戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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これをしたいがためにここまで書いてきた!
わたしはキャロルと同率でシェム・ハが好きなキャラです。


DEA NOVA

 奇跡の殺戮によって奇跡を必然へと変え、エクスドライブとなった五人の装者が舞い降りる。

 七十億の絶唱は流石に負担が大きかったのか、ダウルダヴラのファウストローブが消失し、キャロルの意識に変わってエルフナインの意識が前に出る。

 

「キャロルに……何が……」

(金縛りを振りほどくのにリソースを裂きすぎたか……!今のはさすがに消耗した……後はお前の力で……)

「キャロル!……そうだ!今は未来さんを!」

「行かせないぜ……!」

「フランカちゃん?!フランカちゃん?!」

 

 ミラアルクとエルザが立ち上がり、エルフナインを追撃しようとしたが、それをヴァネッサの悲痛な叫び声が引き留めた。

 ヴァネッサの方に二人が慌てて駆け寄るとフランカはおびただしい量の血を吐きながら彼女の腕に抱かれていた。体の末端は痙攣し、視線は揺らいでいる。

 

「この不調……まさか!」

 

 フランカは訃堂から受け取った全血清剤を嫌がったため、病院から奪ってきたものを使っていたはずだ。そして、自分たちはフランカから手渡された、訃堂から受け取った方を使っているはず。

 もしも、フランカは途中で付け替えていたとしたら?テレパシーで訃堂の目論見を見破り、自分たちを守るために嫌がっていた彼から受け取った方を使っているとしたら?それならば足取りがおぼつかなかったのも説明が行く。

 いや、そうでなければこの現状に説明がつかなかった。

 

「そうだ。悉く夷狄の蹂躙よりこの国を守るのが、防人たる風鳴の務めよ」

 

 ヴァネッサは怒りに肩を震わせながら瀕死のフランカに生命維持装置を繋ぎ、抱きしめて叫んだ。

 

「訃堂ぉぉぉぉぉッ!」

 

 ミラアルクとエルザは大慌てで飛び出して行き、使い切った全血清剤のパックを集め始めた。ほんの少しだけでもと、怒りと悲しみをあらわにしながらわずかに残った血をかき集める。

 これだけで助かるだなんて思っていない。気休めにもならないかもしれない。だけど、それでも、生きていればチャンスはあるのだと。誰かの血で汚れていない、誰よりも人間に戻る資格がある彼女を死なせたくなかった。ほんの少しもない希望に賭けたかった。

 

○○○

 

 シェム・ハの繭が、上空にいる装者たちにレーザーを照射した。

 翼を得た彼女たちは三次元を自在に動き回ることでレーザーを回避し、攻撃に転じる。

 

「チフォージュ・シャトーは動かせなかったデスけれどッ!」

 

 切歌が繭の下部へと潜り込み、へその緒のような器官を大振りの鎌で切断する。後を追う触手を振り切り、調とスイッチした。

 

「形と掴んだこの輝きがあればッ!」

 

 ヨーヨーを大型化させて頭部と思わしき部位に投擲、へその緒がつながっていないことでバランスを崩したのか、そのまま転倒する。

 翼が繭を真正面に見据えながら剣で円を描き、その円を一刀に両断した。すると剣閃が煌めき、四方八方に伸ばしていた触手が一斉に斬り刻まれる。

 クリスとマリアはアームドギアであるボウガンと短剣を大型化した後分割し、合体させて超大型の砲台を作り出した。彼女たちは向かい合って手を繋ぎ、極太の光線を発射する。光線は繭に直撃し、光の壁のようなもので一部は逸らされてしまったものの、頭部と思わしき部位を損壊させる。

 しかし、相手は神の力。これだけのダメージを別の次元に押し付けることで無傷の状態となった。反撃のレーザーがクリスとマリアに直撃する。

 

「雪音!マリア!」

『それでも…きっと訪れる一瞬を!』

『俺達銃後は疑ってない!だから!』

 

 しかし諦めない。本部は戦場に出れない分、バックアップに全力を尽くして切り札を切る。本部から一基のミサイルが発射された。これこそが、S.O.N.G.が、人類が用意できる切り札。

 繭が防衛反応によりレーザーでミサイルを撃墜する。

 そして、その煙から飛び出したのは……!

