戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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XDモードでの戦闘です!


勝機を掴め

 XDモードへと変化し、純白のギアを纏った四人が飛翔する姿が臨時二課でも確認されていた。

 

「「お姉ちゃんたちカッコイイ!」」

「やっぱ、あたしらがついていないとダメだな!」

「助け助けられてこそ。ナイスです!」

「私達も一緒に戦ってるんだ!」

 

 泣き止み、目を赤くはらした未来が確信するように静かに頷いた。

 

○○○

 

 白き四人の戦姫が空を舞い、地上のフィーネに対して戦闘態勢をとる。だんだんと太陽が昇ってくる。再び立ち上がった四人を朝日が祝福しているかのようだ

 

「みんなの歌声がくれたギアが、私に負けない力を与えてくれる。雷や翼さん、クリスちゃんにもう一度立ち上がる力を与えてくれる。歌は戦う力だけじゃない……命なんだ!」

「高レベルのフォニックゲイン……こいつは二年前の意趣返し?」

『んなこたどうでもいいんだよ!』

 

 クリスが口を動かすことなく、直接脳内に言葉を発する。限定解除されたギアの機能だ。

 

「念話までも……。限定解除されたギアを纏って、すっかりその気か!」

 

 ソロモンの杖から緑色の光線が放たれ、着弾地点からノイズが出現する。クリスが念話で叫んだ。

 

『いい加減芸が乏しいんだよ!』

『世界に尽きぬノイズの災禍は、全てお前の仕業なのか?!』

 

 翼の問いにフィーネも念話で回答する。

 

『ノイズとは。バラルの呪詛にて、相互理解を失った人類が同じ人類のみを殺戮するために作り上げた自律兵器』

『人が、人を殺すために……?!』

『自律兵器とは言え、、何でこんな節操なしに……』

 

 人と手をつなぐことを良しとする響が困惑し、学術的興味から自律兵器とは言え、見境なく現れては人間を攻撃するノイズに雷は違和感を覚える。その疑問にフィーネは答えた。

 

『バビロニアの宝物庫は、扉が開け放たれたままでな。そこからまろび出る十年一度の偶然を、ワタシは必然と変え、純粋に力として使役しているだけの事……』

『またわけわかんねぇことを……!』

 

 召喚されたノイズが一斉に装者たちに攻撃を開始し、それを四人は難なく回避する。その隙に杖のエネルギを限界までチャージしたフィーネが頭上にそれを突き上げ、緑色の輝きの中、叫んだ。

 

「怖じろッ!」

「ッ?!」

 

 気付いたときにはすでに遅かった。さっきとは比べ物にならないほどの輝きを持った光線が発射され、空中で拡散、町中に降り注いだ光線から無数のノイズが召喚される。大型中型関係なく、もはやもともと住んでいた人口よりもノイズの数のほうが多いほどだ。

 フィーネがほくそえみ、四人が背中合わせになって周囲を見渡す。

 

「あっちこちから……!」

「よっしゃぁ!どいつもこいつもまとめてぶちのめしてくれる!」

「翼さん……。私、翼さんに……」

 

 真っ先にクリスが飛び出し、それを見て翼が頼もしそうに笑う。響が申し訳なさそうにしている。暴走状態とは言え、攻撃してしまったのだ、そのことを謝りたいのだろう。響のそんな顔に対して、翼は優しく言う。

 

「どうでもいいことだ」

「へ?」

「立花は、私の呼びかけに答えてくれた。自分から戻ってくれた。自分の強さに、胸を張れ」

「翼さん……」

「それよりもだ、轟」

「私?」

 

 死んでいた間の話だったので全くついていくことが出来ず、その場にとどまっていた雷に翼が話を振る。

 

「あれほどの重傷を負って平気か?問題があったならすぐに言ってくれ」

「気を失ってて、痛みはなかったので大丈夫です!なので何も問題はありません!」

「そうか、頼むぞ」

 

 実際には重症程度では済まないのだが、無事を確認した翼は二人に語り掛ける。

 

「一緒に戦うぞ。立花、轟」

「「はい!」」

 

 翼と共に飛び立とうとする響のガントレットを雷がそっとつまむ。それに気づいた響が振り返って聞いた。誰かと二人で話がしたいときの雷の癖だからだ。その様子を察した翼が動きを止め、少しだけ距離を取った。

 

「どうしたの雷?」

「ご、ゴメンね。あんまり覚えてないけど、迷惑かけちゃって、怖かった……よね?」

 

