戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
雷の包帯はデフォルトなので描写されません。無い時は描写しますが。
頭脳派転じて単純明快
雷雨の中、無数の航空型ノイズの襲撃に遭いながら装甲列車が疾走する。
搭載された機関砲で攻撃を開始するがノイズの持つ位相差障壁によって大したダメージを与えることが出来ず、逆に火器管制を担当していた乗組員が攻撃を喰らい、その衝撃で爆発が発生した。
アラートが鳴り響く中、爆発の衝撃によって完全聖遺物『ソロモンの杖』の護衛を担当していた二課の一人、友里が転倒してしまう。
「うわっ?!」
「大丈夫ですか?!」
ソロモンの杖を守るためのケースを抱えながら米国の研究機関から出向してきた科学者、ウェル博士が声をかける。
友里は立ち上がり言った。
「平気です!それよりウェル博士はもっと前方の車両に避難してください!」
列車の連結部を繋ぐ扉が開き、私服姿の雷に響、クリスが駆け込む。
「大変です!すごい数のノイズが追ってきます!」
「連中、明らかにこっちを獲物と定めていやがる。まるで、何物かに操られてるみたいだ」
「やっぱりそれが狙いなのかな?だんだん爆発音が近づいてきてるし……」
雷がウェルの抱えるケースを指さしながら耳を澄ませて言う。
ノイズの攻撃によって発生する爆発音が杖に向かってきているのだ。
「急ぎましょう!」
友里の声で全員が行動を再開した。
風雨に打たれながら前方の車両に移っている最中、二課から通信が入る。
「はい、はい。多数のノイズに交じって移動する反応パターン?」
「三か月前、世界中に衝撃を与えたルナアタックを契機に日本政府より開示された櫻井理論。そのほとんどが、まだ謎に包まれたままとなっていますが、回収されたこのアークセプター、『ソロモンの杖』を解析し、世界を脅かす認定特異災害ノイズ対抗しうる新たな可能性を模索することが出来れば……」
轟理論はデータそのものが存在せず、成功例がケラウノスたった一つだけというのもあって公開されることはなかった。
クリスはその場に立ち止まり、拳を震わせながら杖の危険性をウェルに忠告する。杖を起動させ、その力を、脅威を知る者として。
「そいつは……ソロモンの杖は……簡単に扱っていいもんじゃねえよ」
「クリスちゃん……」
「クリス……」
「最も、あたしにとやかく言える資格はねえんだけどな……」
顔を背けたクリスの両手を雷と響の二人が掴む。
唐突なことにクリスは動揺する。
「わ、わぁっ馬鹿ども!お前らこんな時に……!」
「大丈夫だよ」
「私達もいるからね!」
「お前らホントの馬鹿……」
そっぽを向いたクリスの顔がかあっと紅くなる。
「了解しました。迎え撃ちます!」
本部と連絡を取っていた友里が通信機をしまい、拳銃を懐から取り出して弾を確認した。
その様子を見てクリスが意気込む。
「出番なんだよな?」
友里が頷くことでそれに答えた瞬間、天井に複数のノイズが突き刺さる。
ウェルが腰を抜かし、友里が攻撃するために実体化しているノイズに対して発砲するが、有効打にはなっていない。
「行きます!」
響の声にクリスが頷き、雷が顔を引き締めることで返事とする。
「Voltaters Kelaunus Tron」
第0号聖遺物『ケラウノス』のシンフォギアが雷の歌声で起動し、着ていた服を分解した。
一糸まとわぬ姿となった雷はグレーを基調にしたインナースーツを身に纏い、両手両足に金色の電撃発生ユニットが装着される。頭に稲妻を模したヘッドギアが展開され、四肢より少し大型のユニットが稲妻を放ちながら腰に装着。雷が体をクルリと一回転することで放たれていた稲妻がグレーのマントに変化した。
腰のマントはギアのロックが一部解除されたことで発現したものだ。
「でやぁっ!」
ギアを纏った三人が列車の天井を突き破り、外へと身を躍らせた。響とクリスのギアも雷と同じく一部が変化している。
「夜雀どもがうじゃうじゃと」
「光に群がる羽虫の間違いでしょ」
クリスが軽口をたたき、雷がユニットから電撃を発生させながら煽る。
「どんな敵がどれだけ来ようと今日まで訓練してきたあのコンビネーションがあれば!」
「あれはまだ未完成だろ。実戦でいきなりぶっこもうなんて、おかしなこと考えんじゃねえぞ」
「今回ばかりは弦十郎さん譲りの「思い付きを……」は無しだからね、響」
響が笑顔で答えた。。
「うん!取っておきたい、とっておきだもんね!」
「ふん。わかってんなら言わせんな」
クリスが目をつむりながら腕部装甲をボウガンに変形させ、二人に背中を向けて構える。
「背中は預けたからな」
「預かりました!」
「任せて!」
クリスが矢をノイズに向けて斉射。それを逃れたものを雷の電撃が、響の格闘術が撃破していく。背中からくる敵意に一切反応していないあたり、クリスの二人に対する信頼関係が見て取れる。
上から強襲してくる三体のノイズのうち二体を響の拳が砕き、もう一体をサマーソルトで粉砕した。
空を飛び交うノイズに対して雷が稲妻の塊を射出し、天から降らせることでまとめて焼き払う。
