戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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独自設定入ります。
自分が納得できるように書きました。正直ここが一番難産だった。


エレクライト解析完了

 ファイという新たな脅威がやって来ていても、今の雷の仕事は研究だった。

 彼女は今、目の前にあるパラレルテクノロジーCASE3エレクライト、その試作機を目の前にしてその技術の解析を続けている。試作機といっても性能自体は完成機とさして変わらず、戦闘用の機構が存在しない程度の差だった。

 平行世界から、テスラが開発していたエレクライト試作型の三基のうち一基を譲り受けた雷は、メインテクノロジーである平行世界移動能力をどうにかして再現しようとしていた。

 ピアノの内部構造のようなバインダーに目を付けたはいいものの、それ以上の発見が一切なかった。

 自分用の椅子に勢い良く座りこむ。その衝撃で椅子が後ろに動き、背後にいたエルフナインの椅子の背もたれにぶつかった。

 

「うわぁ?! どうしたんですか?」

「いやー。あのね、ここが根幹だってのは分かるんだけど……そこから先がさ……。って、エルフナインは何してるの? ……ダウルダヴラ?」

 

 ぐりんと雷は体の向きを変え、エルフナインの肩に顎を乗せる。

 エルフナインのモニターにはキャロルのファウストローブ、ダウルダヴラが――厳密にはその内部機構が――映っていた。

 

「はい! 今後の研究のために内部のエーテルサーキットは他にもあった方がいいかなと思いまして、その複製をですね」

「ああ、あの。……そういえばダウルダヴラにもエレクライトみたいなバインダーがあるんだよね」

「確かにそうですね。普段は格納していますが、開放状態ならあります。それがどうかしましたか?」

「いや、何というか……何であれを開放したら火力が上がるのかなって思ってさ」

 

 ――なんだ、そういう事ですか。

 雷を肩に乗せたまま、エルフナインは彼女のほうを向いた。鼻と鼻がぶつかりそうなほど二人の距離は近い。

 

「あれで焼却で発生したエネルギーを共振させてるんですよ。それに火力だけでなく、精度も格段に上がりますよ」

「ふーん……共振ねぇ……」

 

 雷はそう呟いて床を蹴り、元の位置に戻っていく。そしてそのままくるりと回転し、背もたれ越しにエレクライトのバインダーを眺めた。

 彼女の中に少しばかりの閃きが浮かんだ。

 

「ねえエルフナイン」

「なんですか? 雷さん」

 

 エルフナインが椅子を回転させ、雷の方を向いた。彼女の背中を見つめる。

 

「地球にも何かしらの波形ってあると思う?」

「どうでしょう……。ですが、レイラインのエネルギーには波形があるかもしれませんが……ってもしかして!」

「うん。そのもしかして。これが多分、エレクライトの平行世界移動の鍵だと思う」

 

 地球には、それぞれ独自のレイラインのエネルギー波形がある。

 その波形をバインダーで共振・調律することで移動したい地球のエネルギー波形に変更する。すると、その場で一時的に向こう側の世界が展開される。ゲートのように開いた世界の壁を通って平行世界を移動する。

 これが、エレクライトの平行世界移動能力の正体だ。

 恐らくだが、笛の完全聖遺物であるギャラルホルンも同様のシステムの可能性がある。もっとも、あれには弦がないが、聖遺物であるためそこらへんはそれ相応の不思議パワーで何とかしているのだろうが、装者だけが移動できるのは、恐らく聖遺物のアウフヴァッヘン波形はどこの世界でも同じものだからだろうか。そうでないものは、壁を超える際に異物として弾き飛ばされてしまうのだろう。

 そして推察するに、実際にギャラルホルンの存在する位相は世界の壁と壁の狭間にある。半分だけ本世界にあるから見ることはできるが、何物の干渉を受け付けない。

 だが、この技術を応用すればギャラルホルンに干渉できるかもしれない。

 

「あとは何かしらで実験が出来ればいいんだけど……どうしたの?」

「……」

 

 エルフナインの纏う温和な雰囲気が、キャロルのものに切り替わる。

 何か大変な事が起こったに違いない。

 

「雷、国連からの通達だ」

 

 キャロルが真剣な表情で雷の方を向く。

 それに対して雷も正面から見つめ返す。

 

「オレ、雷、フランカは現時刻をもってS.O.N.G.に復帰、世界に宣戦布告したファイと戦う事になる」

「そのためのギアとファウストローブは?」

「猶予は一か月。それまでに新型を用意する。雷は当然ケラウノス。オレはラピス・フィロソフィカスだ。フランカにも何か与えたやった方がいいだろう。また、S.O.N.G.に対して超法規的措置による越権行為が認可された。適合の問題もさっき解決したからな」

