戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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作曲してみようと思ったけどパソコンのスペックは足りないしお金の足りない。
まあ今年中に何とかするつもりだけど。


否定する重圧と定めた決意

 ミハルの話を聞いた響達は絶句する。

 そしてその後に感じたのは、圧倒的な覚悟の違い、意志の重さだった。

 ただ漠然と世界を平和にしたい、争いを無くしたいと考えていた響達にとって、例え命を奪うことになろうとも悲しむ人間を一人でも少なくしたいという意志と覚悟はあまりに重かった。

 ミハルは道路に突き刺していた黄金の長剣を引き抜き、呆然としている響の首元に突きつける。それは最後通告を意味していた。

 

「あなた達にも願いや意志があることは理解しています。わたし達は世界に対して命を懸けることで目的を果たそうとしています。立花響さん……あなたに……あなた達に、わたし達の覚悟を折ることが出来るだけの“何か”はありますかッ?!」

「ッ……!」

 

 響は答えない。いや、答えることが出来ない。

 今の世界にとってみれば彼女達――ファイの面々のやっていることは限りなく悪だろう。しかし、それは上に立つものの視線だ。事実として、強国の周囲にある力の無い国や、それにすがらなければ生きていけない国からは彼女たちを英雄視しているところもある。

 ファイは別の視点から見れば善の存在だった。

 つまり、彼女達は自分たちの命だけでなく、多くの人々の願いも背負って立っているという事だ。

 その見えない願いの圧に響は押しつぶされ、返答することが出来なかった。

 ミハルが落胆の表情を浮かべる。

 

「ハァ――失望しましたよ、立花響さん。所詮あなたも、強者だったという訳ですね……」

「小日向ッ!」

「はいッ!」

 

        『――閃光――』

 

 ミハルが響の喉笛を切り裂こうとした瞬間だった。

 動揺と驚愕から避ける動作を一切見せない響を守るため、事前の作戦通りに未来が響には当たらないようにミハルを光でのみ込みにかかる。

 展開された扇から放たれる破邪の光が直撃するその瞬間だった。

 ――光あれ!

 ミハルの叫びと共に攻撃を止め、眼前に構えられた黄金の長剣、クラウ・ソラスのアームドギアが光を発した神獣鏡の閃光を文字通りかき消した。

 大通りを光が覆いつくす。

 咄嗟に未来たちは腕で目を覆った。

 神獣鏡の輝きは物理的な――それでも相当の強度のある――障壁でもない限り防ぐことはほぼ不可能と言われている。特に対聖遺物に関しては無敵といってもいい。

 それを彼女は、聖遺物由来の力で真っ向から打ち消したのだった。

 この事実に翼と未来は思わず目を疑った。

 

「どういう事だッ?!」

「えッ?!」

「クラウ・ソラスが放つのは奇跡の光。傷を癒し、呪いを打ち消し、魂を見出す光です。同種の光をぶつけあえば相殺されるのは当然でしょう? さらに言ってしまえば、わたしは打ち消す程度の出力しか出していませんので」

「まだ上があるという事なの……」

「ならば、剣でもって相対するまでッ! 小日向ッ! 立花は任せたッ!」

「はいッ!」

 

 翼が脚部のスラスターでミハルとの距離を一気に詰める。

 そしてその推力を利用してミハルに一撃を叩きこもうとするが、推進音で翼の位置を認識し、空気の流れをギアから揺蕩っている金の糸で把握した彼女に容易く受け止められてしまう。

 しかし、流石に威力を全て受け止めきることは出来なかったようで、吹き飛ばされて後ろによろめいてしまった。

 

「響ッ!」

「未来……」

「ッ……癪に障りますが流石の威力ですね、風鳴。タイプが違うので比べるのもアレですが、イギリスの二人、暁切歌さんと月読調さんとは重さが違う……」

 

