戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
次回作の鬼滅の刃は一人称の小説を書く練習にするか検討しよう。
日が傾き、空がオレンジ色になったころ。
切歌と調は家路につく前に寄り道して小さな公園でブランコを漕いでいた。しかし二人の表情は楽し気ではなく、すこぶる暗い。切歌の乗るブランコのチェーンが虚しくキイキイとこすれる音がした。
調が俯きがちに口を開く。
「翼さん……とっても大丈夫には見えなかったね……」
「復活の直後に、あのどんでん返しは無いデスよ……」
あれは翼が指令室やって来た直後の事だった。
ようやくの目覚めにメンバーたちの間で安堵が広がる。翼も心機一転と何時もの凛々しい顔つきに戻っていた。
「心配をかけてすまない……。だが、もう大丈夫だ!」
翼がそう言い切った瞬間、指令室の電源が急に落ちる。モニターはついたままのため、電力が落ちたわけではないことは分かった。何か作為的なものを感じながら、この場にいる全員がモニターを見つめる。
すると突然、今までS.O.N.G.のエンブレムが写っていたメインモニターに、鎌倉の紋章が映し出された。
その瞬間、雷が眉を顰め、舌打ちを打つ。
『大丈夫とは、何を指しての言葉であるか?』
「ッ……!おじい様……」
鎌倉の紋章の前に革の椅子に座った訃堂が現れる。
彼と彼をトップとする組織、鎌倉は雷が最も危険視する組織であった。彼女の推察の全てに合致する組織がほかにない以上、警戒するのは当然だ。訃堂を値踏みするように睨みつける。
『夷狄による国土蹂躙を赦してしまった先の一件。忘れたとは言わせぬぞ翼!』
「無論忘れてはいません!あの惨劇は、忘れてはならぬ光景であり、私が背負うべき宿業そのもの!」
翼は前に出、忘れるわけにはいかないと胸の前で拳を握る。
『真の防人たり得ぬお前に、全ての命を守ることなど、夢のまた夢と覚えるがいい!』
「ッ?!……今の私では……守れない……?」
訃堂の言葉が翼に突き刺さった。
驚愕のあまり翼は顔を上げ、目を見開く。その頬を冷や汗が伝った。その一瞬、訃堂の表情が少しだけ満足げに変わったことを雷だけが見抜ていた。瞬きの間のほどの短い時間であったが、その一瞬だけ明らかに表情が違ったのだ。
その変化と今までの推察をすり合わせるため、わずかの間俯いた彼女に訃堂の目が向いた。その様子を見るに、どうやら訃堂は雷の癖を把握しているようだった。
訃堂は雷が再び顔を上げる前に翼に視線を戻す。
『歌で、世界は守れないということだ!』
「歌で……世界は……」
『お前にまだ、防人の血が流れていることを期待しておるぞ』
言うだけ言って訃堂は姿を消した。
散々な言われようだが装者、そしてS.O.N.G.メンバーは今までの実績から訃堂の言が偽りであることを知っている。しかし、翼はそうではないようだった。
ただでさえすり減っていた心に追撃を喰らってしまったのだ。最後の否定は心底響いただろう。
「翼さん……」
「案ずるな立花……。可愛げのない剣が……簡単に折れたりするものか……」
それは、明らかな強がりだった。
いつも明るい響ですら、まともに声をかけることが出来なかった。
ほとんど日は沈み、空はオレンジを通り越して紫色になっている。
「あーらよっと!……暁選手!見事な着地で金メダルデス!」
切歌はブランコを勢い良く漕ぎ、その反動で大きくジャンプした。綺麗な着地を決めた切歌は振り返り、調の方を向く。彼女は笑ってみせるが、調の表情は暗いままだ。
「姉さんでも分からない、敵の正体……」
「ッ」
切歌としても、雷がいまだに敵情を把握できていないというのはなかなかにキツイものがある。それでも、切歌は調を不安にさせないように明るく振舞ってみせる。
「それにしても、血を欲しがるなんて今度の相手は本当に吸血鬼みたいデス……って、およよー!」
「どうしたの切ちゃん?!」
いきなり変な声を上げた切歌に思わず調が顔を上げる。すると切歌がパタパタと駆け寄ってきて、ひざを折ってブランコに座ったままの調と顔の高さを合わせる。
「分かったデスよ!常識人的に考えて、次に狙われるのは血がいっぱいあるところ!例えば!献血センターとか!」
