戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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やっぱり鬼滅の刃は三人称視点で書こう。一人称はガルパンから。


知っている不協和音

 S.O.N.G.本部の鍛錬場。座敷のような形をしたこの場所にて、袴にその身を包んだ翼は日本刀を脇に刺し、炎を灯した蝋燭を周囲に立てていた。蝋燭しか光源がない中、彼女はその中心で目を閉じ、正座で精神を集中させる。

 そして一瞬の動作で抜刀し、炎を灯す糸の先端だけを一閃した。炎が消え、煙が揺蕩うが、捉えきれていなかったのか再び炎がともった。

 翼の瞳に揺れる蝋燭の炎が反射する。先ほどの祖父、訃堂の言が頭の中によみがえった。

 

「歌では何も……守れない……」

 

 だがその心になだれ込んだ闇をアルカ・ノイズ出現を知らせるアラートが一時的にかき消した。翼は反射的に立ち上がる。

 

『アルカ・ノイズの反応を検知!』

 

 指令室にエルフナインが駆け込んできた。つい先ほどまで雷ととあるものを開発し、マリアにそれを手渡した後すぐに向かってきたのだ。友里が弦十郎に響とマリア、装者二名をすでに現場に向かわせていると報告する。

 アルカ・ノイズの発生地点はとある研究施設。そこでノイズは研究所の外壁を執拗に攻撃している。

 その破壊工作を、殿として残ったヴァネッサがため息をつきながら見届けている。上空から聞こえたヘリのローター音に気づき、呆れたように空を見上げた。

 

「こちらもお早い到着だこと……」

 

 S.O.N.G.保有のヘリから響とマリアが降下した。

 マリアがアガートラムを起動させる。

 

「Seilien Coffin Airget-Lamh Tron」

 

 ギアを纏うと同時に左腕から逆手持ちに抜剣した短剣を着地すると同時に振るい、アルカ・ノイズを真っ二つに両断する。更に彼女は隙を作ることなく剣の舞と形容できる足運びと剣技で次々と斬り裂いていく。

 そして空中で反転し、アームドギアである左腕の先端部分に短剣を連結させ、変形させてキャノン砲を構築した。展開されたリフレクターにエネルギーを集約させる。

 

       『HORIZON†CANNON』

 

 大型アルカ・ノイズが発射を阻止しようと押しつぶしにかかるが、それよりも早く砲口から光線が放たれた。しかもただ直線的に打ち込むのではなく、上に振り上げることで確実に撃破する。

 マリアがアルカ・ノイズを殲滅している一方、響はヴァネッサと交戦していた。

 ヴァネッサの指先から放たれるマシンガンのような弾雨を響は高速で蛇行することで左右に散らし、射程範囲に入った瞬間一気に踏み込んだ。

 

「てやッ!」

 

 まずは右足で腕を蹴り上げて発砲を防ぎ、左の蹴りで防御を崩してから再び左から回し蹴りを叩きこむ。的確に防御を崩してから放たれた蹴りは、ヴァネッサの体を大きく後退させる。

 攻撃の手を止めさせることに成功した響は説得に当たる。

 

「……目的を、聞かせてくれませんか」

「……降参するわ」

 

 少しの間の後、ヴァネッサはお手上げのジェスチャーをする。

 

「まともにやっても勝てそうにないしね。わかりあいましょう?」

「え?!そこまでわかりあうつもりは……」

 

 煽情的なヴァネッサの動きに初心な響はあたふただ。常日頃同程度かそれ以上の物をナマで見ているはずなのだが、いきなり来られるとテンパってまともな思考が出来なくなってしまう。

 彼女は豊満な胸を包んだライダースーツのファスナーを下ろす。響は自分の目を手で覆った。いや、隙間でちゃっかりと見ようとしている。

 

「なんてね?」

 

 ヴァネッサが不敵に笑った。

 ファスナーが降りきると胸のカバーが開き、中から弾頭ミサイルが二本、響に向かって飛翔した。やはり胸から出すものといえば古今東西ミサイルである。

 

「なッ?!」

 

