戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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キャロル陣営の名前って妙に打ちづらい。


奇跡の殺戮者

 突如本部に、外部からの通信が入ってきた。専用回線であるため、この通信を繋いできたものは関係者ということになる。

 友里が報告した。

 

「司令!外部より専用回線にアクセスです!」

「専用回線だと……?モニターに回せるか?」

「はい!」

 

 関係者だということは分かるが、このタイミングで誰が通信を繋いでくるのが分からなかったため弦十郎はいぶかし気だ。

 八紘なら普通に繋いでくるだろう。訃堂ならコールすらなく強引に来る。そもそも、通信機があるのだから外部から専用回線へつなぐ必要などないはずだ。

 弦十郎は警戒しつつ、モニターに繋げと指示する。

 するとメインモニターいっぱいにガリィとレイアの顔が大きく映し出された。倒したはずのオートスコアラーがいるという、あまりに突然のことだったため、藤尭が思わず椅子から飛び退いて悲鳴を上げる。

 すると二体のオートスコアラーを押しのけてエルフナインが顔を出した。

 

『ごめんなさい!僕です!』

「エルフナイン君?!」

 

 エルフナインはチフォージュ・シャトーにある外部から持ち込まれたコンソールを利用し、無事とこれからの事を伝えるためにS.O.N.G.へ通信を繋いだのだ。

 メモリー消費の激しいミカは一時稼働を停止し、そんな彼女の目の前で大玉に乗って暇をつぶしながら周囲を警戒しているルシフを背に、エルフナインは用件を伝える。

 

「通信を行った以上、捕捉される可能性があるため要点だけ手短に!現在地点は、チフォージュ・シャトー内部!僕と未来さんはここにいます!」

『未来さんも……そこに……!』

『ったりめーだぁ!そう信じていたから無茶してきてんだ!あたしらも…あの馬鹿共も!』

 

 クリスが未来が無事であることに安堵し、こぼれてきた涙を乱暴に拭った。

 

『これからオートスコアラー達の助けを借りて、未来さんの救出に向かいます。神そのものへと完成していない今なら、まだ間に合います!』

「君が?!無茶だ!」

『そう、無茶ですッ!』

 

 エルフナインに戦闘技能などない。そんな彼女が敵の本拠地で敵の目的を何とかしようとしている。あまりにも無茶無謀であるため弦十郎は引き留めようとしたが、エルフナインがそれを力強く突っぱねる。

 捨て鉢になったからではない、彼女の瞳には覚悟の炎が宿っていた。その覚悟と熱意が、弦十郎をたじろがせる。

 

『だからッ!応援をお願いしますッ!』

 

 そろそろ行動開始だと流れを読んだルシフがミカを再び再起動させ、すぐに動けるようにスタンバイする。

 

「ここは敵の只中です。どうしたって危険が伴うのであれば戦うしかありませんッ!」

『ッ』

 

 弦十郎が一瞬逡巡するが、深く息を吐き、決断する。エルフナインは非戦闘員だ。しかし、彼女が最も状況打開に近い以上、この道しかない。

 この場に神を殺すことが出来る響と、神に匹敵する力を持つ雷が居ない。決め手に欠けている以上、錬金術の知識があるエルフナインに賭けるしかなかった。

 

『……こちらも負傷で神殺しと雷帝を欠いた状態にある。救出に向かうまで何とか持ちこたえてほしい。頼んだぞ!』

「この局面に響さんと雷さんは……」

『救出に向かうまで、何とか持ちこたえてほしい……!頼んだぞ!』

「はいッ!」

「三名様ご案なぁⅠ☆……!」

 

 周囲の警戒を担当していたルシフの声に全員が振り向いた。そこにはヴァネッサ、エルザ、ミラアルクの三人がそろっている。

 レイアがエルフナインを庇うように前に立つ。

 

「地味に窮地……。今度は流石に不意をつけそうにないかと」

 

 『テール・アタッチメント』を取り付けたエルザがが巨大な牙を持つ尻尾で第一打を加える。衝撃に土煙が舞った。

 

「二人とも!」

 

 しかしファラがソードブレイカーで受け止め、それをレイアが補助している。完全躯体ならば余裕だったのだろうが、今の彼女達は廃棄躯体。フルパワーを出すことが出来ないため、二人でないと受け止めきれないのだ。

 

「ここは私達に。ガリィにはマスターのエスコートをお願いするわ」

「任せて。目的地までの道のりは、ここに叩きこんであるから」

 

 ガリィの体から可愛らしいカラコロという音が鳴った。

 それを確認すると、ファラが風の錬金術を発動し、その風圧でエルザを押し返す。

 

「エルザちゃん!」

「エルザ!」

 

 そんな彼女のそばに、ヴァネッサとミラアルクが駆け寄った。

 レイアとファラは全力が出せないながらも正面から相対し、顔を向けることなく言う。

 

