戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
オリジナルオートスコアラーや錬金術師をキャラメイクし、わりと原作設定に沿っててうまくいってるのではと一人満足している私。彼女たちも魅力的なキャラクターなので早くお披露目したいところです。
リディアンでは秋桜祭が開催され、在校生のみならず親や友人などでにぎわっていた。
出店の客引きの声が響き、広告のチラシも配られる。そもそも学校自体が大きいので小さな祭りよりも人が多い。
そんな中、目の下にひどい隈を作った雷は響と共に手すりに体を預けて人だかりを眺めていた。眠気からか雷の体は今にも崩れ落ちそうだ。連日続くよくわからない夢に加え、フィーネが別次元のステルス性能を持っていることが彼女の精神に負担をかけている。いつどこかで自らの恐怖の元凶が急に襲い掛かってくるのかわからないのだから当然だろう。
軽く舟を漕ぎだしたタイミングで横から声をかけられた。雷と響の日常の象徴ともいえる少女、未来だ。
「ふ~たりっとも」
「未来」
「どうしたの?」
思わず響が未来に聞き返してしまう。
「どうしたの?じゃないわよ。もうすぐ板場さん達のステージが始まる時間よ?」
「えぇ?!もうそんな時間だっけ?!」
「時間がたつってはっやい……」
雷が自分の時計を見てつぶやいた。記憶にあるステージの予定と照らし合わせて確認する。
未来が雷の手を握る。響と未来で挟む形だ。
「いこう。きっと楽しいよ」
「うん。ありがと、未来」
「時計持ってるんだったら確認しとけばよかったね、私……」
予定を確認していなかった雷は自らを責めるが、未来が優しくたしなめる。
「こうやっていっしょに行けるんだから結果オーライだよ」
「……そうだね。いつもありがと、未来」
「どういたしまして」
未来が二人の間ではなく雷を挟むように手を握ったのは、このことを予想して雷に自傷をさせないようにしているのだ。
三人は笑いながら講堂へと走っていく。
講堂には多くの人が既に集まっており、満席の状態だ。スポットライトに照らされたステージにアニメのコスプレをした弓美や詩織、創世が上がってくる。
司会が盛り上げる。
「さて!次なるは一年生トリオの挑戦者たち!優勝すれば、生徒会権限の範疇で一つだけ望みがかなえられるのですが……彼女たちは果たして、何を望むのか?!」
ヒロイックなコスプレをした弓美がマイクを取る。
「もちろん!アニソン同好会の設立です!あたしの野望も伝説も、全てはそこから始まります!」
正直こんなことをせずとも頼み込めばイケそうな気もするが気にしてはならない。所々で歓声が上がり、弓美は気前よく手を振っている。
「ナイスですわ~コレっぽっちもぶれてませんもの」
「あぁ……なんかもうどうにでもなれぇ……」
詩織はノリノリだが、カマキリのような奇妙な恰好をした創世は投げやりになっている。
講堂に到着した雷たち三人はあいていた四つの席のうちの三つに座った。
「まだこれから見たい」
「うん」
「何なんだろ、あのカッコ……」
どうも曲名は『電光刑事バン』というらしい。日曜の朝にやっていそうな勇ましいイントロが流れてきた。
が、だんだんと盛り上がり、曲がサビに差し掛かったところで鐘が一つなった。つまり失格である。
消化不良を起こして弓美が嘆く。
「えぇー!まだフルコーラス歌ってない!二番の歌詞が泣けるのにぃ~!なぁんでぇ~!」
弓美が項垂れ、会場が笑いに包まれる。
隣で笑う雷と響の二人を、未来が微笑ましそうに見つめる。
(やっぱり、二人にはいつも笑っててほしい……。だって、それが一番響と雷らしいもの)
そう思い、この間の弦十郎に頼まれたことを思い返す。
雷がテロ組織の内通者である可能性……。今まで一緒にいてそんなそぶりを見なかった未来は、今は忘れようと、軽く頭を振って二人に笑顔を向けた。
○○○
そんな中、リディアンに侵入し、二課の装者が持つギアのペンダントをフィーネにこれ以上マリアの魂を奪われないように、代わりに奪取しようとしている調と切歌の二人は秋桜祭を満喫していた。
切歌は任務を覚えているのか不安なほどにたこ焼きをぱくついている。
「楽しいですなぁ……何を食べてもおいしいデスよぉ」
「じー……」
私服に眼鏡と、本当にそれで欺けているつもりなのかと疑いたくなるが、案外ばれないものだ。
目線で調に咎められているのに切歌が気付いた。
「あぅ、なんデスか。調……」
二人は場所を移し、校舎裏のさらに木の裏に身を隠す。