「了解。タイミングが良くて助かった。だったら凍結されたオリハルコンの開発技術を解凍し、ルイスのファウストギアに組み込む。パラレルテクノロジーも可能な限り全投入する」

「いいだろう。オレはこれから全職員にそのことを通達する。ここの全力で挑めば一か月で何とかなるだうしな」

 

 これにより、新型ギア開発計画がスタートした。

 雷のものには『ケラウノス+』。キャロルのものには『ラピス・フィロソフィカス´』。フランカのものには『ラピス・フィロソフィカスtype-N』と名付けられた。

 

○○○

 

 オランダ、ユトレヒト郊外。

 フランカは、そこにある自宅で家族とともに孤児院を運営していた。彼女の兄たちはすでに家庭をもって自立しており、今は家族三人と孤児が三人の六人家族だ。

 褐色肌でお姉ちゃん気質のヴァネッサ。悪戯っぽいが家族思いなミラアルク。賢くしっかりものなエルザ。そんな三人に、フランカはどこか運命的な、奇跡的なものを感じていた。

 

「みんなー、ご飯だよー」

「分かりました。はい、今日の勉強はここまで。ご飯食べよう」

「はーい」

「もう少しで……出来たであります!」

 

 一番年上のヴァネッサが少し勉強が苦手なミラアルクに宿題を教え、その横で最年少のエルザが切のいいところまで終わらせた。

 学校の宿題をしていた三人は、フランカの声でそれぞれテーブルに並ぶ。

 今日は両親の仕事が遅く、家にはフランカたち四人だけだ。

 一番の大食いであるミラアルクがテーブルに並べられた夕食に目を輝かせている。そんなミラアルクをお姉さん気質のヴァネッサが必死に引き止めていた。

 

「フランカさん早く!」

「うん。ではいただきます」

「いただきまーす!」

 

 そういうな否やミラアルクは自分の好きな肉料理を口いっぱいに頬張る。そしてそれ以降ずっとそればっかりを食べ、野菜やパンなどには一切手を付けていない。

 エルザが パンを小さくちぎりながら彼女に口を出す。

 

「ミラアルク、行儀が悪いでありますよ」

「そうだよ? ゆっくりとよく噛んでね」

「はーい……」

 

 ミラアルクは少ししょんぼりしながらフランカの言うことをしっかりと聞いた。ちょっとばかし感情的なところがあるが、家族の言うことはちゃんと聞いていた。

 

「そんなに落ち込まないの。別に怒ってるわけじゃないんだから。……はいこれ、私の分だけど、少し多いからミラアルクにあげる」

「いいのかヴァネッサ?!」

「うん」

 

 ヴァネッサの分の肉を少し受け取り、ミラアルクのテンションが元に戻る。

 

「よかったのヴァネッサ?」

「うん。だってミラアルクは落ち込んでるよりも、笑ってくれてる方が楽しいもの」

「うーん……時々私よりもヴァネッサのほうが年上なんじゃないかと思うときがあるよ」

「あら、お姉ちゃんって呼んでくれてもいいのよ?」

「あはは……」

 

 ヴァネッサは悪戯っぽい笑みを浮かべて胸を張った。こういうところを見ると、彼女もまだ子供なんだな。と少しばかり安心する。

 変に大人っぽくなって損をするよりも、彼女達が年相応に楽しんでいる方がフランカにとってはうれしかった。自分が経験できなかったから……というのも大きい。

 すると、横に座っていたエルザがフランカの袖を引っ張った。

 

「どうかした?」

「携帯震えていますよ?」

「ああ、ありがとう」

 

 クッションの上にのせてて気づかなかったが、確かにフランカのスマホが着信を告げていた。フランカは一言断って席を立ち、スマホを拾い上げて廊下に出る。

 画面に雷と表示されていたからだ。

 

「どうしました?」

『ファイのことでね。私達のS.O.N.G.復帰が決まった』

「そうですか……」

『装備のこととかいろいろあるから、私達のところに来て欲しいの。もちろん、今すぐじゃなくて、親とか学校に話を付けてきてからでいいから』

「分かりました。では、明後日までにはそちらに到着しておきます」

『ありがとう。……ごめんね、無理言っちゃって』

「いえいえ。では……」

 

 そう言って通話を終了する。

 その後フランカは両親と学校に事情を説明し、テレポートでミュニアースへと跳んだ。




ケラウノス+(プラス)
ラピス・フィロソフィカス´(ダッシュ)
ラピス・フィロソフィカスtype-N(ノーブル)
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