 『雷帝顕現』を発動している間、強大な負の感情で自我を失っているため記憶はほとんど残っていないのだが、翼の言葉でどのような状況になっていたかを察し、その様子を見て最も心配したであろう響に謝罪する。

 さっきまでの様子とは打って変わってびくびくと震えている様子だが、響は雷を優しく抱きしめる。

 

「大丈夫。びっくりしたけど、家族のために戦っているのは分かったから……」

「あり、がと……」

「帰ったら未来にも言ってあげてね、私以上に心配したと思うから」

「怒ってないかなぁ……?」

「無事だと知って喜ぶんじゃないかな?」

 

 響は抱きしめた雷の灰色の髪を優しく撫で、それに安心したのか顔を赤くしながら静かに肩に顔をうずめる。少したって翼が咳払いをした。

 

「んん。二人とも、そう言うのは家に帰ってからやってくれ」

「家ならいいのかよ!」

 

 先に行っていたクリスが大声でツッコミを入れ、それに二人は苦笑いを浮かべる。

 

「じゃあ、行こっか」

「うん、行こう」

 

 町中に存在するノイズを殲滅するために光の尾を引いて空をかける。最初に装者の中で最速を誇るケラウノスのギアを纏った雷が稲妻を纏って先行する。

 

『でいやあぁッ!』

 

 左腕を前に突きだして構えてユニットから放出された電撃を球体状に構築し、雷刃抜拳の応用で加速させた右手でそれを殴りぬくことで射出。

 

      『弾雷牙檄』

 

サイズを問わず、無数のノイズを焼き払いながら一直線に突き進んでいく。もう一度ユニットから稲妻が球体に発射され、臨界を迎えたエネルギーが暴走し爆発、内部から電撃が拡散してノイズを巻き込んだ。

 響がバンカーを起こし、大型ノイズを一直線に貫いていく。撃破されたノイズに巻き込まれて小型ノイズが誘爆した。

 クリスはアームドギアをまるで乗り物のように変形させ、ビームを拡散照射して空中に存在する航空型ノイズを撃墜していく。

 

      『MEGA DETH PARTY』

 

 腰部装甲から放たれたホーミングレーザーが逃げまどうノイズを貫通し、さらに追撃をかける。

 

『やっさいもっさいッ!』

『すごい!乱れ撃ち!』

『全部狙い撃ってんだぁ!』

『ホントぉ?』

『なんで嘘つかなきゃなんねえんだよ!』

 

 響と雷のボケにクリスがツッコミを入れ、自分も負けていられないと響が両腕のバンカーを起動させる。

 

『だったら、乱れ撃ちだぁッ!』

 

 バンカーから放たれる衝撃波が地上にいるノイズの群れを乱れ撃って粉砕する。

 翼は大型航空ノイズを高度で上回り、剣を大剣に変形させてエネルギーを貯める。

 

      『蒼ノ一閃』

 

 通常状態で放つソレとはレベルの違う速度と威力で大型ノイズの一体ではとどまらず、その後ろにいたもう一体の大型ノイズをも貫通した。

 雷の稲妻が焼き払い、響の拳が貫き、翼の剣が切り裂き、クリスのビーム撃ち抜いて町中に存在したノイズを殲滅する。

 土煙の届かぬ空中で四人は臨戦態勢のまま、背中合わせで油断なく構える。

 

「どんだけ出ようが、今更ノイズ!」

「ッ?!」

 

 異変に気付いた翼がリディアンのほうを向く。そこには、ソロモンの杖を自らの腹に突き立てようとしているフィーネの姿があった。

 彼女は不敵に笑って杖で腹を貫くと、ネフシュタンがフィーネの体だと杖を認識したために同化していく。杖を自由に思考でコントロールする力を得たフィーネは生き残ったノイズ全てを自らのもとに集め、さらにノイズを生み出して異形のバケモノへと変質していった。

 

「ノイズに……取り込まれて……?!」

「そうじゃねえ、あいつがノイズを取り込んでんだ!」

「ネフシュタンの特性で杖を掌握したのか!」

 

 異形の塊となったフィーネの一部が伸び、四人に襲い掛かる。それを回避した瞬間、フィーネが叫んだ。

 

「来たれ!デュランダル!」

 

 異形の一部がカ・ディンギル内に侵入し、エネルギー炉心となっていたデュランダルを取り込む。無限のエネルギーを吸収したフィーネの姿は肉塊のような姿から竜の姿へと変化し、頭部を思わせる部位からレーザーを照射した刹那、大爆発が発生した。強烈な爆風に防御姿勢をとる。

