戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
件の『ミノムシの刑』を解かれた未来は、雷と響に連れられて二課内の通路をキョロキョロとあたりを見ながら歩いていく。
「うわぁ~。学校の真下にこんなシェルターや地下基地が・・・」
「ふふっ。すごいでしょ」
「は!翼さ~ん!」
自分の物でもないのになぜか雷は得意げだ。すると突然、未来や一般の人にとっては雲の上の存在であるはずの翼の名前を叫びながら響が駆け出していった。その声に気づいた翼が答える。
「立花、そして轟か。そちらは確か・・・協力者の」
「こんにちは。小日向未来です」
「えっへん。私達の一番の親友です!」
「なんでそんな偉そうなの。確かに自慢の親友だけど」
翼に対して未来が頭を下げ、響が親友自慢をし、雷がそれにツッコミを入れながら自慢に便乗する。そんな三人を見て、翼が何故かダメな子を持つ母親のような顔をする。
「轟はともかく。立花はこういう性格故、いろいろと面倒をかけると思うが支えてやってほしい」
「いえ。響は残念な子ですし、雷もこう見えてあまりしっかりしていないので。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
「えぇ何?どうゆうことぉ?」
「そういうところなんだよねぇ・・・。ハァ、私も治したいんだけどなぁ・・・」
『残念な子』である響は二人の会話が理解できず、『あまりしっかりしていない子』の雷は話は理解できたが自分のしっかりしていない部分が治せていないことにため息をつき、緒川がよくわかっていない響に一言で説明する。
「響さんを介してお二人が意気投合しているということですよ」
「はぐらかされた気がする・・・」
響は頬を膨らませるが、実際その通りなのでだれも口を挟まない。そんな響を見て未来、雷、翼の順番に笑みがこぼれる。響が背中を掻く真似をしながら口を開く。
「でも未来と一緒にここにいるのは、なんかこそばゆいですよ」
「そう?私は未来に隠し事が無くなったからうれしいんだけど」
雷が包帯に巻かれた腕を組んで自分の意見を言い、翼が未来の現状を伝える。
「小日向は外部協力者として二課に異色登録させたのは、指令が手を回してくれた結果だ。それでも、不都合を強いるかもしれないが」
申し訳なさそうにする翼だったが、未来が何でもないように答えた。
「説明は聞きました。自分でも理解しているつもりです不都合だなんてそんな」
響が何かに気づいたように翼に質問する。
「そう言えば師匠は・・・」
「確かに弦十郎さんいませんね。何かあったんですか?」
「私達も探しているのだが・・・」
雷と響の質問に翼は首を振る。つまり、わかっていないのだ。
「あら、いいわね。ガールズトーク」
後ろから聞こえてきた了子の声に振り返り、緒川が困惑する。
「どこから突っ込めばいいのかわかりませんが、僕を無視しないでください」
そんな緒川の声は誰にも届くことなく、三人の興味は了子のほうへと向いてしまっていた。翼が緒川に同情のまなざしを向ける。
「了子さんもそいうの興味あるんですか?!」
「モチのロン!私の恋バナ百物語聞いたら夜眠れなくなるわよ~」
「まるで怪談みたいですね・・・」
「・・・それって、百回フられてるってことでは?」
雷の一言に興奮気味だった響が了子に何とも言えない視線を向け、了子は唇を尖らせて雷に文句を言う。どうも雷はフィーネとあった時から了子に抱いていた違和感を強めているらしく、バレない程度に軽く挑発しているのだ。
「ホントにあなたは、もう・・・」
「あははは・・・。スミマセン」
コホンと一度咳ばらいを入れ、話を再開する。
「遠い昔の話になるわね。こう見えて呆れちゃうくらい一途なんだから」
「「おぉ~!」」
「意外でした。櫻井女史は恋というより、研究一筋であると」
「昔の恋に引っ張られてると婚期を逃しますよ?・・・いたい!」
雷の頭に了子のチョップが炸裂し、三度話を再開した。
「私が聖遺物の研究を始めたのも、そもそも・・・」
「「うんうん、それで?!」」
響と未来は話に完全に食いつく。雷は了子の言葉に引っかかりを覚えるが、そこで話が中断された。そのことにさらに雷が違和感を抱く。
「ま、まぁ。私も忙しいから、ここで油を売ってられないわ」
「自分から割り込んできたくせに・・・うおわっ!」
「緒川さん?!」
口をはさんだ緒川の顔面に了子の裏拳が直撃し、へたり込んでしまう。翼がそんな緒川を残念なものを見るような目で見つめる。
「とにもかくにも、出来る女の条件はどれだけいい恋してるかに尽きる訳よ。ガールズたちも、いつかどこかでいい恋、なさいね。んじゃ、ばっはっはーい」
去っていく了子の後姿を見ながら響と未来は恋バナを聞きそびれたことを残念そうにしているが、雷は目をつむって上を向き、さっき感じた違和感を整理していく。
(うーん、何で恋バナに聖遺物が出てくるんだ?相手は研究者・・・珍しい研究をして注意を引くため?いや、過去に研究職同士での婚約はあれどそれほど聞かないし、選択肢として資産家なら別に聖遺物でなくてもいい・・・。もしかして・・・かつて聖遺物を持っていた人とか?!・・・ナイナイ。流石にそれはないよ私、いくら何でも紀元前に生きていた人に恋してるなんて『あり得ない』よ)
「雷、どうしたの?大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だよ!」
響が勇んでいてもうんともすんとも言わない雷を心配して未来が声をかけ、それに慌てて返事をする。何か一番大切なものを忘れている気がするが、気付くことが出来なかった。すでに了子の姿はそこにはない。
○○○
了子いや、フィーネが廊下を歩きながら、らしくないことをしたさっきのことを思い返す。
(・・・聡いあの子なら気付いたかしら?少なくとも計画の目的は知れたはず、あいつらの『言葉』を思考に組み込んでいればの話だけど)
雷に気づいてほしいのかほしくないのか自分でもよくわからないまま、一向に進んでいない轟理論の解析のために自身のラボへと戻っていった。
未来との件で完全に抜け落ちている雷へのキーワード