「私達の任務は学祭を全力で満喫することじゃないよ。切ちゃん」
「わ、分かっているデス!これもまた、捜査の一環なのデス」
「捜査?」
あまりに突飛な返しに調は首をかしげる。
「人間だれしも美味しいものに引き寄せられるものデス」
ポケットから入るときに配布された『うまいもんMAP』を取り出し、笑顔を浮かべる。
「学院内のうまいもんMAPを完成させることが、捜査対象の絞り込みには有効なのデス」
切歌の言い分に調はジト目になり、頬を膨らませて詰め寄る。完全に疑っている顔だ。
流石の切歌も調にそんな顔をされたら冗談は言えない。MAPをしまう。
「心配しないでも大丈夫デス」
真面目な顔で調を見つめ返す。
「この身に課せられた使命は、一秒だって忘れていないデス。……とはいった物の、どうしたらいいかデス……」
使命は忘れていないものの、証拠が見つからず、捜査は行き詰まってしまう。
そんな時、調が何かを指さしてパッと笑顔を浮かべる。
「切ちゃん鴨葱!」
二課の装者の一人、翼がいたのだ。
はやる調を切歌は腕を掴んで止め、引っ張った時の反動でバランスを崩した彼女を抱きとめる。
声はバレないように小声だ。
「作戦も心の準備もできてないのに鴨もネギもないデスよ!」
切歌の言葉を信じて、調はこっそり翼の後をつけることを選択する。
階段を上った翼に見つからないように柱の陰に身を顰める。
「?」
何者かの気配を感じて翼は振り返るが、調と切歌は慌てて引っ込める。
「こっそりギアのペンダントだけ奪うなんて土台無理な話デス」
「あず姉さんが言ってた。困難は大体力づくで何とかなるって」
「そんなこと言ってないデスよ?!」
後ろに注意を向けていた翼は前のドアから曲がってきたクリスと正面衝突してしまう。
「痛って~……」
「またしても雪音か。何をそんなに慌てて……」
「追われてるんだ!さっきから連中の包囲網が少しづつ狭められて……」
「雪音も気づいていたか……。先刻より、こちらを監視しているような視線を私も感じていたところだ」
翼は調と切歌、クリスは同級生のことを言っているのだが、二人はその食い違いに気づいていない。
「気づかれていたデスか……」
「見つけた!雪音さん!」
クリスの同級生が彼女を囲うように構える。
「お願い!登壇まで時間がないの!」
歌唱大会が開かれている講堂は大盛り上がりだ。その舞台はしにクリスの姿があった。マイクを手に持ち、同級生に頼み込まれて此処に立っているのだ。
「さて!次なる挑戦者の登場です!」
司会の声を聴いてクリスの背中を同級生たちが押す。そのせいでステージの上に出てしまった。
「二人とも、あれって!」
「うそぉ!」
「雪音だ」
翼が三人の隣に座る。
「明日は雨……いや雪かな……」
「私立リディアン音楽院。二回生の雪音クリスだ」
クリスの頬は恥ずかしさで赤くなっている。
美しいイントロが流れ、歌唱パートに入るが緊張しているのか歌えていない。会場内にどよめきが走る。
「クリスちゃん……!」
「クリス……」
思わず同級生たちのいる舞台はしをチラ見する。するとそこには笑顔で自分を応援してくれる彼女たちがいた。
クリスは意を決し、歌う。
その歌の美しさに感嘆の声が所々から上がっている。
同級生たちがクリスに歌ってほしいと頼んだ理由はただ一つ、「すごく楽しそうに歌うから」ただこれだけ、だから壇上に上がった。
歌っていると一緒にいてくれたみんなの顔が思い浮かぶ。
(楽しいなぁ……あたし、こんなに楽しく歌を歌えるんだ……)
歓声が上がる。
(そっか……ここはきっと、あたしが居てもいいところなんだ……)
○○○
スポットライトがクリスを照らす。
「勝ち抜きステージ、新チャンピオン誕生!さあ!次なる挑戦者は?!飛び入りも大歓迎ですよ~!」
司会は参加を募るが、あれほどの歌を歌われては参加者もいない。誰もがそう思っていたその時、二人組の少女が手を上げた。
「やるデス!」
「あいつら!」
「チャンピオンに……」
「挑戦デェス……!」
ステージで驚愕するクリス以上に驚愕……いや、殺意を向けている者がいた。
「こ、こんなところにまでぇッ!」
「落ち着くんだ轟。ここで事を荒立てるな……!」
席から飛び出そうとする雷を翼が何とか抑え込む。
彼女の声には怯えも含まれていた。
今のうちに愉悦部以外は心の準備をしておくとよいでしょう。三、四話ほど後にこの作品の今のところ最も愉悦ポイントが来ますので。
雷をこれ以上不幸な目に遭わせたい外道の会会長の私より