 

「ッ?!……町が!」

 

 目を開けた瞬間、焼き払われた町の姿が飛び込んでくる。背後から声が響いた。

 

「逆さ鱗に触れたのだ……。相応の覚悟は出来ておろうな?」

 

 竜の胸部に当たるところにデュランダルを持ったフィーネが笑い、再び頭部から、今度は装者たちに向かってレーザーが放たれる。

 

「ぐぅッ……!」

 

 回避には成功するも、あまりの熱量と威力に吹き飛ばされてしまう。クリスは即座にアームドギアを展開してバレルロールすることで熱線の勢いをそらし、フィーネに対してビームを発射。しかし、シャッターのようなものでソレを防ぐと翼状の部分からホーミングレーザーを発射し、回避を試みるクリスに直撃する。

 

「はあぁッ!」

 

      『蒼ノ一閃』

 

 大型ノイズを瞬殺した翼の一閃も一部を損傷させるだけに留まり、ネフシュタンの再生能力が難なく損傷を再生させた。

 

「「でやぁぁッ!」」

 

 雷の電撃も、響の拳も大したダメージにならない。あざ笑うかのようにフィーネが念話で言い放つ。

 

『いくら限定解除されたギアであっても、所詮は聖遺物のかけらから作られた玩具!完全聖遺物に対抗できるなどと思うてくれるな』

 

 雷がフィーネの念話を聞いてハッとした表情を浮かべ、もう一度悩むようにした後、意を決して口を開いた。

 

「一つだけ策があります。確率の低い賭けですが……やりますか?」

「乗った!」

「しかし、その為には……」

「?……えっと、やってみます!」

 

 如何やら同じ策を考えていたようだ。クリスが同意し、翼が響のほうを向いて不安個所を言外に挙げた。当の響はよくわかっていないようだったが、想いを向けられていると知って覚悟を決める。

 フィーネの放つ熱線を避けながら雷と翼、クリスの三人が肉薄する。

 

「私と轟、雪音が露を払う!」

「手加減なしだぜ?!」

「全力でお願いします!」

「分かっている!」

 

 クリスを先行し、翼が手に持つ大剣をさらに大型化させ、雷が全身のユニットを展開してエネルギーをチャージしていく。

 

「はぁッ!」

 

      『蒼ノ一閃 滅破』

 

 翼の渾身の一撃がシャッターを破壊し、再生までの間を縫ってクリスが内部へと侵入する。

 内部でレーザーをばら撒き、内部が煙で充満する。煙を排出するためにフィーネがシャッターを開けた瞬間、視界に稲妻を纏った雷が飛び込んできた。

 

「エイヤアァァッ!」

 

      『雷竜降咢撃』

 

 跳び蹴りを放つ雷の背を追うように稲妻の竜がその咢を開き、デュランダルを持つフィーネの右半身を彼女が展開したシールドごと食い破る。蹴りの衝撃によってデュランダルがフィーネの手元から離れ、空中へと身を躍らせた。

 

「そいつが切り札だ!勝機をこぼすな!掴み取れ!」

 

 足りない飛距離はクリスが拳銃で弾き上げる。

 

「ちょっせぇ!」

 

 覚悟を決めた響が、ここにいるすべての思いと共に完全聖遺物、デュランダルをその手に掴み取った。




『弾雷牙檄』

 何方かの腕を突き出して球体状の稲妻を構築し、反対の腕を『雷刃抜拳』の応用で加速させ、殴って飛ばす技。XDモード状態とは言え無数のノイズを焼き払うほどの火力を持つ。
 さらに追加で稲妻を放つことでエネルギーを臨界させ、球体を中心に電撃を炸裂させることも可能。
 イメージモデルは『ウルトラマンタイガ』より、ウルトラマンタイタスの技『プラニウムバスター』及び『レッキングバスター』

『雷竜降咢撃』

 全ユニットを展開して使う現状においてのケラウノス最強の技。主に飛び蹴りとして放つが拳での使用も可能。全身のユニットから生成される稲妻を一か所に集め、竜の形に変化させて攻撃する。
 雷竜の体が持つローレンツ力によって雷を加速させ、稲妻を纏った神速の一撃が直撃すると同時に竜の咢が攻撃した場所の周囲を焼き噛み千切る。
 イメージモデルは竜の部分が『鬼滅の刃』より、水の呼吸から『拾ノ型 生生流転』。蹴りの部分が『仮面ライダーストロンガー』より、『ストロンガー電キック』

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