戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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無印編スタート!筆が乗って一話丸々やっちゃったぜ!
あとがきに雷ちゃんのプロフィール載せます。


無印編
轟き始める雷鳴


 私立リディアン音楽院高等科の入学式を終え、同じクラスとなったいつものように包帯まみれの雷と未来の二人は自身の机に座って、顔合わせの挨拶が始まるまで話し合っていた。話題は今ここにいない響のことだった。

 

「ところで未来、響はどこ行ったの?」

「響なら木に登って降りられなくなった子猫を助けに行ったわ」

「・・・クラス会が始まるまでに戻ってこれればいいけど・・・」

「大丈夫よ・・・たぶん・・・きっと・・・」

 

 雷の言葉に苦笑いを浮かべながら返事をする未来だったが、だんだんとその言葉尻が弱くなっていく。少し目をそらした未来だったが、雷の首の周りについた痣を見て彼女の目がスッと座る。さっきまでとは異なる平坦な口調で未来は雷に話しかける。

 

「ねぇ、雷。その首の周りの痣、何?」

「?!?!え、えっとこれはぁ・・・ね、寝てる間に携帯の充電コードがぁ、その、絡まっちゃって・・・」

「ソレ、縄の模様が見えるんだけど・・・」

「ウソぉ?!しっかりとタオルを挟んであとが残らないようにしたのに?!・・・あっ」

「雷ぁ・・・」

 

 未来が雷に詰め寄る。彼女は表情こそ笑っていたが、目は笑っていなかった。雷はいつもの自殺衝動が起きて縄で首を吊ろうとしたが、長さの調整を失敗し、呼吸が出来ずに暴れていたところを倒したはずの椅子の上に立つことが出来てしまったために今回も未遂で終わった。・・・もしも、生き残ってしまった時に響や未来に心配をかけないように縄目をつかないようにしているあたり、今までよりも進歩してると言えるのだが。

 

「雷。私、何時も言ってるよね?私も響も、雷がいなくなったら悲しむって」

「う、うん。だ、だから失敗した時のためにあとが残らないようにタオルを挟んで・・・」

「そういうこと言ってるんじゃないの!失敗した時とかそんなんじゃなくて、そもそもこんなことしないでよ!」

「ご、ごめん、なさい。で、でも私がいたら二人が不幸になっちゃうかもだし・・・」

 

 その言葉を聞いて未来はさらに雷に詰め寄る、灰色と黒色の前髪が触れ合うほどだ。緑色の未来の瞳が雷の金の瞳を見つめる。

 

「私達は一緒にいるっていう、あの日の約束は忘れちゃったの?!」

「忘れれるわけないよ!でも・・・だからこそ怖いんだ・・・。私が、私なんかが、こんな幸せでいいのかなって・・・」

 

 首にできた痣を撫でながら、雷は振り絞るかのように言葉をこぼす。未来が口を開こうとするが、先生が教室に入って来たことで話が中断される。しかし、小さく雷にだけ聞こえるように呟いた。

 

「寮に帰ったら響にこのこと、話すから」

 

 雷の体が小さくびくりと跳ね、未来に懇願するかのように小さく話しかける。かつて同じく雷が自殺しかけたときに響がその行為を目撃、その時の表情や泣き声が雷の頭の中でリフレインする。響は自分を前向きにしてくれた雷がそんなことをすることを未来以上に悲しむのだ。

 

「そ、それだけは勘弁して・・・。お願いだから・・・」

「ちゃんとした理由じゃなくて、死んで私たちから離れようとした雷が悪い」

「そんなぁ・・・」

 

 結局、響はこのクラス会に遅刻した。

 

○○○

 

 すでに寮への引っ越しを完了させていた雷は放課後、響と未来の部屋に呼び出されていた。部屋の真ん中で正座する雷に、目に涙をためた響がもう逃がさないと言うように抱きしめる。ついさっきまで響に思いっきり泣かれていたのだ。

 

