戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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新キャラちゃん登場。ミラアルクよりもこっちのがいいよね(やらないとは言ってない)


遺骸をめぐって

 桃色の髪をした、どことなく狼を彷彿とさせる中くらいのスーツケースを持った少女は、見た目のワイルドさとは異なる丁寧な言葉使いで調と切歌に宣戦布告した。

 

「わたくしめが相手であります」

 

 そう言って彼女は、切歌に奇襲を仕掛けたようにスーツケースから何かを取り出すようなそぶりすら見せず、背後にあった、爆発によって発生した亀裂の中に飛び込んでいった。

 

「やらいでか!……デース!」

「切ちゃん!もっと常識人らしくッ!」

 

 一度奇襲を喰らっているからか、挑発されたにも拘らず向かってこないからか、切歌は少女の後を追って亀裂の中に飛び込み、艦内に逃げた少女を追いかける。

 切歌を単独行動にさせるわけにはいかないと、調も後を追って飛び込んだ。

 調が少し遅れてしまったため、通路によって迷路のようになっている艦内で分断されてしまう。これにより、二人の真骨頂であるユニゾンの爆発力と連携が断たれてしまった。相手の実力が分からない今、切り札を切ることが出来ないのはかなりの痛手だ。

 調が頭を振って周囲を索敵していると、背後から何者かの走る足音が聞こえてきた。咄嗟に振り返ると、少なくとも切歌ではない人影が目の前を横切る。

 

「鬼ごっこなら、シュルシャガナで!」

 

 確認した人影を追うと、やはり錬金術師の少女だった。

 調は少女と相対する。すると、背後からのアルカ・ノイズの足音が聞こえてきた。慌てて振り向くがアルカ・ノイズの攻撃のほうが速く、先に倒すことも防御姿勢も取ることもできず、攻撃をまともに喰らってしまった。シンフォギアも強化されているが、不意打ちをまともに喰らってしまえばギアはともかく装者である調へのダメージは大きい。

 調は悲鳴を上げて吹き飛ばされた。

 それを想定していた少女が叫ぶ。

 

「アタッチメントッ!ネイルッ!ぶち抜くでありますッ!」

 

 音声認識なのか少女の声にスーツケースが反応し、口を開けると、そこからロープのようなものが伸びて少女の尾てい骨にあたる部分とつながった。するとケースの中から鋭利な爪を持つ手が現れ、まるで尻尾のように自在に操って調にその爪を突き立てた。

 

「かはっ?!」

 

 調の体が床にめり込む。

 その威力は大きな音となり、遠くにいた切歌の耳にも届いた。

 

「調!……ッ?!」

 

 音のする方に向かおうとするが、横合いから壁を突き破ってのアルカ・ノイズの群れがなだれ込んできた。

 すぐにでも調の元に向かいたい切歌が鎌を振りかぶる。

 

「今更ノイズが何体来たところでぇ……わぁ?デェースッ?!」

 

 鎌の刃が天井を通るパイプに引っかかった。

 狭い艦内で長大な鎌を振り回せば必ず何かに引っかかる。少女はこれを狙って艦内に飛び込んだのだ。アルカ・ノイズが切歌の方に向かう。

 

「デェース?!」

 

 切歌の情けない声がこだました。

 少女が床に埋まる調を見下ろす。

 

「他愛無いであります。完全なる命を砕いたシンフォギアが、この程度なんて」

 

 少女は慢心していた。

 そんな彼女の足元に、調のアームドギアであるヨーヨーがカラコロと虚しく転がってくる。勝ちを確信した少女だったが、突如ヨーヨーが鋸となって高速回転し、一瞬にして二体のアルカ・ノイズを切り裂いた。赤いプリマ・マテリアが煙のように視界を覆った。

 

「まさかッ?!」

「私を変えてくれた人がいる……。私を強くしてくれた人がいる……!」

 

 バインダーから伸びる大型鋸を盾にして自身を押さえつける手を弾き飛ばした。

 

「簡単には負けられないッ!」

 

 そしてバインダーを伸ばしたまま、小型鋸を全力投射した。

 狭い場所に誘い込んだのは長物を振り回す切歌の戦闘力を奪ったが、面攻撃な可能な調の戦闘力を引き上げてしまった。

 通路全面を小型の鋸が埋め尽くす。回避は出来ないため、少女は尻尾を引き戻し、堅牢な爪を使って何とか防ぎ切る。

 が、足は止められ、視界は奪われてしまった。調は脚部の鋸を高速回転させ、自分の放った鋸の間を縫うような三次元機動で少女の背後を一瞬にして取った。空中で反転し、バインダーの大型鋸を発射する。

 少女は機敏に反応し、尻尾の手を使って柱を掴んで回避した後、即座に肉薄。そのまま尻尾を操って拳を調にぶつけるが、彼女はバインダーを盾代わりにして攻撃を防ぐ。

 ターンが変わる。

 調がヨーヨーを投擲、少女はまるで獣のようなすさまじい反射神経で狭い空間を立体的に動き回るヨーヨーを回避していく。更に調はもう片方も投げ、体を回転させて足に伸びる光の糸を巻き取った。

 すると二つのヨーヨーは不規則に跳ね、駆け回り、避ける隙間も潰していく。

 

       『β式・獄糸乱舞』

 

 一方、長物故に最初は苦戦していた切歌だったが、鎌を小型化して二刀流にすることで手数を増やし、最後のアルカ・ノイズを切り捌いた。

 手こずってしまった分、大急ぎで調の元に向かう。

 

「ダウンサイズしてしまえば、狭くたって問題はないのデスッ!」

 

 そしてついに調と合流した。調の攻撃を避けるためにバックステップで交代する少女を挟撃する形だ。

 

「調!」

 