「ミカとルシフも一緒に!」

「お前たちがついていれば、私もファラも憂いがない!」

「元気印の役割は心得てるゾ!」

「お任せあRE☆!」

 

 ミカが異形の爪を持ち上げて元気よく応え、ルシフが軽快に大玉から飛び下りて着地した。

 ミカはカーボンロッドの生成数に限界があり、全力稼働のバーニングハート・メカニクスが使えない。ルシフはエーテルサーキットが試作型であるため安定性にかけ、受けきれるエネルギー量に限界がある。と、完全躯体でないため不安を抱えているが、それでも彼女たちは最強で最恐なのだ。

 そんな彼女達と共に、ガリィに手を取られたエルフナインは目的地に向かって走り出す。

 

「マスター!今のうちに!」

「ごめん……違う!ありがとう!ファラ!レイア!」

 

 ありがとう。そんな初めていわれた言葉に、二人は頬を綻ばせ、騎士としての役割を全うする。

 

「行かせないぜ!」

 

 真っ先に切り込んできたミラアルクの進路を、ファラの風の錬金術が道を妨げる。彼女は思わず後退した。そして竜巻のような風の中からコインをトンファーに錬成したレイアが強襲する。

 

「ッ!」

 

 ミラアルクの防御をトンファーの強打が打ち破る。ファラのフラメンコのようなステップにレイアが合わせ、背中合わせに並び立つ。ソードブレイカーを主の敵に突きつけ、トンファーを構えた。

 

「この道は通行止めです。他を当たっていただきましょう」

「ああ。行かせるわけにはいかないな」

 

 ファラとレイアを残し、祭壇へと向かっているエルフナインたちは上階へと昇るべくエレベーターに乗り込んでいた。

 完全躯体ではない二人を残していったことにエルフナインの顔色は不安げだ。

 

「ファラとレイアなら……きっと大丈夫ですよね?」

「……」

 

 同じく完全躯体ではないガリィとミカ、ルシフの三体の反応は芳しくない。しかし、それでも主の心配を少しでも和らげればとガリィが強がって見せる。

 

「不足はいろいろありますが、それでも全力を尽くしています。だからマスターも全力で信じてあげてくださいな」

「あLA☆ー!マスターを笑顔にするのは道化であるボクの役目なのNI☆ー!」

「早い者勝ちです」

 

 軽口を叩き合う二人だったが、ガリィの腕はまともに動いておらず、サーキットからのエネルギー供給が不安定なのかルシフは時々動きがぎこちない。それでも、笑顔を作っていた。主であるエルフナインを不安がらせないように。

 すると急にエレベーターが止まった。ミカが腕を広げ、三人を守る盾となる。

 エレベータの扉がへこみ、ひしゃげ、『カイロプテラ』で強化された剛腕が扉を強引にこじ開けた。

 

「待たせたなぁ!お仕置きの時間だぜ!」

「ぞなもし!」

 

 ミカがクロスガードで受け止めようとするが、腕を掴まれて放り投げられてしまった。勢いで扉が吹き飛ぶ。

 ガリィが両手をお手上げだと上げる。しかし、諦めてはいない。

 

「あ~も~!しっちゃかめっちゃか~」

 

 その証拠に、すぐにエルフナインの手を取って目的地に向かっている。そして彼女の背後を守るためにルシフがしんがりを受け持った。移動中に停止したため中途半端なところに止まってしまったエレベーターから飛び下り、エルフナインを傷つけないように抱えて着地した後、駆け出した。

 

「させないぜ!」

 

 ミラアルクが妨害するために飛び掛かったが、横合いからのミカの突撃を喰らって地面を転がり、抑え込まれる。廃棄躯体とは言え、高出力から成るパワーがオートスコアラー随一なのは健在だ。

 

「こ、このぉ!」

「マスターを頼んだゾ。そんな楽しい任務ほんとはあたしがしたいけど、この手じゃマスターの手を引くことなんてできないから。残念だゾ」

「ミカ……」

「わかってる!あんたの分まであたしに任せて!」

「本当の最強はどっちか、まだ決めたないんだからNA☆!全部終わってからのお楽しみだZO☆!」

「分かってるゾ!」

 

 ミカの気持ちを受け取った二体は、エルフナインを守りながら先へと進む。

 エルフナインは引っ張られながら、

 

「ミカ!だけど……かっこいいです!ミカのその手、大好きです!」

 

 異形の手を褒められる。初めて言われた言葉にミカは笑みを浮かべた。その隙に拘束を振りほどかれ、殴り飛ばされたが、今のミカには痛くもかゆくもない。

 

「褒められたゾ!照れくさいゾ!」

「廃棄躯体がなめてくれるぜ!」

「こうなったら照れ隠しに邪魔者をぶっ飛ばしちゃうゾ!」

 

 先へ進んだエルフナインたちの目の前に、高速でミサイルが飛翔して来た。ガリィは氷で盾を作ろうとしたが、それよりも速くルシフが前に立ち、右腕で受け止める。接触したことで信管が反応し、爆発した。

