戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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連投

響の中学校名とクラスが分からなかったのでオリジナルです お許しください。

キャラのセリフ分けがムツカシイ・・・


雷は、未来へと響き渡る

 県立天音中学校2年1組。その教室の黒板の前に雷の姿があった。

 

 転校生である彼女の姿にクラス中が騒然としている。何故なら、手足や額を痛ましいほどに包帯でぐるぐる巻きにし、左手をギブスで吊っているからだ。くすんだ金色をした瞳には厭世的な雰囲気が漂っている。そんな彼女は吐き捨てるかのように自己紹介をした。

 

「轟雷です。よろしく」

「それだけ?! もっと他にないの?」

「ありません」

 

 先生の制止を振り切って開いている机に一直線に向かい、着席する。隣席のオレンジ色の髪をした少女は、机に落書きをされ、教科書等をぼろぼろに切り刻まれていた。

 恐らくいじめられっ子なのだろう、先生から無視されているというとは「公認」されているあたり筋金入りだ。雷は小さくため息をつくと、戸惑いの目を向ける担任に授業を始めろと目で合図を出す。

 

「雷さんが怪我をしているのは引っ越してきてすぐに交通事故に遭ってしまったからです。皆さん、雷さんが困っていたら助けてあげてください」

 

 担任の余計な一言と共に、転校して第一回目の授業が始まった。

 

○○○

 

 休み時間に入ると、面倒な質問責めに会う前に教室を後にする、後ろから聞こえてくる声は20回ほど無視したころには聞こえなくなっていた。

 面倒ごとを振り払って適当に校内をフラフラしていると、どこからか女の子のすすり泣く声が聞こえてくる。気になったので声が聞こえる方へ向かってみたら、隣の席のオレンジ髪のいじめられっ子と黒髪の女の子が抱き合っていた。如何やら泣いているいじめられっ子を女の子が抱いて慰めているらしい。

 そう思っていると、偶然黒髪の女の子と雷の目が合う。彼女は私を見てギョッとしていたが、そんなことは無視して雷は善意から彼女に忠告する。

 

「いじめられっ子と仲良くしてると君も標的になるんじゃないの?」

 

 その一言に女の子はいじめられっ子を庇うように立って雷に対して怒りの表情を向け、いじめられっ子はおびえたような顔をしている。そして黒髪の女の子は怒気を含んだ声で雷に話しかける。

 

「今日転校して来たばっかりなのに轟さんまで響をいじめるつもりなのね」

「へぇ、彼女響って名前なの。私は周囲の状況から響さんがいじめられてるのを知っただけで初対面の子をいじめるつもりなんてないし、逆に何でそんなことされてるのかをこっちが知りたいぐらいよ。あと、ただ私はそんな風に扱われてる子に関わってたら君までそうなっちゃうんじゃない?って忠告しただけ、大きなお世話だったみたいだけど」

 

 正直にすべてを話した雷に対して黒髪の女の子は疑惑の目を向けるが、抱きしめられていた女の子、響は安心した目を向けている。響が女の子に口を開いた。

 

「未来、雷さんは多分だけど・・・大丈夫だと思う」

「・・・響がそう言うなら・・・」

 

 黒髪の女の子、未来が抱きしめていた腕をほどき、雷と響は向かい合う形になる。雷のほうが少し背が低いため軽く見上げるような状態で、響の口から今に至る経緯が語られる。

 事の発端はツヴァイウイングのライブでノイズが大量発生し、多くの死亡者が出た事件から始まる。彼女は未来と二人でライブを見に行く予定だったが、未来が家の都合でドタキャン。結局響一人でライブに行くことになったその日、ライブ中に突如としてノイズが発生し彼女は死の淵をさまよったが生存する。しかし、将来を有望視されていたサッカー部の少年がこの一件で死亡、取り立てて取り柄のない響きが生き残り、その少年が死んだのかが一人の女子生徒によって糾弾されて現在に至る。ということだった。

 

「なるほど、理解した。まあ、何されても笑って見返してやればいいんじゃない?生きてることに文句を言われる奴なんて私以外必要ないよ」

 

 カラカラと笑う雷を見て、最後の一言が気になった二人であったが向かい合って苦笑いをそろって浮かべる。

 

「ねぇ、轟さんの事なんて呼んだらいいかな?」

「私の事は雷って呼んで、そっちの方が他人行儀じゃなくていい」

「わかったよ、雷」

「うん!雷ちゃん!」

「ちゃん付けかー。まぁいいや!」

 