 その声に呼応して二つのヨーヨーを連結して一つにし、綺麗なサイドスローで勢いよく投げ放った。

 

「そんな大雑把な攻撃が、当たるわけが……!」

 

 投げる動きが分かる分、同避ければいいのかもわかる。少女は容易くそれを避けるが、本命はこれを直撃させることではない。

 背後で待ち構えていた切歌が鎌を大きくバットでボールを打つように振り、鎌の刃で巨大なヨーヨーを引っかけた。

 

「嘘でありますッ?!」

 

 少女は振り返って切歌の妨害を図るが、調がそうはさせじと即座に攻撃を加えていく。

 そうしているうちに鎌と鋸が凶悪な形へと変形し、射出された。そしてこれは元は二つのヨーヨー。糸を伝って調の意のままに操作される。

 二つのヨーヨーは遂に少女を捉え、大爆発でを引き起こした。その爆発が空母の装甲に大穴を開ける。

 

「やったね!切ちゃん!」

「今夜はハンバーグなのデース!」

 

 防衛に成功したことに二人は嬉しそうに笑い合う。切歌が鎌を大きくスイングした。

 が、瓦礫の山が触ってもいないのに浮遊し始め、その中からさっきまで戦っていた少女の他にもう一人、ヘッドホンを付けた、金髪の眠そうな目をした少女が現れた。

 もう一人の少女は振り返り、

 

「0483221、443222?(エルザ、無事?)」

「数字?」

 

 と、言語ではなく数字の羅列を口にした。

 当然ながら調と切歌にはただの数字にしか聞こえなかったが、さっきまで戦っていた少女は意味が理解できるようだ。

 エルザは立ち上がる。

 

「大丈夫であります、フランカ。わたくしめは問題無いであります」

 

 戦闘を続行しようとするエルザだったが、その肩を眠たげな少女、フランカに止められた。

 

「22310241993433503334650202。048322111112223331311381024181、31311191410255031116122。11048503

(死体なんてどうでもいい。エルザが傷つくぐらいなら、戦わない方がまし。帰ろう)」

「~ッ?!が、ガンス。帰投であります」

 

 優しくされなれていないのか、フランカの要望にエルザが答えた。

 彼女はテレポートジェムを割り、姿を消した。そしてフランカもかけていたヘッドホンを首に下ろし、

 

「020203313310031。913122426515993351211243444(いい歌だった。私にも今度聞かせてね)」

 

 と、笑ってジェムを割らずに姿を消した。

 いきなり現れ、しかも数字の羅列を喋り、いきなり消えフランカに呆気にとられながらも、撃退に成功したことで調と切歌は武器を下した。

 

「何とか……勝てた?」

「少なくとも、あの気味悪いミイラは守れたのデス」

 

 急襲をしのいだS.O.N.G.司令官、弦十郎が指示を出す。

 

「直ちに救護班を向かわせろ!」

「世界に敵対する、新たな脅威……」

 

 翼がつぶやいた。

 

「我々S.O.N.G.も、極冠にて回収した遺骸の警護に当たるべきではないでしょうか」

「気持ちは分かるわ。でも、遺骸の調査、扱いは、米国主導で行うと、各国機関の取り決めだから仕方ないじゃない」

 

 翼の言っていることはベストだが、マリアの意見は現実的だ。

 

「日本政府やS.O.N.G.に、これ以上聖遺物と関わらせたくない国も少なくないですからね」

 

 聖遺物は古代のオーバーテクノロジー。ノイズに対する対抗手段である以前に、使いようによっては強大な兵器へとなりうる。要は米国やほかの国々はその力を喉から手が出るほどに欲しているのだ。

 それでも翼は申し出る。

 

「せめて、私達が警護に当たれれば、被害を抑えられ……あいたっ?!」

 

 突然マリアのデコピンを額に喰らってしまった。

 

「今やることとやれることに集中するの」

 

 結構痛むのか、翼は額を抑えている。

 

「ステージに立つのは、貴女の大切な役目のはずでしょ?」

「不承不承ながら、了承しよう……。だが、それには一つ、条件がある」

 

 翼のステージのはずなのだが、なぜか一つ条件が追加されてしまった。

 そう言って翼は、マリアのかけていたサングラスを手に取った。

 

「は?」

 

 マリアには理解できない。

 翼が不敵に、そして楽し気に笑みを浮かべた。




フランカ・ド・フリース

ヘッドホンとショートカットの綺麗な金髪をした、眠たげな眼をした少女。

オランダ、ユトレヒト出身。
裕福でも貧しくもない、普通の家に生まれた三兄妹の末っ子。将来の夢は音楽家。親の支援を受けて夢に向かって努力していたが、人攫いに遭い、実験体となった。

数多の脳手術を受けており、脳に埋め込まれた思考現実反映装置『ブレインズ・ジョウント』によって様々な超能力を使えるようになったが、代わりとして言語能力が破壊されている。その為聞くことは出来るが、話している言語が数字になっている。規則性があるため、それさえわかれば理解することが出来る。

数字言語は0~9を子音、1~5を母音としています。小文字の際はあ行の逆。濁音は「だ」が331、「ば」が441と、子音を連続させる。半濁音は「ぱ」は541。「わをん」は「91・95・99」と、かぶる文字は抜く。「-」は09。

脳の処理能力が体の成長に追いついていない。常に眠いのをヘッドホンから流れる大音量の音楽で強引に叩き起こしている。このバランスがうまくいっていないため、失敗作のレッテルを張られた。

メンバー最年少(13歳)
誰かを傷つける、誰かが傷つくのを嫌う優しい性格。音楽が好き。普通の言葉を離せなくなった今も夢をかなえようとしている。

モチーフは人。怪物君に該当する。

誘拐されてから五年たった今も家族はフランカを探している。
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