戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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久しぶりにシンフォギア書くからおかしくなってないだろうか?
まあ、キャラクターが多少成長してるし何とかなるか


新たなる戦いの序曲

 世界最南端の大地、南極。

 そこに建造されたエルフナイン及びキャロルを所長とする、日本の三種の神器などの古くから国家に密接にかかわってきた聖遺物を除いたすべてを収集し、解析、研究することで人類のさらなる発展を模索することを目的とした国連直轄の聖遺物研究施設、通称『ミュニアース』。

 その中央広場に灰色の長髪を白いリボンで結んだ雷の姿があった。

 ミュニアースは南極に存在しているが、聖遺物の研究によりもたらされた復活応用技術リペアードにより、常に過ごしやすい温暖な気温にセットされている。最も、人間の生体バランスを崩さないように、という理由で四季までもある程度再現されているのだが、これは所属している研究員が日本の四季を体感したいという謎の圧力があったからという経緯がある。

 そのおかげで中央広場は春の陽気に包まれており、室内とは思えぬ緑の草原が広がり、草木は花を咲かせているのだ。

 広場に設置されているベンチに白衣を纏った雷は腰かけ、タブレットを眺めていた。

 彼女は聖遺物を用いて同じ聖遺物が引き起こす騒動を解決する国連直轄の実働部隊S.O.N.G.からの派遣研究員――とはいえ普通の人間になり戦闘能力を失ったためほとんどこちらがメインになっている――として日夜研究の日々を送っていた。

 因みに派遣ではあるが、その聖遺物に関する知見の広さから副所長に任命されている。曰く、エルフナインとキャロルに強引に座らされたらしいのだが、それに見合った結果を出しているので職員からは反対意見が出ることはなかったという。

 タブレットに映る仲間たちの近況報告に頬を緩ませていると、背後から声をかけられた。

 

「せんぱーい。何見てるんですか?」

 

 その声に雷は振り向く。

 声の主はもじゃもじゃの茶髪で目を隠した、言うところの両メカクレの女性であった。深緑の縦縞セーターで豊満な身を包み、実にどんくさそうな様子でこちらに走って来ていた。

 そんな彼女に、雷は少し苦笑いを浮かべた。

 

「やめてよルイス。私よりも君の方が十五も、眠ってた分の五年を足しても十歳も年上なんだからさ。この年の差で先輩呼ばわりは流石にキツイよ」

「でも先輩のほうがここに所属するのは先でしたし、さらに言えば上司ですもん。目上の人には先輩というのがニッポンの文化ですよね!」

 

 サイズの合わない袖に余った白衣を腰に当て、ルイスはむんっと胸を張った。その拍子に雷のものと勝るとも劣らないサイズのそれが大きく揺れ、その上にある彼女の身に着けている十の輪をチェーンでつないだネックレスが飛び跳ねた。

 雷は彼女のそれを偶然見かけた男性研究員の「でっか……」という小さな独り言を聞き逃さなかった。

 雷は額に手を当てる。

 

「それちょっと違う。……それより自分の研究はどうしたの? 私はひと段落付いたから休憩だけどさ」

 

 現在、雷は完全聖遺物ギャラルホルンによってつながった平行世界――如何やらギャラルホルンがある世界がオリジナルの世界で、ここは分岐した世界というらしい――から眠っている間にもたらされた技術、デュオレリックをはじめとする強化型ギア、オーバーテクノロジーであるエレクライト、竜の骨を用いた鎧メックヴァラヌス・デヴァステイター、存在はしていたが失われたラピス・フィロソフィカス。これらの解析、研究に当たっていた。

 それがひと段落付いたからここにいるのだが、ルイスはどうなのだろうかと聞くと、彼女はふふんと鼻を鳴らす。

 

「私もひと段落付いたからですよ。あ、隣座ってもいいですか?」

「どうぞ」

 

 雷は右に一つ移動し、ルイスの座る場所を明けた。

 彼女はありがとうございますと言いながら前に回り、ゆっくりと腰かける。そして足をプラプラと揺らし、雷の方を向いてえへへとはにかんだ。

 

「何笑ってるのよ」

 

 雷が眉をひそませながら聞くと、ルイスは一層笑みを深くした。

 

「いやー、雷さんも人間らしいところがあるんだなぁって思いましてね?」

「と、いうと?」

「タブレットの映像、ご友人の近況報告ですよね?すごくいい笑顔だったんですよ。所長以外が無暗に近づくと蹴り飛ばしてくる女だとか、突然数式を書き出しては部屋にこもり、ニ三日後にまたいきなり現れて成果を出す変人だとか言われている雷さんでもあんな顔をするんだなぁって」

「え……私、そんなふうに思われてたの?」

「そうですよ? 知らなかったんですか?」

「初耳。青天の霹靂」

 

 前者は嘘、後者は本当である。

 雷は額に手を当てて俯き、今後の態度改善を思案していると、ルイスが肩をツンツンとつついてきた。

 

