戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
次回から週二回の投稿に移ります。すみません。基本的に土日の零時に投稿します。
リディアンの歴史の授業にて、雷と響、未来の三人掛けの机から普段とは異なる異様な雰囲気が漂っていた。響がよそ見をし、雷が机に突っ伏している。しかし問題は、普段ならよそ見や居眠りをしている響を注意し、不安定になった雷を落ち着かせたりしているはずの未来が彼女らに見向きもしないのだ。 雷は時折未来のほうを向いてはすぐに戻すを繰り返し、響は響で未来のほうを注視している。先生もこの状態の雷のことは把握しているため、叱るようなことはしない。だからその矛先は特に何もないのに授業を聞いていない響のほうへと向いた。
「立花さん!」
「は、はい!」
「教科書の続きを読んでごらんなさい!」
響はいつものごとく二人に助け舟を求めるが未来はそれを無視し、雷は教科書すら開いていない。響は顔を正面に戻した。
「すみません・・・ぼんやりしてました・・・」
「最近ひどくなってませんか?遅れているレポートも、今日の放課後までには提出するように!いいですね?!」
「はい・・・すみません・・・」
未来の表情はピクリとも動かず、そのことに雷は悲しくなって小さく嗚咽した。
○○○
食堂で食事をとる未来に、小さなパンとスープといういつも食べているプレートを持って、ラーメンを持った響の後ろを小さくなってついていく。授業のことを引きずっているのか、まだ少ししゃくりあげている。
「ここ・・・いいかな?」
「・・・」
響の問いに未来は答えずただ食事を取り続けている。二人は未来と対面するように座り、雷はパンを手に取り、響は箸を持っているにもかかわらず手を付けようとしない。響は正面から、雷は俯きながら未来を見つめている。
「あのね、未来。私・・」
「なんだか、何時もと雰囲気が違うのですが?」
「ひぃ?!」
いきなり聞こえてきた声に雷の体がびくりと跳ね、さらに体を縮ませる。
「ちょっと、この状態の雷にいきなり声かけたらだめだって。でもどゆこと?よくわからないからアニメで例えてよ」
「コレはきっとビッキーが悪いに違いない。またライライをびくつかせちゃって、ごめんね―未来、この子馬鹿だから許してあげてね」
今回は雷もなのだが、何時もの素行からサラっと怒られ役になる響。
「そう言えば、レポートのことを先生がおっしゃってましたが・・・」
「提出してないのあんた一人だってねぇ~。この状態の雷でも提出できるってのに何やってんだか」
「あははは・・・」
響が力なく笑い、雷が何か言いたそうにしているが声を出す勇気が出ない。
「ビッキーってば内緒でバイトとかしてるんじゃない?」
その言葉に今まで無反応だった未来の動きが止まる。
「え~?!響がバイト?!」
「それってナイスな校則違反では?!」
急に未来が音を立てて立ち上がり、その音にびっくりした雷がまた少し縮こまる。そのまま何も言わず、未来は食堂の外へと走っていった。
「未来!」
「み、未来ぅ!」
響はすぐに、雷は少し遅れて未来を追いかけていく。如何やら屋上に行ったようだ、階段を大急ぎで登る。前までならこんな速さで登ればすぐに息切れを起こしていた雷が響に遅れることなくついて行ける。いつもならうれしい変化なのに、いまはそれが嫌だった。
(私のせいだ!あの日、本なんて買いに行ったから!ケラウノスなんて起動したからこうなったんだ!)
心の中で叫びながら未来に対する罪悪感と自分への戒めから無意識のうちに左腕を右手の爪でえぐろうとしてしまい、それを意志の力で何とか抑え込む。そうしている間に屋上へと到達した。
「未来!ごめんなさい!」
「ご、ごめん・・・なさい・・・」
駆けあがってきた階段を出てすぐのところに未来はいた。二人に背を向けたまま、未来は口を開いた。
「どうして、響と雷が謝ったりするの?」
「あ・・・み、未来は・・・わ、わたっ、私達に・・・」
「未来は、私達に対して隠し事しないって言ってくれたのに、私達は未来にずっと隠し事してた。私達は・・・」
「言わないで」
段々舌の回らなくなってきた雷にそでを引っ張られ、響が代わりに答える。それを未来が遮って髪を風に揺らされながら二人に振り向き、目の前まで歩いてくる。
「これ以上・・・」
未来の頬を涙が伝う。
「私は、二人の友達でいられない・・・!ごめん・・・!」
未来は涙を散らしながら二人の間を通り過ぎていく。二人は何も言うことが出来ず、ガチャンという階段へと続く扉が閉じる音だけが響いた。
「どおして・・・こんな、嫌だ。いやだよぉ・・・」
「ひ、ひびきぃ・・・。どうしよう・・・み、未来に、き、嫌われちゃったよぉ・・・」
響はその場で、雷は響にしがみついて涙を滝のように流した。
○○○
フィーネの館の扉が勢いよく開かれ、クリスが叫ぶ。
「あたしが用済みってなんだよ!もういらないってことかよ!あんたもあたしを物のように扱うのかよ!頭ん中ぐちゃぐちゃだぁ!何が正しくて何が間違ってんのかわかんねんだよぉ!」
フィーネが黙って電話を切り、けだるそうにつぶやく。
「どおして誰も、ワタシの思い通り動いてくれないのかしら・・・」
フィーネは振り向きざまにクリスの周囲にソロモンの杖でノイズを召喚する。消すつもりだ。クリスは震えながらイチイバルのペンダントを握りしめるが、震えて歌うことが出来ない。
「流石に潮時かしら。そうね、あなたのやり方でじゃ、争いを無くすことなんてできはしないわ。精々一つ潰して、新たな火種を二つ三つばら撒くくらいかしら」
「あんたが言ったんじゃないかぁ!痛みもギアも、あんたがあたしにくれたモノだけが・・・」
クリスの言葉を冷淡なフィーネの声が遮る。
「ワタシの与えたシンフォギアを纏えながらも、毛ほどの役に立たないなんて。そろそろ幕を引きましょっか」
フィーネの右手に青白い光が集まり、クリスが息をのむ。何故ならフィーネがネフシュタンの鎧をまとったからだ。
「ワタシも、この鎧も不滅。未来は無限に続いていくのよ。カ・ディンギルは完成してるも同然。もうあなたの力に固執する理由はないわ」
「カ・ディンギル・・・。そいつは・・・」
「あなたは知りすぎてしまったわ」
フィーネは杖を構え、ノイズにクリスの抹殺を指示する。間一髪で攻撃を避け、屋敷の外に逃げ出すクリスだったが、足がもつれて倒れ込んでしまう。扉を挟んで、フィーネが残忍な笑みを浮かべた。クリスは悔し涙を流して叫んだ。
「チキショウ!ちくしょぉぉぉ!」
クリスの叫びは夕焼けに染まるそれに消えていった。
涙を流す女子が多いこの回。