戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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十分でこれほどとは・・・これは一話につき三話分ですねぇ。
前作に比べて伸びがすんごい。コレが有名原作パワーか!


雷光を纏いし者

 特異災害対策機動部にかでは二つの聖遺物の起動により、混乱に包まれていた。何せ、片やガングニールは『元々の装者が死亡し、行方が分からなくなっていた』聖遺物、片やケラウノスは『稀代の天才たる櫻井了子が開発を諦め、計画から破棄された存在するはずのない』聖遺物だったからだ。その事実に了子が声を震わせる。

 

「新たなる適合者に・・・、ケラウノス・・・」

「一体どうしてこの二つが・・・」

 

 起動した二つの聖遺物の片割れ、ガングニールに対して存在しないはずのケラウノスの衝撃以上のものを感じているものが一人だけいた。かつてガングニールの所有者だった天羽奏の相棒、風鳴翼だ。

 

(そんな・・・!だってそれは・・・奏の・・・!)

 

 彼女はモニターに映るガングニールを纏った少女を凝視していた。

 

○○○

 

「何・・・これ・・・」

 

 雷の体を包んでいた光は着ていた制服を分解し、素肌の上から白と黒、グレーに金が配色されたインナースーツと鎧に変化していた。腕と脚、腰に装着された金色のユニットが展開し、そこから稲妻が少しだけ放出された後、格納される。放出された稲妻は女の子を狙っていたノイズに直撃し、粉々に吹き飛ばした。稲妻の鳴らした轟音にびっくりして雷の体は小さく飛び跳ねる。

 

「うぇえぇぇ?!ノイズが吹っ飛んだぁ?!」

「お姉ちゃん、すっごーい!」

 

 女の子が雷に対して希望を抱いた眼を向ける。そんな目を裏切れるほど雷は薄情な少女ではない。鎧からはシンセサイザーのような電子音が鳴り響き、胸の中に歌が浮かんできた。それを口ずさむと、不思議と底をついたはずの体力が回復した気がする。女の子に手を差し伸ばしその手を握りしめて、抱きしめる。

 

(この子だけは絶対に守る!守り抜いて見せる!)

 

 ここから離れるため、ビルの壁に向かって走り出す。何故かはわからなかったが、この鎧に包まれている間は出来る気がしたからだ。壁を駆けあがり、勢いそのままにビルの天井を駆け抜けてジャンプする。しかし、想像以上のジャンプ力に姿勢を崩してしまい、着地の瞬間にバランスを崩してしまう。女の子は守ることが出来たが、すぐにノイズに囲まれてしまった。

 

「大丈夫?!ケガはない?!」

「う、うん!」

 

 怪我がないことを確認した瞬間、ノイズが攻撃を始めた。反射的に右腕で防御姿勢をとる。その時、右腕の金色をしたユニットが展開し、電光が右腕を中心に円形に広がっていく。その電光にノイズが触れると、はじき返されると同時に炭素へと姿を変えた。

 

(もしかして・・・。これなら!)

「しっかり掴まっててね」

 

 女の子に語り掛けると、小さくうなずき返してくれる。この鎧のことはよくわからないが、使い方はわかる。お父さんとお母さん、出海が心の中で教えてくれる気がしたから。

 左からくるノイズの攻撃に素早く反転すると右腕を腰だめに構える。さっき展開した円形の電光が肘から後ろに迸り、腕がちぎれ跳びそうな勢いで発射される。ノイズの一体にその拳が直撃すると、衝撃波で周囲のノイズまで粉砕した。しばらく逃げながら戦っていると、超大型ノイズが現れた。女の子に自力で掴まってもらい、右腕に加えて左のユニットも展開する。バチバチと稲妻が迸り、それが固まりを形成すると女の子を振り落とさないように超大型ノイズに投げつけた。するとそれを喰らったノイズは空間に引っ張られるかのように貼り付けられ、身動きが取れなくなる。

 そこで雷の体に限界が来た。

 

「ガッハっ!ゲホッ!・・・ハァ・・・ハァ・・」

「お姉ちゃん大丈夫?!」

 

 女の子を抱えたまま膝から崩れ落ち、息を切らす。すると突然、貼り付けられていたノイズに巨大な剣が突き刺さり、真っ二つにする。その上には、青い鎧を着た翼が立っていた。

 

「翼・・・さん・・・?」

 

 上空でヘリのローター音が聞こえ始め、雷はふらふらと立ち上がるがすぐに倒れかけてしまう。その瞬間、誰かが雷の体を抱きかかえた、響だった。黄色の鎧を身にまとって雷の体を支える彼女は首に手を回させると、近くにあった小さい箱に雷を座らせる。二人は真っ先に思った疑問を口にする。

 

「響、その鎧何?」

「雷、これ何?」

「「・・・・・・」」

 

 二人して同じ疑問を抱いていたことがおかしくなり、雷は疲れ切っていることすら忘れて笑い合う。笑い合っていると若い制服を着た女の人が紙コップに入れた温かそうなドリンクを差し出してくる。

 

「あの、あったかいもの、どうぞ」

「「あったかいもの、どうも」」

 

 雷と響の二人はドリンクを受け取ると、ゆっくりと飲んでいく。ゆったりと気が緩んでいき、疲れた体を癒してくれる。その瞬間、二人の鎧が輝きだし、雷のは元の赤いペンダントに、響のは粉々に砕け散り、その衝撃でドリンクを落としてしまう。

 衝撃でバランスを崩した響だったが、後ろから抱きとめられる、翼だ。

 

「ありがとうございます!」

 