「雷ぁ、自殺なんてしないでよぉ~」

「ゴメンって、もう二度としないから」

「その言葉、今回で五十二回目だよ・・・」

「うっ・・・。あっ、そうだ!翼さんの新作CD、明日発売なんだって?響が聞いたら私にも聞かせてよ」

「うん!分かった!」

「・・・逃げた」

 

 雷の発言に未来は逃げたと判断したが、響は明日の生きる理由を雷が見つけたと解釈して体をを離すと机の上に置かれていた雑誌を手に取って、二人に見えるように掲げる。

 

「やっぱカッコイイよね~。翼さんは」

「翼さんにあこがれて、リディアンに進学したんだもんね。大したものだわ」

「ホント、私と未来がつきっきりで勉強教えた甲斐があったよ」

「その節はどうも、ありがとうございました。・・・だけど、影すらお目に掛かれなかった」

 

 響が落ち込むが、当たり前だと言うように雷が応える。

 

「そりゃあ、トップアーティストなんだから、仕方がないよ」

 

 その言葉に響は少し考えるような顔をすると、胸の傷を眺める。あのライブの日、雷どころか未来にも話していない秘密が響にはあるのだ。

 その日、響と未来は雷がまたやらかさないように彼女を自分の寮室に返さず、挟むようにして眠った。

 

○○○

 

 三人は食堂で集まって、そろって食事をとっていた。響は大盛りのご飯を中心に男の目線から見ても多めといえる量を、未来は普通、そして雷は女の目から見ても少ない量だった。だいたい未来の六分の一程度の量しか食べていない。

 雷はかつて、一週間に一度、しかも仏さんに出すような量の食事を虐待によって二年間続けさせられ、固形物が食べれなくなっていたのだ。それを現在の育て親である祖父母が何とか改善させようとした努力の結果、中学卒業間際にようやく固形物だけの食事が出来る様になったのだ。

 

 スマホで昨日のニュースを見ている未来がノイズ関連の話題を読み上げる。

 

「自衛隊、特異災害対策機動部による避難誘導は完了しており、被害は最小限に抑えられた。だって」

 

 未来のスマホを雷は覗き込むと、発生現場の所在が書かれたところをタップする。

 

「ここからそんなに離れてないね」

「うん」

 

 すると食堂が突然ざわめき始める。入り口を向いて座っていた雷と未来は翼の姿を確認し、大の翼ファンの響はガタッと立ち上がると何故か茶碗と箸を持ったまま振り返る。憧れのトップアーティストを前に、行動したはいいものの緊張のあまりガタガタと震え始め、橋が茶碗とぶつかってカチャカチャと音が鳴る。すると突然、翼が自分の口元を指さす。その意味に気づいた雷は小声で響に声をかける。

 

「響!口元、お弁当ついてる!」

「へっ?」

 

○○○

 

 放課後、未来はノートを取り、雷はスマホで新作の小説情報を確認し、響は昼食の時のことで落ち込むという三者三様の姿を見せていた。机にへばりつくように落ち込んでいた響が口を開く。

 

「あぁ~もう駄目だぁ~。翼さんに完璧おかしな子だと思われたぁ~」

「いつものことでは?」

「間違ってないんだからいいんじゃない?」

「未来はともかく、雷に言われるのだけは釈然としない・・・」

「言えてる」

 

 響への返事で雷が自爆する。雷はむっとした顔をするが冗談だと分かっているので怒りはしない、まぁ、冗談だと思ってるのは雷だけなのだが。

 ノートをとっている未来に響が話しかける。

「・・・それぇ、もう少しかかりそう?」

「うん。・・・ん?そっか、今日は翼さんのCDの発売日だったね。でも、今時CD?」

「初回特典の充実度が違うんだよ」

「そう!わかってるね雷くん!」

「だとしたら、売り切れちゃうんじゃない?」

 

 未来の言葉に響ががたりと立ち上がる。

 

「雷!一緒に行こう!」

「ゴメン、私今日発売の本買いに行くから、途中までしか一緒に行けない」

「そっかぁ~、帰ってきたら一緒に聞こうね!」

「うん。じゃあ未来、また夜にね」

「二人とも、気を付けてね」

 