『雷轟招来』
雷に負けじとクリスもボウガンと矢を大型化させ、発射。放たれた矢は空中でクラスター弾がごとく分散、重力に従って雨の様に落下することでノイズの大群を撃ち抜いていく。
『GIGA ZEPPELIN』
爆炎の中を高速で飛翔するステルス戦闘機のようなノイズを発見した。
「あいつが取り巻きを率いてやがんのか」
クリスが腰のアーマーから小型ミサイルを展開し、ノイズを撃墜すべく発射する。
「うおぉぉッ!」
『MEGA DETH PARTY』
ノイズは巧みな軌道で追尾ミサイルのコースをそらし、同士討ちさせながら振り切ってしまう。
「だったらぁッ!」
『BILLION MAIDEN』
オートがだめならマニュアルで。と言うようにボウガンをガトリング砲へと変化させ、高速飛行するノイズに弾をばら撒いていくが一向に当たる気配がない。
それどころか堅牢な装甲で弾を弾きながらクリスのもとへと突撃を敢行する。
「クリスちゃん!」
響が右腕のバンカーを起動して真正面から迎撃するが、正面装甲を気づつけることなく、逸らすだけにとどまっていた。
クリスのガトリング砲と雷の雷撃でノイズはその数を減らしていくが、生き残っているものはそれ以上に残っており、高速飛行する強敵もいまだ健在だ。
ある種の目的を持ちながら行動するノイズに雷は疑問を持ち、クリスが減らないノイズに愚痴を言う。
(ソロモンの杖以外にノイズをコントロールする方法が?あるのならまだいい、杖で介入できる。でも、もしなければ……)
「あんときみたく空を飛べるXDモードなら、こんなやつにいちいちおたつくことなんてねえのに!」
「ふ、二人ともぉ!」
後ろを振り向いた響のすっとんきょうな声に思わず振り向く二人の目の前にはトンネルが迫っていた。
「え?」
「へ?」
「「「うわあぁぁ?!」」」
響はクリスを抱えて屋根を踏み抜き、雷は響が開けた穴を使って避難する。
「ギリギリセーフ!」
「わりぃ助かった」
「あっぶなかったぁ……」
「くそ。攻めあぐねるとはこういうことか!」
悔しそうに拳を手のひらにぶつけるクリスに対し、あごに手を当てて考え事をしていた雷が提案する。
「飛んでるのが嫌なら捕まえちゃえばいいんだよ!」
「馬鹿!それが出来れば苦労しねえよ!」
「出来るよ!ノイズの特性と、弦十郎さんの戦術マニュアルを使えば!」
響がピンと来たようだ。
「列車の連結部分を壊してぶつけるアレだね!」
「そう!あれならいけるよ!」
クリスが呆れた様に言う。
「あのなぁ、おっさんのマニュアルってば面白映画だろぉ?そんなものが役に立つものかぁ……。大体、ノイズに車両をぶつけたって、あいつらは通り抜けてくるだけだろ」
雷がニヤリと笑いながら口元で人差し指を振る。
「チッチッチのチ~。通り抜けるまでのタイムラグにこっちの一番をぶつけるんだよ!」
「任せて雷!一番をぶつけちゃうよ!」
「?」
阿吽の呼吸で二人の間に作戦が展開される。
雷は頭脳派ではあるが、必要とあらば脳筋側にもなるのだ。
「トンネルを抜けるまでが勝負だよ!」
「本当にこんなんでいいのかよ……」
「行けるって行けるって!響!向こうで構えてて!」
「了解!」
響をトンネルの外で待機させ、クリスと雷は連結部の破壊を担当する。
クリスがジョイントを撃ち抜き、雷がその間に体を滑り込ませて分離に成功する。
分離した車両をノイズが通り抜けようとしていると、トンネルの外で待ち構えていた響が変形したバンカーのブースターを点火して一直線に突っ込んでいく。
ナックルガードを展開し、真っ先に突破してきた装甲ノイズの鼻っ柱に拳を叩きこむ。バンカーユニット内のドリルのように回転するパーツの生み出した衝撃が放たれ、列車もろともトンネル内にいたノイズ全てが爆発に巻き込まれる。
策がうまくいって隣で大笑いする雷と、一撃でその策を実行して見せた響を見てクリスが驚愕する。
(閉鎖空間で相手の機動力を封じたうえで、遮蔽物の向こうから重い一撃……。こいつら、どこまで……)
「響ー!回収するよー!」
「おねがーい!」
『超電磁アンカー』
雷の右腕のユニットから放たれた超電磁を纏った稲妻が響を拘束し、磁界を使って思いっきり引き寄せることで回収する。
結構勢いよく飛んでくる響を雷が受け止めた。
「よいしょっと。どうだった?」
「けっこうしびれるんだね、これ」
「すごいでしょ?」
雷に受け止められた状態のまま、若干ろれつの回っていない返事をして響が笑う。クリスはそんな二人を見て、少しでも感心したことを軽く後悔した。
『雷轟招来』
『弾雷牙檄』を天高く打ち上げ、空から稲妻をばら撒く技。一発にまとめて打つこともできる。上に飛ばしている分、攻撃範囲が広くなっているが、塊そのものを攻撃に使うことが出来ないため総合威力は低い。
『超電磁アンカー』
『超電磁トルネード』よりも範囲と拘束力が低下している分、コントロール能力が上がっており、対人戦においては身柄の拘束や武器の奪取、瓦礫を掴んでハンマーのように扱うこともできる。
今回のように救助の際にも使用できる。