「で、ご友人は何と?」

「エジプトに行くんだってさ」

 

 今度エルフナインとキャロルに相談することを決めた雷はふうと息を吐いて響達の次の活動場所を告げた。

 ルイスが胸の前で両手をパンと合わせた。彼女は声を弾ませる。

 

「エジプトですか! いいですよね、有名どころのピラミッドやスフィンクス! 世界遺産誕生の決め手となったアブシンベル神殿なんかもいいですよね! どこをめぐるとかは聞いていますか?」

「シナイ半島」

「え?」

 

 雷は淡々と答えた。

 そのことにルイスは首をかしげる。

 出てきた場所の名前は到底観光には向かない場所だ。アラブの春以降今でも戦闘状態にあるという危ない場所である。五年前の神話事変の際、世界は一つにつながることが出来た。しかし、その一瞬だけでこれまで何百年と積層した紛争が止むはずもなく、今でも世界の各地で戦闘が起きていた。

 シナイ半島もその一つである。

 

「そこって……紛争地帯ですよね?」

「そうだけど」

「あの……到底旅行に向いた場所じゃないと思うんですけど……」

 

 彼女の頬を大量の汗が伝う。

 雷がニヤリと笑った。

 

「だって旅行じゃないもの。……パヴァリアの残党を潰しに行ったんだよ」

「……私、自分の研究に戻りますね」

「頑張って~」

 

 雷はひらひらと手を振り、おぼつかない足取りで研究室に戻っていくルイスを見送った。そして再び手に持っていたタブレットに視線を落とす。

 

「ケラウノスが使えればな……」

 

 胸の赤い石柱状のペンダントを弄りながら、小さく呟いた。

 

○○○

 

 雷のタブレットに映像が送られる少し前のこと。

 S.O.N.G.本部である潜水艦は、地中海を航行していた。艦橋に未来を含めた響達装者全員が集められ、ブリーフィングが開かれていた。

 引き続き司令を務める弦十郎が一同を見渡し、問題なく行動できる状態であることを確認する。

 そして満足げに一つ頷き、状況を報告した。

 

「うむ。久しぶりに全員がそろったな。この映像を見てくれ」

 

 友里がコンソールを操作し、メインモニターに映像を映し出した。画面いっぱいに砂だらけの大地が映る。

 二つ括りを解き、ゆるくウェーブのかかった髪を揺らしながらクリスが首を傾げた。

 

「砂漠か? おっさん」

「ああ、見ての通り砂漠だ。我々は今、地中海を航行しエジプトに向かっている」

「あのスフィンクスとかピラミッドとかがある……」

「そこに何かあるんデスか?」

 

 バトルスタイルの都合上ツインテールのままの調と、肩口まで髪を伸ばした切歌がエジプトに向かっている理由を問うた。

 それに応えるように映像が切り替わり、今度は神殿のような、石で出来た美しい建造物が映し出された。

 

「この神殿は見かけは古いが、他の情報と組み合わせて調べても発見することが出来なかったものだ」

「つまり新たに発見された神殿……という事ですか」

「でもここは紛争地帯、いくらなんでも傷一つないなんて変よ」

「マリア君の言う通り、これは普通の神殿ではない」

 

 見た目はさほど変わっていないが大人の落ち着きを身に纏った翼と、長髪を一つくくりにしたマリアの疑問に彼は答えた。

 

「カメラ越しではあるものの撮影された映像をミュニアースにいるエルフナイン君に鑑定してもらったところ、錬金術によって構築された可能性が高いことが判明した。キャロル君や雷君も同様の答えを出している。その為、我々S.O.N.G.はこの建造物がパヴァリア光明結社残党のものであると仮定し、調査を進めることになった」

「もし本当にパヴァリアの残党のものだったとしたら……」

「アルカ・ノイズが出てくる。だから私達がッ」

 

 学生時代は捲いていたリボンを外した未来が戦うための覚悟を決め、少しばかり奏のように髪を伸ばした響が拳をぎゅっと握りしめた。

 全員のコンディションに問題がないことを弦十郎は確認すると弦十郎が今回の作戦概要を通達する。

 

「我々の任務は紛争の休戦及びパヴァリア残党のものと思われる神殿の調査だ!」

「「「「「「「はいッ(デース)!」」」」」」」




ルイス・S・キング
十個の輪にチェーンを通したネックレスをつけ、両目メカクレの茶髪女性。32歳ユダヤ系スコットランド人。
縦セタで豊満な身を包み、タイトスカートをはいた喪女。
エルフナイン、キャロル、雷と共に南極の国際聖遺物研究所に勤務している。担当は錬金術部門。錬金術と既存の技術を融合させる研究を主に行っている。

因みにエルフナインとキャロルは所長にして錬金術部門主任。雷は聖遺物部門主任(何でも屋でもある)。

未来の姿はシェム・ハ時代を想起させてもらえればと。
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