戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

5 / 209
二話だけで行けるかと思ったけどやっぱり駄目でしたー!
実はサブタイ決めが一番しんどかったりします。
今回は轟理論の解説回、おかげでいつもよりセリフが多いです。あとがきに詳しく書いてますのでどうぞ。


ガングニールの説明が適当なのは許して・・・ダメ?


家族が残した遺産

 大の大人、しかも特務機関が前身の特異災害対策機動部二課が、まだ子供である雷と響に協力を要請していることが理解できなかった。しかし、二人の纏っていた灰色と黄色の鎧のことだとすぐに思い至り、弦十郎と了子にあれは何なのかを質問する。

 

「教えてください。あれはいったい何なんですか?」

「ノイズと戦えるようになる・・・みたいですけど」

 

 弦十郎と了子は軽く顔を合わせると、彼女が笑顔で頷き、二人に歩み寄る。そして指を三本たててから、口を開く。

 

「あなた達の質問に答えるためにも、二つばかりお願いがあるの」

「だったら何で指を三本たててるんですか?」

「・・・話の腰を折らないで。・・・気を取り直して。一つは、今日のことは誰にも内緒。そしてもう一つは・・・」

 

 了子は両方の手を雷と響の腰に回してだきしめ、耳元で語り掛ける。

 

「とりあえず脱いでもらいましょうか」

 

 耳元で語られたとんでもない言葉に二人は赤面し、叫ぶ。

 

「なぁんでえぇぇ?!」

「ここでですかぁぁ?!」

 

○○○

 

 雷と響の二人はふらふらになりながら未来の待つ寮室へと戻っていく。本来なら雷の寮室は別なのだが、一日の大半を響と未来のところで過ごしていたため、過ごしていくうちに三人一緒に住むことにしたのだ。ちなみに、寮監からは雷の体と精神の安定に貢献しているため、あえて見過ごされている。未来がこれの手回しをしたのは言うまでもない。もう既に色々とへばっている雷に肩を貸しながら、響はドアの鍵を開ける。

 

「「たぁだいまぁ~・・・」」

 

 すでに私服に着替えた未来が玄関に向かってくる。

 

「響、雷。もう!こんな時間までどこ行ってたの?!」

 

 雷を支えるのにも限界が来た響は部屋の真ん中に倒れ込むように寝転がる。丁度雷が上から覆いかぶさっている形だ。

 

「ゴメンナサイ・・・」

「ごめん。・・・雷ぁ~、重い~」

「この状態で倒れ込んだ響が悪いんだろぉ~。・・・ぐぇ」

 

 響の上から転がり落ちるように離れる。どさりという音と共に雷は仰向けに寝転がる。

 それでも未来の心配そうな声は収まらない。

 

「近くでまたノイズが現れたって、さっきもニュースで言ってたよ」

「うん・・・。でも、もう大丈夫だから」

「心配しないでいいよぉ」

 

 疲れ切った表情で苦笑いを浮かべる。その時、ニュースで翼が別のレコード会社に移籍するという話が流れてきた。大ファンの響は体を起こし、雷は仰向けのまま首を動かして画面を凝視する。そんな二人の状態に未来は頬を膨らませて呆れている。

 夜、三人そろって二段ベットの上で川の字になって眠る。今回は雷の要望で未来を挟んだ形だ。仰向けで眠る未来に背を向けたまま、響が口を開く。

 

「・・・あのね、未来・・・。ううん、何でもない」

 

 しかしすぐに了子と約束したことを思い出し、すぐに話を切り上げる。

 

「私は・・・なんでもなくない」

 

 未来の言葉に雷と響は小さく振り返る。

 

「二人の帰りが遅いから、ホントに心配したんだよ?」

「ごめん、心配かけちゃって。でもありがとう・・・。私達の事ちゃんと心配してくれるの、未来だけだから」

 

 今度は雷が未来に答える。それと同時に雷は未来の腕を抱きしめ、響は肩を抱きしめる。

 

「やっぱり未来ってあったかい」

「小日向未来は私達にとっての陽だまりなの。未来のそばが一番あったかいところで・・・」

「私達が絶対に帰ってくるところ」

「これまでもそうだし、これからもそう」

「私みたいな疫病神でも、幸せを感じれるから」

 

 両方から自分の大切な人に挟まれた未来は、顔を赤くしながら思いのたけを口にする。

 

「・・・あのね、響、雷。私ね・・・」

「くー・・・」

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 両方から安らかな寝息が聞こえてくる。軽く左右を見ると、雷は体を丸ませるように頭を未来の体に押し付け、響は未来と並ぶように眠っている。二人を起こさないように小さく体を起こすと、自由の利く右手で雷の顔にかかった髪を軽くかき上げ、響に布団をかけなおす。

