戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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実は密かに雷のイメージソングを考えていまして・・・。
『GENESIS OF NEXT 』と『STARTING FROM HERE』の二曲が雷を主観にしても、それ以外を主観にしてもイメージと合致するんですよね。

両者ともに平成版サイボーグ009のエンディング!懐い!


不思議な懐かしさ

 ネフシュタンの鎧が砕け散り、拘束していた稲妻の嵐から解放された少女がその場で崩れ落ちる。が、その目は殺意と戦意を保ったままだ。雷は稲妻を放っていたユニットを格納し、響は目をつむって追撃の意思がないことを示す。そんな二人の姿に少女が吠える。

 

「お前らッ!馬鹿にしているのか?!あたしを!雪音クリスを!」

 

 ネフシュタンが破壊され、全裸になった少女。クリスの名前を知れて二人は満足そうな顔をする。

 

「そっか、クリスちゃんて言うんだ」

「雪音クリス・・・うん、綺麗な名前だ」

「ッ?!」

 

 響が笑顔で、雷がクリスの名前を復唱して一人頷く。響が口を開いた。

 

「ねえ、クリスちゃん。こんな戦い、もうやめようよ。ノイズと違って私たちは言葉を交わすことが出来る。ちゃんと話をすれば、きっと分かり合える!だって私達、同じ人間だよ!」

「響は頑固だぞ~。今しとかないと、話をするまで追いかけ回されることになるからね」

 

 響の訴えかけに雷が茶々を入れる。だがクリスは俯き、はらわたが煮えくり返るような思いと共に叫ぶ。

 

「お前らくせえんだよ・・・。嘘くせえ・・・!青くせえぇ!」

「クリスちゃん・・・」

「・・・響、少し警戒した方がいい」

 

 クリスの叫びに響が愕然とする。雰囲気の流れが変わったことを感覚的に察した雷が警告し、格納していた両腕のユニットが展開され、周囲に電光が迸る。クリスが歌った。

 

「Killter Ichaival Tron(キリター イチイヴァル トロン)」

「この歌って?!」

「シンフォ・・・ギア・・・」

「見せてやる。イチイバルの力だ!」

 

 状況を把握していた二課のモニターに『イチイバル』の文字が表示され、弦十郎が驚きの声を上げる。

 

「イチイバルだとぉ?!」

「アウフヴァッヘン波形検知!」

「過去のデータとの照合完了!コードイチイバルです!」

 

 イチイバルの名を聞いて弦十郎の顔が険しくなる。

 

「失われた第二号聖遺物までもが、わたっていたというのか・・・!」

 

 

 シンフォギアを纏った時の衝撃で砂ぼこりが舞い上がり、雷と響の視界を覆う。

 

「クリスちゃん・・・私達と同じ・・・!」

「歌わせたな・・・!あたしに歌を歌わせたなッ!・・・教えてやる!あたしは歌が大っ嫌いだ!」

「・・・歌が嫌い?」

 

 クリスが深紅のシンフォギア、イチイバルを纏う。雷が記憶の中にある両親の研究ノートからギアに関する情報を引っ張り上げた瞬間、イチイバルの腕部装甲が変形し、ボウガンの形をとる。

 

「響!クリスのギアは、遠距離特化型・・・ッ?!」

 

 雷が響に叫ぶが、それよりも早くクリスがボウガンの一撃を放つ。両腕のボウガンから放たれた合計五本のエネルギーの矢は二手に分かれて回避行動をとる二人を追尾する。響の背後で起きた爆風によってバランスを崩した響は、クリスの蹴りをもろに受けてしまう。

 クリスは両腕のボウガンをガトリング砲にさらに変形させて二人を同一射線上に捉え、ハチの巣にすべく乱射する。

 

    『BILLION MAIDEN』

 

「響!私の後ろに!」

「大丈夫?!」

「多分ね・・・!」

 

 雷が響を背にして斥力フィールドを前面に展開し、ガトリングの弾を弾いていく。しかしクリスは顔色一つ変えずに斉射しながら腰のバインダーを展開し、フィールドのない側面にミサイルを叩きこむ。

 

    『MEGA DETH PARTY』

 

「しゃらくせえッ!」

「走って!」

 

 響を後退させ、雷もフィールドの展開を解除して後に続く。が、それ以上にミサイルは早く、直撃を受けてしまう。

 そのまま舞い上がった土煙によって視界が見えなくなった後も、手当たり次第に周囲に弾をばらまいていく。ガトリングの弾が切れ、土煙が晴れていく。目の前には青い盾がそびえたっていた。いきなり現れたソレにクリスは目を丸くする。

 

「盾・・・?」

「剣だッ!」

 

 青い盾。いや、剣の柄に当たる部分に青い髪を風になびかせて翼が刃を構えて立ちはだかる。そんな翼をクリスが煽る。

 

「死に体でおねんねと聞いていたが、足手まといどもを庇いに現れたかぁ?」

「もう何も、失うものかと決めたのだ!」

 

 新たに胸に秘めた決意を言葉にした時、弦十郎から通信が入る。

 

