戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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正直なところ完全オリジナルの章なので破綻がないのかが不安。
というか未来さんがファウストローブの神獣鏡を装着するシーンがないからどう書いたらいいのか分かんない。


PROJECT・B

 五年前に発生した神話事変。

 人類存亡をかけた戦いの裏側で世界中の戦闘行為はかつて起きた奇跡の一つ、第一次世界大戦で起きたクリスマス休戦のようにすべて休戦状態に入り、フランカが成し遂げた星の音楽によって対話が進められたように見えた。しかし、全てがそう上手くいくわけがなかったのだ。

 それまで積み上げた憎悪の歴史、譲ることの出来ぬ意地、友や家族を失ったことに対する怒り……。

 時間が解決していた問題を星の音楽は目覚めさせてしまったのだった。

 その事実を人類の代表として日本と、S.O.N.G.ともに神と戦った米国は深く受け止め、いま世界中で起きている戦闘行為は人類が次のステップへ進む……真なる意味で神との決別を果たすための試練であると国連で発言し、米国は、世界は紛争問題解決へと本格的に目を向けることになったのだ。

 シナイ半島も宗教的な――宗教問題はシェム・ハとアダドという文字通りの神が現れてしまったため、根底が揺らぎ民族問題よりも激化の一途をたどっていた――紛争地帯であるため国連軍は、情報収集のためにミュニアースにリペアードされた映像撮影技術を実践投入し、戦場を撮影するとこれまでは発見できなかった神殿型の遺跡を発見。

 その映像をミュニアース所長エルフナイン、キャロル。彼女が右腕に据える雷が識別した結果錬金術由来の技術によって作られたものであることが判明した。

 国連は国連軍の投入を一時中断し、現代科学では解決法がない遺跡の調査を優先することを決定した。

 

「で、私達にお鉢が回って来たという……」

「あんなことがあってもまだ戦いは続くんだね」

 

 エアキャリア内部で待機していた調がつぶやき、響が少し悲しそうに拳を握った。

 響としてはシェム・ハとの約束を守ることが出来なかったという事が重く心にのしかかっているのだ。

 世界はそこまで甘くはない。

 分かっていたことだが、それでも何とかなるのではないかと信じていたのだ。

 響の握った拳を隣に座っていた未来が優しく包み込む。

 

「未来……」

「神様と別れるまで二千年もかかったんだもの、だから響が思いつめる必要はないよ」

「でも」

「大丈夫。シェム・ハさんとも私達は分かり合うことが出来たんだから」

「……そうだね。くよくよしてても始まらないし、小さなことからコツコツと、だよね!」

 

 未来の励ましに響は今度は勇気と決意を込めて彼女の手を握り返す。何時もの響の調子に戻ったことで未来も笑顔を浮かべた。

 空気が元通りになったところで、同じくエアキャリアに空挺班として同乗していた切歌が両手を勢いよく広げる。

 

「そうデス! 今度イギリスであたしたちのライブイベントがあるんデスが響さん達はどうデスか?」

 

 切歌と調のバンドユニット『ZABABA』の次のライブの開催地が、かつて翼とマリアが魔法少女事変前夜のライブが行われたアリーナに決まったのだ。

 あまりに唐突な話題だが、この元に戻った雰囲気を維持するのに最適だった。

 

「それっていつなの?」

「一応今月末の予定デース!」

「うーん……その日はクリスちゃんの手伝いにアメリカに行く予定なんだ、ごめんね?」

「ガーン!」

「こういうのは早い者勝ちだから仕方ないよ切ちゃん」

 

 オーバーリアクションで落ち込む切歌を調がなだめる。

 彼女の脳裏には「はーはっはっは!」と謎のテンションで高笑いするクリスの姿が浮かんでいた。クリスはそんな笑い方はしないが。

 

「でも姉ちゃんも来れないし響さんも未来さんも駄目なのは少し寂しいデス……」

「それはそうだけどね」

「今月だけでも調ちゃんと切歌ちゃんはイギリス、クリスはアメリカ、翼さんとマリアさんはロシアだもんね。私と響は定期的にいろいろなボランティアに行ってるし、雷とエルフナインちゃん、キャロルちゃんは南極で聖遺物の研究。フランカちゃんは実家の孤児院。……こうやって見ると結構いろんなことやってるね、私達」

 

 未来が指折り自分たちの状況を確認した。リディアンにいたころは想像もできなかったほど世界中を飛び回っている。

 フランカはまだ学生であるため、基本的に故郷オランダで彼女の家族が開いた孤児院の手伝いをしているが、有事になればS.O.N.G.の隊員として招集されることになっていた。

 

「そろそろ目的地上空です! 装者の皆さんは準備を!」

「了解ッ!」

 

 エアキャリアのパイロットから通信越しに声が届く。

 それまでの姦しい会話はぴたりとやみ、各々ペンダントを手に握ってハッチの方に移動する。そして少しの揺れを伴ってエアキャリアは空中で停止し、降下用の後部ハッチが開いた。

 入り込んでくる風が彼女達の髪を揺らす。

 お互いに頷き合い、空へと飛び出した。

 未来が銀色のペンダントを胸に当てる。つぼみのようだったそれは花開くように展開し、背後に円盤状の光が生み出される。そこから光の帯が四肢に巻き付いて鎧を形成、ファウストローブ・神獣鏡へと形を変えた。