そう言ってすぐ近くにある病院を指さす。かなり大きな病院であるため、ソイル式血液も少なからずあるだろう。
「ああいうおっきな病院に違いないデス!」
「そんな単純なものじゃぁ……」
調が呆れつつも優しくそれはないと言おうとしたところ、病院のサーチライトに、コウモリの羽の生えた人型のシルエットが浮かび上がった。何というかあからさまである。
「「ああー!」」
二人は頬がくっつくほどに密着して驚きの声を上げた。
大慌てで捕獲するべく病院に駆け込む。それと同時に友里へ報告を入れた。看護師の引き留める声が聞こえたが、今はそれどころではないため無視を決める。
『こちらからでも確認できたわ。でも危険よ。雷ちゃんが今向かってるから二人とも先走らないで』
「姉ちゃんが?!でもそうも言ってられない状況なのデス!」
「到着するまで持ちこたえて見せます!現場に一番近い私達に任せてください!通信終わり!突撃開始!」
二人はリンカーの充填された注射器をポケットから取り出し、屋上へ向かうためにエレベーターに飛び乗った。
屋上ではミラアルクが苦痛に耐えかねて口元を抑える。
(こっちもそろそろ限界かもだぜ……)
講堂に映ろうとした瞬間、エレベーターの到着を知らせるベルが鳴った。慌てて振り返ると、そこには切歌と調がいた。
「待つのデス!ことと次第によっては、荒事上等なあたし達ですが……」
「その前に、貴女の所属と目的を聞かせてください!」
「そんな悠長……コレっぽっちもないんだぜ!」
振り向きざまにミラアルクは手のひらいっぱいのアルカ・ノイズ召喚ジェムをばら撒いた。ジェムは屋上の床にぶつかって割れ、召喚陣から大量のアルカ・ノイズが出現する。
調がペンダントを取り出し、シュルシャガナを起動させる。
「Various Shul Shagana Tron」
ギアを装着すると同時に脚部から鋸を展開し、踵落としの要領でノイズを真っ二つに斬り裂く。切歌はイガリマを纏うと肩のブースターを点火し、すれ違いざまに鎌に引っ掛けて斬り飛ばしていく。そこにケラウノスを纏った雷も到着した。
夜空から稲妻と共に降下してきた彼女は病院の精密機械にダメージを負わせないよう、足技を主体に巧みに相手取っていく。
「雷ちゃん現着!敵の狙いはやはり、Rhソイル式の全血清剤!」
「だとしたら好機。行動予測が立てやすい今、一気に切り崩せれば!」
切歌が鎌を水平に構え、前後反対に向けた方のブースターを点火し、その勢いを利用してコマのように回転しながら斬り刻む。
『災輪・TぃN渦ぁBェル』
刃は多数のアルカ・ノイズを粉微塵にしたが、ミラアルクは跳躍し、後ろに大きく後退することで攻撃を免れる。そして入れ替わるようにバナナのようなアルカ・ノイズが二体現れた。
「切ちゃん!」
「姉ちゃん!」
同じく切歌とスイッチした雷によって二体とも蹴り上げられた。上空で彼女の召喚した稲妻に打たれ、焼却される。
「あなたの行動は、護国ナントカ法に抵触する違法行為デス!これ以上の抵抗はやめるのデス!」
「馴れない御託が耳に障るぜ!」
切歌が投降を勧告する。が、ミラアルクはそれを攻撃をもって反故にした。死角からの強襲であったが、戦いなれている切歌は慌てることなく鎌を屋上に突き刺し、柄を支点にして大きく回転、ミラアルクの顎を蹴り飛ばした。
ミラアルクは羽根で体を覆ってボールのようになり、屋上の端まで転がってそのまま空に飛びあがった。
「調!ザババの刃を重ねるデス!姉ちゃんはアルカ・ノイズを任せるデス!」
「れでぃご!」
「任せて」
雷がアルカ・ノイズを殲滅している間に切歌は鎌を二本に分離して地面に突き刺し、それを発射台にして調が鋸を飛行機のようにしたものを打ち出した。
はじき出された上にブースターで加速したソレはミラアルクを正面からとらえたが、彼女は上体を逸らせることで紙一重で回避する。回避したぞと笑うミラアルクであったが、飛翔する鋸は空中を旋回して再び彼女を補足した。再度避けようとしたが、アルカ・ノイズとの戦闘の真っ最中でありながらノールックで放たれた雷の超電磁の鎖がその場から動くことを許さなかった。
