戦姫絶唱シンフォギアST~Scratched thunder~ 作:兵頭アキラ
隠したくない心と傷つけたくない心、その二つに挟まれた雷はペンダントを握りしめ、響は軽く俯く。頭の中では一緒に過ごした未来との記憶が巡る。二人の表情を察した弦十郎は口を開く。
「我々がまもっているのは機密などではない、人の命だ。その為にも、この力のことを隠し通してもらえないだろうか」
「あなた達に秘められた力は、それだけ大きなものだということを、分かってほしいの」
「人類ではノイズに打ち勝てない。人の身でノイズに触れることは、即ち炭となって崩れることを意味する。そしてまた、ダメージを与えることは不可能だ。たった一つの例外があるとすれば、それは、シンフォギアを身に纏った戦姫だけ。日本政府、特異災害対策起動部に課として、改めて協力を要請したい。立花響君、轟雷君。君たちが持つシンフォギアの力を、対ノイズ戦のために、役立ててはくれないだろうか」
二人は軽く顔を合わせ、頷き合う。響が意を決して口を開く。
「私達の力で、誰かを助けられるんですよね?」
弦十郎と了子が頷く。それを見て、響が答える。
「分かりました!私、翼さんに報告してきます!」
「失礼しました」
「雷君、少し待ってくれないか?」
「へ?」
意気揚々と翼のもとに行こうとした二人だったが、雷が弦十郎に呼び止められる。響に先に行っといて。と促し、メディカルルームに残る。了子が重々しく口を開いた。
「雷ちゃん。その体中に撒かれた包帯の下、普通の女の子ならまず負うはずのない傷や痣があるわ。一体どうしてそんな風になったの?」
「え、えっとぉ・・・そのぉ・・・言わなきゃ、ダメですか?」
「できる限りの答えてくれると、こちらとしてはうれしいんだが・・・」
雷はしどろもどろに答えた後、弦十郎の返事に対して顔に影を落とす。
「あの・・・、せめて私が話したくなる時まで、待っていて・・・くれませんか?」
「・・・信用が、必要なわけだな?」
うつむいたまま、コクリと頷く。それに対して頭を軽く掻いた後、膝を軽くたたいて弦十郎が笑顔で答える。
「二日三日しかたってないのに、体のことを聞いたこっちが不躾だったな。すまない。雷君が話したくなったら、何時でも言ってくれ」
「ありがとうございます!」
雷の顔に笑顔をが戻る。その瞬間、基地内にアラートが鳴り響いた。弦十郎についていく形で雷も指令室にたどり着く。少し遅れて、響と翼も到着した。オペレーターがノイズの発生を報告する。それを聞いてすぐに、弦十郎が判断を下す。
「本件を、我々二課で預かることを一課に通達!」
「出現位置特定!座標出ます!・・・リディアンより距離二百!」
「近いな・・・」
「迎え撃ちます!」
翼が反転し、指令室の外に飛び出す。少し遅れて、お互いに頷き合った雷と響も飛び出す。それを弦十郎が声で制しようとする。
「待つんだ二人とも!君たちはまだ・・・」
「私達の力が誰かの助けになるんですよね?!シンフォギアの力でないと、ノイズと戦うことはできないんですよね?!だったら行きます!」
「疫病神な私でも、誰かのためにできることがあったんです!だから、行かせてください!」
二人は駆けだして、ドアをくぐる。
「危険を承知で飛び出して行くなんて、あの子たち、いい子ですね」
オペレーターの言葉に疑問を浮かべる。
「果たしてそうだろうか?翼のように、幼いころから鍛錬を続けているわけだはない。ついこの間まで、日常の中に身を置いていた少女が、誰かの助けになるというだけで、命をかけた戦いに赴けるというのは、歪なことではないだろうか・・・」
「つまり、あの子達もまた私たちと同じ、こっち側ということね」
「それに雷君の言っていた、疫病神という言葉・・・。体中の傷と、関係あるのかもしれないな」
○○○
町中に避難警報が発令され、間に合わなかった人たちのなれの果てが大気中に舞う。舗装された道の真ん中で、制服姿の翼がノイズの群体と向き合っていた。ノイズの群れが溶け合い、一つの大型ノイズへと姿を変える。翼がシンフォギアを起動する。
「Imyuteus Amenohabakiri Tron(イミュテアス アメノハバキリ トロン)」
翼のペンダントが光り輝き、制服を分解して青のシンフォギア、天羽々斬を纏う。大型ノイズが体についた羽状のパーツをカッターのように飛ばす。それを翼はジャンプで避けると、足についたブレードを展開し、反転したカッターを迎撃する。着地と同時に手に持つ刀を巨大化させる。
その瞬間、背後から雷の両腕のユニットで構築された塊が大型ノイズに着弾し、ノイズが竜巻のように展開された稲妻によって空間に引っ張られ、固定された。
『超電磁トルネード』
叫び声と共に響が飛び蹴りを入れる。雷の技で空間に固定されているため、ノイズは衝撃を逃がすことが出来ず、そのまま翼が一閃を放つ。
『蒼ノ一閃』
翼の攻撃が身動きが取れないノイズに直撃し、両断、爆発する。翼のもとにギアを纏った響が駆け寄る。
「翼さーん!私達、今は足手まといかもしれないけれど、一生懸命頑張ります!だから、私達と一緒に戦ってください!」
笑顔で話しかける響に、翼がそうね、と小さく答える。少し遅れて雷が到着した。素の身体能力が平均的に低いため、ギアを纏っていても響より遅いのだ。雷が呼吸を整えている間に、翼がゆっくりと響と向き合い、口を開く。
「あなたと私、戦いましょうか」
「えっ・・・」
「ハァ・・・ハァ・・・ふう。・・・何事?」
翼が手に持つ刃を響に突きつけた。
超電磁トルネード
ケラウノスの両腕の電撃発生ユニットを展開して使用する。稲妻の塊を構築し、敵に投げつける。塊は竜巻状に形状を変化させ、電磁石のように磁場を構築することで敵を拘束する。弱い敵ならばそのまま引き裂くことも可能。非常に使い勝手がよく、拘束力が強いため他の技へのつなぎやコンビネーションアタックなどの他、人命救助なの度幅広い場面で使用される。
四話で発動したものはこれの未完成版。ケラウノスのことを信じ切ることが出来なかったために出力がダウンしたもの。
イメージモデルはロボットアニメ『コンバトラーⅤ』の超電磁タツマキ(ボソッ)