 不意打ちを響は喰らってしまうが、流石に通常兵器の域を出ていないのか大したダメージではなかった。拳を振って煙を吹き飛ばす。

 ヴァネッサは不意打ちを売ったことに悪びれもせず、ファスナーを上げて今更ながら響の問いに答える。

 

「私達の目的は……そうね。普通の女の子に戻ってみんなと仲良くしたいじゃ……駄目かしら?」

 

 そう言って手首を外し、関節部に仕込んだ発射口から小型の高威力ミサイルを発射した。響はクロスガードで防御姿勢を取るが、アルカ・ノイズを殲滅したマリアが射線に飛び込み、三本の短剣で三角形のバリアを展開する。

 

「あっちゃぁ……」

 

 煙が晴れ、完全に無傷であるのを確認したヴァネッサがつぶやいた。

 その隙をついてマリアはアスファルトの地面を砕くほどの力で踏み込み、一気に距離を詰めた。彼女の攻撃をヴァネッサはのらりくらりとかわし、バク転で距離を取った。

 

「ヤバいかな?ヤバいかもね?」

 

 事前に予定していた逃走経路に走りながら拳をロケットで飛ばす。

 マリアは短剣を蛇腹状に変化させて迎撃し、そのまま弾き飛ばしてバランスを崩した。更にそのまま蛇腹剣で十文字を切って左腕部アーマーを爪状に変形させる。そしてそれを突きだし、無数の十字がヴァネッサに逃げ出す隙間を与えずに襲い掛かった。

 

       『DIVINE†CALIBER』

 

 爆炎の中、彼女は無傷であった。が、目立ったダメージを負ってないにもかかわらず、ヴァネッサの様子がおかしい。何やら焦っているようだ。

 

「フランカちゃん?!無暗に力を使ってはダメっていつも言ってるでしょ?!」

「312314833164421231。3311181637162222604102(助けるために来た。だから無暗じゃない)」

「数字?」

 

 マリアはいきなり現れたヘッドホンの少女、フランカの口にする数字の羅列に首を傾げた。外見上では今まで確認されたノーブルレッドのだれよりも人間に近い外見をしている。が、彼女の口にした言語が外見との乖離から異質さを際立たせていた。

 ヴァネッサは頭を抱えて首を振る。

 

「お説教は後です……。フランカちゃんが来たって事は、そういう事ね?」

「……」

 

 フランカは何も言わずに頷いた。

 すでに保護対象は戦域を離脱したということだ。最初はテレパシーだけの予定だったが、予想以上に押されてしまっていたため未来予知で危機を感じ取ったフランカがテレポートで飛んできたのだ。

 ヴァネッサを信じてないわけではない。十三歳の幼い少女が目の前で自分の力が及ばず、命を助けれらなかったために今度こそはと躍起になっているのだ。ヴァネッサもそれを理解している。

 手を繋いでテレポートしようとする二人に、響が叫んだ。

 

「待ってください!やっぱり話しても無駄ですか?わかりあえないんですか?!」

「わかりあえないわ。だって人は、異質な存在を拒み隔てるものだもの」

 

 そう断言した後、目から閃光を放ち、かき消すように二人は姿を消した。テレポートで飛んだのだ。

 

「拒み……隔てる……」

 

 ヴァネッサの言葉は深く響の心に突き刺さった。

 

○○○

 

 闘争を成功させたヴァネッサたちは、廃棄所を次のアジトにしていた。アジトというよりは、次の場所が決まるまでのテント生活と言った方が正確かもしれない。

 その中の一番きれいな、全員が雑魚寝できるほどの大きさの車に四人が並んでいた。既に夜遅くであり、フランカは眠気に耐えきれずエルザに抱き着く形で眠っている。

 

「アジトを失うって、テレポートの帰還ポイントを失うだけでなく、雨風をしのぐ天井と壁を失うって事なのね……。お姉ちゃんまた一つ賢くなりました」

「おかげで次のねぐらが見繕われるまでまさかの車中泊。世間の風は、やっぱうちらに冷たいぜ」

 