 

「人類の切り札ッ!神殺しの拳だッ!」

 

 神殺しの撃槍。ガングニール。そしてそれを纏いし装者、立花響が戦列に加わる。

 響の中に絶対に未来を助け出す決意が蘇る。

 

「このままだと親友が……未来が遠くに行っちゃうんです!」

「無茶だ!負傷の癒えてない君では……」

 

 弦十郎は司令官として負傷者を出すわけにはいかないと判断する。しかし、それを聞くような響ではない。

 隣で眠ったままの雷に目線を向ける。眠っている間に見た夢が現実になる。未来と雷がどこかに行ってしまうかもしれない。しかし、今は雷がとなりにいることに安堵し、この場にいない未来のことを最優先にする。

 雷のことは、彼女が起きたら未来と一緒に考えようと。今度は一人だけで背負わない、二人で大切なことを分かち合おうと。だから、響は言い切る。

 

「平気です!へっちゃらです!友達一人救えなくて……私は何のためにシンフォギアやってるんですかッ?!」

 

 マリアが叫ぶ。

 

「ガングニールッ!」

「はぁぁぁッ!」

 

 ガングニールはエクスドライブでないが故に空を飛べない。だからこそ、一直線に未来の元に駆け抜ける。

 繭がガングニールの危険性を理解しているのか、四本のレーザーを一斉に発射した。響は落下の速度と体の操作でかいくぐるが、それにも限界が来る。響の顔面に直撃しようとした、その時だった。

 翼が間に割って入り、剣でレーザーを切り落とし、最後の使命を伝達する。

 

「立花の援護だッ!命を盾とし希望を防人れッ!」

「行くわよみんなッ!」

 

 翼とマリアの後に少女たちが続く。五つの光が響の元に集った。

 乱れ撃たれるレーザーは着実にガングニールを削っていく。しかし、それでも致命打だけは与えまいと翼が切り落とし、触手に弾き飛ばされた。切歌と調がターゲットを肩代わりして上空に離脱し、追いつかれてしまい爆発する。自分の身を盾にしても響を守り抜く。

 触手の包囲をマリアの操作するブレードが切り開くが、不意を突かれて撃墜された。

 

「ッ?!」

 

 繭が輝き、触手の攻撃を喰らって速度を落とした響の周りに光がばらまかれ、彼女の元に収束する。しかし、爆発の中からクリスが響を乗せて離脱し、触手の檻とレーザーの嵐の中をかいくぐる。それでも二人に放たれたレーザーを喰らい、アームドギアが半壊してしまった。しかし、チャンスがやってくる。

 触手は全て伸び切っている。ここで決めねば次はない。

 

「行けよ馬鹿ぁッ!」

 

 響がクリスを足場にして飛び下りた。ついにクリスも撃墜される。

 繭が真正面に極太のレーザーを照射した。回避法はなく、仲間はもう盾となり得ない。故に使えるのは後禁じ手の一手のみ。

 ギアのエネルギーの大部分が黄金の防御フィールドとして展開され、照射されたレーザーを弾き消した。

 

「使用が禁止されているアマルガムを?!」

「この際だ!謹慎程度で済ませてやれ!」

 

 禁じ手を切ったということは、これ以上後がないということ。だからこそ、翼は叫ぶ。

 

「勝機をこぼすなッ!」

 

 繭は頭部と思わしき部位を展開し、口を開いたかのようにこれまでの比ではない超高密度かつ広範囲のレーザーを照射した。

 

「うあぁぁぁッ!」

 

 フィールドを解除し、黄金の華を花開かせる。そしてそれは巨大な二つのアームとなり、響の肩に装備された。

 

「はァァァァッ!」

 

 響は雄たけびを上げ、アームの両手を組み合わせて突撃する。繭が発射したレーザーを真正面から突き破る。一人では足りない。だとしても、彼女には仲間がついている。仲間の声が力を与える。

 

「「最速でッ!」」調と切歌が。

「「最短でッ!」」マリアとクリスが。

「真っ直ぐにッ!」翼が。

「一直線にぃぃぃッ!」

 

 響が叫ぶ。

 その思いに呼応するように出力が跳ね上がり、アームが発射されてレーザーを押し返した。繭を突き破り、銀色の花が咲く。

 その瞬間、シャトー内部にある祭壇。そこに眠る未来と腕輪が光となって昇っていく。エルフナインは愕然と呟いた。

 

「違う……。依代となった未来さんに力を宿してるんじゃない……大きな力が未来さんを取り込むことで……!」

 

 花に突き刺さった拳に、響が世界で一番優しい拳を突き立てる。

 

「未来ううぅぅぅぅッ!……ッ?!」

 