 感謝を述べる響だったが、顔を上げたときに翼が助けてくれたのを確認すると、大慌てでもう一度感謝を述べる。

 

「あっ、ありがとうございます!実は、翼さんに助けられたのは・・・これで、二回目なんです!」

「響、前にも翼さんに助けられたことがあるの?!」

「うん!」

 

 驚く雷と小さく二回目・・・と呟く翼。

 少し離れたところで、ママという声が二つ上がった。雷と響が助けた女の子に迎えが来たのだ。制服を着た女の人が二組の親子に様々な制限の話をしているのを見て、二人は向かい合って苦笑いを浮かべる。

 

「じゃあ・・・私たちもそろそろ・・・」

「お暇させて・・・」

 

 再び顔を前に向けると周囲を黒服にサングラスと、いかにもな人たちに囲まれていた。その中心で腕を組んでいる翼から言葉が発せられる。

 

「あなた達をこのまま返すわけにはいきません」

「「なんでですか?!」」

 

 雷と響の声がハモる。

 

「特異災害対策機動部二課まで、同行していただきます」

 

 翼の声で、二人の両腕に電子ロック付きの手錠がかけられ、黒服の一人が申し訳なさそうに二人に声をかける。

 

「すみませんね、あなた達の身柄を拘束させてもらいます」

 

 そのまま複数の黒服に車の中に連れ込まれ、行先も告げられぬまま連行される。

 

○○○

 

 連行先はリディアンだった。

 

「ここ、リディアンですよね?」

「なんで、学院に?」

 

 返事は返ってこない。そのまま下ろされると、リディアンの中、先生たちのいる中央棟に黒服の一人と翼に先導され、雷と響はそこにあるエレベーターに連れ込まれる。黒服が携帯のようなものを何かにかざすと、電子音と共に扉はロックされ、手すりのようなものが出てくる。

 

「さ、危ないから掴まっててください」

「へっ?」

「危ないって、どういう・・・」

 

 黒服に促され、二人は大人しく手すりに摑まる。その瞬間、エレベーターは本来進める方向ではない地下に向かって猛スピードで降り始めた。雷と響はそろって絶叫を上げ、慣れてきたところで響は愛想笑いを浮かべ、胃腸の弱い雷は何とか吐くまいと踏ん張っている。

 

「愛想は無用よ」

 

 翼に短く拒絶されて響は落ち込むが、雷には落ち込むだけの余裕がない。

 ある程度降りたところで、壁のところに何かの模様が描かれた場所を通過する。愛想笑いを浮かべていた響に対して翼が語り掛ける。

 

「これから向かう場所に、微笑みなど必要ないから」

 

 若干青くなった顔で雷はもう既に微笑む余裕などない!と叫びたかったが、口を開くと吐きそうだったので心の奥にしまい込んだ。

 一番下の階に到着してすぐに、雷はトイレに駆け込んで今まで耐えていたものを吐き出す。響に背中をさすってに貰って全部吐き出し、ぐったりとしたまま引っ張られて目的の部屋の前にたどり着く。黒服が心配そうな顔をする。

 

「大丈夫ですか?」

「はい・・・。胃腸が弱くて、ですね」

 

 ゆっくりと、重い扉が開く。扉が開いた瞬間、クラッカーの破裂音と拍手の音、そして垂れ幕には『熱烈歓迎!!立花響さま☆轟雷さま☆』と書かれていた。テーブルにはたくさんの料理が並び、目の前で赤いワイシャツにシルクハットをかぶった弦十郎が歓迎のあいさつを述べる。そこは、微笑みどころか笑顔しかない場所だった。

 

「ようこそ!人類守護の砦。特異災害対策機動部二課へ!」

 

 そんな状況に響はポカンとした顔をし、翼は頭を抱え、黒服は苦笑い、グロッキー状態の雷は翼のほうを向いて小さく、草と呟く。そして雷と響の前に了子が現れる。

 

「さあさ、笑って笑って~!お近づきのしるしにスリーショット写真~」

「ごめんなさい。今、笑える自信ないので」

「い、いやですよぉ。手錠をしたままの写真だなんて、きっと悲しい思い出として残っちゃいます。それに、どうして初めて会う皆さんが私たちの名前を知ってるんですかぁ?」

 

 弦十郎がシルクハットをかぶりなおしながらその疑問に答える。

 

「我々二課の前身は、大戦時に設立した特務機関なのでねぇ。調査などお手の物なのさ」

 

 杖を鼻に変えるという小粋なマジックを披露している横で、了子がカバンを二つ持って近づいてきた。調査というのはカバンの中でするものらしい。復活した雷と響が叫ぶ。

 

「あぁ~!私のカバン!なにが調査はお手の物ですかぁ!カバンの中身、勝手に調べたりなんかして!」

「はっはっは!雷くん、その年で遺書の書き方指南なんて読むんじゃないぞ!」

「まっ、返してくださいそれ!」

「それは捨ててもいいです!」

「ちょ、ちょっと響!そんな顔しないで!お願い!未来には黙っていて!何でも言うこと聞くからぁ~!」

 

 そんな惨状に翼はため息をつき、黒服、緒川に後を任せる。

 緒川の手で二人の手錠が外される。

 

「あ、ありがとうございます」

「ど、どうも」

「いえ、こちらこそ失礼しました」

「では、改めて自己紹介だ」

 

 ここの責任者の弦十郎と、出来る女こと了子の自己紹介を聞いた後、本題に入る。

 

「君たちをここに呼んだのは他でもない、協力を要請したいことがあるのだ」




次回、いろいろ語られちゃいます!
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