戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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雷の戦っているときの口調が男っぽいのはテンションが上がって元々の性格に戻っているからだったりします。


無からの奇襲

 新たに分かった武装組織フィーネに関する情報を記録していく。

 

「つまり、異端技術を使うことからフィーネの名を組織になぞらえたのではなく……」

「蘇ったフィーネそのものが組織を統率しているというのか」

「またしても先史文明期の亡霊が、今に生きる俺たちに立ちはだかるのか……。俺たちはまた戦わなければならないのか……。了子君……!」

 

 緒川とは別の、弦十郎の右腕として共に行動した彼女の名を呟く。また、彼女によって運命をゆがめられた少女、雷のことを思う。

 基地の外では、フィーネを名乗るマリアと雷たち二課の装者のにらみ合いが続いていた。

 雷は自分の心に渇を入れることで、なんとか一人で立つことが出来る状態だ。

 そんな彼女をさっきまで支えていたクリスが案ずる。

 

「……もういいのか?」

「うん……。何とかね……」

 

 そうは言うものの、いまだに膝は笑っている。

 響も動揺を隠せないようだ。

 

「嘘、ですよ……。だってあの時、了子さんは……」

 

 自分たちの目の前で自分と雷を激励したのだ。そんな彼女が再び敵になるなど考えられない。

 

「リインカーネイション……」

「遺伝子にフィーネの刻印を持つものを魂の器とし、永遠の刹那に存在し続ける輪廻転生システム……!」

「そんな……じゃあ、あのアーティストだったマリアさんは?」

「本当なら、フィーネに取り込まれてるはずだよ……」

「さぁどうでしょう?それは自分も知りたいところですので」

 

 ウェルは答えをはぐらかす。

 槍を足場に洋上を浮いているマリアはこの状況を打破する方法を考えていた。

 

(ネフィリムを回収できたのは僥倖。だけどこの盤面、次の一手を決めあぐねるわね)

 

 突然、水柱が上がり、その中から翼が現れる。

 彼女は着水すると、脚部のスラスターでホバークラフトのように海面を突き進み、マリアに斬りかかった。

 

「はあぁぁッ!」

「ッ!」

 

 マリアは紙一重で首への一撃を避け、上空へと跳び上がった翼を見上げる。

 

「甘く見ないで貰おうかッ!」

 

 剣を大剣へと変形させ、マリアに斬撃を見舞う。

 

        『蒼ノ一閃』

 

 マリアはその一撃を冷静にマントで防ぐ。

 

「甘くなど見ていない!」

 

 再び斬りかかってきた翼をマントで弾くのではなく受け止め、その横っ腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。

 そのまま翼は二課の船体に衝突し、威力を殺して立ち上がる。

 そしてマリアは手に持つケージを上空へ投げ上げ、それが消えるのを確認すると同時に翼と同じく船体に着地する。彼女が手を掲げた瞬間、洋上に浮いていたアームドギアがその手に吸い込まれた。

 マリアが宣言する。

 

「だからこうして、私は全力で戦っているッ!」

 

 マリアは跳躍し、本来のガングニールのアームドギアたる槍を叩きつける。翼はこれをはじき返すが、その反動を利用して更にマリアはもう一撃を加えた。

 翼はこれも防ぎ、両者は距離を取る。

 

「たあぁぁッ!」

 

 翼はマントの妨害をかいくぐり、マリアの懐へと接近する。しかし、槍の遠心力を利用した攻撃を剣では防ぎきることが出来ず、弾き飛ばされてしまう。

 マリアは槍を掲げ、それに沿わせるようにマントが回転し、小型の竜巻を形作る。

 その竜巻は側面からの攻撃が通らず、『台風の目』と呼ばれる最も弱いところを突くべく剣を突き立てるように飛び上がる。が、マリアはそれを予測しており、逆に槍を突き上げることによってこれを阻む。

 マントが回転をやめ、刃のように翼に襲い掛かる。それを転がるように避けるものの、先ほどの罠によって適合係数が下がった影響が残っているのか息が上がっている。

 艦内では船体の損傷を知らせるアラートが鳴り響き、モニターには損傷個所が表示された。

 

「被害状況出ました」

「船体に損傷、このままでは潜行機能に支障が出ます!」

「翼!マリアを振り払うんだッ!』

 

 弦十郎の指令を遂行するべく翼はマリアを倒すのではなく振り払うに目的を変更し、剣を大腿部のバインダーにしまう。

 逆立ちの姿勢で脚部のブレードを展開し、コマのように回転することで連続して斬りかかる。勝機を窺っているのだ。だが……

 

「勝機……!」

「ふざけるなッ!」

 