『翼。無理はするな』

「はい・・・!」

 

 一発目のミサイル以外のすべてを翼が防いだおかげでほとんど負傷のない雷、響の二人は翼を見上げ、そんな二人を翼は軽く振り向いて見下ろす。

 

「「翼、さん・・・」」

「気づいたか、立花、轟!だが私も十全ではない。力を貸してほしい」

「「はい!」」

 

 予想外の翼の答えに一瞬反応が遅れたが、立ち上がりながら返事を返す。クリスがガトリングの斉射を再開し、翼が巨大な剣から飛び降りる。跳躍している間も空を舞うように弾を避け続け、クリスの懐に入り、視線を誘導するように頭上を跳び越え、頭を刈りに行く。

 間一髪でそれを避けたクリスだったが、翼の手に持つ刃の柄でガトリングを殴られ、バランスを崩してしまう。何とか体勢を建て直し、正面に顔を向けるがそこにはすでに翼の姿はなく顔の横から刃が突き出された。背中合わせになった形だ。前回と全く異なる翼の動きにクリスが焦る。

 

(この女、以前と動きがまるで・・・!)

「翼さん、その子は・・・」

「分かっている」

「チッ!」

「やらせない!」

 

 ガトリングで翼の刃を外し、有利な射程を取ろうとするクリスだったがすでに動いていた雷の電光を纏った下段後ろ回し蹴りが足を掬う。右足を取られたクリスだったが、残った左足で強引に跳躍して体を一回転させて距離をとる。雷はすぐさま立ち上がると、刃を構えた翼と並ぶ。

 

(刃を交える敵じゃないと信じたい。それに、十年前に失われた第二号聖遺物のことも正さなければ)

(響の願いはかなえたい。でもその前に、彼女のバックが何故『コレ』を、轟理論を狙うのか問い詰める)

 

 雷と翼の二人にクリスがガトリングを向ける。その瞬間、空から三体の航空型ノイズが体をドリルのように回転させ、二丁のガトリングを破壊、残りの一体がクリスを狙うが響のタックルによって破壊される。

 

「立花!」

「響!」

「お前何やってんだよ!」

「ごめん・・・。クリスちゃんに当たりそうだったから・・・。つい・・・」

 

 響は勢いそのままクリスに受け止められ、クリスはその場でしゃがみ込む。雷と翼の二人は響とクリスを守るように構える。クリスが顔を赤くしながら響に叫ぶ。

 

「バカにして!余計なおせっかいだ!」

 

 どこからともなく、どこかで聞いたことのあるような女性の声が響いてきた。

 

「命じたこともできないなんて、あなたはどこまでワタシを失望させるのかしら?」

 

 声の響いてきた方からは、ノイズを操る杖、ソロモンの杖を携えた金髪の女性が髪を風に舞わせながら欄干にもたれかかっていた。

 

「フィーネ?!」

(フィーネ・・・?終わりの名を持つもの!)

(クリスのこの口ぶり・・・彼女、フィーネが恐らく大本!)

 

 雷はクリスの口ぶりからフィーネが黒幕であることを推察し、問いただそうとする直前でクリスが響を突き飛ばして叫んだ。響は咄嗟に動いた翼が支える。

 

「こんなやつがいなくたって、戦争の火種ぐらいあたし一人で消してやる!そうすれば、あんたの言うように人は呪いから解放され、バラバラになった世界なった世界は元に戻るんだろぉ?!」

 

 フィーネは何も言わず、ため息だけつく。そして心底失望した子のように言葉をこぼした。

 

「もうあなたに用はないわ」

「ッ?!・・・なんだよそれ!」

 

 フィーネは左手を掲げてバラバラになったネフシュタンを粒子に変換し、目の前で一か所に集めると、そのままどこかに転送する。欄干から体を離すと、正面を向いて杖を構えた。その瞬間、雷が叫んだ。

 

「フィーネと言ったな!何故ケラウノスを、『轟理論』を狙う?!」

 

 フィーネの両目が雷を捉え、笑みとも怒りとも取れる表情をする。

 

「轟雷・・・。忌々しいあいつらがお前を残したのもよくわかる。ワタシが姿を現す前からクリスに後ろ盾がいるのを看過していたな?分からなかったのは名前と正体だけか・・・。いや、考えはしたんだろうなぁ」

「『あいつら』・・・。誰のことだ!」

 

 フィーネは雷の問いに答えず、さらに言葉を続ける。

 

「轟雷。一つ教えてやろう。『科学において、あり得ないは存在しない』忌々しいワタシを三度も出し抜いたあいつらの言葉だ。覚えておくといい」

「何?!」

 

 それ以上フィーネは何も答えず、雷たちにノイズを差し向けて姿を消す。

 

「待てよ!フィーネェ!」

 

 ノイズをすべて処理した雷たちだったが、クリスはギアを纏ったままフィーネを追いかけていった。雷の中に、フィーネの言葉がどこか懐かしさを帯びて響いていく。その懐かしさを、雷は思い出すことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 




今回から感想にはこたえようと思います。黙ったままだと何か失礼な気がしましてですね、ハイ。

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