戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~   作:兵頭アキラ

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 オリジナル錬金術師のモデルの顔写真がスマホの画面のど真ん中に鎮座している今日この頃。
 前の話と同時進行です。


全てほどけた繋いだ手

 雷が失踪したその日の夜、機械的に増幅された神獣鏡の光ではフロンティアを開放できないという事実を目の当たりにした武装組織フィーネはその問題を解決すべくスカイタワーの会議室へと足を運んでいた。

 ナスターシャの車椅子を押すマリアの脳内に湖畔で告げられた言葉が蘇る。

 

「マム、あれはどういう……?」

「言葉通りです。私達がしてきたことはテロリストの真似事に過ぎません。真になすべきことは、月がもたらす災厄の脅威を如何に抑えるか……違いますか?」

「つまり……今の私達では世界を救えないと?……ッ?!」

 

 会議室の前に到着し、自動ドアが開く。中には数名の黒服を着た男たちが待ち構えていた。

 思わずマリアはナスターシャに問いかけた。

 

「マム!コレは……?!」

 

 その問いに冷静に返す。

 

「米国政府のエージェントです。講和を持ち掛けるため私が招集しました」

「講和を……結ぶつもりなの……?」

「ドクターウェルには通達済みです」

 

 マリアに話しながら車椅子のハンドルを起動し、それを操作して会議用のテーブルに席をつける。

 

「さあ、これからの大切な話をしましょう」

 

 マリアの頬を汗が伝った。

 

○○○

 

 時を同じくしてスカイタワーの別の階、水族館にやってきていた響は水槽の前に立ち、頭の中では二つ出来事が反響していた。一緒に来ている未来は飲み物を買いに行っている。

 一つは自分の命に関すること。胸のガングニールが自らの体を内側から食いつぶし、やがて死ぬ、そうでなくとも人として生きているとは言えない状態に陥る事。

 もう一つは雷が失踪したということだ。未来や装者たち、弦十郎らの話を総括すれば、追い詰められた彼女の精神が未来がフィーネに塗りつぶされたという幻影を見、彼女に襲い掛かったのだという。そして正気に戻った雷は自らのしたことに耐えきれず、ケラウノスを持ったまま姿を消したらしい。

 藤尭曰く「ギアを持っているのだから起動さえしてくれれば追跡できる」らしいが彼女の事だ、起動することはあり得ないと言ってもいい。

 今現在、二課の総力を挙げて雷を捜索していて今すぐには解決できないため、まずは自分の問題から解決すべく考え始めた。

 

(戦えば死ぬ。考えてみれば当たり前の事……。でも、いつかマヒしてしまってそれはとても遠いことだと錯覚していた。戦えない私って、誰からも必要とされない私なのかな……)

 

 突然、深刻に考えていた響の頬に冷たい缶ジュースが当てられた。さっきまでとは打って変わってすっとんきょうな声が出る。そこには缶ジュースを二本持ち、首には雷によってつけられた首を絞めた痕を隠すためにストールを巻いた未来がいた。

 かなり声が大きかったのか周りの客がざわめいた。

 

「大きな声を出さないで」

「だっ、だだだだだってぇ……。こんなことされたら誰だって声が出ちゃうってぇ……」

「響が悪いんだからね」

 

 未来の言葉に思わず気の抜けた声が出る。

 

「私?」

「だって、雷とまた一緒に来るための下見ついでに遊びに来てるのに、ずっとつまらなそうにしてるから。響が楽しんでくれないと私も楽しくないし、雷って響と感性は似てるから三人で来た時にどう回ったら楽しんでくれるかわからないんだもん」

「あはは……ゴメン。心配しないで~、雷が居ないのは残念だけど今日は久しぶりのデートだもの~。三人で来た時にどこを回ったら楽しいかも考えてるし、楽しくないわけないよ~」

「響……」

 

 カラ元気のような響の様子に未来の脳裏に弦十郎の言葉が蘇った。それは響のガングニールの抑制と、雷の精神の安定には未来との穏やかな日常が必要だということだ。

 雷の追い詰められた声が耳から離れず、響の前では見せないが彼女の両親が元F.I.S.に所属していたために様々なことを疑われているという事実と共に「どうすれば雷が安心した日常を送れるのか?」とたびたび悩まされている。

