戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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雷の秘密が明らかに!

決めら~れ~た~自分のSTORY♪



造られた命

 竜巻がふんわりと響を下す。

 何時も後ろから見守ってくれていた未来と、何時もとなりに立って一緒にいてくれた雷が人知を超え、想像を絶する姿へと変わってしまった。そのことにより響のキャパシティを超えてしまい、彼女は意識を失ってしまっていた。

 上空では、未だにアダドと名乗った雷とシェム・ハと名乗った未来が向かい合い、にらみを利かせ合っている。金と銀の光が雲の切れ間から見える星空に相対した。アダドの背中に魔法陣のような紋章が展開された。

 一瞬だけ、アダドが口角を上げて地面で眠っている響に視線をやった後、またすぐに不敵に笑ってその蒼い瞳にシェム・ハを映す。

 シェム・ハが両腕を広げたながら地上へと降下し始めた。アダドもそれと共に降下する。

 

「笑止である。われの前に復活したはいいが、かつての一分も力を出し切れておらぬではないか。やはり()()()()()()とは言え人間。それでわれを打倒するつもりか?」

「貴様こそ笑わせるな。我はアヌンナキ最強の武人である。例えこの身が人であろうと、貴様を打倒するなど問題はない」

 

 アダドの背中に展開されていた紋章が消失し、彼女達を囲うようにエクスドライブの装者たちが降り立った。しかし、装者たちも未来だけでなく雷も変わってしまっていることに驚きを隠せず、口を開くか開くまいかと困惑している。

 アダドは振り向くことすらなく、背後に立つマリアに「銀腕」と声をかけた。マリアは家族と同様の親しみを持っている雷から名前ではなく聖遺物の名称で呼ばれたことに戸惑いを隠せなかった。しかし、呼ばれたからには返答する。

 

「な、なに……?」

「神殺しを保護せよ。彼女こそ彼女の願いをかなえるに必要なものだ」

 

 それだけを告げた。

 マリアは黙って頷き、響を抱き抱える。するとシェム・ハが空に浮かぶ月を見上げた。

 

「後は……忌々しき月の……ッ?!」

「シェム・ハ?!」

 

 突然頭を抱えて苦しみ始めたシェム・ハに思わずアダドが叫んだ。そして一瞬手を伸ばしかけ、すぐに拳を握って引っ込める。

 そしてシェム・ハ。いや、未来が纏っているそれにクリスが気付いた。

 

「身に纏うそいつは……まさかあの時と同じッ……!」

『そして……刻印、起動!』

 

 翼の天羽々斬から突然訃堂の声が聞こえてきた。そしてそれと同時にシェム・ハが苦しみながら右手をアダドに向け、右手から銀色の光が放たれた。その光が止むと、そこには人型の異形の存在が出現する。

 すると翼がいきなり動かなくなったシェム・ハを抱えて空に飛びあがる。

 

「センパイ?!」

 

 クリスが後を追って飛び上がろうとしたが、シェム・ハによって召喚された人型生命によって叩き落される。その一撃はエクスドライブの防御力を貫通する代物だった。

 上空で翼は身を翻し、剣を空高く掲げる。

 

「すべては……この国のためにッ!」

「愚かな……」

 

 アダドは小さく呟いた瞬間に、夜空から光でできた剣の雨が降り注いだ。降り注いだ剣は人型生命を避け、アダドと装者たちに向かって放たれる。アダドは体を電子化して動くことなく回避し、マリア達は飛びのいて回避した。

 何時もの翼らしくない戦法に調と切歌が困惑する。

 

「ただ面で制圧するなんて……」

「らしくないばらまき……およ?」

 

 切歌が飛び立とうとしたが体が地面に縫い付けられたように動かない。そう、この降り注いだ一本一本が影に突き刺さり、影縫いの役割を果たしているのだ。

 アダドの影にも突き刺さっていたが、猪口才なと体を発光させて影を消滅させ、地面に刺さっていた剣を蹴り折った。

 響を抱えたマリアが叫ぶ。

 