 この日から雷、響、未来の三人で行動するようになった。

 

○○○

 

 響と未来の二人は雷の異常性に向き合うことになる。

 三人で行動するようになって一か月がたったころ、その事件は起きた。

 

 ナイフを持った複数の男子生徒が三人の下校途中に姿を現した。恐らくナイフで脅迫し、金を盗るなり身ぐるみ剥いで犯すなりするつもりだったのだろう。生徒の一人がナイフの先端を響に向ける。彼女は体を硬直させ、未来は反射的に響を庇うように立つ。そんな中、雷だけがナイフを向ける少年に向かって歩いていく。そして目の前に立ちはだかり、光を失った金の瞳で少年の目を見つめ返しながら、口を開く。

 

「そのナイフは何のためにある?標的を脅し、必要とあらば殺すためだろう?標的が君に危害を加えようとしているぞ?ほら、刺してごらんよ」

「・・・うっ・・・う・・・」

「危ないよ雷!下がって!」

「雷ちゃん?!」

 

 響と未来が叫ぶ。しかし、雷は聞く耳を持たずにナイフを持った手を握りしめて自身の腹に突き刺させる。制服には赤色が滲んでいき、手から血が滴り落ちる。恐怖のあまり少年はナイフを手放し、地面に尻もちをつく。後ろにいた残りのメンバーはもういない、雷の体にナイフが刺さった時点で蜘蛛の子を散らすように逃げ出したようだ。呆れと期待外れだというような目線を向けた後、尻もちをついた少年の顔面に回し蹴りを叩きこんで気絶させ、その場にへたりこむ。

 

「雷ちゃん!すぐ救急車呼ぶから!」

「雷!どうしてこんなことするの?!」

「ごめんね、二人とも。・・・私、疫病神だから」

 

 刺さっていたナイフを抜き取ると、それを握りしめたまま右足に何度も何度も突き刺し始めた。

 

「ふふふふ。疫病神はッ・・・こうやってッ・・・罰を受けないとねッ・・・」

「やめて雷ちゃん!そんなことしちゃだめだよ!」

「しっかりして雷!正気に戻って!」

 

 ナイフを振り下ろそうとする右腕を響が抑え、未来が正面から体をゆすって訴えかける。結局、この状態は救急車が到着するまで続いた。

 

○○○

 

 雷が手術を受けている間にこの事件は傷害事件として扱われ、警察沙汰となった。雷の凶行を見た響と未来の二人は、彼女のことを警察から知らされることになる。

 家族が死んで親戚に引き取られ、そこでひどい虐待に遭ってまともな食事がとれなくなったこと。後に祖父母にに引き取られ、食生活こそ治った物の虐待の影響で自分が疫病神だと思い込み、何か身の回りで悪いことが起きたら自分のせいだと思い込んで自傷行為を始めること。そんなことに周りを巻き込まないように自殺未遂を繰り返してることが告げられる。手術は無事終了し、二人はすぐに雷のもとに駆け込む。そんな二人の姿を雷を認めると、申し訳なさそうにして口を開く。

 

「ごめんね。怖い思いさせちゃって、・・・私とはもう関わら「駄目!」「嫌だよ!」・・・え?」

 

 雷の言葉を遮って、響と未来は叫ぶ。

 

「雷ちゃんのおかげで私は前向きになれた!だから、今度は私が雷ちゃんを疫病神じゃなくしてみせる!」

「辛いこととか嫌なことがあったら私達が雷を支えるから!だから自分の体をもっと大切にして!」

「・・・そんなこと・・・言わないでくれよ・・・。そんなこと言われたら私、・・・一緒にいたくなっちゃうじゃないかぁ・・・」

 

 雷はシーツを握りしめて俯き、目から流れ出る雫と一緒に言葉をこぼす。響と未来は優しく彼女を抱きしめる、胸元で赤いペンダントが夕日を反射してキラリと輝いた。

 

 結局、中学を卒業しても雷の自傷癖や自殺衝動が治ることはなかったが、雷、響、未来の三人の関係が壊れることはなく、未来の進学する高校に一緒に行くことになった。

 私立リディアン音楽院。この場所から、さらなる物語が幕を開ける。




次回からは無印編です。
本編を見ながら書くのは初めてなので拙いかと思いますが頑張ります!あと、そのおかげで週刊投稿になりますが、出来るだけ早く投稿できるようにしますのでお許しを。

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