 その隙を見て未来は響を抱き上げて間合いを取るが、響からは覇気が感じられない。

 彼女はミハルとの問答で覚悟の違いを見せつけられ、自分の正義に迷いが生まれていた。

 何時もの響であればそれでもと奮起することが出来ただろうが、神々との決別で誓ったことを未だ守れていないという自責の念が彼女を押しつぶしている。

 未来も同じ思いに駆られていたが、頭を振って響を離脱させることを最優先にした。そして同時に、雷が響に対して覚悟がいると言っていたのはこのことだったのかと理解した。

 一方、鍔迫り合いを続ける翼とミハルの実力は拮抗していた。

 ミハルは目が見えないがゆえに、この一合に全力を注いでいた。それを察知した翼は剣を引き、右に避けて彼女の体勢を崩しにかかる。

 しかし、バランスを崩して前に倒れかけるミハルだったが、野性的な反応で翼の右脇腹に左手で握撃をしかけた。

 金色の腕部アーマーから指に沿って光の剣が伸び、翼の腹部を抉りにかかる。

 

        『――ミズキ――』

 

 しかし翼も歴戦の防人、ただでやられるわけにはいかない。

 逆羅刹の応用で右側の脚部スラスターを伸長し、骨を斬るために肉を差し出した。

 それを察知したのだろう、ミハルの眉がピクリとわずかに動いたが、そのまま一歩踏み出し、その踏み込みの勢いも乗せて一撃を見舞う。

 指から伸びる光の刃がスラスターをズタズタに引き裂き、完全に破壊した。だが、翼にとってそれは想定内。これで怯み、動きは一瞬とはいえ止まるはずだ。無力化のため、骨を断とうと上から刃を振り下ろした。

 しかし――。

 

「なッ?!」

「片腹貰いますッ!」

「がッ」

 

 彼女は握りつぶした手でそのまま翼の脇腹を殴りぬいた。

 目が見えないがゆえにミハルは野生動物のようにがむしゃらな戦い方をする。達人同士の戦い方をしてきた翼には予想することが出来ない、完全に想定外の出来事だった。

 ……いや、調と切歌の情報から想定はしていたのだろう。しかし、頭でわかっているのと体が動くのは別だ。翼は、ミハルが倒れかけながらも攻撃を仕掛けてくるという普通では考えられない行動に対処するため、咄嗟に普段と同じように行動してしまった。

 だからこそ、わき腹に痛烈な一撃を見舞われてしまった。

 軽くない衝撃に表情を歪ませ、膝をつきそうになるが、歯を食いしばって足に力を入れてこらえる。

 

「ぐぅッ!」

「風鳴のような達人には考えられない戦い方でしょう?」

「くッ……まるで野獣のような戦闘法だなッ……」

「ええ、目が見えませんので。手当たり次第に攻撃するしかないのです」

「ところでですが、あなた達の任務って何ですか?」

「なに?」

「わたしの白銀の短剣、何処に行ったのでしょう?」

 

 そう言われて翼は周囲を目だけで見渡すが、ミハルのもう一つの武器である浮遊し、彼女の意思のままに動くフラガラッハのアームドギア、白銀の短剣がどこにも見当たらない。

 少し前までは彼女の腕の延長上に浮遊していたはずだ。しかし、今は影も形も見当たらない。

 少なくとも、ミハルと未来の光がぶつかり合う直前まではあったはずだ。

 ――ぶつかり合う直前まで?

 その事実を理解した時、翼は驚愕した。

 

「……まさかッ?!」

「はい、そのまさかです」

「立花ッ! 小日向ッ!」

「今頃行ってももう遅いですよ? すでに血の海が広がっていますので」

 

 くいと左手を動かせば、血によって紅く染まった白銀の短剣が勢いよく飛んできてミハルの腕の延長上で急停止した。剣の状態を見れば、すでに何があったのかを想像するに難くない。

 彼女は空中で剣を振り、まとわりついた血を払った。

 

「この剣はわたしの思考とリンクしていますので、向こうに誰がいて、何があったのかは完全に把握しています。報告しておきますと、完全に無関係な人を除いたすべての強者の首を刎ねました」