「翼ッ!」

 

 翼は剣を下ろし、

 

「私は、この国の防人なのだッ!」

 

そう言って飛び去って行った。

 そして、唯一動きを見せたアダドに、自由に動くことが出来る人型生命が攻撃を仕掛ける。アダドはそれを難なく回避して振り返ることなく腕を掴み、逆に握り断った。

 人型生命は神の力で生み出された存在。故にダメージ別の次元に押し付ける力を持つのだが、同じ神であり能力によって一方的に破壊することが出来るアダドに与えられたダメージは再生が不可能なのだ。ダメージが無くならなかったことでまだ手に残る腕を放り捨て、肩越しに振り返ってマリア達に指示する。

 

「ここから離脱しろ。この出来損ないはシェム・ハによって造られた神造生命だ。エクスドライブ程度で相手になるものではない。聞きたいことは帰って聞かせてもらう。我にはそれに答える義務と責任がある」

 

 そして体から電光を放ち、影を消すことで装者たちを自由にした。動けるようになった彼女たちは空に飛びあがる。

 

「問わせてもらうわよッ!」

 

 マリアは声を張り、そしてクリス達を連れて本部に帰還した。アダドはそれを気配で感知した後、

 

「準備運動にもならないな」

 

 と言ってシェム・ハの生み出した人型生命を一方的に破壊していく。防御は意味をなさずに上から叩き潰され、攻撃は撃たれる前に潰される。戦闘ではなく暴力が振るわれた後、人型生命は塵のように消滅した。

 

○○○

 

 響の療養の間に、アダドについての取り調べが始まる。

 本部の一室。そこにある椅子にデノヴァギアを解除し、金の意匠がある青色のローブを纏ったアダドが金色の円盤状のペンダントを首にかけ、腕と脚を組んで尊大に腰掛けていた。時折指をもてあそんでいる。

 そんな彼女の正面に弦十郎が険しい表情で向かい合い、緒川は警戒を解かずにいる。マリアとクリスはアダドを睨みつけ、切歌と調、エルフナインは不安げだ。

 完全にアウェーな状況でもアダドは尊大な態度と余裕を崩さず、口を開く。

 

「改めて名乗ろう。我が名はアダド。この星の大空を統べる神。天空のアヌンナキだ。して、聞きたいことは何かな?」

「ではは聞かせてもらおう」

 

 弦十郎が誰も聞いたことが無いほどの声を発した。

 その程度の覇気など問題にもならないとアダドの余裕が崩れない。

 

「何なりと聞き給え。答えられる質問にはすべて答えよう」

「雷君は無事なのか?」

「無事……というのは間違いだ。我は元々、それも雷が生まれた時からこの体の中にいる。今の主人格は我だがな」

「僕とキャロルと同じようなものですか?」

 

 エルフナインがおずおずと手を挙げ、アダドが彼女に目を向けた。そして彼女のたとえによって雷が無事であることがわかり、張り詰めた空気がいくらか軟化する。

 

「お前とキャロルの状態を見ていないから何とも言えぬが、そう感じたのであればそう捉えてもらって構わない」

「まって、生まれた時からってどういう事?ずっといたって……赤ちゃんの時から?」

 

 マリアが疑問を口にする。生まれた時から雷の中にいたとはどういうことなのか。同じアヌンナキであるシェム・ハがほんの少し前に復活しているのだ。アダドはそれ以前、少なくとも十七年前には復活していることになる。

 そして人が神の力を宿すには神獣鏡の光でバラルの呪詛を失う必要がある。一連のことをどうやって、どの様な経緯で行ったのかを聞き出そうとする。

 とたん、アダドが俯いた。一言一句を聞き逃すまいとこの場にいる全員が前のめりになるが、いきなりアダドが大笑いし始めた。

 

「ハハハハハハ!なんだ、気付いてなかったのか?!……雷は人間ではないぞ?」

「なッ?!」

 

