戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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散髪行ってなかったからなんかアグネスタキオンみたいな髪型になってきた。


自分らしく

 ミュニアース所長室で、雷たちはS.O.N.G.本部の会議に参加していた。

 ルイスは本来S.O.N.G.所属ではないのだが、武装組織ファイの用いていた装備が彼女が考案した技術、ファウストギアであったため、緊急で参加している。

 画面の向こう側ではてなマークを浮かべる響達に、自らの所見を告げる。

 

「彼女たちの目的が世界と戦争する訳じゃないと考える根拠は、響達に殺意を向けてなかったところだよ」

『殺意だぁ?』

「うん。……普通に考えて、聖遺物を用いている彼女たちの敵は、同じく聖遺物を使う私達ぐらい。だから、初めて接敵した時にシンフォギア装者を殺しにかからないのはあまりにも不自然なんだよ。たぶん他に目的がある」

『その目的というのは?』

「……競争だ」

「キャロル」

「遮って悪かったな。だが、オレも同じ結論に達した」

 

 自分専用の机にキャロルが頬杖をつき、呟いた。

 馬鹿げてると思うかもしれんがな――そう言外に含ませて。

 

「競争だよ。正義と正義のな」

『なるほど。彼女たちの勧善懲悪の正義とのぶつかり合い……という訳ね』

「そういう事だ」

『視点の違いか。私達からすれば国の重鎮を殺害した犯罪者だが、救われた国々からすれば英雄……と。弱者たちのための正義、そのこと自体には嘘偽りはないようだ』

 

 翼が納得し、頷いている。

 信念に沿って行動している彼女たちに、敵対者でありながらある種の尊敬の念を抱いていた。

 そして分かった。過程こそ異なるものの、目指す場所は一緒であることを。もしかすれば、話し合いで解決することが出来るかもしれないと希望を抱いた。

 そのことに響は笑顔を浮かべる。

 

『って事は、あの人達と分かり合うことが出来るかもしれないって事?!』

『でもあの時……』

 

 未来の言葉に響は炎の中でのミアとのやり取りを思い返していた。

 話すだけ無駄だった……あれはどんな意味を持つのだろう。

 雷はそのことを知らなかった。どのような状況だったかは情報が届いていたが、流石に個々人のやり取りまでは記録されていない。

 だからこそ、雷は首を傾げた。

 

「どういう事? 未来」

『実は――』

 

 未来は雷にその時の会話をできる限り正確に伝えた。

 

「響の浅はかさ……ね。なるほど」

『何かわかった?』

「いや、まだ何とも言えない。……だけど響、念のためにそういったやり取りは控えておこう」

『どういう事?』

「……何と言うか、私達と彼女達で“話し合い”に対してすさまじい齟齬がある気がする。それが何かって言われると困るけど、響がショックを受ける可能性が高い」

『……』

 

 響は黙り、自分の握った拳を眺めていた。

 雷は内心、あれは納得してい顔だな、と思うと同時に、止めれたらそれはそれで響じゃないんだよなぁ、とも思っていた。そんな御しやすい性格だったら、ここまで自分を貫けなかっただろう。

 また響は何かで傷つくかもしれない。だとしても、彼女は止まらないだろう。

 響が目指す場所へ導く――それが自分の在り方だ。

 

「どうするかの最終判断は響に任せるよ。未来、後はお願い」

『任せて、私が何とかしておくから』

「助かる」

 

 現状における相手の状況は把握した。

 次は、武装組織ファイの戦力についてだ。

 彼女達の武装は新開発のファウストギアであるため、現在ミュニアースでそれの研究を行っているルイスが画面の正面に座る。

 彼女は何か気になっていることがあるようだ。

 相変わらず前髪で顔がよく見えない。

 

「えっと、先ほど自己紹介しましたが、もう一度。ファウストギアの開発を担当してるルイスです。一つ聞きたいことがあるんですが、よろしいでしょうか?」

『聞きたいことだと?』

「あなたが弦十郎さんですね? はい。本来のファウストギアには、装者の皆さんが各々経験した特殊な現象を発動させる機能は存在しません。見た目自体はシンフォギアやファウストローブと大した差異はないんです。とういう事は、皆さんのギアとは異なりつつ、ファイのギアに共通する何かがあるはずなんです。そこを教えてもらってもいいでしょうか」

 

 資料を受け取った時、ルイスは一人疑問を抱いていた。

 自分の技術が流出していることに驚きこそしたが、そこはそれ。それ以上に気になっていることがあった。

 それこそが、ファイのファウストギアに搭載された特殊能力だ。

 ファウストギアは、あくまでもシンフォギアとファウストローブの融合技術でしかない。その為、彼女達が発現させた特殊能力は本来あり得ないものだ。

 全世界に映像で宣戦布告した際にギアは映っていた。しかし炎や返り血、光の反射などで見えない部分もあったうえに何かしら映像に編集の手が加えられていた可能性もある。

 だからこそ、目で見た情報がほしかった。

 装者たちは情報を出し合い、一つの共通項を見つけ出した。

 翼が代表してルイスに伝える。

 