 マントで回転を受け流し、翼を転倒させる。

 難なく着地するが左ひざに痛みが走り、バランスを崩してしまう。

 

「マイターンッ!」

 

 その隙をマリアが見逃すわけもなく、追撃をかける。

 翼も咄嗟に剣を取り出し、逆手でカウンターをかけようとするがマリアのほうが速く、痛烈な一撃を負ってしまう。

 翼の強さを知っているクリスが驚愕する。

 

「アイツ、何を?!」

「最初に貰ったのが効いてるんだ!」

「なら、ここから撃つ!」

 

 雷は右腕のユニットから稲妻の槍を構築し、腕全体をボウガンにすることで遠距離攻撃を行う。

 

        『天槍霹靂』

 

(では、こちらもそろそろ……)

 

 雷が狙いを定めているタイミングで上空から無数の鋸が飛来し、彼女たちに襲い掛かる。

 その鋸は響とウェルの間に割って入り、彼を自由にする。

 

「あの二人組かよッ!……でやッ!」

 

 雷は槍を解体して斥力フィールドで腕全体を包み込み、再度襲い掛かってきた鋸を全て叩き落す。自分の腕が切り飛ばされる可能性を考えていないあたり、かなり追い詰められた状態で戦っている。

 

「なんと、イガリマァッ!」

 

 切歌が鎌を展開してクリスに襲い掛かる。

 片腕をソロモンの杖で塞がれているため、満足に迎撃することが出来ない。

 雷、響の二人には調が脚部で展開した鋸をローラースケートのようにして接近し、ツインテールから展開した無数の小型鋸を浴びせかかる。

 響にそれの迎撃を任せ、雷は一気に距離を詰める。それに対して調は脚部の鋸を車輪のように展開し、真正面からぶつかり合う。

 

        『非常Σ式・禁月輪』

 

「アリかよそんなのッ?!」

 

 雷は斥力フィールドを展開することで受け止めるが、適合係数の低下と質量差、精神面で力が入っていない影響から押し負けてしまう。

 

「ぐあッ!」

 

 後ろにあった壁に激突し、それと同時に切歌の攻撃がクリスの杖によって不自由な左の横っ腹に直撃して吹き飛ばされ、倒れ込む。

 

「雷?!クリスちゃん!」

「私よりもクリスを!」

「でも……!」

「私の事なんて二の次でいいッ!」

「ッ!……クリスちゃん!大丈夫?!クリスちゃん!」

 

 一瞬雷に駆け寄りそうになった響を制し、クリスのもとに向かわせる。

 クリスは意識を失っており、調に杖を奪われてしまった。

 杖を片手にウェルのもとへと向かう。

 

「時間ピッタリの帰還です。おかげで助かりました……。むしろ、こちらが少し遊び足りないぐらいです」

「助けたの、あなたのためじゃない」

 

 調はバッサリとウェルの言葉を切り捨てる。

 

「いやぁ、これは手厳しい」

 

 ウェルが声を笑わせながら言う。

 響がクリスに肩を貸し、雷が自力で歩いて並び立つ。

 

「くそったれ……。適合係数の低下で体がまともに動きやしねぇ……」

「でも、一体どこから……?」

「光学迷彩か何かか?聖遺物ならできなくもないだろうけど……」

 

 二課の技術を使っても切歌と調の出現時に観測されたアウフヴァッヘン波形以外の証拠を見つけることが出来ない。コレは異端技術無くして出来ぬことだ。

 マリアと交戦している翼は負傷した膝を押さえ、マリアは先ほど一撃をもらったところを押さえている。そこは翼によって装甲を切り裂かれていた。その結果が優位に立っているはずのマリアに焦りを生んでいる。

 

(こちらの一撃に合わせるなんて……この剣、可愛くない……!)

(少しずつだが、ギアの出力が戻っている……。行けるか?)

 

 翼は手を握っては開くを繰り返し、ギアの出力を確認している。

 調子を取り戻し始めた翼に対し、マリアの呼吸が荒くなっている。適合係数が落ちてきたのだ。

 

(ギアが重い……)

『適合係数が低下しています。ネフィリムはもう回収済みです。戻りなさい』

「ッ!時限式ではここまでなの?!」

 

 どこからか入ってきたナスターシャの通信に対し、マリアは叫んだ。

 

「まさか……奏と同じ、リンカーを?」

 

 マリアの言った『時限式』という言葉は、翼の記憶の中から奏を想起させるには十分だった。




現在雷にかかっているデバフは、フィーネへの恐怖心とウェルによる適合係数の低下、悪夢とみなしている夢からくる寝不足です。
 
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