「首を……刎ねただと?」

「はい、首を。……やはり革命といえば首切りでしょう? これからこの国は国民のための国になるんです。少々時間はかかるでしょうが……この国を変えたいと熱意を持っていたがゆえに、投獄された政治家は意外といますからね」

 

 そういうとミハルは突然路地裏のほうを向いた。

 ――少々失礼します。

 そう言って路地裏の暗闇の中に入っていくと、そこには足を怪我した少年が倒れていた。恐らく翼たちの戦闘が気になって近づいたはいいものの、見入ってしまって足元がおろそかになり、足の裏を割れた瓶か何かで切ってしまったのだろう。

 この煉獄で足の裏を怪我するという事は、破傷風で死ぬこととほぼ同義といっていい。

 痛みと絶望に泣きじゃくる少年の前に、泣き声を聞いたミハルは微笑みを浮かべ、両膝をついて身をかがめた。

 

「何をする気だッ!」

「静かにしてもらってもいいでしょうか?」

 

 翼は少年に何かしようとしているミハルを引き留めにかかるが、真剣な表情をした彼女に一周されてしまう。

 翼に対する底冷えするような声ではなく、安心させるような温かい声をかけ、少年の頭を撫でる。汚れており、臭いもかなりきついはずなのだが、ミハルは眉一つ動かさない。

 

「大丈夫です。泣かないでください」

「お姉ちゃん……でも……」

「大丈夫ですよ。お姉ちゃんは魔法使いですので。こんな怪我ぐらいちょちょいのちょいです。少し目を瞑っててもらえますか?」

「う、うん」

「目は瞑りましたか? では――光あれ」

 

 少年が目を瞑ったのを音で確認すると、長剣から光が放たれた。

 放たれた光は傷口を優しく照らし、瞬く間にふさいでしまった。

 

「もう開けても大丈夫ですよ」

「え……わっ! 怪我が治ってる!」

「はい! 怪我は直しておきました。これで死んじゃうようなことはないですよ」

「ありがとう! 魔法使いのお姉ちゃん!」

「いえいえ、感謝されるようなものではないですよ。ところでですが、あなたのまわりに信頼できる大人はいますか?」

「うん! 一緒に暮らしてる兄ちゃんたちがいるよ! みんなで協力して生きてるんだ!」

「そうですか、それはよかった。では、そのお兄ちゃんたちにこう伝えてください。“ファイは来た。この国は変わる”って」

「分かった! ありがとうね!」

「はい」

 

 少年は大きく手を振って路地裏の闇へと消えていった。

 ミハルは小さく手を振ってそれを聞き届けた後、ゆっくりと立ち上がって翼の方に振り向いた。

 翼は切っ先をミハルに向けるが、彼女はそれを気にもしていない。

 

「では、わたしはこれで。もうやることはやりましたし、帰らせてもらいますね。それに、今頃はフランスにエルナが向かっている事でしょうし」

「待てッ!」

「待てと言われて待つわけないでしょう?――光あれ」

 

 光が視界を覆いつくし、それが消えるころにはすでにミハルの姿はそこに無かった。

 翼はギリギリと剣の柄を強く握る。

 煉獄のようなこの国を革命したファイと、守ろうとしたS.O.N.G.。この国に足を踏み入れて、翼は何方が正しいのか全く分からなくなってしまった。

 しかし、たとえ迷っていようとも、何としてでもなさねばならない事が生まれた。

 

「風鳴の犯した罪であるミハルを救う……。これだけは、何としてでもなさねばならない!」

 

 翼は決意を新たにする。

 

「その前に立花を何とかせねばな……」

 

 そんな時、本部から通信が入ってきた。

 ファイによる次のターゲットは――フランスだ。




ミハルの技は全て“あの日”に死んでしまったお友達の名前です。

ミズキ
指先に沿って光の刃を発生させ、手刀や握撃の威力を向上させる。汎用性が高く、攻撃力を上げながら隙を潰すことが出来る。


やっぱり曇らされる響ちゃん。翼さんは本当に強くなりました。雷ちゃんには響の尻を叩いてもらいましょう。
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