戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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うーむ、一人称視点の練習なら鬼滅の刃よりガルパンの方がいい気がしてきた。しかもそこにAR/MSとかいい感じのキャラを作っちゃってさぁ大変。どうしよう?


腕輪の起動

 とある研究施設。同時に、ノーブルレッドのアジトとなっているこの場所で、やっとの思いで奪取したソイル式血液を使って彼女たちは各々回復していた。

 調と切歌の二人のザババの刃に斬られた左腕を抑えるミラアルクがベッドに横たわったままのエルザを見つめる。

 

「力を使えば、血中のパナケイア流体が濁り淀む……。怪物と恐れられても、所詮はこの程度……。情けないぜ……」

 

 眠るエルザの額に、濡れたタオルをフランカが載せた。直接回復に効果があるわけではないが、少しでも苦痛を緩和できればと思っての事だ。

 外傷の無く、パナケイア流体の淀みから脳に取り付けられた『ブレインズ・ジョウント』へのエネルギー供給低下によって眠っていたフランカは目を覚ましていた。逆に外傷もひどく、流体も濁りに濁っているエルザの方が今は重症だ。

 最も、フランカはパナケイア流体を消費する装置が脳にあるため、力を使わずとも淀んでいくという明らかな欠陥を抱えている。その為ソイル式血液が安定的に補充できない今、いつだれが倒れてもおかしくない綱渡りの状態なのだ。

 自分に腹を立てているミラアルクの元に、ヴァネッサがやって来た。

 

「左腕の具合はどう?ミラアルクちゃん」

「ザババの刃……。物質的、霊的に作用するってのは本当らしい……。フランカに手伝ってもらっても治りが遅いからな……」

「そう……」

 

 フランカは自分のパナケイア流体がよどむにも拘らず、ミラアルクの細胞の修復を超能力で補助していた。ヴァネッサやミラアルク本人にも止められたのだが、彼女はそれを押し切って治療している。フランカはエルザの濡れタオルを取り換えながら、額から流れる汗をぬぐった。

 ヴァネッサはそんな彼女を一瞥してからアタッシュケースの中にあるシェム・ハの腕輪を手に取った。金色に輝くそれを見下すように見つめる。

 

「利用する者される者。それを蜜月と呼ぶのなら、一体いつまで続けられるのかしら、ね……」

 

 それは、どうしようもない現状を嘆いているようだった。

 

○○○

 

 雷と響、未来は、食堂で昼食をとっていた。三人の前にはサンドウィッチがきれいに積まれ、響と未来のカップには紅茶が、雷にはコーヒーが注がれていた。

 雷は響の隣で楽譜を前に、サンドウィッチを片手にうんうん唸っている。キャロルの計画を逆手に取り、アダムの宿願を粉砕した雷の頭脳をもってしても歌を作るとはそう上手くいかないものだ。締め切りまで半月を過ぎている。

 紅茶の波紋を眺めている響に、未来が心配そうに声をかけた。

 

「放課後、また本部に行くの……?」

「うん……。困っている人たちがいるから……」

「響らしい。でもね……」

「でも!」

 

 未来の言葉を響が遮った。結構な大声だったため、食堂に声が反響する。

 

「本音言うとちょーっと休みたい!遊びに行きたい!今日この頃お年頃!」

 

 そう言って目の前にあるサンドウィッチをぺろりと平らげてしまった。

 すると、先ほどまで凄まじい集中力を見せていた雷がいきなりカップのコーヒーを一気飲みし、ダンとテーブルに叩き下ろした。そしてそのままふにゃっと崩れ込む。崩れ込んだ先にあったサンドウィッチは響が間一髪で取り上げている。

 

「だぁめぇだぁぁぁ……!」

「大丈夫……?」

 

 崩れ込んだ雷を心配そうに未来が見つめる。彼女はテーブルに頭をこすりつけていた。

 

「もう何も思いつかないよぉ……!」

「……!じゃあさ!時間が取れたら気分転換に遊びに行かない?!カラオケとかさあ」

「……うん……そうする……」

「じゃあ、前見たく翼さんとか思い切って誘っちゃおっか!」

「そうだね!翼さんにも元気になってもらいたいもんね」

 