真正面から直撃を喰らったミラアルクは撃墜され、屋上に叩きつけられた。
「やったの?」
「むしろ、やりすぎてしまったかもデス……」
「いや、流石に中途半端すぎてギリギリで逃げられた。まだ来るよ」
アルカ・ノイズを殲滅し終えた雷が調と切歌と共に並んだ。曰く、直撃こそしたが致命打にはならなかったとのことだ。
その証拠に、土煙の中から負傷したミラアルクが現れる。
「負けないぜ……負けられないぜ!ウチは守る……三人を……家族をぉぉぉッ!」
「家族……?」
「家族だなんて、ちょっとくすぐったいけれど、悪くはないわね。ありがと」
「ッ」
雷はティアラから展開されるレーダーで敵の増援を感知したが、一歩間に合わなかった。上空に打ち上げられた弾頭は閃光を迸らせ、周囲一帯の電力を麻痺させる。
「EMP?!」
「照明が?!何も見えないデス!」
「切ちゃん!落ち着いて……」
不審な音が背後から聞こえてきた。思わず振り返るとロケットのように空を飛ぶ拳が迫って来ていたが、レーダーによって暗くても認識できる雷によって一発が払われ、もう一発が受け止められた。受け止めた腕を投げ捨て、指さして叫んだ。
「サイボーグ?お前は何者だッ!」
「付近一帯のシステムをダウンさせました。早くしないと、病院には命にかかわる人も少なくないでしょうね?」
いきなり不意打ちをかけてきた女性、ヴァネッサは射出した両腕を巻き戻し、問いに答えず髪をかき上げた。
「入院患者を人質に?!」
「アイツは……?」
「来てくれたのか!ヴァネッサ!」
ミラアルクは嬉しそうに彼女の名を呼んだ。そしてもう一人、増援がいる。レーダーには今まで映っていなかったことを鑑みると、座標を重ねることで誤認させたようだ。
「駆け付けたのは、ヴァネッサだけではありません……。それに、お目当ての物も、騒動の隙に獲得済みであります」
そう言ってエルザは自身の座るスーツケースを踵で叩いた。
「うわぁぁぁぁッ!ヴァネッサ、エルザ!ダイダロスエンドだぜッ!三人そろった今、最大出力で……あ……」
歓喜のあまり叫び、調達に向きなおるミラアルクだったが、突然の脱力感に膝を地面についた。悔し気に歯噛みする彼女の隣にヴァネッサが並んだ。
「それはまた次の機会に。消耗が激しいミラアルクちゃんとエルザちゃんに、無理はさせられません。フランカちゃんも危険な状況ですからね。ここは引きましょう?お姉ちゃん判断です」
「あなた達は……」
「ノーブルレッド。きっとまた、お目にかかりましょう?」
そう言って彼女はテレポートジェムを地面に落とした。
「逃がすもんかデス!」
「駄目ッ!切ちゃん、今は患者さんたちを……!」
「私が持ちこたえさせるけど、長くは持たないよ……!」
逃がすわけにはいかないと切歌が追撃するが、調と雷によって止められる。
ケラウノスの電力を病院に遠隔接続してはいるものの、長くは持たないだろう。雷が倒れるよりも前に、命にかかわる患者を避難させなければならない。それと同時に病院の電力復旧も早急にしなければいけない。
「デェスッ……!」
弱者を人質に取り、姿を消したノーブルレッドへの怒りから、切歌は鎌を思いっきり振り下ろして突き立てた。
○○○
アジトに帰還したノーブルレッドは、真っ先にソイル式血液を命の危険が迫っているフランカに打ち、その後にエルザとミラアルクも輸血して横たわった。
因みにフランカの『ブレインズ・ジョウント』はソイル式血液の消耗が激しく、他の二人の二倍以上使用する。
三人がベッドに横たわり、寝息を立て始めたころ。ヴァネッサはパソコンを立ち上げ、テレビ電話を開始した。
「御所望の物はこちらに……。シェム・ハの腕輪でございます」
彼女は会話の相手に見える様、カメラに映るように腕輪を持ち上げた。
『そうだ。七度生まれ変わろうとも神州・日本に報いるために必要な……神の力だ』
護国を行う者、風鳴訃堂。彼こそが夷狄を裏から操り、数万人の無辜の民を殺戮した外道。人ではなく、神の力に護国を売った売国奴である。
雷は考え事をする際に上か下に視線を向ける癖があります。
そしてその女子高生の癖を把握しているエロ爺こと風鳴訃堂。そのうえ孫を洗脳し、極右を騙る売国奴とクソ野郎すぎるな。