 大笑いした後、急に声のトーンを落とした。部屋一帯が驚愕に染まる。

 弦十郎が「どういうことだ」と聞こうとしたが、それよりも先にアダドが口を開く。

 

「何故、雷の出生記録は存在しない?何故、戦闘訓練もしていないのに長く前線に立っていた翼と並んで戦えた?何故、筋肉が断裂したにもかかわらず、一日で修復できるほどに回復していた?……他にも山ほどあるぞ?」

 

 出生記録。レセプターチルドレンであるならばないのも納得できていたが、雷には両親が存在している。であるならば、この記録は存在しているはずなのだ。しかし、フィーネが見つけることが出来ず、雷の存在を直接目にするまで彼女のことを知らなかった。

 異様な戦闘能力の高さは旧二課でも確認していたが、センスがあったという理屈で解決していた。

 怪我の修復速度の速さもケラウノスの電磁操作の応用で修復を促進していたのではないかと結論付けていた。

 もし、アダドの言う通り、雷が人間ではないとしたら?

 

「まさか……」

 

 一同が絶句する。

 

「そのまさかだ。……雷は彼女の両親、轟斗真と轟瞳が自らの遺伝子を操作して造り上げた人造人間だ。その体に、我の魂は宿っている。お前たちが今まで雷と呼んで接してきたのは我の魂ではなく、元々体に存在していた魂だ」

「何かマッドなのデース……」

 

 思わず切歌がこぼしてしまった。

 それを耳にしたアダドは先ほどまでの余裕と尊大さをかなぐり捨て、怒鳴る。

 

「貴様ッ!彼らを愚弄するかッ!彼らは我の話を聞き、人道に反しながらもやり遂げてくれたのだ。我は斗真と瞳に敬意を表している。彼らを愚弄する資格は我が魂を宿すことになってしまった雷にしか存在しないッ!」

 

 アダドの剣幕に、切歌はマリアの後ろに逃げてしまった。

 空気が静まりかえるが、またもエルフナインがおずおずと手を挙げて質問した。

 

「あのシンフォギアはケラウノスですよね?どうしてあのような以上に?」

 

 アダドはおほんと咳払いして、余裕を取り戻した。

 

「あれはシンフォギアではなくデノヴァギア。シンフォギアの雛型だ。そしてケラウノスではない。我が力を『ケラウノス』という哲学によって封じ、聖遺物にダウングレードしたものだ。故に元々の持ち主である我と、我の魂を持つ雷にしかあのギアは使えんし、我が力の限定解放である『雷帝顕現』も機能せん」

 

 そもそもシンフォギアとしての根幹が同じなのだから当然だ。かつての響は暴走することがあったが、それはガングニールだからではなく、響が融合症例であったからこそ起きたことだ。

 つまり、『雷帝顕現』も、響の融合症例と同種のものだったのだ。

 アダドが「聞きたいことは終わりか?」といったが、問題が山積みのS.O.N.G.としては雷の無事が確認だけでも大収穫だった。

 アダドは主人格を雷に返す。瞳が蒼から元の金色に変わり、赤い燐光は消失した。




時々人でなしっぽかったのもこの生まれの所為。

他にも叔父たちの雷に対するどこか別のとこから来たみたいな物言いや、最高質のホムンクルスと互角の演算能力、神の力を制御していたことなどいろいろあります。

イグナイトの闇で雷が最後に殺そうとしたのがアダドの魂です。

アダドは最初眠っていたのですが、『雷帝顕現』の時は雷が眠り、ほんの少しだけ起きていました。『シンカ』で雷が起きたまま扱えるようになり、神の力で完全に目を覚ましました。
雷にダメージが入っていたのはそれでも体がアダドの力に耐えきれなかったからで、彼も万全の状態ならダメージを入れることなく覚醒するはずでした。しかし、人為的で強引なシェム・ハの復活により、予定の時間までぐっすり眠っていたのにいきなり叩き起こされ、そのままフルマラソンは走らされている人みたいなことになってしまっていました。

こんな生まれ方ですが、両親の愛はしっかりと注がれています。
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