 

「お休み。二人とも」

 

○○○

 

 次の日の放課後、雷と響の二人は友人の安藤創世に誘われる。

 

「ビッキー、ライライ。これからフラワーに行ってみない?」

「フラワー?」

「なに?それ」

 

 二人して首をかしげてると、寺島詩織がどんな所か説明する。

 

「駅前のお好み焼き屋さんです。美味しいと評判ですよ」

 

 二人は軽く苦笑いしながらやんわりと断る。

 

「・・・ごめん、いけないや」

「今日は別の用事がはいっちゃってるんだ」

 

 二人の発言に板場弓美が茶々を入れる。

 

「また呼び出し?あんた達ってアニメみたいな生き様してるわね」

「仕方ない。また今度誘ってあげるね?」

 

 未来は二人に用事があって一緒にいられないことに落ち込んだが、その場で気付くものは一人としていなかった。未来を含む四人と別れ、教室に雷と響の二人が残される。

 

「私、呪われてるかも」

「私のせいだ、私が疫病神だから・・・」

「ちょ、待って!雷のせいじゃないから!」

 

 響は雷がカバンから取り出したハンマーで手の骨を砕こうとするのを阻止する。すると不意に、響が頭を上げる。それにつられて振り上げていた腕を下し、目線を追う。そこには翼がいた。

 

「重要参考人として、再度本部に同行願います」

 

○○○

 

 二人そろって電子手錠をかけさせられ、エレベーターに連れ込まれ、地下へと降りる。また雷がグロッキーになったが、二度目だからか前回よりも早く回復した。

 二人はメディカルルームに連れ込まれ、壁際の長いすに腰掛けさせられる。了子が指さし棒をもって笑顔で話し始める。

 

「それでは、先日のメディカルチェックの結果発表~!まずは響ちゃんからね~」

 

 モニターに雷と響のバイタルと顔写真が表示される。

 

「初体験の負荷は若干残ってるものの、ほぼ見られませんでしたぁ~!雷ちゃんは包帯の下の怪我や首周りの痣を除けば響ちゃんと同じねぇ~」

「ほぼ・・・ですか」

「うんそうねぇ。あなた達が聞きたいのはこんな事じゃないわよねん」

 

 意を決して響が口を開く。

 

「教えてください。あの力のことを・・・」

 

 雷が頷き、弦十郎は翼に目で指示を出す。ゆっくりと翼が胸元から赤いペンダント、雷の持つペンダントと同じものを取り出す。

 

「あぁー!それ、私のと一緒?!なんで?!」

 

 興奮する雷を手で制し、弦十郎が口を開く。

 

「天羽々斬。翼の持つ、第一号聖遺物だ」

「「聖遺物?」」

 

 二人並んで首をかしげる。すかさず了子が説明を入れる。

 

「聖遺物とは。世界各地の伝承に登場する、現代では製造不可能な異端技術の結晶の事。多くは遺跡から発掘されるんだけど、経年による破損が著しくって、かつての力を秘めたままのものはホントに希少なの」

「この天羽々斬も刃のかけら、ごく一部に過ぎない」

「かけらにほんの少し残った力を増幅して、解き放つ唯一の鍵が特定振幅の波動なの」

「特定振幅の波動?」

「つまりは歌。歌の力によって、聖遺物は起動するのだ」

「歌?」

「胸の中から聞こえてきた歌の事、ですか?」

「うむ」

 

 弦十郎が頷き、翼は顔を顰める。呑み込めたと了子が説明を続ける。

 

「歌の力で起動した聖遺物を一度エネルギーに還元し、鎧の形に再構成したものが、翼ちゃんや響ちゃん、雷ちゃんが身にまとうアンチノイズプロテクター、シンフォギアなの」

 

 突然翼が声を上げる。

 

「だからとて!誰の歌、どんな歌にも、聖遺物を起動させる力が宿っているわけではない!」

 

 しばしの間。その間を打ち破るかのように弦十郎が声を上げる。

 

「聖遺物を起動させ、シンフォギアを纏う歌を歌えるわずかな人間を我々は、適合者と呼んでいる。それが翼であり、君たちなのだ!」

 

 了子が雷と響の前に歩いてきて、理解できたか、質問はあるのかと聞いてくる。今まで難しい顔をしていた響は手を上げる。それを先生が生徒を当てるかのように了子が質問を促す。

 

「どうぞ響ちゃん!」

「じぇんじぇんわかりません・・・」

 