 表情の曇った未来の手を響がとった。

 

「せっかくのスカイタワー、丸ごと楽しまなきゃ~!」

 

○○○

 

 マリアの手によって異端技術のデータが記録されたメモリーが黒服の一人に手渡された。

 

「異端技術に関する情報、確かに受け取りました」

 

 そう言って懐にメモリーをしまい、マリアがナスターシャのそばへと戻る。

 

「取扱いに関しては、別途私が教授いたします。つきましては……」

 

 その話を遮るようにナスターシャらに拳銃が向けられた。それも一人ではない、全員にだ。

 

「マム?!」

「あなたの歌よりも、銃弾ははるかに早く、躊躇なく命を奪う」

「ッ?!」

「初めから足り引きに応じるつもりはなかったのですか?」

「必要なものは手に入った。あとは不必要なものを片付けるだけ」

 

 すると窓の外に航空型ノイズが現れ、ガラスを通り抜けて黒服たちに襲い掛かった。人型ノイズも天井を通り抜けて姿を現す。

 そしてそのノイズを統制する完全聖遺物、『ソロモンの杖』を所有するウェルは隣のビルでスカイタワーに襲い掛かるノイズの群れをしり目に呟いた。

 

「どいつもこいつも勝手なことばかり……」

 

 静かにコーヒーを飲む。

 

「Granzizel Bilfen Gungnir Zizzl」

 

 拳銃を構えた黒服という目下の障害を切り抜けたマリアは漆黒のガングニールを纏い、ターゲットをマリア達に変えたノイズにアームドギアである槍をふるって退路を開くために殲滅する。

 その過程で発生した爆発の衝撃が響たちの階にまで響いた。

 

「なに?」

「あれ、ノイズじゃないか?!」

 

 響が警戒する。次いで窓の外に現れたノイズの姿に人々が逃げまどう中、響は戦うために駆けだそうとするが未来によって手を引っ張られ、止められる。

 

「行っちゃダメ!行かないで!」

「未来?!だけど行かなきゃ!」

「この手は離さない!響を戦わせたくない!遠くに行ってほしくない!」

 

 必死に響を引き留める。雷だけでなく響までどこかに行ってしまうのはもう限界だった。子供の泣き声が聞こえた。

 

「お母さんどこぉ~……。お母さん、怖いよぉ~……」

 

 一度子供のほうを向いた後、二人はお互いに向きなおす。

 

「胸のガングニールは使わなきゃ……大丈夫なんだ!このままじゃ……」

「響……」

 

 その手を放すと響は子供のほうへ駆け出し、未来はその後を追う。

 マリアはギアのヒールでメモリーを踏み砕いた。そして怒りの表情をにじませた後、脱出すべくナスターシャを抱えて通路を駆ける。襲い掛かるノイズの群れを槍の一振りで薙ぎ払う。後ろで爆発が起きたが気に留める暇はない。スカイタワー展望室各所で同様の爆発が起き、それをウェルが隣のビルから窓に顔を当て、食いつくように見ていた。

 エレベータの中から武装した特殊部隊がマリア達を抹殺すべくなだれ込んでくる。

 発射される弾丸をマントを盾代わりにすることで防ぎ、そのまま叩きつけることで二人を、同じくマントで弾を防ぐ手段のないナスターシャを守り、そのまま接近して飛び蹴りを喰らわせることで一人を戦闘不能に追い込む。

 担がれているナスターシャが策を出した。腹を肩に圧迫されているからか声がかすれている。

 

「マリア、待ち伏せを避けるために上の階からの脱出を試みましょう……」

 

 階段へとつながる扉を蹴り飛ばし、上へと向かう。

 響と未来は泣いていた子供と手をつなぎ、避難経路である階段へと向かっていた。

 

「ほらほら、男の子が泣いてちゃみっともないよ?」

「みんなと一緒に避難すればお母さんにもきっと会えるから大丈夫だよ」

「大丈夫ですか?!早くこっちへ、あなた達も急いで」

 

 スタッフの男性が子供を抱き上げ、響たちにも避難を促す。二人が顔を合わせて避難しようとしたその時、上の階をノイズが攻撃し、その爆発によって天井が崩れ、落下する。

 

「危ない!」

「うわっ?!」

 

