰らいかけたが、スケートのように自在な滑りで接近した調がヨーヨーで撃ち落とす。残りのビットもバインダーに展開した大型鋸をスピンで振り回して撃墜、さらにはそれらを打ち出して一気に複数対象を殲滅する。ビット複数のビットが集まって収束させた光線を鋸を盾にして防御する。が、流れ弾が女性職員の背後で爆発した。響がそれを受け止め、上空で集まっていたビットを切歌が鎌を振り回して斬り刻む。

 

「大丈夫ですか?!」

 

 響が女性職員の安否を確認するが、背後には複数のビット。正面には光線のエネルギーチャージ行う棺と、挟み撃ちとなってしまった。職員がいる以上、無理な軌道は出来ず、かといって放置することもできない。どうすればいいかと逡巡する響だったが、

 

『ぶん殴ってくださいッ!』

「言ってることぉ……全然わかりませんッ!」

 

 エルフナインの指示で言われるままに体を動かした。アンカージャッキで体を固定し、発射された光線を真正面から殴りつける。すると光線は拳にぶつかって逸れ、背後から攻撃を仕掛けてきたビットに命中した。

 藤尭が状況を報告する。雷のバイタルも正常値に戻っていた。不安は残るものの、今は目の前の状況に対処する。この作戦が終われば雷はメディカルルーム送りだ。

 

「拳の防御フィールドをアジャスト!」

「即席ですが、エルフナインちゃんが間に合わせてくれました!」

「うん!」

 

 弦十郎も緒川も満足げだ。

 

「雷さんのを再現しました!解析からの再構築は、錬金術の原理原則!これがボクの戦い方ですッ!」

 

 こぶしを握る。

 雷が光線を発射し続ける棺に飛び蹴りを放った。放たれていた光線が上に逸れ、響が職員を抱えてその隙に離脱する。雷が蹴った反動で再び空中に戻った。

 装者たちの全身全霊の攻撃が棺に集中する。前線に戻ってきた響は勢いそのままバンカーユニットを全力展開して殴り抜いた。雷は空中に展開した電磁フィールドを蹴り、展開した門の中を通って加速してから跳び蹴りを打ち込む。

 攻撃の威力に棺は倒れたが、ダンゴムシのように体を丸め、着地した雷、響に向かって突撃してきた。スパイクも付いているというおまけつきだ。

 

「させないッ!」

「行かせないッ!」

 

 雷と響の稲妻を纏い、衝撃波を放つ拳が真っ向から激突する。突撃を食い止めたはいいものの、響が棺と共に海底への落下に巻き込まれてしまった。

 が、そこは最速を誇るケラウノス。即座に空中機動で響のところに向かい、回収する。

 

「助かったよ雷!」

「問題なしなら問題ないッ!」

 

 響を氷の上に下ろし、再び空中に上昇、全身のユニットを展開して超電磁の嵐と錨を沈みゆく棺に向けて撃ち込んだ。

 

       『超電磁トルネード+超電磁アンカー』

 

 水中を潜行する棺が超電磁の檻に捕らえられる。

 

「でぇりゃぁぁぁぁッ!」

 

 空中で雷が思いっきり体をひねり、ぶ厚い氷を貫い抜いて棺を空中に打ち上げる。超電磁の檻に捕らえられているがゆえに空間に固定され、棺は落下することも身動きを取ることもできなくなる。出力が上がっていたとはいえ、ディバインウェポンすら拘束する代物なのだ。これくらい容易といえるだろう。

 雷が響の元に着地し、翼たち他の装者も集結する。

 

「拘束したとはいえ時間の問題ッ!」

「狙うべきはのど元の破損個所、ギアの全エネルギーを一点収束ッ!」

「決戦機能ならば行けるかもッ!」

「だとすれば後はやるのみデスよッ!」

「狙いをつけるのはスナイパーの仕事だ、タイミングはアタシが取るッ!」

「いくぞ、みんなッ!」

 

 拘束時間はおおよそ三十秒。それまでに決めなければならない。みんなの心、想いは一つとなった。

 

「「「「「「「ギアブラストッ!」」」」」」」

 

 インナースーツを残してアーマーがすべてエネルギーへと変化し、少女たちの元に収束する。ビットが棺の元に集合し、リフレクターになろうとするが、拘束する電磁波の影響でジャミングが発生し、組織立った動きが出来ないでいる。拘束が解けるまでまであと二十秒。

 

「リフレクター気取りかよッ!」

 

 クリスの左目にスコープが展開された。あと十秒。ビットは防ぐことは出来ないと理解したのか、光線を放ち、妨害に終始している。距離は千五百。

 光線の衝撃で安定しない足場の中、響が気分をやわらげる目的で、

 

「クリスちゃん!もうすぐ誕生日!この戦いが終わったら……」

「そう言うのフラグはお前ひとりで建てろってんだよ……!」

「まだデスか?!まだデスか?!」

「このままだと、拘束が……!」

 

 あと五秒。光線の雨が激しく降り注ぐ。

 

(焦るな……焦らせるな……)

 

 あと一秒。ついにクリスが足場の揺れも全て計算に入れたうえで棺をロックオンする。

 

「今だぁッ!」

「「「「「「「G3FAッ!へピタリボルバーッ!」」」」」」」

 

 ギアが変換された七色のエネルギーが装者たちから放たれ、収束し、棺の胸部にある破損個所を直撃する。放たれたエネルギーは衝撃を逃がせない棺を貫通し、爆散した。空を覆う曇り空を爆発の衝撃でかき消した。

 

○○○

 

 装者たちの任務は完了した。

 棺は大破し、今は国連主導の調査を行っている。

 雷はメディカルルームから異常なしと、疑問が残るものの解放され、響達と共に調査の様子を見守っていた。すると、棺が白い蒸気を吐きながらその扉を開帳する。

 

「あれがカストディアン……。神と呼ばれた、アヌンナキの遺体……」

「つまりは聖骸……という訳ですね……」

 

 棺の中には、真新しい金の腕輪を付けた、干からびたミイラが安置されていた。

 何時もならここで未知なる発見に大はしゃぎしている雷だったが、今はどこか上の空だ。雷は今、全く別の事を考えていた。




また厄介な新キャラが現れましたよ。ええ。数字語ですが、ちゃんと規則性はあります。キャラ詳細は他の面々が名前を明かしたその時にでも。
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