 周囲の大人たちは、だろうなと分からなくて当たり前の顔をしている。そんな中、雷だけが聞くかどうか思い悩んでいる顔を浮かべている。それに気づいた弦十郎は雷に語り掛ける。

 

「どうした?何でも聞いていいんだぞ?」

 

 雷は少し悩んでから、口を開く。

 

「それって・・・櫻井理論・・・ですか?」

 

 その言葉に部屋中の、雷と響を除いた全員が驚愕する。了子が雷に慌てて駆け寄り、肩を掴む。

 

「そ、その言葉、どこで知ったの?!」

「え、えっと・・・両親の研究ノートで見かけたもので・・・」

「・・・そう、やっぱりあなた、轟博士夫妻の娘なのね」

「りょ、両親を知ってるんですか?!」

 

 自分の両親を知る了子に対し、逆につかみかかる。

 

「えぇ、知っています。あの二人は、もう一つのシンフォギアを作り出す技術『轟理論』の提唱者よ。そしてその技術で作られた唯一のシンフォギアが、あなたの持つそのケラウノス」

「ケラ・・・ウノス・・・」

「そう、櫻井理論じゃ作ることが出来なかった唯一の聖遺物。」

 

 モニターに二つの研究データが表示される。タイトルは、第一開発計画と新・第一開発計画。

 

「かなり古いデータだったから、探し出すのに苦労したわ」

「この研究に・・・両親が・・・」

「ええ、私達はまず最初にギリシャから借金の肩代わりする引き換えに入手した、その時一番最初にあった聖遺物、ケラウノスの開発に当たったわ。でも結果は失敗。ケラウノスはまさに稲妻そのもの、欠片から構築する櫻井理論じゃ手も足も出なかった。そこでこの計画を破棄し、天羽々斬を第一号聖遺物にしたの」

 

 ここまでは理解できたわね?と言うように了子が雷の目を見つめ、返事のために小さくうなずく。

 

「それでもあきらめきれなかった二人の科学者がいた。それがあなたのご両親よ。二人は私とは全く別の方法でシンフォギアを作り上げた。それが轟理論。欠片からシンフォギアを作るのではなく、シンフォギアの基本ベースを構築してからその中にケラウノスを封じ込めたの。もしもケラウノスを私達ふうに呼称するなら、天羽々斬以前に存在していた聖遺物と、存在していなかった、という意味を込めて第零号聖遺物・・・かしら」

「第零号聖遺物・・・。そして轟理論、そんなものがあったのか・・・」

「知らなくても当然よ、あれはケラウノスのような形を持たない聖遺物から作り出すための技術。どうしてもマイナーになってしまうの。でも、あの二人はまごうことない天才だったわ。・・・ご両親は今どちらに?」

 

 たわいもない了子の質問に対し、雷は俯いてペンダントを握りしめる。そんな彼女の代わりに響が応えた。

 

「雷の家族は・・・もういないんです。心中してしまって・・・」

「そう・・・。もう一度会ってあいさつしたかったのだけど・・・」

 

 暗くなった空気を弦十郎が持ち直す。

 

「こんなところで暗くなっても仕方ない!次は響君のだ!」

「そうね。・・・さて!何で響ちゃんは聖遺物を持ってないのにシンフォギアを纏えるのか!」

 

 モニターに響のレントゲン写真が投影される。そこには心臓付近に何かのかけらが見えていた。響が言うには、二年前のライブの時に負った怪我らしい。つまり、この破片こそがかつてのガングニールの所有者、奏が纏ったものが砕け、心臓付近に複雑に突き刺さった物なのだ。その事実に直面し、翼はふらふらと部屋を退室する。

 未来に隠し事をしたくない雷と響は弦十郎に質問する。

 

「このことを、誰かに言ったらダメなんですか?」

 

 この質問に帰ってくる答えは一つ、何者かに知られれば、周りの親しい人間に危害が及びかねない。それだけだった。

 二人は未来に隠し事をしたくない心と、傷ついてほしくない心に板挟みになってしまった。




轟理論
櫻井理論と異なり、聖遺物からシンフォギアではなく、シンフォギアのベースに聖遺物を封じ込めて作り出す技術。不定形の聖遺物に使われる技術だが、ケラウノス以外現状存在しないのでデータの奥底に眠っている。ケラウノスの存在を誰も知らなかったのは、本体のデータが削除されていたため、このデータから引っ張り上げてくるしかなかったからである。
わかりやすく説明すれば、櫻井理論は個体の周りを後から器で覆うもの、轟理論が器を先に作り、その中に液体を流し込むイメージ。
大本が同じため、外見やシステムに変化はない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。