 未来の提案に響が乗った。そろそろ昼からの授業だ。時間もないので、テーブルに顔を乗せ、食べさせろと催促している雷に響が食べさせている。

 少女たちの、ほのぼのとした時間が流れていく。

 

○○○

 

 夕方、S.O.N.G.の招集に応じて雷と響は本部にいた。

 招集の内容は今後の相手への対応についてだ。

 

「新たな敵。パヴァリア光明結社の残党、ノーブルレッドか……。その狙いは一体……」

「一連の事件をきっかけに、Rhソイル式の全血清剤は一か所に集められて警護されることになったそうです」

「短期決戦を余儀なくしたか……」

 

 ノーブルレッドがRhソイル式の全血清剤が無ければ活動できないと知った今、先の出来事で奪われた分以上の長期戦は不可能だ。一人につきどれだけの量を、どれだけのサイクルで消費するのかが分からないのがネックだが、奪われた絶対数が少ない以上そう長くは持たないだろう。

 クリスが手のひらに拳を打ち付ける。

 

「しかし、残党相手にこうも苦戦を強いられるとは、思ってもみなかったな……」

「確かに……。幹部級四人の方がずっと手強かった……。なのに何故……」

 

 サンジェルマン、プレラーティ、カリオストロ、ヨハン。四人の強さは装者がユニゾンしてようやく互角というほどの強さを持っていた。しかし、ノーブルレッドはそれほどの力を持ってない。どれほど過大評価しても幹部級一人と拮抗するかどうかというレベルだ。にもかかわらず、装者たちは苦戦を強いられていた。

 

「なりふり構わないやり方に惑わされただけデスとも!」

「だよね。サンジェルマンさん達の想いが宿ったこのギアで負けるなんて、ありえない」

「私達は……ね」

 

 切歌の意見に響が同調したが、雷が真剣な表情でくぎを刺した。

 視線が彼女の方に一斉に集まる。

 

「連中は弱い。だけど、だからこそ人質とかも平気でとる。なんだってする。それだけは警戒しておかないと」

「そこだけは、気を付けないとね……」

 

 あの惨状を間近で見ていたマリアにはその意味が痛いほど伝わった。響も少し油断していた気を引き締める。

 雷が言い切る前に、翼が指令室から退室した。

 マリアが声をかける。

 

「ちょっと翼!どこに行くの」

 

 翼は足を止め、振り返った。

 

「鍛錬場だ。相手が手練手管を用いるのなら、それを突き崩すだけの技を磨けばいいだけの事」

 

 そんな鞘のない刀のような、初めてあったころの翼に戻った彼女を響と雷が追いかける。

 

「翼さん!今度、時間が出来たらみんなでカラオケに行こうって……。だから、翼さんも……」

「すまないが、他を当たってもらえないか」

「柔軟性のない剣は簡単に叩き折られるぞ?」

 

 そう切って捨て、また鍛錬場に行こうとする翼の背中に向かって雷が忠告した。思う節があったのか翼はその場で立ち止まり、

 

「検討はしよう」

 

 とだけ言って去っていった。

 響は、自分以外を信じない、昔のようになってしまった翼の背中を悲し気に見つめた。一方雷は青い瞳を向け、厄介なと息を吐いた。

 

○○○

 

 ノーブルレッドにアジトに、彼女らの雇い主である風鳴訃堂が現れた。

 すでにエルザも復調しており、メンバー全員が活動できる状態だ。ノーブルレッドのリーダー格であるヴァネッサが応接する。

 

「お早い到着。せっかちですのね?」

「腕輪の起動、間もなくだな」

 

 彼の目的はシェム・ハの腕輪。ノーブルレッドなどに興味はなかった。そんな訃堂をフランカが苛立たし気な目で見つめている。自分の手を汚さず、家族に人殺しをさせるような男に雇い主といえど幼い彼女が真顔でいられるわけがなかった。その苛立ちは、そんな奴の下につかないと満足に生きることもできない自分たちにも向けられている。

 ヴァネッサはそんなフランカを無言で咎め、腕輪を起動するに必要な装置を操作する。

 