 希望を繋ぎ、花を貫き、繭の内部へと侵入する。しかし、そこにはさらなる絶望が待っていた。

 

「何で……そこに……」

 

 未来が、赤い瞳を響に向ける。そしてペンダントが銀色に輝き、神獣鏡を身に纏った。

 それと同時に本部で異変が発生する。

 雷の様子を観測していたオペレーターが発狂したように叫んだ。

 

「あ、雷ちゃんが……消失しましたッ?!」

「何だとッ?!緒川ッ!」

「はいッ!」

 

 弦十郎が思わず振り向き、緒川をメディカルルームに向かわせた。だが、結果は雷の消失に揺らがなかった。

 響が未来に手を伸ばす。

 

「未来ッ!」

「遺憾である。わが名はシェム・ハ。人が仰ぎ見るこの星の神が我と覚えよ……」

「行っちゃ駄目だ……遠くに……未来ぅぅぅッ!」

 

 空を飛べない響は未来の手を掴むことが出来ず、自由落下を開始する。しかし、この浮遊感は途中で消失する。

 

「え……?」

「大事はないか?」

「あず……ま……?」

 

 ギアを纏うことすらなく、空中で響を雷は受け止めていた。その身には患者衣ではなく、大きな襟を持つ金の意匠が施された蒼いローブのようなものを纏っている。雷の声を聞いて響は顔を向けたが、彼女の金色の目は蒼く輝き、灰色の髪は赤い燐光が舞っていた。

 様々な感情が入り混じったままの響をよそに、シェム・ハが笑みを浮かべる。しかし、目は笑っていない。

 

「待望である。やはり、われにその目を向けるか」

「ああ。貴様に向ける目はただ一つ。当たり前の事だろう?」

「相違ない」

 

 雷は笑みを返すが、やはり目は笑っていない。その表情は真剣そのものとなる。そして抱いている響を離すが、響の体は重力に引かれて落下せず、小型の竜巻が発生して緩やかに地面に下ろした。

 

「雷ぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 響は必死に手を伸ばすが、どれだけ伸ばそうとその手は届かなかった。

 雷の金色の、円盤状のペンダントは黄金の輝きを放つ。その輝きによりいくつもの竜巻と稲妻が雷の体を取り囲むように発生し、彼女に重なるように一つとなる。そして周囲に暴風と稲妻を天変地異と見まがうようなほどにまき散らしながら、その姿を現した。

 

「何なの……」

「ケラウノスでは、ないのか……?」

「姉……さん……?」

「でも、全然雰囲気が違うデスよ?!」

「どうなってやがんだよ……!」

 

 それはケラウノスではなかった。

 ボディスーツは金色となり、面積が減って胸の下から臍下まで肌を晒している。腰部の稲妻のマントが翻り、両脚にはユニットの代わりにヴァジュラのような黄金の装甲。土踏まず以外は裸足で、両腕は真っ黒になり、常に電光を放って手のひらの部分が赤く赤熱化していた。

 胸元にはコンバーターユニットの他に、五つの光輝く円盤状の稲妻の結晶でできた首飾りをつけ、同じく稲妻の結晶の耳飾りをつけている。ヘッドギアのティアラはそのままに髪型がポニーテールに結ばれる。

 純白のヒマティオンを纏っているため、一見では肌の露出は変化していないように見える。

 臍下の丹田に当たる部分に紅い印が刻まれた。

 彼女は閉じていた目をゆっくりと開き、自らの存在を告げる。

 

「我が名はアダド。この星の大空(だいくう)を統べし神。天空のアヌンナキである」

 

 纏うはデノヴァギア。新たなる女神の鎧。シンフォギアシステムの雛型。神の力が形を持ったもの。

 そして雷の……真の姿。




DEA NOVA……ラテン語で新たなる女神の意。
タイトルのDENOVAはこれを短縮した造語。

デノヴァギア
アヌンナキが装備していた鎧。当時の名称は異なってただの『神の鎧』もしくは『神器』と呼ばれていたが、現代に復活した折にそれっぽく名付けられた。アダド曰く「その方が識別しやすいだろう?」とのこと。
フィーネはこれを見たことで無意識にシンフォギアを鎧の形にした。即ちシンフォギアのオリジナル。デノヴァギアからすればシンフォギアは人間が扱えるようにダウングレードした劣化版。そのため歌を必要としない。
今の形状は雷が女性であるため。
デノヴァギアは現在これ一基のみ。
刻まれた紅い印はアダドの刻印。
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