『これがそうなのかは分からないが、一つだけ共通点があった。ラインだ』

「ライン……ですか」

『ああ。太さや色、本数、配置されている場所にこそ違いはあるが、コンバーターユニットとみられる場所を中心に四肢に伸びている事だけは共通していた』

「なるほど……わかりました。ありがとうございます。では、オペレーターの皆さんはそのラインを中心に情報収集お願いします」

 

 この質問を最後に、会議が終了することとなった。

 

○○○

 

 雷たちは自分たちが使用しているラボに戻りながら、肩を落としているルイスを慰めていた。

 

「いっちょ前に聞いておきながらぜんぜんわからないんですよねぇ~!」

「ラインがあるって分かっても、それが何なのかが分からないもんねぇ」

「今回ばかりは先輩もお手上げですか……?」

「お手上げだよ。全く分からない。……ところでさっきからエルフナインはどうしたの?」

「え? 僕ですか?」

「いや、さっきからなんか考えてるみたいだし、何かわかった?」

 

 さっきからずっと何かを考えているエルフナインを雷が見上げた。

 いや、考えているというよりも、思い出そうとしている、といった方が正しいだろう。

 

「そのですね、一つだけ心当たりがあるんです」

「まじ?」

「まじです。その……オリハルコンっていうんですけど」

「先輩、聞いたことあります?」

「ううん。オリハルコンは知ってるけど、それがあるのは知らない」

 

 エルフナインは苦笑いを浮かべて頬を掻いた。

 今の今まで彼女自身も忘れていたようだ。

 

「雷さんが眠っていた時の出来事ですから、知らないのも無理ないですよ」

「でもデータベースにはなかったよね?」

「開発したはしたんですが、とある理由で実物とデータを丸ごと破棄することになったんです。データはバラバラになって電子の海の中ですし、実物は南極の冷たい海の底です。知らないのも無理ありません。……ですので僕の記憶の中にしかなかったので、今やっと思い出しました」

 

 エルフナインはラボの鍵を開け、各自の研究を再開する前に、彼女からオリハルコンについて聞きだすことにした。

 

「で、エルフナイン。オリハルコンってどういうのなの?」

「オリハルコンとは現在、地球上でもっとも固く、頑丈な金属です。そして相転移制御能力を持ち、高いエネルギー伝達率を誇ります」

「夢の金属すぎる……」

「はは……本当にそうだったんです。ですがそのせいで世界各国の企業が難色を示しまして……研究は永久凍結されることになりました」

「その研究をしてた人、うかばれないですね……」

「はい……本当に……」

 

 人類の夢をかなえようとした結果、その人類に夢を潰されるなんて何とも言えない話だ。

 そのことを悔いているのか、エルフナインは少し暗い表情を浮かべた。

 しかし、今の問題はそこではない。

 なぜオリハルコンが関係している可能性があるのかだ。

 

「で、何でオリハルコンが出てくるの?」

「は、話が脱線しましたね! すみません! えっと、流石にそこまでは研究してなかったので仮定の話になりますが、オリハルコンでフォニックゲインを効率よく全身にいきわたらせているのではないかと」

「確かに、フォニックゲインをコンバーターから円形に放射するよりも、その方が出力も高まるし、安定する」

「そのおかげでシンフォギアやファウストローブでは不可能だった、聖遺物の本来の力を引き出すことが出来るようになった……という訳ですね?」

「うん。その可能性は高いと思う」

「まあでも、後は追加報告待ちですね」

「一応、本部にはオリハルコンのことを送っておくよ」

「ありがとうございます! では、私達は自分たちのすべきことをしましょう!」

「「おー!」」

 

 三人は拳を突き上げた。

 最も、あと二、三時間もすれば分からないことが多すぎて値を上げることになるのだが。

 それはまた別のお話。




オリハルコン
 現在確認できる物質の中で最高硬度を誇る、硬度・可塑性・密度を自在に変化させる相転移制御特性を持つ特殊金属。
 しかし、この金属の本質はエネルギー伝達能力であり、ほとんど減衰せずに伝達することが出来る。
 この特性により世界中の電力問題を解決できる可能性を持った夢の金属だったのだが、様々な世界企業の反対によって存在は抹消され、研究は永久凍結されることとなった。
 これを開発した研究員は今も元気にミュニアースで仲間と共に切磋琢磨している。
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