 同時に三人も進化したシンフォギア『シンフォギアST』を身に纏う。胸部と四肢に搭載された虹色のクリスタルが燦燦と照り付ける太陽のもと輝いた。

 そして未来が響の手を取り、調がツインテールバインダーから展開した鋸をプロペラのようにして切歌の手を取って神殿まで降下した。

 

「うッわぁ……流石は翼さんにクリスちゃんにマリアさん、三人で軍隊と戦ってる……」

「まあ、私達よりも一対多向きだからね。私や調ちゃんもどちらかといえばそっちだけど、それじゃ飛べないし」

「響さんはもしもの時に神殺し役として必要デスし……」

「私がこっちに居るって事は最もかみ合わせのいい切ちゃんと組むのが最善だもんね……」

 

 誰と組んでもユニゾンが出来るようにしているとはいえ、最も出力の出る組み合わせがるというのは事実。特に理由がない限りはその組み合わせで行動するのは戦術的に間違いではない。

 地上で大立ち回りを演じる三人に呆気にとられながらも降下していると、不意に神殿で大爆発が起こった。

 四人が一斉に振り向き、降下速度を上げる。

 

「「「「ッ?!」」」」

「急ごうッ!」

「うんッ!」

「行くよ切ちゃんッ!」

「はいデースッ!」

 

 神殿はごうごうと燃え上がり、黒煙が雲一つない大空へと立ち上っていた。そして紅い炎の中からアルカ・ノイズが出現する。数は大して多くない。

 何かが爆発したのを察知した翼が響に通信を開いた。 

 

『何があったッ?!』

「神殿が爆発しましたッ!」

『なんですってッ?!』

『お前ら無事か!』

「私含めて全員無事です!それとアルカ・ノイズの出現を確認しました!」

『増援は?!』

「数が少なく、翼さん達とも距離は離れているので必要ありません!これから突入します!」

『任せたぞ!』

 

 通信を終了し、四人は頷き合う。

 そして未来が鏡のようなビットから放つ光線で、調に掴まった切歌が鎌を振り回しブーメランのように放つことで上空からアルカ・ノイズの殲滅にあたる。

 流石に地上からは距離があり、砂漠であるため装者といえどこの高さから自由落下による着地の際の影響が分からないため、降下速度こそ上げるものの落ちるという判断はとらなかった。

 しかし人類にとっては脅威でも所詮はノイズ。装者にとっては大した問題にはならなかった。

 着地した時にはすでにアルカ・ノイズは倒されつくしていた。

 しかし一番の問題は突然起きた謎の爆発である。

 神殺しである響が先頭に立ち、魂切りの力を持つイガリマが最後尾を警戒した。

 

「煙と炎で視界が悪いけど……」

「私が照らすよ。煙ぐらいは晴れさせれるから」

「ありがとう、未来」

 

 視界が悪い中、四人は奥へ奥へと進んで行くが何も見当たらない。いや、厳密に言えば何百もの小部屋などは有ったりするのだが、それが何なのかを突き止める証拠が一切焼却されているのだ。

 そうこうしている内に、一番奥の扉までたどり着いてしまった。

 

「行くよ」

「「「……」」」

 

 響が勢いよく扉を開ける。

 そして拳を構えるが、そこにも何も存在していなかった。 

 炎も酸素を使われつくしているのかそこまで強くなく、何かあるのではと思案する出来る程度のものになっていた。

 火に火をぶつけて消火する方法がある――。

 姉さんがそんなことを言っていたことがあったと調が思い出していた。

 最後尾だった切歌が前三人の肩越しに部屋の中を覗きこんだ。

 

「およ? 何にもないデスね。こういってはなんデスが、少しばかりドラゴンとかでないかなと期待してたんデスが……」

「何にも、無いみたいだね切歌ちゃん」

「まあでも切ちゃん、怪我をするよりは何倍もいいと思うよ」

「それはそうデスけど……」

「私はドラゴンとか期待する気持ちわかるけどね!」

 

 響が便乗した。

 未来の視界の端に何かが映った。それは、上から降ってきたものだった。

 

(羽根?)

 

 そう思って手に取ろうとするが、少しばかり大きな火の粉であることに気付いた。

 羽根と火の粉をどうして見間違えたんだろう――。

 考えていると、その思考は響の声にかき消された。

 

「みんな!」

「どうしたの響?」

「何か見つかったデスか?」

「紙の束……?」

 

 響の手に持っていたモノ。

 それは複数枚の紙を束ねて作られた報告書のようなものだった。しかし、接着部と表紙が辛うじて燃え残っているだけで全容は焼失しており、燃え残っていた表紙も重要な部分は燃え尽きてしまっていた。

 その燃え残った表紙にはこう書かれていた。

 

 『PROJECT・B』

 

 と――。




シンフォギアST
最終決戦後、バーニングエクスドライブSTになったことで進化した新たなギア。胸部や四肢に虹色のクリスタルが組み込まれており、これによってS2CAによる負荷を響だけでなく全員に分散させることが出来るほか、フォニックゲインを移動させることが可能になった。このため一か所に集中させて一人の力を強化したり、弱ったメンバーに分け与えて穴を埋めることが出来る。ファウストローブである未来の神獣鏡にはクリスタルが存在しないが、彼女は響が手を繋ぐことで代用している。
アマルガムは引き続き使用可能。
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