 エルザが気持ちよさそうに眠っているフランカの頭を撫でながら拗ねる。彼女はフランカを除けば一番の年下であるため、お姉さんぶっているのだ。

 とは言え、フランカが眠った今、エルザが一番年下だ。

 

「あの時は仕方なかったであります。アルカ・ノイズの反応を追って、S.O.N.G.が急行してくるのは分かっていたであります。それでも、足がつく証拠や、起動実験の痕跡をそのまま残しておくわけには……ッ?!」

 

 落ち込むエルザだったが、急にヴァネッサが抱きしめた。

 

「心配ナイナイ。何とかなるなる。だってエルザちゃん、しっかり者だもの……」

 

 突然エルザの耳がピンと立った。抱いていたフランカから体を離し、ブランケットの中に潜り込む。

 

「ちょっ?!どうしたのったらどうしたの?!エルザちゃん?!」

 

 ブランケットの中からエルザが何かをつまんで顔を出した。それは、発信機だった。

 

○○○

 

 カプセルで療養していたヒビキが指令室にやって来たことでメンバーが全員揃った。

 これより、ブリーフィングが開始される。

 

「これを見てください」

 

 エルフナインがモニターに幾何学的な模様を映し出した。その模様は装者には見慣れたものだ。

 

「これは……アウフヴァッヘン波形?!」

「それも、アタシ等とは別の……て、まさか!」

「ああ。奪われた腕輪が起動したとみて、間違いないだろう」

 

 その一言で、雷の目が一層鋭くなった。モニターに映る波形をまるで射殺さんとするばかりだ。

 

「アルカ・ノイズの反応に紛れ、見落としかねないほどの微弱なパターンでしたが、かろうじて観測できました」

「恐らくは、強固な結界の向こうでの儀式だったはず……。例えば、バルベルデでのオペラハウスのような……」

「そして、観測されたのはもう一つ!」

 

 アウフヴァッヘン波形以外にも収穫があったようだ。今度は音声データに近いものであるらしい。

 耳を澄ませると、音として捉えるには連続性があり、曲として捉えるにはあまりにも不協和音なものだった。

 

「何……これ……音楽?」

「だとしたら、デタラメが過ぎるデス!」

(聞いたことのない音の羅列……だけど私はどこかで?)

(懐かしい曲だ……)

 

 各々が耳を傾け、不快さを示し、考えを巡らせる中、雷が突然胸を抑え、うめき声を上げながら倒れ込んだ。突然の事で対応が遅れてしまう。が、真っ先に動いた弦十郎が体を丸める彼女を抱きかかえ、叫ぶ。

 

「メディカルルームに連絡しろ!」

「はい!」

「僕が診ます!」

 

 応急判断なら自分でもできるとエルフナインが再生を止めて駆け寄った。するとさっきまでの苦しみ用はどこへやら。けろっとした様子で雷が立ち上がった。

 

「お、おい!雷君?!」

「痛く……ない……?」

「……本当に何にもないんですか……?」

「何にも……全然……」

 

 エルフナインが目を丸くする。しかし、油断は禁物だ。彼女は先に精密検査を受けさせてから地祇の作戦に当たらせるべきだと弦十郎は判断した。

 エルフナインは席に戻り、咳ばらいを入れてから話を再会する。

 

「音楽の正体については、目下のところ調査中。ですが、これらの情報を総合的に判断して、ノーブルレッドに大きな動きがあったと予測します」

「やはり、こちらから打って出るべき頃合いだな……」

「でも、打って出るってどうやってですか……?」

「マリア君!」

 

 モニターが地図を映した。赤い点が点滅している。マリアが前に進み出た。

 

「さっきの戦いで、発振器を取り付けさせてもらったのよ」

 

 そう言って小さな発信機をつまんで見せた。エルフナインと雷が渡していたのはこれだったのだ。

 

「ノーブルレッド……。弱い相手とは戦い慣れていないみたいね?」

 

 次の作戦行動は、雷の精密検査の結果が出る一時間後に指定された。




フランカちゃんつい最近までランドセル背負ってたような年齢なんだぜ?

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