 

「ッ!」

「流石はエーテルってとこかしら?」

 

 暗闇からヴァネッサが現れる。

 しかし、エーテルサーキットの不完全さからエネルギー吸収が完全ではなく、受け止めた右手の指が二本吹き飛んでいる。一瞬だけ表情を歪め、しかしすぐに道化のように笑みを浮かべた。

 

「ここはボクに任せRO☆~!」

「ルシフ!」

 

 エネルギー供給が不十分であるため、ぎくしゃくした動きのままにたぁっと笑ってみせる。くるっとその場で逆立ちして、上下逆さまにエルフナインに顔を向けた。

 

「道化は道化らしく、大袈裟にふざけて見せるSA☆!」

 

 次いで放たれた二発目のミサイルを、逆立ちからブレイクダンスに移行して蹴りで軌道を逸らす。

 足止めをルシフに任せ、エルフナインはガリィに引っ張られて先に進む。

 

「最高のショーを期待してるわよ!」

「ルシフ!ルシフの芸は世界で一番です!ずっとずっと見ていたいです!」

「当然だYO!ボクは世界一なんだかRA☆!」

 

 認められる。初めて誰かに認められたルシフは二人から顔をそむけ、当たり前だと口にしたが、声が上ずって満面の笑みを浮かべているのがまるわかりだ。

 ガリィがエルフナインを抱きかかえて錬金術でスケートのように滑り、ふらつきながらも祭壇の前まで到達した。

 

「あそこです!」

「あの向こうに、未来さんが!」

「ッ!」

「何を?!」

 

 突然ガリィがエルフナインを放り投げた。そして彼女にロケットパンチが突き刺さり、内部機構を粉砕されながら吹き飛ばされる。

 

「ガリィ!」

「やっと追いつけたわ……」

 

 そこにはヴァネッサとミラアルク、エルザがいた。つまり、オートスコアラーは全機破壊されたのだ。ファラとレイアはかみ砕かれ、ミカは粉砕され、ルシフは内部から破裂した様に破壊されている。

 そして最後に残ったガリィの腹部にはロケットパンチが突き刺さったままになっている。

 エルフナインはガリィに駆け寄り、抱き上げた。

 

「ガリィ……僕を守るために……」

「いやですよマスター。性根の腐ったあたしが、そんなことするはずないじゃないですか~……」

 

 普段通りに振舞おうとするが、その声に力がない。

 エルフナインは耐えきれず、涙をこぼす。

 

「だけど……!」

「もっと凛としてくださいまし。あたし達のマスターはいつだって、そうだったじゃないですか……」

「キャロルは……」

 

 こんな芝居に付き合う気はないのだと、ヴァネッサがガリィを蹴り飛ばした。ガリィの体は力なく宙を舞う。彼女の体に突き刺さった自身の腕を回収した。

 

「手に余るから、足で失礼しちゃいます」

「ガリィ……みんな……」

「手間を取らせやがるぜ」

「みんなは僕のために……」

「だけど、それもここまでであります!」

「じゃあ僕はみんなのために何を……」

「あなたにできることは……!最早一つ!」

 

 ヴァネッサは跳躍し、エルフナインに向けて飛び蹴りを繰り出した。そして脚部の装甲が展開し、中から電撃が迸る。

 蹴りがエルフナインに直撃する。その直前だった。

 

「みんなのために僕はッ!」

 

 涙のきらめきを散らしながら、右てを突き出した。そして右腕を中心に特大の防御陣が展開される。ヴァネッサの蹴り程度ではびくともせず、逆に弾き飛ばした。

 

「何なの?!」

 

 ヴァネッサたちは驚愕するが、エルフナインは自然な動作で左手を横に突き出し、転送用の錬金陣を構築。そこから紫色のハープ。そして“彼女”は静かに、その弦を爪弾いた。

 ハープが変形し、伸びた弦がボディースーツを形成、ハープ本体は変形してバックパックとなる。

 

「それですよマスター……あたし達が欲しかったのは……」

「この土壇場でデタラメな奇跡を!」

 

 ガリィが完全に機能を停止する。

 

「奇跡だと?」

 

 彼女から放たれる圧倒的な覇気にノーブルレッドはたじろぐ。

 そのハープの名はダウルダヴラ。ケルト神話の主神、ダグザが用いたとされる竪琴の聖遺物。錬金術師のシンフォギア、ファウストローブ。そしてその持ち主は……!

 

「冗談じゃない!俺は奇跡の殺戮者だッ!」

 

 彼女の名はキャロル・マールス・ディーンハイム。かつての強敵。四大元素を自在に操る最強の錬金術師。奇跡の殺戮者が、ここに復活した。




ルシフはエーテルサーキットが試作型のため、受け止めきれるエネルギーに上限があります。三人分の攻撃を一斉に受けてその限界を超えてしまい、敗北しました。
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