 落ちてきた天井から響を守るために未来は背中から体当たりで突き飛ばし、自分もその勢いのまま倒れ込んだ。

 マントを盾にして攻撃を防いでいたマリアだったが、彼女の目の前で関係のない一般人が巻き込まれ、命を落とした。防いでいたマントで叩きつけ、気絶させる。

 目の前にいながら命を待ることが出来なかった自分に愕然と立ち尽くした。

 

「マリア……」

 

 軍人たちが続々とやって来てはマリア達に銃を向ける。

 

「私のせいだ……。すべてはフィーネを背負いきれなかった私のせいだァァッ!」

 

 咆哮と共にマントを叩きつけて一人を撃破し、残りの視線を自身から外す。マリアの跳び蹴りが顔面に直撃、ギアを纏った一撃によって沈黙。続いて着地するや否や回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

「アァァァッ!」

 

 残りには槍を叩きつけて二人まとめて吹き飛ばした。

 返り血が点々とガングニールを彩る。刺し貫いていないあたり良心の叱責がの追っているのだろう。涙を目もとにためて唇をかみ、その体はかすかにふるえていた。

 未来によって押し倒された響は避難経路である階段を瓦礫によって塞がれてしまったものの、命は無事だった。

 

「ありがとう未来……」

「うん……。あのね、響……ッ?!うぁっ?!」

 

 突如として起きた揺れにバランスを崩してしまう。展望台の一部が崩落し、その重みが無くなったことで響たちのいるところが跳ね上がったのだ。

 

「うわわぁっ?!」

「響ぃッ!」

 

 その拍子に響の体が後ろ、何もない空中に投げ出されてしまい、未来が咄嗟に手を伸ばして彼女の手を掴む。響は宙ぶらりんの状態になる。未来の体は響の体を一人で支えるのと自分が落ちないように踏ん張るのとでギリギリの状態になっていた。

 すべての軍人を撃破したマリアは肩で息をしながら隅で震えている人々に発破をかける。通路には撃破した軍人たちの血で赤く染まっている。

 

「嫌ぁ……。助けてぇッ……助けてぇッ……!」

「うろたえるなッ!」

「ひいっ?!」

 

 明らかにこの惨劇を生み出したマリアに怯えていたが構わず続ける。

 

「うろたえるなッ!行けッ!」

 

 逃げ出していったのを確認し、真っすぐに正面を見据える。ステージで放った言葉の意味を思い返す。

 

(あの言葉は他の誰でもない、私に向けて叫んだ言葉だ!)

「マリア……」

 

 マリアはナスターシャを抱え、槍を天井に向けて掲げた。

 

「もう迷わない!一気に駆け抜けるッ!」

 

 槍が高速回転し、マントも回転に合わせることでドリルのように天井を突き進む。

 宙づりになっている響が自らの手を掴む未来に叫んだ。

 

「未来!ここはもう持たない!手を放して!」

「駄目!私が響を守らなきゃ!」

 

 「本当は雷も守ってあげなくちゃいけなかったのに……」という思いを胸に隠し、未来は叫んだ。その思いは言わずとも響に伝わっている。

 

「未来……」

 

 大切な親友まで巻き込まないために、響は口を開いた。

 

「いつか、本当に私や雷が困ったとき、未来に助けてもらうから……。今日はもう少しだけ、私に頑張らせて……」

 

 未来の目から涙がこぼれる。響は掴んでいた手の力を抜き、その手を放したくない未来はそれ以上に力を入れた。

 

「私だって……守りたいのに……」

 

 未来の手から響の手が離れた。

 

「響ぃーッ!!」

 

 未来の叫びとともに落下する響はガングニールを起動すべく聖詠を歌う。

 

「Balwisyall Nescell Gungnir Tron」

 

 ギアを纏った状態で着地し、衝撃によって地面が砕け、沈み込む。ギアから負荷を軽減した蒸気が放出された。

 響は立ち上がり、未来のいた場所を見据える。

 

「未来!今行く!」

 

 だが、大爆発が発生し、爆炎によってその場所は吹き飛ばされる。

 

「未来ぅーッ!!」

 

 響の叫びが響いた。




 これからはいつも通り投稿できますわぁ~。
 早く幕間でF.I.S.組と雷をイチャコラさせてぇ……。
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