 雷と響はモノレールに乗って同じ駅に降りると、途中まで翼談議で盛り上がり、雷は本屋へ、響はCD屋に足を運ぶために分かれる。

 雷は手早く本を購入すると、帰って三人でCDを聞くために寮に戻ろうとする。その時、黒い粉のようなものが宙を舞った。炭素だ、つまり、ノイズが出た。普段なら死ねるので大歓迎だが、昨日二人に絞られ、帰ってから一緒に聞く約束をしていたのですぐにシェルターに向かうために走り出すが、近くで女の子の泣く声が聞こえてきた。急いで探し出し、手をつないで走る。

 

「大丈夫!お姉ちゃんがついてる!」

「・・・うん!」

 

 根拠のない大丈夫だったが、何とか泣き止んでくれたようだ。しかし、女の子を探している間にシェルターから遠ざかってしまったので、体力の続く限りノイズから逃げ回る。結局、気づいたころには周囲は暗くなっていて、虐待の影響で限りなくゼロに近かった体力は底をつき、女の子もろとも地面に崩れ落ちる。周囲はすでにノイズに囲まれていた。

 

「私達、しんじゃうのかなぁ?」

「・・・ごめんね。私、疫病神だからさ・・・。でも、こんな私だけど、君だけは、何とか守ってみせるよ」

 

 女の子をノイズから守るために、ふらふらになりながら立ち上がる。時間稼ぎにもならないだろうが守ってみせるという気概が雷の中に生まれた。その瞬間、雷の胸の中に歌が流れた。彼女はそれを、無意識に口ずさむ。

 

「Voltaters kelaunus Tron(ヴォルターズ ケラウノス トローン)」

 

 それを唱えた瞬間、家族の思い出の詰まった赤いペンダントが輝き始め、金色の光で雷の体を包み込んだ。

 

○○○

 

 一方、特異災害対策機動部二課と呼ばれるところでは、二つのノイズとは異なる高質量エネルギを検知していた。

 

「波形を照合!急いで!」

 

 シンフォギアシステムを開発した天才、櫻井了子がオペレーターに声をかける。

 

「まさかこれって、アウフヴァッヘン波形?!」

 

 二つのうちの一つが解析され、聖遺物名がモニターに表示される。

 

「ガングニールだとぉ?!もう一つの聖遺物の解析はまだか!」

 

 二課の指令、風鳴弦十郎が驚きの声を上げ、翼が驚愕の表情を浮かべる。しかし、もう一つの聖遺物が解析できない。それを了子が天才的なひらめきから別のアプローチで一から解析を開始する。

 そして、解析した聖遺物に息が詰まる。何故ならそれは、存在するはずのない聖遺物だったからだ。異変に気付いた弦十郎は彼女に声をかける。

 

「どうした?!了子君?!」

「・・・解析結果、出たわ・・・」

 

 モニターに聖遺物名が表示され、二課全体がどよめく。それは稀代の天才、櫻井了子がシンフォギアシステムとして開発不可能と断じた聖遺物だったからだ。しかし、波形が確認されているということはそれが機能していることを意味する。弦十郎はガングニールをも超える驚きに声を震わせながら言葉を発する。

 

「・・・ケラウノス・・・だと?!」




名前                   性別
・轟 雷(トドロキ アズマ)         女

プロフィール
・年齢 15歳(無印時点で)
・誕生日 6月5日
・血液型 AB型
・身長 155cm
・BWH 86/52/88
・趣味 自傷・自殺(結果的には未遂)
・好物 胃腸に優しいもの

メインカラー 
・グレー

容姿
・グレーの長髪に金の瞳をした少女。度重なる自傷と自殺未遂によって、体中を包帯でぐるぐる巻きにしている。時折ギブスや松葉杖姿になることもある。

精神状態
・非常に不安定。叔父や叔母からの度重なる虐待によって自身の存在は不要と感じており、自傷や自殺を繰り返している。しかし、自殺はすべて未遂に終わっている。

家庭
・父親、母親、弟(一家心中?)→叔父、叔母(虐待の発覚により警察へ)→祖父、祖母(現在)

友人関係
・響、未来(中学からの親友)
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