「聖遺物の軌道手段は、フォニックゲインだけではありません。七つの音階に照応するのは七つの惑星、その瞬き」

 

 装置の七つの球体が光り輝き、中央のひときわ大きな球体にエネルギーを照射した。

 

「音楽と錬金術は成り立ちこそ違えど、共にハーモニクスの中に真理を見出す技術体系」

 

 そのひときわ大きな球体からケーブルにエネルギーが伝わり、ケーブルの先にあるシェム・ハの腕輪に流し込まれる。

 

「この日、この時の星図にて覚醒の鼓動はここにあり!」

 

 すると腕輪が光を放ち、覆っていたカバーを破砕した。その後さらに輝きを強め、アジトいっぱいに広がった後、かき消すように消えた。

 変化が見られないため、元パヴァリアの研究員であったヴァネッサも懐疑的だ。

 

「起動完了……なのよね?」

 

 ミラアルクが確認のために前に進み出て腕輪に触れようとした瞬間、後ろから訃堂によってその手を止められてしまった。

 

「ッ」

 

 そしてそのまま腕を捻じりあげられてしまう。振り払おうとするがびくともしない。

 

(なんだ?!ジジイの力とは思えないぜ?!)

「お前の役目は他にある」

 

 すると奥から背中に銃を突きつけられ、腕を頭の後ろに回した黒服が二人、現れた。

 その二人に、エルザとミラアルクは見覚えがあった。

 

「あの時の人達で……ありますか……?」

「片づけよ。使いも果たせぬ木っ端だ!」

 

 そう言ってミラアルクの手を離した。

 彼女は痛むのか少しだけ手首を撫で、殺意に満ちた目を黒服に向けた。

 

「許せとは、言わないぜ……」

「00?!(ッ?!)」

「やめるであります!」

「33165!(でも!)」

 

 彼女は鋭い爪で黒服の一人の頸動脈を切断した。

 フランカはサイコキネシスで止めようとしたが、エルザによって遮られてしまう。カイロプテラを使っていないとはいえ、ミラアルクを抑え込むほど力を訃堂は持っている。もし、彼の機嫌を損ねるようなことがあればただでは済まない。と、エルザは理解していた。

 喉から血を噴出しながら、黒服は倒れ、緑色の炎に焼却された。

 もう一人の黒服が半狂乱に陥る。

 

「怪物共めぇッ?!」

 

 彼は走り出し、銃弾を何とか避けながら装置に取り付けられたままの腕輪を奪い取った。驚愕するノーブルレッドだったが、極近未来を予知することが出来るフランカの顔から一気に血の気が引いた。

 腕輪を奪った黒服は立ち止まり、

 

「このまま殺されてなるものかッ!殺されるくらいならこいつでーッ!」

「3316440404000!(だめぇぇぇッ!)」

 

 予知した未来があまりに衝撃的なものであったため、反応が追いつかず、フランカは出力調整をせずにサイコキネシスを放ってしまった。

 彼女のサイコキネシスが黒服の肘関節部分を切断する。が、間に合わなかった。

 

「この音は?!」

 

 腕輪は謎の音を発しながら、黒服の切り離された腕と体を内側から破裂させるように爆発させた。拒絶反応が起きたようだ。

 爆発の規模はかなり大きく、アジト全体を火の海へと変えていく。

 起動は失敗とみていいだろう。だが、雇い主である訃堂は満足げだ。

 

「神の力、簡単には扱わせぬか。だが次の手は既に打っておる!」

 

 助けられる可能性を握っておきながら、叶わなかったフランカは膝から崩れ落ちた。まあ、あそこで助けられたとしても殺されることに変わりはないのだが。それでも何とかしたかった彼女は、無念から土下座するように額を地面につけ、自分を抱くようにして震えている。

 

「1156499412102……1156499412102……(ごめんなさい……ごめんなさい……)」

「ディー・シュピネの結界が?!」

 

 震えるフランカをミラアルクがわきに抱える。

 

「連中が駆け付けてくるぜ?!」

「提案があるであります!」

 

 エルザが、炎の中アルカ・ノイズ召喚ジェムを取り出した。




エルザちゃんは主人公補正を持たない主人公な感じ。
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